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痛みの代償
痛みの代償2
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仮退院は3日間。
しばらく泣いていた瀾だったが、やがて落ち着いてくるとメインになるリビングルームでドクターの処方した薬と、パジャマや下着、歯ブラシ等を持ってきた紙袋から出して、輝李の用意してくれた部屋へと運んでいく。
恥ずかしそうに戸惑いながらも嬉しいそうに、いそいそと運ぶ瀾の姿に輝李は、柔かな笑顔を送っている。
瀾が、リビングルームに戻ってくると輝李は笑顔で話しかけた。
「支度は終わった?」
「はい、もう全部…あ…」
ふと紙袋を見ると一番下にまだ何か入っていた物を見つけ取り出した。
「これ…」
その途端に輝李の眉間が一瞬、微かに動いた。
紙袋に入っていたもの…
それは携帯電話。
以前、乙が瀾にプレゼントした携帯電話だったのだ。
(『アールグレイの昼下がり』参照)
不思議そうに携帯電話を見つめる瀾だったが、すぐに輝李に言葉を向ける。
「これ、輝李さんのですか?」
輝李は、静かに瀾の携帯に手を伸ばすと両手でその手を包んだ。
「これはね、瀾ちゃんの物だよ。
ちょっと貸してみて」
「? はい」
何の疑いもなく輝李に携帯を渡すと、輝李は携帯を開き、ボタンを押し始める。
「僕の番号とアドレス入れておくね♪」
チラリと視線だけ向けて笑顔を送ると、また携帯を素早く打ち始め、瀾の手の上に返した。
「はい、これでOK♪
これは僕から瀾ちゃんにプレゼント♪」
「え…? でも…」
少し戸惑い気味の瀾をリビングルームのソファーに座らせると、ソファーの後ろから瀾を抱き締めた。
「あ…///」
瀾は少し恥ずかしそうに俯き、携帯を見つめている。
「ごめんね…。
携帯の電話帳、まだ僕のしか入ってなくて…」
そう言うと、携帯をツーッと妖しく指でなぞる。
「い、いいえ…良いんです///」
少しはにかむ瀾に、ギュッと後から抱き締める。
輝李は口をついた。
「本当?良かった♪
きっと、そのうち増えるよ♪」
「はい♪」
「じゃあ、それまでは僕と2人だけの電話だね…//」
「…はい///」
顔を少し赤くして瀾は嬉しそうにはにかむ。
「何だか…嬉しいな…///」
背後から抱き締め、瀾の肩でコツンと少し照れ気味に微笑む輝輝李に、瀾は顔を赤らめた。
「わ、私…も…///」
その言葉に輝李は、さらに天使のような愛しむ柔らかい笑顔を送り瀾を見つめてた。
「クスクス…何だか照れちゃうね」
「////」
瀾は恥ずかしそうにコクンと頷くが、その顔は照れながらも可愛らしい少女の顔だった。
「そうだ♪ケーキ買ってあるんだ。
瀾ちゃんと一緒に食べようと思って。
今、お茶入れてくるね♪」
「あ、なら私もお手伝いします」
「いいの、いいの♪
瀾ちゃんはここで待ってて♪
すぐ戻って来るから♪」
輝李は、瀾の頬にチュッと優しくキスをすると瀾は恥ずかしそうに頷き、輝李がキッチンに歩いていくのを見送っている。
輝李は、キッチンに向うために瀾に背を向けると、ニヤリと鼻でほくそ笑んだ。
そして聞えない声で、小さく言ったのだ。
「…フッ
忘れてしまった女の番号なんか、もう必要ないだろう…」
実は、瀾の携帯には一件だけ登録があった。
まだ残っていたのだ。
乙の番号とアドレスが…!!
