【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

二恋［ﾌﾀｺｲ］

─私は『私』を捨てて『僕』になった─９

北条の顔からは、みるみるうちに血の気が引いていく。

｢あ、あれは貴方のお父様が…!!｣
｢ｸｽｸｽ…知ってるよぉ？
性教育を兼ねて、命令していたんでしょ？｣
｢なら…｣
｢…でも任意じゃない、少なくとも乙にとってはね…。
ただでさえ女の子にとって初めては大切なものなのに、今まで男として育てられてきた乙きのとが無理矢理処女を奪われる事が、どんな意味を示すのかアンタには解らないでしょう～？｣
｢あ…ああ…｣

妖しく微笑む輝李のそれは、今まで人に向けられた天使の微笑みではなかった。
まるで、苦しみを快楽と思うような、そんな笑みだった。


パシッ!!


弄び、いたぶるように北条の頬に輝李きりの平手がとんだ。

｢ｸｽ…その薄汚い手で、何度乙に触れたの？
そのたびにアンタは歓喜の笑みを浮かべたんでしょう？
あの時と同じように…
快楽に身を委ねて楽しんで、苦しむ乙を見ていたんでしょう？｣

輝李は、ストンと北条の脇から降りると、その分娩台の周りをクルクルと楽しそうに回りながらゆっくりと進んでいく。

｢わ、私をどうする気…？｣

北条の質問に輝李は、クスクスと笑い答えた。

｢話を聞き出した研究員…どうなったと思う？｣
｢ま…まさか…｣

青ざめた顔で、恐怖を必死に耐えながら北条は足側に立つ輝李を伺った。

｢…アンタにはもっと相応しい事をしてあげるよ｣

不意にナイフを持つ手に輝李は視線を落とした。
北条は、慌てて口を開く。

｢や、止めなさい！！
貴女、自分が何をしようとしているか解っているの？｣
｢…解ってるよ…｣

鈍く光るナイフの手元が上がるのと同時に北条は思わず目を瞑った。

｢嫌ぁッ!!｣

ナイフは勢いよく、対象の物を切り裂いていった。