【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

Rearaine

Rearaine（リアレイン）

｢ハァ…｣

輝李きりは８エイトアンダーのデスクで小さくため息を吐いた。
そして数ヶ月前の事を思い出していた。


──ある昼下がり、鈴音りんねの事が片付いた頃。

｢DOLLドールオークション!?｣
｢…はい｣

驚く輝李に足森あしもりは冷静に答える。

｢DOLLオークションって、人身売買じゃないか!!
まさか、今井の時からじゃないだろうね!?
僕、そういうの好きじゃないよ!!! パス!!｣

プイッと顔を背ける輝李に足森は少し困りながらも冷静に答える。

｢それが…先代から始まったものなんですが…｣
｢当たり前だよ!!
今井がそんな事するわけ無いもん!!
僕だって反対だよ!!｣
｢もう顧客もおりまして、閉鎖するわけにも…｣

そういうと顧客リストをデスクに置き、輝李きりの応答を待った。
不貞腐れ気味に輝李はリストを見る。

｢!!! この名前…｣
｢はい…。そういう事です｣

そこには、見覚えのある名前があったのだ。
【小野崎おのざき 宗一そういち】
小野崎おのざき 鈴音りんねの父親だ。

｢…ｯ。いつから？｣
｢数年前からです｣
｢ﾊｧ…、解ったよ。
やれば良いんでしょ!!
でも、コイツを始末するまでだよ!!｣
｢申し訳ありません｣

鈴音の事を嗅ぎつけられても困るので仕方なく了承した──



｢…とは言ったものの…｣

輝李きりはポツリとこぼした。
鈴音りんねの事があってからというもの、乙きのとの生活は荒んだものだった。
なくした何かを埋めるように、忘れるように女遊びばかりしている。
毎日毎日、女をとっかえひっかえで家に帰る事すら少なくなっていた。
勿論、輝李も人の事を言えた義理ではないが、今の乙は目に余るものがあった。
それはペットと言うよりは使い捨てそのものだったからだ。

『このままじゃ、乙は駄目になるかもしれない…。
仕方ない…。
本当はこんな事したくないけど』

輝李は、スクッと立ち上がるとオフィスを出ていった。


それから、輝李は乙の目をつけた女を横取りするようになった。
勿論、たまに適当に見繕ってはDollオークションへ何人か流す。

そんな毎日が続く中、業を煮やした乙が案の定、輝李を呼び出した。