それを輝李は、登録を済ませる時に削除し、自分の番号とアドレスに書き替え渡していたのだ。
しばらくすると、輝李はトレイにシフォンケーキと紅茶のセットを持って戻って来た。
「はい、瀾ちゃん♪どうぞ」
「あ。ありがとうございます。
でも私、ケーキなんて食べて大丈夫なんでしょうか?」
輝李は、にこやか笑い瀾に優しく答えた。
「大丈夫だよ。
ココ最近は、病院食にも制限は無かったでしょ?
それに、もしあったとしてもドクターに聞いているから出さないし安心していいよ」
「はい」
輝李の笑顔に瀾も思わず笑顔になった。
輝李と過ごすティータイムは、瀾にどこか懐かしさと安らぎを与える。
「瀾ちゃん、お砂糖は?」
「あ、じゃあ…少しだけ…//」
「クス、じゃあ一杯入れるね。
紅茶何がいいか解らなくて、ダージリンにしたけど大丈夫だったかな?」
「はい…美味しいです」
瀾は、一口紅茶を口にすると輝李の言葉に答えた。
ケーキを食べ終えて、紅茶を楽しんでいた2人だったが不意に輝李は、瀾の手にそっと触れた。
「あ…///」
「瀾ちゃん。
今度、紅茶のお店に行ってみない?」
「紅茶の…お店、ですか?」
「そう。今日はダージリンを選んだんだけど、どうせなら瀾ちゃんに合うものを飲ませてあげたいんだ。
だから…今度、瀾ちゃんの好きな紅茶を探しに行こう」
「はい」
柔らかな輝李の笑顔に瀾は嬉しそうに答えた。
その返事を聴くと輝李は、瀾をギュッと抱き締める。
「本当!!良かったぁ♪」
「き、輝李さん///」
何に関してもオープンで、ストレートにアクションを起してくる輝李に、瀾は思わず赤面したがそれは決して嫌な感覚ではなかった。
むしろ瀾の不安も疑問も全て答えてくれる輝李に、好意さえ芽生えてしまう程に輝李の優しさは瀾に安らぎを与えた。
こうして、瀾の仮退院の1日目は終わった。
しばらく泣いていた瀾だったが、やがて落ち着いてくるとメインになるリビングルームでドクターの処方した薬と、パジャマや下着、歯ブラシ等を持ってきた紙袋から出して、輝李の用意してくれた部屋へと運んでいく。
恥ずかしそうに戸惑いながらも嬉しいそうに、いそいそと運ぶ瀾の姿に輝李は、柔かな笑顔を送っている。
瀾が、リビングルームに戻ってくると輝李は笑顔で話しかけた。
「支度は終わった?」
「はい、もう全部…あ…」
ふと紙袋を見ると一番下にまだ何か入っていた物を見つけ取り出した。
「これ…」
その途端に輝李の眉間が一瞬、微かに動いた。
紙袋に入っていたもの…
それは携帯電話。
以前、乙が瀾にプレゼントした携帯電話だったのだ。
(『アールグレイの昼下がり』参照)
不思議そうに携帯電話を見つめる瀾だったが、すぐに輝李に言葉を向ける。
「これ、輝李さんのですか?」
輝李は、静かに瀾の携帯に手を伸ばすと両手でその手を包んだ。
「これはね、瀾ちゃんの物だよ。
ちょっと貸してみて」
「? はい」
何の疑いもなく輝李に携帯を渡すと、輝李は携帯を開き、ボタンを押し始める。
「僕の番号とアドレス入れておくね♪」
チラリと視線だけ向けて笑顔を送ると、また携帯を素早く打ち始め、瀾の手の上に返した。
「はい、これでOK♪
これは僕から瀾ちゃんにプレゼント♪」
「え…? でも…」
少し戸惑い気味の瀾をリビングルームのソファーに座らせると、ソファーの後ろから瀾を抱き締めた。
「あ…///」
瀾は少し恥ずかしそうに俯き、携帯を見つめている。
「ごめんね…。
携帯の電話帳、まだ僕のしか入ってなくて…」
そう言うと、携帯をツーッと妖しく指でなぞる。
「い、いいえ…良いんです///」
少しはにかむ瀾に、ギュッと後から抱き締める。
