【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

The crown of the triangular love affair

The crown of the triangular love affair５

家に帰ってきてからも、相変らずの二人。
もう夕食も終わりティータイムだというのに、よく飽きもせず啀み合えるものだ。

｢明日は邪魔するな!!｣
｢それは乙だろ!!｣

ガチャン!!

輝李は、持っていたティーカップを皿の上に強めに置く。
その音量に二人はこちらに視線を向けた。
勿論、輝李きりの眉間には皺が寄っている。

｢…また喧嘩…？｣

目を伏せ明らかに機嫌の悪い、その言葉に二人は冷や汗すら滲ませている。

｢よ、よし！久しぶりやろうじゃないか、乙きのと｣
｢あ、ああ！良いぜ！｣

何をするのかと思い片目をうっすら開けると次の瞬間、輝李は目が点になった。

｢じゃ～ん…｣
｢け～ん…｣
｢ポン!!｣
｢ポン!!｣

成長した青年にすら見える二人が、必死に真剣な顔をしてジャンケンをしているではないか!!

｢あいこでしょ!!｣
｢あいこでしょ!!｣

しかも何度もあいこときた。
輝李は、その信じられない状況に呆れ席を立つ。

｢…バ～カ。僕、部屋に戻ってるから。
ずっとやってればぁ？｣

その後、広間には二人の声がしばらくの間、響いたという…。

｢あいこでしょ!!｣
｢あいこでしょ!!｣
｢あいこでしょ!!｣
｢あいこでしょ!!｣
　　　　：
　　　　：


輝李きりは部屋に戻り、ベッドに腰を下ろすと小さな頃に母に貰った小さなジュエルケースを開けた。
中には押し花とキラキラと光る小さな小石が入っている。
それは、あの喧嘩をした日、乙きのととフォレストが輝李に贈ったものだった。

懐かしむように優しい笑顔を浮かべながら、大切そうにジュエルケースを膝元に置きポツリと呟いた。

｢ｸｽ…本当に、バカなんだから…｣

実際、乙が唯一、年相応に騒いでいるのはフォレストといる時だけだった。
普段は隙のない眼光と、その立ち振舞いに子供らしささえもどこかに忘れ去られたようなのだ。

しかし、フォレストといる時だけは、ありのままの自分で喧嘩をしたり、騒いだりしている。
子供の頃、喧嘩の絶えなかった乙とフォレストが、輝李を泣かせないために最終的にとった手段が公平なジャンケンだったのだ。

それを今更になって、またやりだすとは…

｢ｸｽｸｽ、あれはあれで良いコンビなのかな…？｣

輝李は箱を見つめたまま、またクスリと笑顔を浮かべた。