【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

傀儡姫

傀儡姫２

｢こちらも容姿はさる事ながら純真無垢で経験も浅い、主あるじの思いのままに色を染められる新作でございます。
要望を全て受け入れるDOLLか!?
自分色に調教自在なDOLLか!?
どちらも今回の目玉商品です!!
さぁ、Priceプライス!!｣

司会者の声が止まると観客達は、一斉に落札のサインを送る。
２人のDOLLの好感度と値段は、ほぼ互角だった。

輝李きりも間合いを見計らいサインを送る。
しかし、今一歩と言う所で他のサインが上がった。
輝李きりがサインを上げれば別のサインも上がる。
そうしている内にもタイムアップとなってしまった。


やがて２人の落札が決まりDOLLオークションは閉会した。

｢……｣

会場の片隅にいた、まだ若々しいある貴婦人はDOLLオークションが閉会するのを見届けると観客が会場を後にする前に、席を立ち静かにブロンドの髪を揺らし会場を後にした。


瀾なみを落札したのは、名のある富豪の主人だった。
しかし、この主人はあまり良い噂をきいたことがない人物だった。
己の欲の為には金と手段に糸目を付けず、ずる賢く。
ちまたでは〔ハイエナ男爵〕と呼ばれていたのだった。

サングラスを掛けたブロンドの貴婦人が会場を出ると、一台の高級車が待っていた。
ベルボーイが車のドアを開け、貴婦人が乗り込むと車は発進した。

｢いかがでしたか？｣

運転手の言葉にサングラスを外し、ブロンドの髪を引っ張ると輝李きりは答えた。

｢ｸｯ…ダメだ。
妙に食い付いた客がいた。
落札したのが誰だか解るか？｣
｢はい、データをそちらのパソコンに転送しておきました｣

そう答えた足森の言う通り、後部座席にはノートパソコンが置いてあり、輝李きりはデータに視線を落すと一言口をこぼした。

｢…なるほどね…。
ハイエナ男爵…
ﾌｯ…野中のなか 瀾なみを落札したのは小野崎おのざき 宗一そういち…
おおかた、自分の言いなりに調教した娘の代わりに落札したって所か…｣


【小野崎おのざき 宗一そういち】
それは、あの小野崎おのざき鈴音りんね の父親だ…。
自分の娘を奴隷の様に調教したが、行方不明になった娘の代わりに面影の似ている瀾なみに食い付いたのだった。

｢今度は逃がさない!!
アンタも…野中のなか 瀾なみも!!｣

輝李きりの眼には鋭く鈍い光がユラユラと揺れていた。