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痛みの代償
痛みの代償4
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──瀾と出かけて何日か経ったある日だった。
輝李は、リビングのテーブルに一枚のプリントを見つけて目を通す。
「あ…、ヤバ…!! 忘れてた。
レポート出さなきゃいけなかったんだっけ。
仕方ないなぁ、久々に学院に戻りますか」
そう言うと、マンションを出て学院の資料書庫室へと向かった。
幾つかの書物を手に取ると、ふと考え込んだ。
『…やっぱ、寮に帰らないとマズイよね…。
寮長の先生には内密に寮の長期利用休暇の届けを出したけど、そろそろ寮生に足が着く頃かも…』
フゥと溜め息をつくと、そのまま寮の方へと足をのばす。
さすがに夏休みとあって、寮生達はほとんど居ない。
しかし、疎らにいる寮生に自分の存在を見られていれば下手に怪しまれる事もないだろう。
階段を登り部屋に向っている途中で背後から誰かに声をかけられた。
「輝李ちゃん!!」
「?」
その声に振り向くと、駆け寄って来たのは木田 神流だった。
「ハァハァ…良かった。
輝李ちゃんは帰ってなかったんだな。
探してたんだ、ハァハァ…」
「…どうしたの?慌てて…」
神流は今朝、乙が学食で倒れ、部屋で寝込んでいる乙の様子を話した。
(『アールグレイの昼下がり』参照)
「乙が風邪…」
「…うん。本当はこんな事、今の輝李ちゃんに頼むのは凄く酷な事だって解ってるんだ。
乙と何かあったんだろ…?
最近、寮でも余り見かけないし、部屋に籠もっているみたいだって聞いていたから…」
「……」
「私が居てあげれれば良いんだけど、帰らなきゃいけないんだ…。
乙も輝李ちゃんもファンの子が多いし、他の子に頼むわけにもいかなくて」
「…解った…」
輝李は、少し辛そうな顔を見せる。
当然の事だ。
あの時の乙の顔は…
痛みは、未だに輝李の中で鮮明に残っているのだから。
神流も辛そうに口を開く。
「ごめんね…輝李ちゃん…」
「ううん、気にしないで…。
大丈夫!!
僕達…姉妹だもん、こんな事で途切れたりしないから」
輝李の見せた笑顔は何処か痛々しく哀しげに神流の目には映ったのだった。
神流と別れると、輝李は乙の部屋に向かった。
部屋の中は空気が籠もり少し淀んでいるように感じる。
ベッドルームへ行くと乙が苦しそうに息を荒げていた。
輝李はそっと首元に触れると、その熱さに溜め息をつく。
「乙…」
「ハァハァ…ハァハァ…」
胸の痛みが輝李を襲った。
輝李は少し目を伏せると静かに言った。
「苦しそうだね…」
「ハァハァ…輝・・李…?
何で…ここに…ハァハァ」
「木田さんに頼まれたから…」
苦しそうに虚ろな眼差しで見つめる乙は力なく息を荒くしていた。
「…薬は飲んだわけ?」
「…ハァハァ…ま…ハァハァ」
言葉も覚束ない乙に輝李は、大きな溜め息をつくと薬を自分の口に入れて水を含み、乙に顔を近付ける。
「や…めろ…」
不意に顔を反らした乙の抵抗に、輝李は含んでいた薬を飲み込んでしまった。
途端に輝李の眉間にイラッと皺が走り、乙の両脇に手を着いた。
「ちょっと!!
薬くらい大人しく飲んだらどう?
聞き分けがないなら座薬を無理矢理押し込むよ!!
…子供じゃないんだから手間とらせないでくれるかな…」
「……ハァハァ」
冷やかな輝李の言葉に、やっと大人しくなった乙に薬を再び移した。
薬を飲ませ終わると、輝李は新しいタオルと水枕を医務室から持ってきて乙の頭に置き、冷たいタオルを額に当てた。
「少し…眠ったほうが良いよ…
僕、ここでレポート書いてるから何かあったら呼んで…」
素っ気なく資料の書物に目を落とす輝李に、乙は小さく口を開いた。
「輝李…ごめん…」
「…何が?」
「…ハァハァ」
言葉をつぐんた乙に、輝李は静かに言葉をついた。
「あの時の事を言ってるの?
