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MISSION
MISSION2
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──そんなある日
輝李が、いつものように学院の授業を終え、8-のデスクで焦りと苛立ちとともにファイルに目を通している時だった。
コンコン…
ドアのノックが聞こえ、輝李がファイルに目を落としたまま応える。
「なに?」
返答がない。
ここは、8-の事務所と言えど、表向きは大きなビルの会社になっている。
この社長室に入ってくる人物は限られていた。
輝李は、半ばため息をついてデスクから離れるとボヤキながらドアを開けた。
「足森?何か情ほ…」
しかし、そこに居たのはピザ屋のキャップを深く被った青年だった。
輝李は少しムッとしながら、ふてくされ気味に青年に口を開く。
「なに?何か用?」
「お届けの品を配達に参りました♪」
意外にも青年は明るく応える。
輝李はさらに怪訝そうに口を開く。
「僕、ピザなんか頼んでないんだけど…!!」
すると、青年の口の端が微かに上がり静かに言った。
「フッ、違いますよ…。
お届けする品は、こっちの方ですよ…」
青年が立っている反対側のドアが静かに開くと、そこには…!!
青年に身体を支えられ、立っているのがやっとの 由香と 野中 瀾が居たのだ。
「由佳!!!」
「輝…李…さま…」
それだけ言うと、輝李の方へ雪崩るように倒れこんだ。
「由佳!!しっかり!!由佳!!!
どうしたの!!いったいこれは!!」
見ると由佳は、身体中に傷を負っており、息も絶え絶えに口を開く。
「輝李…様…、遅くなっ…て…」
「もう良いよ!!喋らなくていい!!
早く病院へ…!!」
そこまで言うと輝李は、ある事に気が付きハッとした。
ここは社長室…
しかも小さなビルではない。
『一般の人間が、誰の案内もなしに社長室に来ている?
つまり誰にも発見されずに、ここまでどうやって…
しかも、これだけの手負いの人間を連れて…!!』
輝李は、ドアに視線を向け口を開く。
「アンタ、一体…!!」
しかし、さっきまで居たはずの青年は、その気配すら残さずにその場から居なくなっていた。
「…居ない…
アイツ、一体何者なんだ…」
「ウッ!!」
「ハッ!!由佳!!
…今はそんな事より2人を早く病院に!!」
その後、野中 瀾と由佳は病院へと搬送されたのは言うまでもない。
診断の結果、 由香は数十ヶ所の打撲と骨折、その他にも刃物で切り裂かれた様な傷という、決して軽いものではなかった。
しかし問題なのは、 野中 瀾の方だった。
特別治療室に 隔離され、身体中には無数の医療器具が取り付けられていた。
中毒症…
それが瀾の診断結果だった。
輝李は、瀾のベッドの脇の椅子に座り、そこに居る人形を見つめた。
病院は母も入院していた月影家と8-御用達の病院だ。
何があろうと明るみに出ることはない。
暫くすると、足森が病室に入って輝李に声をかけた。
「輝李様…」
「…ドラッグだ…
もう少し遅ければ手遅れだったそうだ。
薬の名前も解らない。
ちまたには、まだ出回っていない代物らしい」
「……」
「こいつは実験体に買われたんだ。
成分は今調べてもらってる。
…足森…」
「…心得ております。
早急に手配いたします」
足森が病室を出ると輝李は、鈍い光を瞳に映しポツリと呟いた。
「 小野崎… 宗一…!!」
2人が病院に運ばれた4日後、
由香の意識が戻った連絡を受けると、輝李は急いで病院へと駆け着けた。
ガラッ…
「由佳!!」
血相を変えて入って来た輝李に、由佳は力なく微笑みを返す。
「輝李様…」
「良かった!!
