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トラップチャンス
トラップチャンス1
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(『アールグレイの昼下がり』 章 開かずの扉とリンク)
冬も間近に近づいた頃、瀾の検査結果も滞りなく進み、瀾は晴れて退院何度も動けない乙の上で快楽のダンスを踊り輝李は快楽の中、一粒の雫を落とした。
『僕には、こんな方法でしか…
こんな卑怯な手でしか、乙に触れる事が出来ないんだ…
ごめんね…乙…
でも…
僕は、今でも乙の事だけを…
あの日から、ずっと。
乙だけを愛してる…
嫌われてもいい…
せめて…今だけ
今だけでいい。僕を見て、乙…』
事が終わる頃、空の月は哀しげに雲に霞み、まるで泣いているようだった。
事が終わる頃、乙はと言えば輝李がシーツを代えている間も部屋の隅っこに布団をかぶり目も合わせようとはしなかった。
いくら熱に浮かされ敏感になっていたとはいえ、タチでありながら看病の最中にイカされた挙げ句にその後、何度も絶頂を迎え、潮まで噴いて快楽に支配されてしまった事に完全にへそを曲げて、その後もベッドの中で丸く縮こまって輝李に背を向けていた。
輝李が両手を合わせて必死に言葉を繕った。
「だ~か~らゴメンって、乙」
「………」
「お願いだから機嫌治してよ~」
「もう輝李なんか…知らん」
「今度はちゃんと看病するから!!」
「……」
駄目だ。
完全にへそを曲げている。
輝李は小さくため息をつくと、乙に寄り添った。
「乙…」
「俺に触るなって言ってるだろ!!」
「あ…!!」
振り向いた乙の顔は怒っていたあの時の鋭い眼光ではなく、顔を赤らめ置いてきぼりを食らって、今にも泣きそうな少年のような、あの子供の頃の顔をしていたのだ。
「乙、子犬みたい…///」
「ッ…///」
「クス…可愛い♪」
「うるさいな…///」
「少しの間…今だけ、昔の僕達に戻りたい…」
その輝李の言葉に乙は小さなため息をついて抱き締めて眠った…。
あの時と同じように…。
子供の頃と…
そして
愛し合っていた頃のように…。
『ゴメンね…乙
僕はこれから…』
あの日から輝李は、甲斐甲斐しく乙の風邪の看病をこなし、その甲斐あってか乙の身体も順調に回復すると、また寮ではなくマンションと病院の往復の生活が始まった。マンションに帰ってきた。
「輝李さん///」
「瀾ちゃん、お帰り♪」
瀾の退院祝いを兼ねて2人で甘いひとときを過ごす。
その日、輝李は風呂の準備を整えるとバスルームの中で瀾を呼ぶ。
「瀾ちゃ~ん、ちょっとおいで」
バスルームから聞こえる輝李の声に瀾がそちらに向うと、輝李の姿はなく、輝李が着ていただろう着衣が籠の中に入っていた。
バスルームのドアは開いており、泡風呂の中に輝李は漬かっている。
「き、輝李さん…?」
「瀾ちゃんも入っておいでよ♪」
「えぇ!!そ、そんな…//
だ、ダメですよ////」
「どうして?」
顔を真っ赤にしている瀾に輝李がザバッと浴槽から立ち上がると、瀾は両手で顔を覆う。
「きゃ…////」
「瀾ちゃん?」
浴槽から上がりゆっくりと近付いてくる輝李の足音に、瀾の鼓動は早く脈を打つ。
「クスクス…瀾ちゃん♪
手を退けてごらん」
「だ・だ・ダメです///そんな…//
わ、私達まだ…///」
「大丈夫だよ♪」
「だ・ダメです////」
輝李が目を伏せて微かに笑うと、瀾の額にキスをする。
瀾は顔を真っ赤にしながら微かに指の間から輝李を見た。
「あ…///」
思わず瀾は声をあげる。
そこには、女性の身体が飛び込んできたからだった。
「女の…人…」
「クスクス…、もしかして瀾ちゃん、僕のこと男の子だと思っていたの?」
「だって…////」
中性的な容姿と今までのエスコートに輝李が男児である事を疑わなかった瀾にとっては衝撃的な事だった。
「僕が男の子だったら、いくら看病でも女の子の瀾ちゃんの身体を拭いたりしないし、看護師さんに頼むよ」
「あ…そうです…よね…」
途端に瀾が少し俯いて、返事をするが表情に何処か陰を落とした。
そんな瀾の雰囲気を壊すように、輝李は笑顔で瀾の服を強引に脱がせた。
「さぁ!!瀾ちゃんの為に用意したんだから、早く脱いで脱いで♪」
「きゃ//輝李さん///」
そのいつもと変わらない輝李の明るさに瀾は、慌てながらも半ば強引にバスルームへ手を取られていく。
始めは恥ずかしがって、ずっと俯いていた瀾だったが、輝李の気遣いもあってか、やがて初めての泡風呂に2人ではしゃいで泡を吹いてみたり、身体を流しあったりといつもの2人に戻っていた。
ポチャン…
天上の水滴が湯槽の中へ吸い込まれ、ゆっくり浸かりながら瀾は、輝李に静かに話し掛けた。
「輝李さん…」
「何?」
「輝李さんはどうして、退院後もこんなに私に親切にしてくれるんですか?」
「…迷惑?」
「そ、そんなことありません!!