…乙が判断して下した事でしょ。
なら、自分の判断にプライドを持ったらどうなの?
それとも、謝らなきゃいけない様な事だったわけ?
…下らない事言ってる暇があるなら、さっさと風邪治して!!」
「…ああ」
その後、乙は静かに眠りについた。
俯いた輝李の頬には一筋の雫が流れる。
「…馬鹿…
優しくなんて…しないでよ…。
僕は、謝ってもらう資格なんてないんだ…。
これから乙をまた傷付けてしまうのに…
僕に優しくなんか…」
乙を見つめる輝李の顔は、哀しく辛く…
必死に堪えている代わりに、その瞳からは大粒の涙がそれを補うようにとめどなく溢れていた。
輝李は乙を見つめ、小さく口を突いた。
「前にもこんな事があったっけ…」
──昔、輝李達が、まだ押さなかった頃も同じ事があった。
乙は幼い頃、夏風邪を毎年ひく子供だった。
それは母が生きていた、2人がまだ小さな時だった。
「ケホ…ケホ…ハァハァ…」
「乙…大丈夫?」
風邪を引いた乙のベッドの横で、頭をポフンとついて輝李は、乙を心配そうに見つめている。
「ケホケホ…輝李、こんな所に来ちゃ駄目だろう…ケホ…」
「どうして?」
「風邪が移ったら…どうするんだよ…ケホ、ハァハァ…」
「大丈夫だよ、私移らないもん♪」
部屋に来るたびにメイドに叱られて追い出されていたが、懲りずに乙の部屋にやって来ては、花壇で積んだ花やおやつの残りを持ってお見舞いに来る。
夜には、メイドの目を盗んで乙の部屋に忍び込み乙の手を握って一緒に寝ていた。
しかしその後、乙が治ると必ず風邪が移って自分が寝込んでは、乙が見舞いに来ていたのだ。
「だから言っただろ!!仕方ないなぁ」
「だって、移らないと思ったし、乙が心配だったんだもん!!ケホ…」
乙は溜め息をついたが、いつも優しい笑顔で時折、輝李の手を握りながら輝李の部屋で勉強をしていた…───
「…輝李…」
「…何?」
応えたが反応がない。
見ると乙は、眠りながら言葉をついた。
輝李は慈しむ眼差しで、乙の手にそっと手を重ねると乙は力なく握りながら、また静かに眠った。
「…馬鹿…」
乙が眠りに就いてしばらく経ち、レポートを書きながら、ふと息苦しさにうなされている乙を見る。
輝李は窓を少し開けて空気の入れ替えをすると、汗を滲ませている乙の頬と首元を撫でて額にタオルを置いた。
乙が目を微かに開けると、輝李は心配そうな弱々しい笑顔を浮かべた。
その顔は亡き母の笑顔と重なったのだろうか…。
「…かあ…さん…?」
「残念でした、僕だよ…」
「輝李…悪い…」
「別に。親子だもん、似てて当たり前でしょ」
「輝李は…母さん似だもんな…」
「ハァ…身体の調子はどう?」
「ん…間接が…痛い…」
薬を飲んだので話せる程度になっているが、乙は相変わらずグッタリとして呼吸が荒い。
「汗かいたみたいだね。
着替えないと…
ちょっと待ってて、着替え持ってくるから…」
着替えと、お湯の入ったたらいを持って来ると輝李は口を開く。
「身体拭くから、上脱がすよ?」
「…ああ」
輝李の無駄の無い動きに、乙が口をついた。
「お前…手際が良いな…」
「……別に」
輝李は、この間まで瀾の看病で身体を拭いていたのだから、お手のものだった。
乙の言葉にそっけなく答えると乙の身体を支え、サクサクと背中も拭いてゆく。
やがて輝李が乙のズボンと下着に手をかけた。
「ハァハァ…輝李…そこはいい…から」
その言葉に輝李は途端にムッとして言い返した。
「何言ってんの!!
恥ずかしがってる場合じゃないでしょ!!
こんなに汗かいてるのに、ちゃんと取り替えないと気持ち悪いんじゃないの?
それに濡れたままの着けて、お腹冷やしたら治るものも治らないよ!!
