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トリプルゲーム
トリプルゲーム3
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やがて、生徒達がデッキに出て来る気配を感じとると、輝李は瀾の手を取り笑顔を向けた。
「瀾ちゃん、そろそろ人もこんできそうだし、他の所も見て回ろうよ」
「はい」
輝李は、デッキに人が溢れる前に瀾を連れて、その場所を離れた。
輝李達が向ったのは、カフェテリアだった。
その途中には、ビリヤードやダーツが楽しめる遊技場やラウンジバー、広いレストラン等が完備されている。
とても学生が楽しむ為とは言えない船内だった。
カフェテリアに着き、飲み物を頼むと瀾は、紅茶を見つめ疑問を輝李にぶつけた。
「あの…輝李さん」
「どうしたの?」
「この船には、どうしてこんなに遊技場が沢山有るんでしょうか?
まるで学院のイメージと違いすぎて・・・」
「ああ、これは学院専用に作れていないからだよ」
「え?でも学院が用意したものだって…」
「この船は昔、私用に使われていたんだ。
僕の家でね」
「ええ!!!き、輝李さんの!!」
「そう。うちの母が、この学院出身でね。
卒業後も寄付金を援助していたんだ。
この船には、あまりにも沢山の思い出が詰まっていて今はあまり使われなくなってしまったから、必要に応じて学院に貸し出しているだよ」
不意に昔、母や乙達、家族で旅行した思い出が駆け抜け、輝李は一瞬辛く淋しそうな表情を浮かべた。
「輝李さん…
だから迷う事なく、ここまで来れたんですね…」
「そういう事♪」
今さっき、フッと見せた表情が嘘のように、輝李はまた笑顔で応えた。
しかし、瀾はさっき部屋に入ってから言っていた輝李の言葉に疑問を持った。
「でも輝李さん、さっき初めて入ったような口調だったような…」
「ああ、僕が最後にこの船に乗ったのは随分小さな時だったからね。
中も改装されているのかなって思ってたし、感動は2人で味わった方が楽しいでしょ♪」
「そうですね」
輝李の言葉に瀾は笑顔で返した。
夕方になるとスイートルームのゲスト達には、ルームサービスで食事が運ばれた。
ノックの音が響きメイドがカートを押し、部屋に入ってくる。
静かにテーブルに皿が置かれると、瀾は思わず口を開いた。
「ぁ…由佳さん!!」
メイドは会釈すると、輝李も静かに口を開いた。
「由佳、話しても構わないよ。
今は誰が見ているわけでもないし、僕達しかいないしね」
「…はい、輝李様」
メイド姿の由佳を見るのが〔初めて〕だった瀾は目を丸くして困惑を隠せないでいる。
「由佳さん、その格好は…」
「これが本来の私の仕事なんです、野中様」
「メ、メイドさんなんですか!!」
「はい…月影の家にお仕えして、もう10年は経ちます」
「じ、10年!!」
「はい」
「あ、あの…」
「はい、野中様」
「その…いつもみたいにお話して下さい。
由佳さんに様なんて言われるの…何だか…」
「ですが…」
由佳が輝李を見ると、輝李は笑顔でアイコンタクトを送る。
すると、やっといつもの優しい笑顔を向けて普段と変わらない口調に直した。
「クス…瀾さんは、こういうのには慣れてないのね」
「はい、でも由佳さんが来ているなんてビックリしました」
「クスクス…」
食事をとりながら由佳としばしの会話を楽しむと、由佳は業務に戻るため、二人に一礼をして部屋を出ていった。
食後の紅茶を飲みながら瀾は口を開く。
「皆さん、お部屋で食事していたんでしょうか?
日程表には『食堂にて』って書いてありましたけど」
「ルームサービスが付くのはゲストだけらしいね」
「そ、そうなんですか!!
