【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

狂愛の慈愛

狂愛の慈愛６

事を終え、部屋から出て来た人物にドアの前で待機していた足森あしもりはギョッとした。

｢乙きのと様…!!｣

足森にチラリと視線を向けると、静かに口を開いた。

｢中にいる女、処理しておけ。
それと…小野崎おのざき 鈴音りんねに関する情報をこの世から全て抹消しろ。
チリ一つ残すな!!!
外部に漏れる事は一切許さない!!!
特に…｣

そこまで言うと、声を本来のものに戻して言った。

｢乙にはね…｣
｢!!! …輝李きり様｣
｢頼んだよ…８エイトアンダー…｣

不適な笑みでそれだけ言うとポンと足森の肩を叩き、歩き出すついでに小さなヘアワックスを放った。
輝李は、ポケットに手を突っ込み、ホテルの廊下を歩きながら少し寂しいそうにポツリと小さくついた。

｢可哀想な子…｣

わざわざ乙きのとのフリをしたのは、せめてもの情けだった。
鈴音りんねには、そうせざるを得ない理由があった事を輝李きりは知っていたからだ…。


次の日、ハイスクールいた乙に輝李から一通の手紙を渡した。
それは、鈴音からの手紙だった。

《ごめんなさい。貴方を利用してしまった私を許して。
でも、貴方を愛していた事に嘘はないの。
乙…私が居なくても
乙の事を解ってくれる人が
いつか…きっと》

その手紙を見ると、乙は納得がいくわけもなく声を荒げた。

｢何で…急に!! 何でだよ!!｣

輝李はそんな乙に少し淋しそうにいった。

｢顔を見ると辛くなるからって…預かったんだ。
止められなかった。ごめん…｣

その日から、鈴音がハイスクールに来る事はなかった。
乙は、方々を捜し回ったが結局、鈴音の消息はつかむ事が出来ず不明だった。


そのしばらく後だった。
乙の耳に風の噂で鈴音が事故で、この世を去ったと聞いたのは…。
ショックを隠せず、落ち込む乙を輝李は目を伏せ、小さなため息をついて見つめるしかなった。