ただ…どうしてかなって…」
「前にも言ったでしょ。
僕がそうしたいからだって」
輝李の優しい声に瀾は、静かに続けた。
「…実は私、入院していた頃から、ずっと同じ夢を見るんです…」
「…夢?」
「…はい。その時、いつも私は暗い空間の中にいるんです。
目の前に誰か居て、私の名前を呼んでいて…でもいつもシルエットしか見えなくて、それが誰なのか解らない。
でも、それが私にとって、とても大切な人のような気がするんです。
手を伸ばそうとすると、目が覚めてしまう…」
「…そう」
輝李は微かに目を伏せた。
瀾は、俯き輝李に口を開き続ける。
「私、いつも考えてました。
輝李さんはどうして親切にしてくれるのか…。
“そうしたいから”って言っていたけど、私にはそれが不思議で仕方なかったんです。
輝李さん…本当は何か知っているんじゃないですか?
私の記憶の事…!!」
その瞬間、輝李の眉間が一瞬ピクリと動いた。
「…どうして、そう思うの?」
ニッコリと優しく笑う輝李に瀾は気が付かなかったが、その瞳には鈍い光が帯びていた。
「…だって…やっぱりおかしいです。
倒れた私を運んで看病してくれて…
退院してもこんなにしてくれるなんて…」
「……」
「もしかして、記憶を失う前の私を知っていて…それで…」
「…それで?」
「私、ずっと輝李さんの事考えると、動機が止まらなくて何でなんだろうって思ってました。
キスをしたのに輝李さんが女の人だって解った時も、その事に抵抗すらなかった…。
教えて下さい!!私の大切な人って、もしかして…!!」
瀾の動機の原因は多分、輝李に受けた恐怖感からだろう。
瀾はそれを勘違いしているようだった。
潤んだ瞳で必死に詰め寄る瀾に輝李は優しく微笑み唇を重ねた。
そして言ったのだ。
「お帰り…瀾ちゃん…」
冬も間近に近づいた頃、瀾の検査結果も滞りなく進み、瀾は晴れて退院何度も動けない乙の上で快楽のダンスを踊り輝李は快楽の中、一粒の雫を落とした。
『僕には、こんな方法でしか…
こんな卑怯な手でしか、乙に触れる事が出来ないんだ…
ごめんね…乙…
でも…
僕は、今でも乙の事だけを…
あの日から、ずっと。
乙だけを愛してる…
嫌われてもいい…
せめて…今だけ
今だけでいい。僕を見て、乙…』
事が終わる頃、空の月は哀しげに雲に霞み、まるで泣いているようだった。
事が終わる頃、乙はと言えば輝李がシーツを代えている間も部屋の隅っこに布団をかぶり目も合わせようとはしなかった。
いくら熱に浮かされ敏感になっていたとはいえ、タチでありながら看病の最中にイカされた挙げ句にその後、何度も絶頂を迎え、潮まで噴いて快楽に支配されてしまった事に完全にへそを曲げて、その後もベッドの中で丸く縮こまって輝李に背を向けていた。
輝李が両手を合わせて必死に言葉を繕った。
「だ~か~らゴメンって、乙」
「………」
「お願いだから機嫌治してよ~」
「もう輝李なんか…知らん」
「今度はちゃんと看病するから!!」
「……」
駄目だ。
完全にへそを曲げている。
輝李は小さくため息をつくと、乙に寄り添った。
「乙…」
「俺に触るなって言ってるだろ!!」
「あ…!!」
振り向いた乙の顔は怒っていたあの時の鋭い眼光ではなく、顔を赤らめ置いてきぼりを食らって、今にも泣きそうな少年のような、あの子供の頃の顔をしていたのだ。
「乙、子犬みたい…///」
「ッ…///」
「クス…可愛い♪」
「うるさいな…///」
「少しの間…今だけ、昔の僕達に戻りたい…」
その輝李の言葉に乙は小さなため息をついて抱き締めて眠った…。
あの時と同じように…。
子供の頃と…
そして
愛し合っていた頃のように…。
『ゴメンね…乙
僕はこれから…』
あの日から輝李は、甲斐甲斐しく乙の風邪の看病をこなし、その甲斐あってか乙の身体も順調に回復すると、また寮ではなくマンションと病院の往復の生活が始まった。マンションに帰ってきた。
「輝李さん///」
「瀾ちゃん、お帰り♪」
瀾の退院祝いを兼ねて2人で甘いひとときを過ごす。
その日、輝李は風呂の準備を整えるとバスルームの中で瀾を呼ぶ。
「瀾ちゃ~ん、ちょっとおいで」
バスルームから聞こえる輝李の声に瀾がそちらに向うと、輝李の姿はなく、輝李が着ていただろう着衣が籠の中に入っていた。
