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二恋[フタコイ]
─私は『私』を捨てて『僕』になった─10
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── 蝶を追いかけ中庭を走り回る、まだ幼い輝李に春風が顔を撫でた。
「輝李」
背後の声に振り向くと、そこには輝李の帽子を持った乙が立っていた。
「乙♪」
嬉しそうに乙に駆け寄ると、乙はニッコリと微笑み帽子を手渡した。
「レディーは帽子を投げたまま、掛けまわりはしないんだけどな」
「…だってぇ」
輝李が少し上目遣いに不貞腐れると、スッと乙は輝李の髪に花をさした。
「蝶より、こっちの方が逃げないだろ」
「…!! わぁ、ありがとう、乙♪」
小さなレディーは、満遍の微笑みで返した…。
またある朝…
まだ寝ぼけ眼の小学生の輝李が、ベッドルームからフラフラと歩きながら朝食を取るために部屋から出ようとした時だった。
「ちょっと待った!!」
輝李の腕を掴み、乙が引き止めるとため息をついて続けた。
「そんな頭で部屋を出る気か?」
「…ええ?だってお腹空いたし」
「…はぁ、せめてブラシを通せよ」
「面倒臭いし。ご飯食べてからじゃあ、だめぇ?」
「…ダメだ。やってやるから、こっちに座れよ」
「ええ~!!後にしようよぉ~」
「…早・く!!」
「はーい…」
不貞腐れた声で輝李は、仕方なくソファーに腰掛けた…。
もう思春期も近くなってきた頃、輝李はいつものように乙のベッドの上で座っていた。
シュル…シュル…
輝李の髪に丁寧にブラシを通す乙の温もりが心地く、目を閉じ身を任せた。
「…乙、いつもありがとう」
「…輝李は、放っておいたら何にもしないからな」
「仕方なくしてるの?」
「…別に…」
「…意地悪♪」
「……輝李…」
「ん?何?」
「髪…切るなよ…。輝李の髪…気に入ってるんだから…///」
「クスクス…」
「約束…だぞ///」
「ハイハイ、切りませんよ~♪」
輝李は笑顔で答えた…───
『…ごめん!!乙…!
…約束…もう…守れないっ!!!!!』
輝李は自分の髪の束を片手に持つと、もう片方にあるナイフに力をいれ一気に切り裂いた。
「…フッ…ンン~!!!」
『ごめんね…乙…』
ナイフが全てを切り裂くと、力なくダラリと両腕をたらし俯いた。
カチャン…。
ナイフは輝李の手の平から床へ目がけ滑り落ちる。
それと共に、ついさっきまで持ち主の一部だった髪の束もパサリと床に降りた。
ゆっくりと顔を上げて悪魔の微笑みを浮かべ、北条を見ると静かに口を開いた。
「…さぁ…。教えてもらおうか。
乙に教えていたことを。
この『僕』にもさ……北・条・さん…♪」
「…嘘…でしょ…」
「クスクス…あははははは…!!!!」
『……乙…僕は…』
「輝李」
背後の声に振り向くと、そこには輝李の帽子を持った乙が立っていた。
「乙♪」
嬉しそうに乙に駆け寄ると、乙はニッコリと微笑み帽子を手渡した。
「レディーは帽子を投げたまま、掛けまわりはしないんだけどな」
「…だってぇ」
輝李が少し上目遣いに不貞腐れると、スッと乙は輝李の髪に花をさした。
「蝶より、こっちの方が逃げないだろ」
「…!! わぁ、ありがとう、乙♪」
小さなレディーは、満遍の微笑みで返した…。
またある朝…
まだ寝ぼけ眼の小学生の輝李が、ベッドルームからフラフラと歩きながら朝食を取るために部屋から出ようとした時だった。
「ちょっと待った!!」
輝李の腕を掴み、乙が引き止めるとため息をついて続けた。
「そんな頭で部屋を出る気か?」
「…ええ?だってお腹空いたし」
「…はぁ、せめてブラシを通せよ」
「面倒臭いし。ご飯食べてからじゃあ、だめぇ?」
「…ダメだ。やってやるから、こっちに座れよ」
「ええ~!!後にしようよぉ~」
「…早・く!!」
「はーい…」
不貞腐れた声で輝李は、仕方なくソファーに腰掛けた…。
もう思春期も近くなってきた頃、輝李はいつものように乙のベッドの上で座っていた。
シュル…シュル…
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「…乙、いつもありがとう」
「…輝李は、放っておいたら何にもしないからな」
「仕方なくしてるの?」
「…別に…」
「…意地悪♪」
「……輝李…」
「ん?何?」
「髪…切るなよ…。輝李の髪…気に入ってるんだから…///」
「クスクス…」
「約束…だぞ///」
「ハイハイ、切りませんよ~♪」
輝李は笑顔で答えた…───
『…ごめん!!乙…!
…約束…もう…守れないっ!!!!!』
輝李は自分の髪の束を片手に持つと、もう片方にあるナイフに力をいれ一気に切り裂いた。
「…フッ…ンン~!!!」
『ごめんね…乙…』
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カチャン…。
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「クスクス…あははははは…!!!!」
『……乙…僕は…』
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小説が音声と映像で流れ出す!?
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