【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

狂愛の慈愛

狂愛の慈愛４

輝李きりが、８エイトアンダーの依頼人兼、司令塔になってからしばらく経った、ある日。
この頃から乙きのとは、顔を少し曇らせている事が増えるようになった。

｢…ﾊｧ…｣
｢乙、どうしたの？何か最近、元気無いね？｣
｢ああ。何だか最近、鈴音りんねに避けられている気がしてな｣
｢そう言えば、最近一緒に居ないよね…｣
｢ああ…何かあったのか…｣

そんな乙の言葉に輝李は、胸にチクリと痛みが走り、少し顔を曇らせた。

｢…乙…鈴音の事が心配…？｣
｢ああ、そうだな。
会っていても、たまに哀しそうな顔をする時があるんだ｣
｢…そう｣

この時、輝李はある考えをめぐらせていた。

『…おかしい。
僕はまだ何も動いていない。
鈴音の態度の原因が有るとするなら多分、あの事か…。
もう、限界なのかもしれない。
これ以上は…』

そんな乙きのとに輝李きりは、明るく答えた。

｢ねぇ、乙。
鈴音の事、何があったのか僕がそれとなく聞いてあげようか？｣
｢え？｣
｢何か心配事があるのかもしれないし。ね♪｣

乙は少し笑顔を作ると輝李に答えた。

｢ありがとう、輝李。…悪いな｣
｢ううん、気にしないで。乙の為だもん♪｣


そして二日後、鈴音りんねを見つけると、こちらから声を駆けた。

｢やぁ、鈴・音♪｣
｢あら、輝李｣
｢最近、どうしたの？
乙と一緒に居ないんだね。何かあったの？｣
｢……｣

その言葉に鈴音は少し顔を曇らせたが、小さく口を開いた。

｢…何でもないの…｣
｢乙のこと…嫌いになった？｣
｢そんな事ないわ!!…そんな事…｣

鈴音りんねがふと哀しそうな顔をすると、こちらは明るく笑顔を返し話題を変えた。

｢ねぇ、たまには夕食でも一緒にどう？｣
｢…ええ｣
｢やっぱり僕とじゃ嫌かな？｣

少しシュンとして鈴音に上目遣いを送ると鈴音は笑顔を返した。

｢そんな事ないわ。
いいわ、行きましょ｣
｢良かった♪｣

万遍の笑顔を鈴音におくると、放課後、二人は夕食を共に取るためレストランに向かった。
レストランで楽しく一通りの食事を済ませ、最後にティータイムを楽しむ。
しかし、鈴音は知らなかった。
その飲み物に睡眠薬が入っていた事に…。
いつの間にか、鈴音はウトウトと眠りについてしまった。
眠りに就いた鈴音を肩肘を付き、静かに見つめた。

｢………｣