【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

二恋［ﾌﾀｺｲ］

─私は『私』を捨てて『僕』になった─６

次の日、夕食を済ませると輝李きりは、いつもと変わらず先に席を立った。
そんな時、ふと乙きのとに呼び止められたのだ。

｢…輝李!!｣
｢…え？な、何…？｣
｢…あ、いや…お茶に付き合ってくれないか…？｣

輝李は小さく頷くと、乙と共に部屋に向かった。
ナイトキャップティーをたしなみながら、何となく重い空気が流れた。

｢何かあったの？もう…ここには来るなって言ってたのに…｣
｢……べ、別に｣

輝李きりと乙きのとの間に交わされた言葉は、その一言ずつだった。
ゆっくりと静かな時間が流れる。

輝李がティーカップの雫を飲み終わり席を立とうとすると、乙の手が輝李の腕に伸びた。

｢今日は泊まっていけよ、…１人で寝たくないんだ…｣
｢きの…と｣

久しぶりの乙のベッドは、温もりが温かく居心地が良かった。
しばらくは、沈黙が続いた。
夢と称して昨晩、乙にキスをしてしまった事。

『私は、ズルい…』

輝李は乙の横で腰までベッドに潜り、体育座りで何となく俯いていた。
そんな時、乙が口を開いた。

｢昨日…夢を見たんだ｣
｢え…｣


…ドキン!!!

輝李の胸には、罪悪感と後ろめたさと恋しさが胸を締めた。


『乙が、昨日の事は現実だと知ったら、どう思うのかな…？
きっと…私の事を軽蔑するかも知れない…』

乙は、輝李の髪を撫でた。

｢輝李の夢だった…。
綺麗な髪を揺らして…天使みたいだった。
俺は、この髪が好きだ｣
｢乙…わた…!!｣
｢夢でも…嬉しかったんだ｣

乙は物悲しく淋しそうに笑った。
そして、輝李の髪に優しくキスをした。

｢乙!!｣

輝李は乙の胸に飛び込むと、瞳に涙をためて続けた。

｢私…私！！本当はすごく寂しかったよぉ！！｣
｢輝李…ごめん…ごめんな｣

乙の腕は、女のそれとは違うような力強く輝李を抱き締めた。

｢夢でも良いと思った。
輝李に触れられるなら…でも…
今だけ…今だけ、夢の続きが見たい…
だから、ほんの少しだけ我慢してくれ…輝李…｣


乙は救いを求めるように輝李の唇に優しく自分を重ねた。
優しく柔らかな乙の唇…
それは甘く、胸を締め付けるキスだった。
輝李は乙の首に手を回した。

『今だけ…今だけは、このままでも…良いよね…』

乙の体は微かに震えているのが解った。
２人が寝付くまで幾度となく、お互いの唇を重ねた。
今の時を惜しむように…