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トリプルゲーム
トリプルゲーム1
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『アールグレイの昼下がり』
章 REFRAIN 章 陰陽の鏡とリンク
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
中間テストが終わると輝李は、成績発表の表を見ながら小さなため息を洩らした。
「…また乙より下か…」
ふと、表の隣を見ると所狭しとチラシが貼られている。
「ん?…何これ?」
《学力強化合宿 クルージングパーティー!!
参加条件
学年成績上位10位以内の生徒である事。
また、学年成績下位5位以下の生徒は強制参加とする。
合宿期間は1週間とし、上位成績者が下位成績者の教育係を担う事とする。
[特別ゲスト]
△△△ △△△
〇〇 〇〇
*** *
月影 乙
木田 神流
月影 輝李…他
学院プリンスとのダンスパーティー及び、
学力教育が受けられるかも?》
「…へぇ、こんな変なイベントがあるの…」
輝李は半分あきれ気味に呟くと、廊下を歩いていった。
途中、神流と見知らぬ黒髪の生徒と擦れ違ったが、神流は何か深刻な様子だった。
神流の手から一枚のチラシが落ちる。
見ると先ほど廊下で見た海上パーティーのチラシだった。
しかも、輝李の名前が綺麗に消えている。
「木田さん、落としたよ」
「え…?」
輝李の姿を見ると少したじろいだが、笑顔を向け答えた。
「ありがとう♪」
「これって、廊下に貼ってあったものでしょ?」
「あ…ああ、ミスプリだから処分しなきゃいけないやつなんだ。
助かったよ」
「ふぅん…そうなんだ」
「じゃ、私急いでるから、またね」
明らかに様子のおかしい神流がその場を立ち去ると、輝李は少し考えてからニヤリと笑みを浮かべた。
『これは使えるかも…
僕の名前が消されていた事からして…多分、乙が来る!!』
輝李はマンションに戻ると早速、瀾にパーティーの話を持ちかけた。
「海上パーティー…ですか?」
「そう♪行ってみない?」
「でも…私の成績は輝李さんとは違うし…」
俯く瀾に輝李は明るく答えた。
「瀾ちゃん、テストどのくらい答えられた?」
「そ、それは…」
記憶のない瀾がテストで良い点を取れるはずがない。
何しろ、周りの人間より遥かに出遅れているからだ。
「わ、私…テストは…全然答えられなくて…
せっかく、輝李さんや由佳さんが教えてくれているのに…」
そう、瀾が今やっているのは中学生レベルの問題を復習しているにすぎない。
ましてや定期的な通院のせいもあって受けられない教科さえあったのだ。
そんな劣等感に瀾は申し訳なさそうに俯き、ヒクヒクと泣きだしてしまった。
「ごめんなさい…」
輝李は瀾の肩を抱くと、優しく微笑む。
「別に責めているわけじゃないよ。
瀾ちゃんは今、リハビリをしているんだから劣等感なんて感じる必要はないんだよ。
僕達がやっている所を教わっているわけじゃないし、ゆっくりで良いんだ。
たまには、羽を伸ばして旅行に一緒に行かない?
海、きっと綺麗だよ。
それに僕達、旅行なんて初めてでしょ♪」
輝李の言葉に瀾は小さく頷いた。
海上パーティーの日が来ると輝李と瀾は、学院の用意した船を見上げていた。
流石はお嬢様学院といったところだろうか。
見た目には豪華客船にしか見えない程の立派なものだ。
瀾は、あまりの船のスケールの大きさに立ち尽くし、唖然としていた。
「き、輝李さん…」
「ん?どうしたの?」
「こ、これに乗るんですか?」
「そうだよ。もしかして不安?」
「いえ…ただ、合宿にしては…何ていうか、大きいというか凄過ぎちゃって…」
「そうかなぁ?普通だと思うけど」
「そ、そう…ですか…」
やはり、金持ちとは感覚が少し違うのだろうか。
威圧感さえある船を普通だとサラリと言ってのける輝李に、瀾は更に恐縮してしまう。
少し俯いた瀾の手をソッと握ると輝李は笑顔で答えた。
「大丈夫、僕がずっと傍にいるよ。怖くない」
「…はい///」
その包むような優しい笑顔に、瀾は少し頬を赤らめはにかむと2人で船に乗り込んだ。
章 REFRAIN 章 陰陽の鏡とリンク
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
中間テストが終わると輝李は、成績発表の表を見ながら小さなため息を洩らした。
「…また乙より下か…」
ふと、表の隣を見ると所狭しとチラシが貼られている。
「ん?…何これ?」
《学力強化合宿 クルージングパーティー!!