輝李は口をついた。
「本当?良かった♪
きっと、そのうち増えるよ♪」
「はい♪」
「じゃあ、それまでは僕と2人だけの電話だね…//」
「…はい///」
顔を少し赤くして瀾は嬉しそうにはにかむ。
「何だか…嬉しいな…///」
背後から抱き締め、瀾の肩でコツンと少し照れ気味に微笑む輝輝李に、瀾は顔を赤らめた。
「わ、私…も…///」
その言葉に輝李は、さらに天使のような愛しむ柔らかい笑顔を送り瀾を見つめてた。
「クスクス…何だか照れちゃうね」
「////」
瀾は恥ずかしそうにコクンと頷くが、その顔は照れながらも可愛らしい少女の顔だった。
「そうだ♪ケーキ買ってあるんだ。
瀾ちゃんと一緒に食べようと思って。
今、お茶入れてくるね♪」
「あ、なら私もお手伝いします」
「いいの、いいの♪
瀾ちゃんはここで待ってて♪
すぐ戻って来るから♪」
輝李は、瀾の頬にチュッと優しくキスをすると瀾は恥ずかしそうに頷き、輝李がキッチンに歩いていくのを見送っている。
輝李は、キッチンに向うために瀾に背を向けると、ニヤリと鼻でほくそ笑んだ。
そして聞えない声で、小さく言ったのだ。
「…フッ
忘れてしまった女の番号なんか、もう必要ないだろう…」
実は、瀾の携帯には一件だけ登録があった。
まだ残っていたのだ。
乙の番号とアドレスが…!!
それを輝李は、登録を済ませる時に削除し、自分の番号とアドレスに書き替え渡していたのだ。
しばらくすると、輝李はトレイにシフォンケーキと紅茶のセットを持って戻って来た。
「はい、瀾ちゃん♪どうぞ」
「あ。ありがとうございます。
でも私、ケーキなんて食べて大丈夫なんでしょうか?」
輝李は、にこやか笑い瀾に優しく答えた。
「大丈夫だよ。
ココ最近は、病院食にも制限は無かったでしょ?
それに、もしあったとしてもドクターに聞いているから出さないし安心していいよ」
「はい」
輝李の笑顔に瀾も思わず笑顔になった。
輝李と過ごすティータイムは、瀾にどこか懐かしさと安らぎを与える。
「瀾ちゃん、お砂糖は?」
「あ、じゃあ…少しだけ…//」
「クス、じゃあ一杯入れるね。
紅茶何がいいか解らなくて、ダージリンにしたけど大丈夫だったかな?」
「はい…美味しいです」
瀾は、一口紅茶を口にすると輝李の言葉に答えた。
ケーキを食べ終えて、紅茶を楽しんでいた2人だったが不意に輝李は、瀾の手にそっと触れた。
「あ…///」
「瀾ちゃん。
今度、紅茶のお店に行ってみない?」
「紅茶の…お店、ですか?」
「そう。今日はダージリンを選んだんだけど、どうせなら瀾ちゃんに合うものを飲ませてあげたいんだ。
だから…今度、瀾ちゃんの好きな紅茶を探しに行こう」
「はい」
柔らかな輝李の笑顔に瀾は嬉しそうに答えた。
その返事を聴くと輝李は、瀾をギュッと抱き締める。
「本当!!良かったぁ♪」
「き、輝李さん///」
何に関してもオープンで、ストレートにアクションを起してくる輝李に、瀾は思わず赤面したがそれは決して嫌な感覚ではなかった。
むしろ瀾の不安も疑問も全て答えてくれる輝李に、好意さえ芽生えてしまう程に輝李の優しさは瀾に安らぎを与えた。
こうして、瀾の仮退院の1日目は終わった。
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小説が音声と映像で流れ出す!?
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
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