【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

ターゲット

ターゲット４

夕食が出来上がると、和気あいあいと食卓の場は温かかった。

｢美味しい♪｣
｢ｸｽｸｽ、輝李様が手伝ってくださったからですよ｣
｢へへへ…｣

夕食が終わる頃、メイド長も輝李きりの顔を見にきた。
少し成長した子猫をつれて。
それを見ると、輝李は興奮気味に子猫を救い抱き締めた。

｢猫ぉ～♪元気にしていた？
大きくなったねぇ｣

子猫は自分の命の恩人を覚えていたらしく、可愛らしくニャーと声を上げた。
猫じゃらしをフリフリと揺らせ、子猫と共に遊ぶ輝李。
それは今まで押し殺していた本来の輝李をよみがえらせるようだった。


やがて、輝李きりがベッドに潜る頃。
昨日と同じように寝るまでの間、由佳としばしの雑談を楽しむ。

｢野中のなか 瀾なみ？｣
｢ええ。最近入ったメイドですが、この間、乙きのと様のお側付きメイドとして使えたようです。
…それからは乙様も、笑顔が増えた気がします｣

穏やかに話す由佳ゆかに輝李きりの瞳が微かに光った。

｢…へぇ。乙がねぇ…、どんな子なの？｣
｢素直で純粋な子ですよ｣
｢ふぅん｣

ふと、ウトウトとしながら静かな声で輝李は続けた。

｢…由佳｣
｢はい？｣
｢明日、野中のなか 瀾なみの資料持ってきてくれるかな｣
｢はい。構いませんが野中が、どうかされました？｣
｢別に。…見てみたいんだ。
乙きのとを笑顔にさせる子がどんな子なのか｣
｢かしこまりました｣

やがて、輝李きりの瞼が閉じると由佳ゆかは静かに部屋を後にする。
由佳が部屋を出たのを確認すると輝李の瞼はパチリと開く。
その瞳は、鈍く光っていた。

｢野中のなか…瀾なみ…｣