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痛みの代償
痛みの代償3
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次の日、輝李は瀾を誘い、街へと繰り出した。
勿論、瀾の口に合う紅茶を探すためだ。
少し緊張気味に怯える瀾の手を取り、街を歩く。
雑貨屋やファンシーショップを堪能して、瀾の視線が一つのぬいぐるみに止まった。
輝李は、瀾に笑顔を送るとその少し大きなテディベアをヒョイと抱っこして店員に声をかけ、瀾にプレゼントした。
瀾は少しビックリしながらも、嬉しそうにあどけない笑顔を輝李に返した。
紅茶のショップに行くと2人で一つ一つをテイスティングし、瀾に合う紅茶を買った。
アプリコットティーと他にも気に入ったいくつかを購入して、休憩のために喫茶店に立ち寄った。
「中は結構混んでるみたい。
瀾ちゃん、カフェテラスでもいいかな?
人が沢山いると怖いでしょ?」
「…はい//ありがとうございます」
飲み物と軽い軽食を頼むと、飲み物は意外にもすぐにやってきた。
「疲れたでしょ?体調は大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「良かった♪」
「あの…今日は、本当にありがとうございました。
私、輝李さんに色々して貰って…服や帽子まで…」
瀾が俯き、膝の上のテディベアを持つ手にキュッと力が入る。
輝李は、柔らかい笑顔を瀾に送ると言葉を送る。
「良いんだよ、気にしないで。
僕は瀾ちゃんとこうして、お出かけ出来ただけで凄く嬉しいんだ」
「…わ、私…も///」
「クスクス…嬉しい♪」
輝李が屈託のない笑顔を瀾に送った時だった。
此方に送られている視線の気配に気がついた。
紅茶を口にしながら一瞬、目の端で気配のする方に注意を払うと、そこの先には木田 神流と乙が一緒に居る。
『…チッ、何でこんな所に!!』
カップを静かに置くと輝李は、テディベアを嬉しそうに見つめる瀾に優しく声をかけた。
「瀾ちゃん…」
「はい? …!!」
瀾が顔を上げた途端に態勢を前に出し、自分の唇を瀾の唇に重ねた。
突然の事にビックリして瀾は目を見開き、時折パチパチとしていたがキスの事実を認識すると一気に顔を赤くしてギュッと目を閉じ、プルプルと震えていた。
輝李は目を閉じた瀾を見ながら、意識は神流達の方を向け、ずっと立ち去るのを待ったのだった。
乙達がその場をあとにすると、しばらくして輝李は電話で足森を呼び、車でマンションへと帰宅する。
その間、瀾は俯いたまま口を開く事はなかった。
マンションに着いて瀾がソファーに座っている。
輝李は、チラリと瀾を見ると口を開いた。
「瀾ちゃん、疲れちゃった?」
「…ぃぃぇ」
俯いたまま、瀾が小さく答えた。
『ハァ、面倒くさいなぁ…』
輝李は、小さくフッと鼻で溜め息をつくと瀾の隣に静かに座った。
途端に瀾の身体が微かにビクッと反応した。
輝李は優しく、少し申し訳なさそうに瀾を覗きこんだ。
「瀾ちゃん…?」
「…はぃ…」
「もしかしてオープンカフェで僕がキスした事…怒ってる?」
瀾は、俯いたままフルフルと首を振ったが、輝李はそんな瀾にさらに心配そうに尋ねた。
「でも…あれから、ずっと元気ないし話してくれないから…。
もしかして僕、瀾ちゃんの事を傷つけたんじゃないかって…。
でも当然だよね。
まだ会って間もないのに…
僕、皆が見ているのにあんな事しちゃって…。
瀾ちゃんに嫌われても仕方ないよね…」
「そ、そんな事…」
瀾は、ギュッとテディベアを抱く手に力が入った。
2人の間に気まずい小さな沈黙が流れた。
沈黙の中、瀾は小さく口を開く。
「…わ、私…」
「ん?何?」
輝李が優しく聞くと、微かに身体を震わせながら瀾は続けた。
「わ、私…あれから何だかおかしくて…。
輝李さんの顔を…見れなくて…私…」
「瀾ちゃん…僕が怖い?」
瀾はやっと少し顔を上げた。
