【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

Silence

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撫子

撫子2

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次の日、ハイスクールに行くと廊下に小さく女の子の声が響いていた。

「え、えくすきゅーずみー…
えくすきゅーずみー…」

一生懸命言っているのだろうが誰も止まろうとしない。
仕方なく、きのとが声をかけた。

「Hi.」

その声を聞くと少女は、一生懸命に乙を見上げ訴えかけた。

「えくすきゅーずみー!!」

明らかに発音がおかしい。
これでは誰も気が付くはずが無い。
乙は小さなため息をつくと口を開いた。

「ハァ…英語、苦手なのか?
無理に使わなくていい、俺も日本人だ」
「はぁ、良かった…」

少女は心から安堵の息をつく。

「何かあったのか?」
「少し迷っちゃって。音楽室に行きたいんだけど…」
「フゥ、連れてってやるよ」
「ありがとう!!」

少女を教室まで送り届けると、少女はもう一度、お辞儀をして礼を言った。

「本当にありがとう!!助かったわ。
私、小野崎おのざき 鈴音りんね
「…月影つきかげ きのとだ」

それだけ言うと乙は、教室を離れた。
また鈴音の声が響いた。

「ねぇ!!また会える?」
「さぁな」

乙は振り返る事無く答え、歩いて行った。


同じ日本人という共通点から、二人が親しくなるのにそんなに時間はかからなかった。
輝李きり達とも鈴音はよく一緒になるようになった。

そんなある日、乙と鈴音がキャンパスでランチをしている時だった。

「ええ!!乙って女の子だったの!!」
「あ、ああ。気付かなかったのか?
輝李の事は解ったくせに」
「だって輝李って中性的だけど、どことなく解るじゃない?
…そう、なんだ…
乙…女の子、なんだ…」
「何だよ、意味ありげに」
「…私、乙は男の子だと思ってたから…」
「俺が女だと何かマズい事でもあるのか?」
「……////」

鈴音は黙り込み、俯くと少し顔を赤くした。

「何だよ」
「…別に。…言ったら軽蔑されちゃう////」
「じゃあ、俺が男だったら軽蔑されないことなのか?」
「…たぶん…」
「言ってみろよ。
今は男として聞いてやるから」
「今は…男として?
私の事、軽蔑…しない?」
「ああ」

鈴音は少し恥ずかしそうに小さく言葉にした。

「…す、好きに…なったみたい…」

鈴音の言葉に少しビックリしたがきのとは、鈴音りんねにキスをし優しく微笑んだ。

「ありがとう、嬉しいよ。
これが答えじゃ駄目?」

鈴音は嬉しそうに顔を赤くして首を振った。





── 相変わらず学院の樹に寄りかかり、目を伏せて輝李きりはベンチに座って聴いている少女につづけた…。

きのとにとって、僕以外に初めて好意をもったソレは、今思えば“恋”だったのかもしれない…。
それからは、乙は鈴音と過ごす事が知らず知らずに多くなっていった。
乙は、いつしか僕を抱かなくなっていた。
鈴音といる時、話している時、楽しそうに笑う乙。
その笑顔は僕に向ける笑顔とは違っていたんだ…」

少女は、ベンチに座ったまま輝李の話を黙って聞いていた。

「君は、おかしいと思っているんだろうね…。
で、ましてやで愛し合っていたなんて…」
「……」

少女は、少し悲しそうに淋しそうに輝李を見つめた。

「でも、あの時の僕は…
本当に乙を愛していたんだ…。
その子が、許せなくなるほどに」

輝李は、少し悲しそうに目を伏せた。
フワリと吹いた風に乗って、少女の手の甲に小さな雫が舞い降りた気がする。

すると、輝李はまた話を続け青空を仰いだ。
学院には、その刻を刻むように礼拝堂の鐘が響いた…───
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★アールグレイの月夜(YouTube版)
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