ワガママ言わないで!!」
「……」
真剣な眼差しに思わず、乙が黙り込むと仕方なく輝李に身を任せる。
着替えの上のパジャマを着せ、寝かされるとあっという間に下も脱がし、乙は少し顔を背けた。
片膝ずつふくらはぎや足の全体を拭かれ、内腿に差し掛かる。
輝李は、タオルを絞りながら真剣な眼差しで丁寧に拭いている。
両足を吹き終わり、輝李がまたタオルを絞り、乙の陰部にタオルを滑らせた時だった。
「ッ!!!」
突然、乙がビクリと身体を反応させ、眉間に皺が寄る。
途端に輝李はビックリして手を離した。
「ゴメン!!熱かった?」
「…ッ…ハァハァ…いや…大丈夫…だ」
少し心配そうに輝李は乙を見つめたが、またタオルを絞り今度は少し冷ましてから先程の所に手を滑らせる。
乙は呼吸を荒くしながらも眉間に皺を寄せ、懸命に身体を拭く輝李に何かを悟られまいと耐えていた。
「ハァハァ…ハァハァ…ッ…」
「乙、身体辛いよね…
すぐ済ませるから…」
しかし、輝李の言葉も虚ろに息を荒くして聞いているようだ。
人肌に温められたタオルで身体が冷える前にと、一生懸命にしていると乙に異変が起きた。
「ハァハァ…ッンッ…ンアアッ///」
「なっ!!!」
大きくビクッ、ビクンと身体を跳ねさせるとくたりと果て、さらに呼吸を荒くしている。
突然、耳に入った初めて聴く乙の甘い声と反応に、輝李も身体を跳ねさせてビックリして乙に視線を向けた。
「ちょっと!!
へ、変な声出さないでよ!!」
「ハァハァ…///」
「乙?」
恥ずかしさに身体を微かに震わせて、苦しい表情と潤んだ瞳で呼吸を荒くしている乙に、輝李は困惑している。
どこか見覚えのある反応に輝李は、少し考え込みながら問い掛けた。
「乙…もしかして…」
「……ッ///」
途端に乙はプイっと顔を反らし、様子がおかしいのは明らかだった。
輝李は、リビングのテーブルに一枚のプリントを見つけて目を通す。
「あ…、ヤバ…!! 忘れてた。
レポート出さなきゃいけなかったんだっけ。
仕方ないなぁ、久々に学院に戻りますか」
そう言うと、マンションを出て学院の資料書庫室へと向かった。
幾つかの書物を手に取ると、ふと考え込んだ。
『…やっぱ、寮に帰らないとマズイよね…。
寮長の先生には内密に寮の長期利用休暇の届けを出したけど、そろそろ寮生に足が着く頃かも…』
フゥと溜め息をつくと、そのまま寮の方へと足をのばす。
さすがに夏休みとあって、寮生達はほとんど居ない。
しかし、疎らにいる寮生に自分の存在を見られていれば下手に怪しまれる事もないだろう。
階段を登り部屋に向っている途中で背後から誰かに声をかけられた。
「輝李ちゃん!!」
「?」
その声に振り向くと、駆け寄って来たのは木田 神流だった。
「ハァハァ…良かった。
輝李ちゃんは帰ってなかったんだな。
探してたんだ、ハァハァ…」
「…どうしたの?慌てて…」
神流は今朝、乙が学食で倒れ、部屋で寝込んでいる乙の様子を話した。
(『アールグレイの昼下がり』参照)
「乙が風邪…」
「…うん。本当はこんな事、今の輝李ちゃんに頼むのは凄く酷な事だって解ってるんだ。
乙と何かあったんだろ…?
最近、寮でも余り見かけないし、部屋に籠もっているみたいだって聞いていたから…」
「……」
「私が居てあげれれば良いんだけど、帰らなきゃいけないんだ…。
乙も輝李ちゃんもファンの子が多いし、他の子に頼むわけにもいかなくて」
「…解った…」
輝李は、少し辛そうな顔を見せる。
当然の事だ。
あの時の乙の顔は…
痛みは、未だに輝李の中で鮮明に残っているのだから。
神流も辛そうに口を開く。
「ごめんね…輝李ちゃん…」
「ううん、気にしないで…。
大丈夫!!