「私…あれから、ずっと顔が熱くて…
あの時の事考えると胸が変にドキドキして…
そしたら輝李さんの顔…見れなくなって…」
「…え?」
輝李が瀾の頬にそっと手を添えて自分の方を向かせると、瀾の顔は赤く高揚し、その瞳は戸惑いと恥ずかしさと熱にウルウルと潤っていた。
「瀾ちゃん?」
「こんな顔してるの…恥ずかしくて見られたくなくて…」
輝李は、瀾の言葉に少しビックリした様子だったが、いつもの突発さはなく、優しく瀾を抱き締めた。
「あ…///」
「…良かった…
僕、てっきり瀾ちゃんに嫌われたのかと思って…」
瀾から身体を離すとフワリと包むような笑顔を向け言葉をついた。
「瀾ちゃん…///
もう一回…キスしてもいい?」
瀾は少し恥ずかしそうにコクンと頷くと、輝李の唇は優しくゆっくり唇を重ねた。
まるで夢の中に居るような甘く、溶けるようなキスに瀾は、その柔かな輝李の唇を感じていた。
それからの2人の時間は、ゆったりと甘く流れた。
食事の準備も2人でし、瀾に味見させながら、たまに少し目が合えばキスをして…。
食卓の時は、仲睦まじく食べさせ合いっこをしては、笑顔の絶えない付き合いたての恋人同士のように甘い時間が2人の限られた時間を刻んでゆく。
仮退院は3日…。
瀾にとって、この3日間はこの上なく柔らかであっという間の時間だった。
再び2人で病院に戻り、病室に着くと瀾の淋しさは一入だった。
仮退院からの影響がないか検査を一通りしてる時も輝李は瀾の傍に居た。
輝李が帰宅するため病室から出る時、瀾は捨てられる子猫のような眼差しを送る。
輝李は、瀾の頭を撫でて笑顔のまま瀾を言い聞かせる。
「検査の結果が出て何もなければ、すぐ帰ってこられるから、それまでの辛抱だよ」
「はい…」
「それまで、いい子にしてて。
僕も凄く淋しいよ。
ほら、元気になるおまじない♪」
輝李はそう言うと瀾の額に優しくキスをした。
瀾は、輝李のキスにやっと笑顔でコクリと頷いた。
その返事に笑顔を送ると輝李は病室を後にした。
勿論、瀾の口に合う紅茶を探すためだ。
少し緊張気味に怯える瀾の手を取り、街を歩く。
雑貨屋やファンシーショップを堪能して、瀾の視線が一つのぬいぐるみに止まった。
輝李は、瀾に笑顔を送るとその少し大きなテディベアをヒョイと抱っこして店員に声をかけ、瀾にプレゼントした。
瀾は少しビックリしながらも、嬉しそうにあどけない笑顔を輝李に返した。
紅茶のショップに行くと2人で一つ一つをテイスティングし、瀾に合う紅茶を買った。
アプリコットティーと他にも気に入ったいくつかを購入して、休憩のために喫茶店に立ち寄った。
「中は結構混んでるみたい。
瀾ちゃん、カフェテラスでもいいかな?
人が沢山いると怖いでしょ?」
「…はい//ありがとうございます」
飲み物と軽い軽食を頼むと、飲み物は意外にもすぐにやってきた。
「疲れたでしょ?体調は大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「良かった♪」
「あの…今日は、本当にありがとうございました。
私、輝李さんに色々して貰って…服や帽子まで…」
瀾が俯き、膝の上のテディベアを持つ手にキュッと力が入る。
輝李は、柔らかい笑顔を瀾に送ると言葉を送る。
「良いんだよ、気にしないで。
僕は瀾ちゃんとこうして、お出かけ出来ただけで凄く嬉しいんだ」
「…わ、私…も///」
「クスクス…嬉しい♪」
輝李が屈託のない笑顔を瀾に送った時だった。
此方に送られている視線の気配に気がついた。
紅茶を口にしながら一瞬、目の端で気配のする方に注意を払うと、そこの先には木田 神流と乙が一緒に居る。
『…チッ、何でこんな所に!!』
カップを静かに置くと輝李は、テディベアを嬉しそうに見つめる瀾に優しく声をかけた。
「瀾ちゃん…」
「はい? …!!」
瀾が顔を上げた途端に態勢を前に出し、自分の唇を瀾の唇に重ねた。
突然の事にビックリして瀾は目を見開き、時折パチパチとしていたがキスの事実を認識すると一気に顔を赤くしてギュッと目を閉じ、プルプルと震えていた。