バスルームのドアは開いており、泡風呂の中に輝李は漬かっている。
「き、輝李さん…?」
「瀾ちゃんも入っておいでよ♪」
「えぇ!!そ、そんな…//
だ、ダメですよ////」
「どうして?」
顔を真っ赤にしている瀾に輝李がザバッと浴槽から立ち上がると、瀾は両手で顔を覆う。
「きゃ…////」
「瀾ちゃん?」
浴槽から上がりゆっくりと近付いてくる輝李の足音に、瀾の鼓動は早く脈を打つ。
「クスクス…瀾ちゃん♪
手を退けてごらん」
「だ・だ・ダメです///そんな…//
わ、私達まだ…///」
「大丈夫だよ♪」
「だ・ダメです////」
輝李が目を伏せて微かに笑うと、瀾の額にキスをする。
瀾は顔を真っ赤にしながら微かに指の間から輝李を見た。
「あ…///」
思わず瀾は声をあげる。
そこには、女性の身体が飛び込んできたからだった。
「女の…人…」
「クスクス…、もしかして瀾ちゃん、僕のこと男の子だと思っていたの?」
「だって…////」
中性的な容姿と今までのエスコートに輝李が男児である事を疑わなかった瀾にとっては衝撃的な事だった。
「僕が男の子だったら、いくら看病でも女の子の瀾ちゃんの身体を拭いたりしないし、看護師さんに頼むよ」
「あ…そうです…よね…」
途端に瀾が少し俯いて、返事をするが表情に何処か陰を落とした。
そんな瀾の雰囲気を壊すように、輝李は笑顔で瀾の服を強引に脱がせた。
「さぁ!!瀾ちゃんの為に用意したんだから、早く脱いで脱いで♪」
「きゃ//輝李さん///」
そのいつもと変わらない輝李の明るさに瀾は、慌てながらも半ば強引にバスルームへ手を取られていく。
始めは恥ずかしがって、ずっと俯いていた瀾だったが、輝李の気遣いもあってか、やがて初めての泡風呂に2人ではしゃいで泡を吹いてみたり、身体を流しあったりといつもの2人に戻っていた。
ポチャン…
天上の水滴が湯槽の中へ吸い込まれ、ゆっくり浸かりながら瀾は、輝李に静かに話し掛けた。
「輝李さん…」
「何?」
「輝李さんはどうして、退院後もこんなに私に親切にしてくれるんですか?」
「…迷惑?」
「そ、そんなことありません!!
ただ…どうしてかなって…」
「前にも言ったでしょ。
僕がそうしたいからだって」
輝李の優しい声に瀾は、静かに続けた。
「…実は私、入院していた頃から、ずっと同じ夢を見るんです…」
「…夢?」
「…はい。その時、いつも私は暗い空間の中にいるんです。
目の前に誰か居て、私の名前を呼んでいて…でもいつもシルエットしか見えなくて、それが誰なのか解らない。
でも、それが私にとって、とても大切な人のような気がするんです。
手を伸ばそうとすると、目が覚めてしまう…」
「…そう」
輝李は微かに目を伏せた。
瀾は、俯き輝李に口を開き続ける。
「私、いつも考えてました。
輝李さんはどうして親切にしてくれるのか…。
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私の記憶の事…!!」
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「…どうして、そう思うの?」
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「…だって…やっぱりおかしいです。
倒れた私を運んで看病してくれて…
退院してもこんなにしてくれるなんて…」
「……」
「もしかして、記憶を失う前の私を知っていて…それで…」
「…それで?」
「私、ずっと輝李さんの事考えると、動機が止まらなくて何でなんだろうって思ってました。
キスをしたのに輝李さんが女の人だって解った時も、その事に抵抗すらなかった…。
教えて下さい!!私の大切な人って、もしかして…!!」
瀾の動機の原因は多分、輝李に受けた恐怖感からだろう。
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「お帰り…瀾ちゃん…」
0
小説が音声と映像で流れ出す!?
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
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