私…ここでご飯食べちゃって良かったんでしょうか?」
「平気だよ。今日は、僕から言ってあるし」
「そうですか…」
少し俯いていた瀾だったが、何かを思い出したように置き時計を見るとハッとする。
「ぁ…、私、これから勉強会の集会が有るの忘れてました」
「ああ、そうか。瀾ちゃんは強制参加者だったけ…」
「はい…」
「1人で平気?」
少し心配そうに顔を輝李が覗くと、瀾は笑顔で答えた。
「はい、大丈夫です。
私も少しずつ一人で出来るようにならないと輝李さんの負担になってしまうから」
「そう。じゃあ、頑張ってね」
「はい!!行ってきます」
その言葉を聞くと互いの唇が重なった。
瀾は少しはにかむと、部屋を出ていく。
「瀾ちゃん、そろそろ人もこんできそうだし、他の所も見て回ろうよ」
「はい」
輝李は、デッキに人が溢れる前に瀾を連れて、その場所を離れた。
輝李達が向ったのは、カフェテリアだった。
その途中には、ビリヤードやダーツが楽しめる遊技場やラウンジバー、広いレストラン等が完備されている。
とても学生が楽しむ為とは言えない船内だった。
カフェテリアに着き、飲み物を頼むと瀾は、紅茶を見つめ疑問を輝李にぶつけた。
「あの…輝李さん」
「どうしたの?」
「この船には、どうしてこんなに遊技場が沢山有るんでしょうか?
まるで学院のイメージと違いすぎて・・・」
「ああ、これは学院専用に作れていないからだよ」
「え?でも学院が用意したものだって…」
「この船は昔、私用に使われていたんだ。
僕の家でね」
「ええ!!!き、輝李さんの!!」
「そう。うちの母が、この学院出身でね。
卒業後も寄付金を援助していたんだ。
この船には、あまりにも沢山の思い出が詰まっていて今はあまり使われなくなってしまったから、必要に応じて学院に貸し出しているだよ」
不意に昔、母や乙達、家族で旅行した思い出が駆け抜け、輝李は一瞬辛く淋しそうな表情を浮かべた。
「輝李さん…
だから迷う事なく、ここまで来れたんですね…」
「そういう事♪」
今さっき、フッと見せた表情が嘘のように、輝李はまた笑顔で応えた。
しかし、瀾はさっき部屋に入ってから言っていた輝李の言葉に疑問を持った。
「でも輝李さん、さっき初めて入ったような口調だったような…」
「ああ、僕が最後にこの船に乗ったのは随分小さな時だったからね。
中も改装されているのかなって思ってたし、感動は2人で味わった方が楽しいでしょ♪」
「そうですね」
輝李の言葉に瀾は笑顔で返した。
夕方になるとスイートルームのゲスト達には、ルームサービスで食事が運ばれた。
ノックの音が響きメイドがカートを押し、部屋に入ってくる。
静かにテーブルに皿が置かれると、瀾は思わず口を開いた。
「ぁ…由佳さん!!」
メイドは会釈すると、輝李も静かに口を開いた。
「由佳、話しても構わないよ。
今は誰が見ているわけでもないし、僕達しかいないしね」
「…はい、輝李様」
メイド姿の由佳を見るのが〔初めて〕だった瀾は目を丸くして困惑を隠せないでいる。
「由佳さん、その格好は…」
「これが本来の私の仕事なんです、野中様」
「メ、メイドさんなんですか!!」
「はい…月影の家にお仕えして、もう10年は経ちます」
「じ、10年!!」
「はい」
「あ、あの…」
「はい、野中様」
「その…いつもみたいにお話して下さい。
由佳さんに様なんて言われるの…何だか…」
「ですが…」
由佳が輝李を見ると、輝李は笑顔でアイコンタクトを送る。
すると、やっといつもの優しい笑顔を向けて普段と変わらない口調に直した。
「クス…瀾さんは、こういうのには慣れてないのね」
「はい、でも由佳さんが来ているなんてビックリしました」
「クスクス…」
食事をとりながら由佳としばしの会話を楽しむと、由佳は業務に戻るため、二人に一礼をして部屋を出ていった。
食後の紅茶を飲みながら瀾は口を開く。
「皆さん、お部屋で食事していたんでしょうか?
日程表には『食堂にて』って書いてありましたけど」
「ルームサービスが付くのはゲストだけらしいね」
「そ、そうなんですか!!
私…ここでご飯食べちゃって良かったんでしょうか?」
「平気だよ。今日は、僕から言ってあるし」
「そうですか…」
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小説が音声と映像で流れ出す!?
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