参加条件
学年成績上位10位以内の生徒である事。
また、学年成績下位5位以下の生徒は強制参加とする。
合宿期間は1週間とし、上位成績者が下位成績者の教育係を担う事とする。
[特別ゲスト]
△△△ △△△
〇〇 〇〇
*** *
月影 乙
木田 神流
月影 輝李…他
学院プリンスとのダンスパーティー及び、
学力教育が受けられるかも?》
「…へぇ、こんな変なイベントがあるの…」
輝李は半分あきれ気味に呟くと、廊下を歩いていった。
途中、神流と見知らぬ黒髪の生徒と擦れ違ったが、神流は何か深刻な様子だった。
神流の手から一枚のチラシが落ちる。
見ると先ほど廊下で見た海上パーティーのチラシだった。
しかも、輝李の名前が綺麗に消えている。
「木田さん、落としたよ」
「え…?」
輝李の姿を見ると少したじろいだが、笑顔を向け答えた。
「ありがとう♪」
「これって、廊下に貼ってあったものでしょ?」
「あ…ああ、ミスプリだから処分しなきゃいけないやつなんだ。
助かったよ」
「ふぅん…そうなんだ」
「じゃ、私急いでるから、またね」
明らかに様子のおかしい神流がその場を立ち去ると、輝李は少し考えてからニヤリと笑みを浮かべた。
『これは使えるかも…
僕の名前が消されていた事からして…多分、乙が来る!!』
輝李はマンションに戻ると早速、瀾にパーティーの話を持ちかけた。
「海上パーティー…ですか?」
「そう♪行ってみない?」
「でも…私の成績は輝李さんとは違うし…」
俯く瀾に輝李は明るく答えた。
「瀾ちゃん、テストどのくらい答えられた?」
「そ、それは…」
記憶のない瀾がテストで良い点を取れるはずがない。
何しろ、周りの人間より遥かに出遅れているからだ。
「わ、私…テストは…全然答えられなくて…
せっかく、輝李さんや由佳さんが教えてくれているのに…」
そう、瀾が今やっているのは中学生レベルの問題を復習しているにすぎない。
ましてや定期的な通院のせいもあって受けられない教科さえあったのだ。
そんな劣等感に瀾は申し訳なさそうに俯き、ヒクヒクと泣きだしてしまった。
「ごめんなさい…」
輝李は瀾の肩を抱くと、優しく微笑む。
「別に責めているわけじゃないよ。
瀾ちゃんは今、リハビリをしているんだから劣等感なんて感じる必要はないんだよ。
僕達がやっている所を教わっているわけじゃないし、ゆっくりで良いんだ。
たまには、羽を伸ばして旅行に一緒に行かない?
海、きっと綺麗だよ。
それに僕達、旅行なんて初めてでしょ♪」
輝李の言葉に瀾は小さく頷いた。
海上パーティーの日が来ると輝李と瀾は、学院の用意した船を見上げていた。
流石はお嬢様学院といったところだろうか。
見た目には豪華客船にしか見えない程の立派なものだ。
瀾は、あまりの船のスケールの大きさに立ち尽くし、唖然としていた。
「き、輝李さん…」
「ん?どうしたの?」
「こ、これに乗るんですか?」
「そうだよ。もしかして不安?」
「いえ…ただ、合宿にしては…何ていうか、大きいというか凄過ぎちゃって…」
「そうかなぁ?普通だと思うけど」
「そ、そう…ですか…」
やはり、金持ちとは感覚が少し違うのだろうか。
威圧感さえある船を普通だとサラリと言ってのける輝李に、瀾は更に恐縮してしまう。
少し俯いた瀾の手をソッと握ると輝李は笑顔で答えた。
「大丈夫、僕がずっと傍にいるよ。怖くない」
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その包むような優しい笑顔に、瀾は少し頬を赤らめはにかむと2人で船に乗り込んだ。
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小説が音声と映像で流れ出す!?
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
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