【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

狂愛の慈愛

狂愛の慈愛３

しかし、男が取り出したのは名刺だった。

｢足森あしもりと申します。
以後、お見知りおきを…｣

男は名刺を輝李きりに渡すとデスクの大きな椅子を引き、促した。

｢どうぞ、こちらへ…｣

輝李が椅子に座ると一礼をして、あるファイルを持ってきた。

｢社長が居なくなられた今、我々を指揮する方をまた立てねばなりません｣
｢それで僕を選んでくれたわけ？｣
｢…はい｣

そういうと足森は、持ってきたファイルを静かにデスクに置いた。

｢これは？｣
｢輝李様が調べるようにと命じた、小野崎おのざき 鈴音りんねの情報になります｣
｢…へぇ、準備がいいんだね…｣

足森はその後、言葉を発する事なく輝李の言葉に小さく一礼をした。
輝李がファイルに目を通すと、中には事細かな詳細までが記載されていた。

｢!!! …ねぇ、ここに書いてある事に嘘はないわけ？｣
｢はい。全て事実でございます｣
｢…ｯ。これは…どうやら調べるだけじゃ済みそうもないね…。
ねぇ、足森っていったけ？｣
｢はい｣
｢さっきアンタが言った事が本当なら僕が指揮をとって良いと言う事になるよね？｣
｢はい｣

輝李は少し考えるとファイルをデスクに起き、静かに口を開いた、

｢…いつでも、動ける準備をしておけ。行動にでる｣
｢かしこまりました｣

ふと、またフォレストの言葉が頭に響き、目を伏せた。

《「約束してくれ。８－[ｴｲﾄｱﾝﾀﾞｰ]には深入りはしないと…」》

『フォル…もう、引けない所まで来ていたよ。
まさかこんな事になっていたなんて…』