輝李は目を閉じた瀾を見ながら、意識は神流達の方を向け、ずっと立ち去るのを待ったのだった。
乙達がその場をあとにすると、しばらくして輝李は電話で足森を呼び、車でマンションへと帰宅する。
その間、瀾は俯いたまま口を開く事はなかった。
マンションに着いて瀾がソファーに座っている。
輝李は、チラリと瀾を見ると口を開いた。
「瀾ちゃん、疲れちゃった?」
「…ぃぃぇ」
俯いたまま、瀾が小さく答えた。
『ハァ、面倒くさいなぁ…』
輝李は、小さくフッと鼻で溜め息をつくと瀾の隣に静かに座った。
途端に瀾の身体が微かにビクッと反応した。
輝李は優しく、少し申し訳なさそうに瀾を覗きこんだ。
「瀾ちゃん…?」
「…はぃ…」
「もしかしてオープンカフェで僕がキスした事…怒ってる?」
瀾は、俯いたままフルフルと首を振ったが、輝李はそんな瀾にさらに心配そうに尋ねた。
「でも…あれから、ずっと元気ないし話してくれないから…。
もしかして僕、瀾ちゃんの事を傷つけたんじゃないかって…。
でも当然だよね。
まだ会って間もないのに…
僕、皆が見ているのにあんな事しちゃって…。
瀾ちゃんに嫌われても仕方ないよね…」
「そ、そんな事…」
瀾は、ギュッとテディベアを抱く手に力が入った。
2人の間に気まずい小さな沈黙が流れた。
沈黙の中、瀾は小さく口を開く。
「…わ、私…」
「ん?何?」
輝李が優しく聞くと、微かに身体を震わせながら瀾は続けた。
「わ、私…あれから何だかおかしくて…。
輝李さんの顔を…見れなくて…私…」
「瀾ちゃん…僕が怖い?」
瀾はやっと少し顔を上げた。
「私…あれから、ずっと顔が熱くて…
あの時の事考えると胸が変にドキドキして…
そしたら輝李さんの顔…見れなくなって…」
「…え?」
輝李が瀾の頬にそっと手を添えて自分の方を向かせると、瀾の顔は赤く高揚し、その瞳は戸惑いと恥ずかしさと熱にウルウルと潤っていた。
「瀾ちゃん?」
「こんな顔してるの…恥ずかしくて見られたくなくて…」
輝李は、瀾の言葉に少しビックリした様子だったが、いつもの突発さはなく、優しく瀾を抱き締めた。
「あ…///」
「…良かった…
僕、てっきり瀾ちゃんに嫌われたのかと思って…」
瀾から身体を離すとフワリと包むような笑顔を向け言葉をついた。
「瀾ちゃん…///
もう一回…キスしてもいい?」
瀾は少し恥ずかしそうにコクンと頷くと、輝李の唇は優しくゆっくり唇を重ねた。
まるで夢の中に居るような甘く、溶けるようなキスに瀾は、その柔かな輝李の唇を感じていた。
それからの2人の時間は、ゆったりと甘く流れた。
食事の準備も2人でし、瀾に味見させながら、たまに少し目が合えばキスをして…。
食卓の時は、仲睦まじく食べさせ合いっこをしては、笑顔の絶えない付き合いたての恋人同士のように甘い時間が2人の限られた時間を刻んでゆく。
仮退院は3日…。
瀾にとって、この3日間はこの上なく柔らかであっという間の時間だった。
再び2人で病院に戻り、病室に着くと瀾の淋しさは一入だった。
仮退院からの影響がないか検査を一通りしてる時も輝李は瀾の傍に居た。
輝李が帰宅するため病室から出る時、瀾は捨てられる子猫のような眼差しを送る。
輝李は、瀾の頭を撫でて笑顔のまま瀾を言い聞かせる。
「検査の結果が出て何もなければ、すぐ帰ってこられるから、それまでの辛抱だよ」
「はい…」
「それまで、いい子にしてて。
僕も凄く淋しいよ。
ほら、元気になるおまじない♪」
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瀾は、輝李のキスにやっと笑顔でコクリと頷いた。
その返事に笑顔を送ると輝李は病室を後にした。
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小説が音声と映像で流れ出す!?
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