僕達…姉妹だもん、こんな事で途切れたりしないから」
輝李の見せた笑顔は何処か痛々しく哀しげに神流の目には映ったのだった。
神流と別れると、輝李は乙の部屋に向かった。
部屋の中は空気が籠もり少し淀んでいるように感じる。
ベッドルームへ行くと乙が苦しそうに息を荒げていた。
輝李はそっと首元に触れると、その熱さに溜め息をつく。
「乙…」
「ハァハァ…ハァハァ…」
胸の痛みが輝李を襲った。
輝李は少し目を伏せると静かに言った。
「苦しそうだね…」
「ハァハァ…輝・・李…?
何で…ここに…ハァハァ」
「木田さんに頼まれたから…」
苦しそうに虚ろな眼差しで見つめる乙は力なく息を荒くしていた。
「…薬は飲んだわけ?」
「…ハァハァ…ま…ハァハァ」
言葉も覚束ない乙に輝李は、大きな溜め息をつくと薬を自分の口に入れて水を含み、乙に顔を近付ける。
「や…めろ…」
不意に顔を反らした乙の抵抗に、輝李は含んでいた薬を飲み込んでしまった。
途端に輝李の眉間にイラッと皺が走り、乙の両脇に手を着いた。
「ちょっと!!
薬くらい大人しく飲んだらどう?
聞き分けがないなら座薬を無理矢理押し込むよ!!
…子供じゃないんだから手間とらせないでくれるかな…」
「……ハァハァ」
冷やかな輝李の言葉に、やっと大人しくなった乙に薬を再び移した。
薬を飲ませ終わると、輝李は新しいタオルと水枕を医務室から持ってきて乙の頭に置き、冷たいタオルを額に当てた。
「少し…眠ったほうが良いよ…
僕、ここでレポート書いてるから何かあったら呼んで…」
素っ気なく資料の書物に目を落とす輝李に、乙は小さく口を開いた。
「輝李…ごめん…」
「…何が?」
「…ハァハァ」
言葉をつぐんた乙に、輝李は静かに言葉をついた。
「あの時の事を言ってるの?
…乙が判断して下した事でしょ。
なら、自分の判断にプライドを持ったらどうなの?
それとも、謝らなきゃいけない様な事だったわけ?
…下らない事言ってる暇があるなら、さっさと風邪治して!!」
「…ああ」
その後、乙は静かに眠りについた。
俯いた輝李の頬には一筋の雫が流れる。
「…馬鹿…
優しくなんて…しないでよ…。
僕は、謝ってもらう資格なんてないんだ…。
これから乙をまた傷付けてしまうのに…
僕に優しくなんか…」
乙を見つめる輝李の顔は、哀しく辛く…
必死に堪えている代わりに、その瞳からは大粒の涙がそれを補うようにとめどなく溢れていた。
輝李は乙を見つめ、小さく口を突いた。
「前にもこんな事があったっけ…」
──昔、輝李達が、まだ押さなかった頃も同じ事があった。
乙は幼い頃、夏風邪を毎年ひく子供だった。
それは母が生きていた、2人がまだ小さな時だった。
「ケホ…ケホ…ハァハァ…」
「乙…大丈夫?」
風邪を引いた乙のベッドの横で、頭をポフンとついて輝李は、乙を心配そうに見つめている。
「ケホケホ…輝李、こんな所に来ちゃ駄目だろう…ケホ…」
「どうして?」
「風邪が移ったら…どうするんだよ…ケホ、ハァハァ…」
「大丈夫だよ、私移らないもん♪」
部屋に来るたびにメイドに叱られて追い出されていたが、懲りずに乙の部屋にやって来ては、花壇で積んだ花やおやつの残りを持ってお見舞いに来る。
夜には、メイドの目を盗んで乙の部屋に忍び込み乙の手を握って一緒に寝ていた。
しかしその後、乙が治ると必ず風邪が移って自分が寝込んでは、乙が見舞いに来ていたのだ。
「だから言っただろ!!仕方ないなぁ」
「だって、移らないと思ったし、乙が心配だったんだもん!!ケホ…」
乙は溜め息をついたが、いつも優しい笑顔で時折、輝李の手を握りながら輝李の部屋で勉強をしていた…───
「…輝李…」
「…何?」
応えたが反応がない。
