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トラップチャンス
トラップチャンス9
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ジメジメと梅雨の翳りが続く中、瀾も少しずつ学院に慣れようと必死だった。
マンションに2人で帰ってくると、2人の時間は相変わらずだが、最近よく出るのは乙の話だった。
([アールグレイの昼下がり]参照)
「最近、よく会うんです」
「よく会う?」
湯船に浸かり、輝李に寄り添いながら瀾が口を開く。
「えっと…あの、輝李さんのお姉さんの…えっと…」
「乙の事?」
「あ!はい、そうです。
私の音楽の前のクラスがそうだったり、怪我をして保健室に行ったらいたり、今日もプリントを拾ってもらって…」
「ふぅん…、そう。
そんな事より、瀾ちゃん怪我したの?大丈夫?」
素知らぬ感じで答えたが、輝李はそれとなく話題を変える。
「あ…、怪我っていっても膝を擦り剥いただけで…。
それに、あの方から絆創膏も貰って貼りましたし」
「駄目だよ!!
小さな怪我でも化膿したら大変だよ。
あがったら消毒しようね。
それと…」
そこまで言うと瀾の唇にそっと自分を重ねた。
「僕と一緒にいるのに、他の子の話なんてしちゃ嫌だ。
瀾ちゃんは僕だけのお姫様なんだから…
他の王子様を見つけちゃダメだよ♥」
「…ン///…はい…///」
そんなある日、輝李は8-[エイトアンダー]の急な呼び出しにマンションに帰るのが困難になる日があった。
瀾を教室まで迎えに行くと、その日ばかりは由佳も呼び出しに応じるため、マンションではなく寮の自室で待機させる事にした。
「ごめんね、瀾ちゃん。
今日は少し用があって出かけなきゃいけないんだ」
「…はい」
少し不安そうな顔をした瀾に輝李は優しく微笑む。
「そんな顔しないで、成るべく早く帰って来るから」
「はい…」
「大丈夫!女の子と会うわけじゃないんだ。
必ず迎えに来るから。
僕のこの部屋を好きに使って良いから少し待っていて。
それと、部屋からは絶対に出ちゃダメだよ」
「…解りました」
瀾の返事に輝李は優しく抱き締めてキスをすると、足早に部屋を出た。
しかし、会議が終わったのは消灯時間が少しすぎる頃だった。
部屋戻り、ドアを開けると同時に瀾に声をかける。
「瀾ちゃん、遅くなってごめんね♪迎えに来たよ」
……。
輝李の声も虚しく瀾の声は答えなかった。
寝てしまったのだろうかと寝室に行くがベッドに姿がない。
それどころかトイレ、バスルーム、部屋の何処にも瀾の姿は見えなかった。
輝李の顔からみるみる血の気が引いていく。
「まさか!部屋から出たんじゃ!?」
今の瀾が部屋から出る事がどんなに危険な状態か輝李は知っている。
輝李は慌てて自室を飛び出すと寮内を走って瀾を捜し回った。
『くそっ!!
やはり1人にするべきじゃなかった!!』
一階から三階、全てを捜し回ったが瀾がいる気配すらない。
「ハァハァ…一体、何処に行ったんだ」
輝李が額に手を当てて考え込んで階段を登っている時だった。
「…ああ…あぁ゙あ゙ぁ゙あ!!!」
瀾の声だ!!!
また発作を起こし錯乱しているらしい。
「上か!!!」
輝李は、急いで階段を登る。
「ハァハァ…ハァハァ」
しかし、階段を登りきると瀾の奇声は聞えなくなってしまった。
『何処に居るんだ!!
まさか誰かに見つかって…!!』
慌てて廊下を捜すと、こんな時間に一部屋だけ電気がドアの下の隙間から漏れている部屋があった。
部屋に近づくと、それが自分達の寮の階だと初めて気が付く。
そこは乙の部屋だったからだ。
輝李は他の誰かではなく、乙が瀾を保護した事に内心ホッと安堵の息をつき、呼吸を整えるとドアをノックした。
マンションに2人で帰ってくると、2人の時間は相変わらずだが、最近よく出るのは乙の話だった。
([アールグレイの昼下がり]参照)
「最近、よく会うんです」
「よく会う?」
湯船に浸かり、輝李に寄り添いながら瀾が口を開く。
「えっと…あの、輝李さんのお姉さんの…えっと…」
「乙の事?」
「あ!はい、そうです。
私の音楽の前のクラスがそうだったり、怪我をして保健室に行ったらいたり、今日もプリントを拾ってもらって…」
「ふぅん…、そう。
そんな事より、瀾ちゃん怪我したの?大丈夫?」
素知らぬ感じで答えたが、輝李はそれとなく話題を変える。
「あ…、怪我っていっても膝を擦り剥いただけで…。
それに、あの方から絆創膏も貰って貼りましたし」
「駄目だよ!!
小さな怪我でも化膿したら大変だよ。
あがったら消毒しようね。
それと…」
そこまで言うと瀾の唇にそっと自分を重ねた。
「僕と一緒にいるのに、他の子の話なんてしちゃ嫌だ。
瀾ちゃんは僕だけのお姫様なんだから…
他の王子様を見つけちゃダメだよ♥」
「…ン///…はい…///」
そんなある日、輝李は8-[エイトアンダー]の急な呼び出しにマンションに帰るのが困難になる日があった。
瀾を教室まで迎えに行くと、その日ばかりは由佳も呼び出しに応じるため、マンションではなく寮の自室で待機させる事にした。
「ごめんね、瀾ちゃん。
今日は少し用があって出かけなきゃいけないんだ」
「…はい」
少し不安そうな顔をした瀾に輝李は優しく微笑む。
「そんな顔しないで、成るべく早く帰って来るから」
「はい…」
「大丈夫!女の子と会うわけじゃないんだ。
必ず迎えに来るから。
僕のこの部屋を好きに使って良いから少し待っていて。
それと、部屋からは絶対に出ちゃダメだよ」
「…解りました」
瀾の返事に輝李は優しく抱き締めてキスをすると、足早に部屋を出た。
しかし、会議が終わったのは消灯時間が少しすぎる頃だった。
部屋戻り、ドアを開けると同時に瀾に声をかける。
「瀾ちゃん、遅くなってごめんね♪迎えに来たよ」
……。
輝李の声も虚しく瀾の声は答えなかった。
寝てしまったのだろうかと寝室に行くがベッドに姿がない。
それどころかトイレ、バスルーム、部屋の何処にも瀾の姿は見えなかった。
輝李の顔からみるみる血の気が引いていく。
「まさか!部屋から出たんじゃ!?」
今の瀾が部屋から出る事がどんなに危険な状態か輝李は知っている。
輝李は慌てて自室を飛び出すと寮内を走って瀾を捜し回った。
『くそっ!!
やはり1人にするべきじゃなかった!!』
一階から三階、全てを捜し回ったが瀾がいる気配すらない。
「ハァハァ…一体、何処に行ったんだ」
輝李が額に手を当てて考え込んで階段を登っている時だった。
「…ああ…あぁ゙あ゙ぁ゙あ!!!」
瀾の声だ!!!
また発作を起こし錯乱しているらしい。
「上か!!!」
輝李は、急いで階段を登る。
「ハァハァ…ハァハァ」
しかし、階段を登りきると瀾の奇声は聞えなくなってしまった。
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慌てて廊下を捜すと、こんな時間に一部屋だけ電気がドアの下の隙間から漏れている部屋があった。
部屋に近づくと、それが自分達の寮の階だと初めて気が付く。
そこは乙の部屋だったからだ。
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小説が音声と映像で流れ出す!?
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
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