【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

Silence

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Rearaine

Rearaine(リアレイン)7

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それから輝李きりは、リアレインの望むままにきのとを演じ続けた。
もちろん、ベッドの中でも…。

そんなある日、いつものようにリアレインとデート中に足森から一本の電話が入る。

「はい?」
「輝李様、実は少し困った事になりまして」
「どうしたの?」
「申し上げにくいのですが、乙様の事で…」
「乙が何?」
聖鈴蘭せいすずらん学院に編入希望を出されたようでして」
「何だって!!」

聖鈴蘭学院といえば以前、留学前の鈴音りんねが通っていた学院だった。
鈴音の情報は全て抹消したはずだが、さすがの輝李もこれには驚かされた。
リアレインにこれ以上、聞かれるのも良くないので何事もないように静かに対応する。

「それは、なわけ?」
「いえ、それはないとは思うのですが…」
「……解った。
※1)とにかく何としても食い止めて…。
学院に多少の圧をかけても構わないから。
いくら確証は無いとしても、あそこに行かれたら、が解るのも時間の問題になる」
「かしこまりました」

電話を切り、チラッとリアレインを見ると心配そうに、こちらを見ていたが輝李は笑顔で答えた。

「…乙に何かあったの?」
「何にもないよ」
「そう…」

その時のリアレインの曇った顔を見て確信した。

『コイツは乙に会いに行く』


そんなある日、リアレインは妙に嬉しそうにしていた。
輝李は相変わらずきのとの声でリアレインに話し掛ける。

「何か良い事でもあった?」
「クスクス…何でもない」

クスクスと笑うリアレインに笑顔を送ると、輝李は密かにニヤリとした。

『そろそろか…。解りやすい奴。
こんな浮気者、乙の傍になんか…』



次の日、足森から電話が入った。

「そう、解った。
僕も明日の朝の便で日本に向かう。
引き続き、リアレインから目を離すな」

夕食を取るため食堂に向かい食事を済ませると、フォレストが紅茶を口にして言った。

「輝李も日本に帰るのか…?」
「うん…、明日の便で行くよ…」

静かに口を開き、輝李きりが席を立つとフォレストも席を立った。

「そんなに乙が大事か!!」
「……」
「何でアイツなんだよ!!
毎日毎日、苦しんでる輝李にも気付かず、輝李をほったらかしているじゃないか!!」
「…フォル」
「アイツなんかより俺の方が、輝李の事を想っているのに!!」
「フォル…、僕は乙に笑っていて欲しいだけ。
は見たくないんだ…。
愛してるんだ…乙の事。
じゃあね…」

それだけ言うと輝李きりは目を伏せ、部屋を後にした。
翌日、輝李はフォレストと顔を合わせることなく日本へと旅立った。
屋敷の中には、フォレストだけがポツリと残され、窓の外を見つめていた。

「…淋しいもんだな。
また一人になっちしまうってのは…。
この間まで、あんなに賑やかだったってのに…」

目を伏せたフォレストの瞳から、一粒の雫が落ちた。

「…クス。俺、まだ泣けたんだな。
もう、涙なんか枯れてしまったと思ってた…。
あの時に…」

ふと部屋にあった写真立てにフォレストと共に写る少女に目をやった。

「なぁ…、ティス…」

その少女は、フォレストの以前の恋人だった。
現代の医学で確実に治るとされていた病気で、この世を去った。
フォレストの神の祈りも虚しく…。

以来、敬虔なクリスチャンだったフォレストは、彼女の忘れ形見のロザリオを逆十字として自分の首に下げている。
自分達を救わなかった神を恨むように…。

輝李きりきのとは、そんなフォレストの拠り所だった。
ロザリオを手に掬い、口付けをすると静かに口を開いた。

「神よ…、貴方は残酷だ。
また、俺から大切なものを奪う。
そんなに俺の事が嫌いなのか…」



※1)小説『アールグレイの昼下がり ー双子の姉・乙編ー』
〔猫遊戯(ねこじゃらし)2〕とリンク
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★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL 

★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L 


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