見ると乙は、眠りながら言葉をついた。
輝李は慈しむ眼差しで、乙の手にそっと手を重ねると乙は力なく握りながら、また静かに眠った。
「…馬鹿…」
乙が眠りに就いてしばらく経ち、レポートを書きながら、ふと息苦しさにうなされている乙を見る。
輝李は窓を少し開けて空気の入れ替えをすると、汗を滲ませている乙の頬と首元を撫でて額にタオルを置いた。
乙が目を微かに開けると、輝李は心配そうな弱々しい笑顔を浮かべた。
その顔は亡き母の笑顔と重なったのだろうか…。
「…かあ…さん…?」
「残念でした、僕だよ…」
「輝李…悪い…」
「別に。親子だもん、似てて当たり前でしょ」
「輝李は…母さん似だもんな…」
「ハァ…身体の調子はどう?」
「ん…間接が…痛い…」
薬を飲んだので話せる程度になっているが、乙は相変わらずグッタリとして呼吸が荒い。
「汗かいたみたいだね。
着替えないと…
ちょっと待ってて、着替え持ってくるから…」
着替えと、お湯の入ったたらいを持って来ると輝李は口を開く。
「身体拭くから、上脱がすよ?」
「…ああ」
輝李の無駄の無い動きに、乙が口をついた。
「お前…手際が良いな…」
「……別に」
輝李は、この間まで瀾の看病で身体を拭いていたのだから、お手のものだった。
乙の言葉にそっけなく答えると乙の身体を支え、サクサクと背中も拭いてゆく。
やがて輝李が乙のズボンと下着に手をかけた。
「ハァハァ…輝李…そこはいい…から」
その言葉に輝李は途端にムッとして言い返した。
「何言ってんの!!
恥ずかしがってる場合じゃないでしょ!!
こんなに汗かいてるのに、ちゃんと取り替えないと気持ち悪いんじゃないの?
それに濡れたままの着けて、お腹冷やしたら治るものも治らないよ!!
ワガママ言わないで!!」
「……」
真剣な眼差しに思わず、乙が黙り込むと仕方なく輝李に身を任せる。
着替えの上のパジャマを着せ、寝かされるとあっという間に下も脱がし、乙は少し顔を背けた。
片膝ずつふくらはぎや足の全体を拭かれ、内腿に差し掛かる。
輝李は、タオルを絞りながら真剣な眼差しで丁寧に拭いている。
両足を吹き終わり、輝李がまたタオルを絞り、乙の陰部にタオルを滑らせた時だった。
「ッ!!!」
突然、乙がビクリと身体を反応させ、眉間に皺が寄る。
途端に輝李はビックリして手を離した。
「ゴメン!!熱かった?」
「…ッ…ハァハァ…いや…大丈夫…だ」
少し心配そうに輝李は乙を見つめたが、またタオルを絞り今度は少し冷ましてから先程の所に手を滑らせる。
乙は呼吸を荒くしながらも眉間に皺を寄せ、懸命に身体を拭く輝李に何かを悟られまいと耐えていた。
「ハァハァ…ハァハァ…ッ…」
「乙、身体辛いよね…
すぐ済ませるから…」
しかし、輝李の言葉も虚ろに息を荒くして聞いているようだ。
人肌に温められたタオルで身体が冷える前にと、一生懸命にしていると乙に異変が起きた。
「ハァハァ…ッンッ…ンアアッ///」
「なっ!!!」
大きくビクッ、ビクンと身体を跳ねさせるとくたりと果て、さらに呼吸を荒くしている。
突然、耳に入った初めて聴く乙の甘い声と反応に、輝李も身体を跳ねさせてビックリして乙に視線を向けた。
「ちょっと!!
へ、変な声出さないでよ!!」
「ハァハァ…///」
「乙?」
恥ずかしさに身体を微かに震わせて、苦しい表情と潤んだ瞳で呼吸を荒くしている乙に、輝李は困惑している。
どこか見覚えのある反応に輝李は、少し考え込みながら問い掛けた。
「乙…もしかして…」
「……ッ///」
途端に乙はプイっと顔を反らし、様子がおかしいのは明らかだった。
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