【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

撫子

撫子４

その日、輝李きりは具合が悪いと称しハイスクールを早退した。
フォレストが心配して、乙きのとより先に帰ってくると広間の窓際で佇む輝李を見つけた。

｢輝李、具合大丈夫か？
今、乙が買い物に寄ってきてるから横になっていた方が…｣

フォレストがそこまで言うと輝李は、外を眺めたまま静かに口を開いた。

｢…フォル。…聞きたい事があるんだ。
８エイトアンダーの、事…｣
｢!!! …何でそんな事、聞きたいんだ…。
何を考えているかは知らないが、あれはお前の手におえる機関じゃない｣

フォレストの顔色が変わり、いつになく真剣な顔で質問すると、輝李は振り返りフォレストの胸に飛び込んだ。
顔を上げた輝李の瞳には、いい知れぬ絶望と悲しみが満ちていた。

｢お願いだよ、フォル!!
フォルは知ってるんでしょ!!
早くしないと取り返しのつかない事になるんだ!!｣
｢輝李…｣
｢…お願い…。でないと乙が!!
…乙が…｣

必死に訴える輝李の瞳には涙があふれていた。
ただ事ではないことを悟ると、フォレストは輝李の肩に手を添えて静かに口をついた。

｢…わけを教えてくれ｣

輝李は、小さく頷くと自分の見た事を話した。

｢…なるほどな。それで輝李はどうするつもりなんだ？｣
｢調べたいだけなんだ!!
このままにして、こんな失態が父様に知れてしまったら乙は…!!｣
｢……｣
｢お願いだよ!!フォル!!｣

しばらく考えると、フォレストは静かに答えた。

｢…解った。でも、約束してくれ。
８エイトアンダーには深入りはしないと。
あそこは…それほど危険な場所なんだ…｣
｢…解った｣

お互いの話が終わると、乙が帰ってくる前に輝李は部屋のベッドに潜り、何事も無かったかのように乙の看病を受けた。



一方フォレストは、その日の真夜中、輝李の話をずっと考えていた。

『たぶん、今の輝李に８エイトアンダーを動かす事は不可能だ…』

しばらくすると電話の受話器を静かに取り、電話をかけた。

｢もしもし…今井さん…｣