【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

撫子

撫子３

乙きのとの帰りが遅くなる事が多くなり、輝李きりの顔には笑顔が少しずつ減ってきた。
フォレストと輝李、乙と鈴音りんね、四人で遊んでいても、輝李はすぐ席を外して別行動をとるようになっていった。
そして、その側に居たのは乙ではなく、いつもフォレストだった。

｢せっかくのデートの邪魔しちゃ悪いじゃない？
えへへ…｣
｢輝李…｣

無理に笑う輝李にフォレストは何度、抱き締めてしまおうかと思ったか解らない。

そんな日々がしばらく続いた、ある日…。
輝李が休み時間にキャンパスを歩いていると、人目を忍んで建物の物陰に消えていった鈴音を見つけた。

『あれ？今日は乙と一緒じゃないのかな…？』

せっかく見つけたのだからと、夕食に誘おうと建物を曲がろうとした時だった。

｢…解っています。
しかし、もう少し待っていただけませんか？
…ええ、計画は順調ですから、ご心配なく…｣

そこから聞こえたのは、他でもなくヒソヒソと携帯電話で話す鈴音の声だった。
次の言葉を聞いたとき、輝李は愕然としたのだ。

｢…はい。
必ず月影の秘密を聞き出してみせますから…。
…はい。もう少しで月影 乙は落とせますから…
ですから待っていてください。
きっと結果を出してみせます」

輝李きりは、壁にもたれ足の震えが止まらなかった。
鈴音りんねが…
恋敵とはいえ、自分達にも優しく、輝李もいつしか良きライバルとして認めていた。
乙きのとと楽しく過ごし、笑顔すら輝いて見えてた鈴音が、利用するために乙に近づいていたなんて…。

ショックで愕然としたのと、同時に怒りが込み上げてきた。



『…やってくれるじゃない…』