由佳が、このまま目を覚まさなかったらって思ったら…僕…僕っ!!」
輝李は由佳の手を握り、肩を震わせ瞳に涙をためていた。
由佳の手が輝李の頬を撫で笑顔で答える。
「大丈夫ですよ…。
私だって、ただではやられません…。
そんなに柔じゃありませんから」
「でも…」
「そんなにご自分を責めないで…
貴女は、8-のトップなのですから部下は、はいて捨てる程いると…お考えにならなくて…どうするんです…」
「由佳…ヒック…ウッ…」
「輝李様は、昔から変わらない…お優しい方ですね…」
そう言うと由佳は輝李の頭を撫でてた。
そして…輝李の涙は、しばらく晴れる事はなかった。
輝李が、いつものように学院の授業を終え、8-のデスクで焦りと苛立ちとともにファイルに目を通している時だった。
コンコン…
ドアのノックが聞こえ、輝李がファイルに目を落としたまま応える。
「なに?」
返答がない。
ここは、8-の事務所と言えど、表向きは大きなビルの会社になっている。
この社長室に入ってくる人物は限られていた。
輝李は、半ばため息をついてデスクから離れるとボヤキながらドアを開けた。
「足森?何か情ほ…」
しかし、そこに居たのはピザ屋のキャップを深く被った青年だった。
輝李は少しムッとしながら、ふてくされ気味に青年に口を開く。
「なに?何か用?」
「お届けの品を配達に参りました♪」
意外にも青年は明るく応える。
輝李はさらに怪訝そうに口を開く。
「僕、ピザなんか頼んでないんだけど…!!」
すると、青年の口の端が微かに上がり静かに言った。
「フッ、違いますよ…。
お届けする品は、こっちの方ですよ…」
青年が立っている反対側のドアが静かに開くと、そこには…!!
青年に身体を支えられ、立っているのがやっとの 由香と 野中 瀾が居たのだ。
「由佳!!!」
「輝…李…さま…」
それだけ言うと、輝李の方へ雪崩るように倒れこんだ。
「由佳!!しっかり!!由佳!!!
どうしたの!!いったいこれは!!」
見ると由佳は、身体中に傷を負っており、息も絶え絶えに口を開く。
「輝李…様…、遅くなっ…て…」
「もう良いよ!!喋らなくていい!!
早く病院へ…!!」
そこまで言うと輝李は、ある事に気が付きハッとした。
ここは社長室…
しかも小さなビルではない。
『一般の人間が、誰の案内もなしに社長室に来ている?
つまり誰にも発見されずに、ここまでどうやって…
しかも、これだけの手負いの人間を連れて…!!』
輝李は、ドアに視線を向け口を開く。
「アンタ、一体…!!」
しかし、さっきまで居たはずの青年は、その気配すら残さずにその場から居なくなっていた。
「…居ない…
アイツ、一体何者なんだ…」
「ウッ!!」
「ハッ!!由佳!!
…今はそんな事より2人を早く病院に!!」
その後、野中 瀾と由佳は病院へと搬送されたのは言うまでもない。
診断の結果、 由香は数十ヶ所の打撲と骨折、その他にも刃物で切り裂かれた様な傷という、決して軽いものではなかった。
しかし問題なのは、 野中 瀾の方だった。
特別治療室に 隔離され、身体中には無数の医療器具が取り付けられていた。
中毒症…
それが瀾の診断結果だった。
輝李は、瀾のベッドの脇の椅子に座り、そこに居る人形を見つめた。
病院は母も入院していた月影家と8-御用達の病院だ。
何があろうと明るみに出ることはない。
暫くすると、足森が病室に入って輝李に声をかけた。
「輝李様…」
「…ドラッグだ…
もう少し遅ければ手遅れだったそうだ。
薬の名前も解らない。
ちまたには、まだ出回っていない代物らしい」
「……」
「こいつは実験体に買われたんだ。
成分は今調べてもらってる。
…足森…」
「…心得ております。
早急に手配いたします」
足森が病室を出ると輝李は、鈍い光を瞳に映しポツリと呟いた。
「 小野崎… 宗一…!!」
2人が病院に運ばれた4日後、
由香の意識が戻った連絡を受けると、輝李は急いで病院へと駆け着けた。
ガラッ…
「由佳!!」
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「輝李様…」
「良かった!!
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由佳の手が輝李の頬を撫で笑顔で答える。
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