【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

二恋［ﾌﾀｺｲ］

─私は『私』を捨てて『僕』になった─３

明くる日から、 輝李きりは 乙きのとの言い付け通り自室で睡眠をとる事になった。
自分の部屋だというのに、まるで他人の部屋のように感じる。
ひんやりと冷たいベッドの温もり。

《｢もう…ここには来るな……いいな、輝李｣》
 
乙の言葉が胸を刺す。
 
『私は…乙にとって重荷でしかないんだろうか…』

横になりながら一筋の雫が輝李の顔を濡らした。



それからも、なかなか眠れない日が続いた。
一旦亀裂の入った２人の距離は、埋まる事もなく輝李の中でモヤモヤと渦巻きはじめる。
 乙きのと乙と学校の廊下ですれ違っても 輝李きりから話し掛ける事は出来なかった。
原因すら解らないまま…

ある夜…
寝付けない輝李は、ナイトキャップティーを頼むため部屋を出た。
すると、１人の女性が屋敷に入ってきた。

｢あれは…｣

父の会社の秘書の北条という女性だった。
スーツを着こなし燐とし踊り場の階段を登ってくる。
父の書斎に行くのかと思ったが、部屋を通り過ぎると廊下を曲がっていった。
こっそりと追いかけて見たが、曲がると北条は居なくなっていた。
だが、この廊下は一本道だ。
一体どこに行ったのだろうと輝李は一つ一つ部屋を確認していった。
しかし、北条が見当たる気配すらない。
残る部屋は自室と乙の部屋だ。
チラリと乙の部屋を見ると微かにドアが開いていた。
輝李がソッとドアに近づき、隙間から乙の部屋を覗くと…
 
｢…!!!!!!｣

そこにはソファーに座る乙の肌に触れ、乙の上で馬乗りになる北条のあらわな姿が飛び込んできた。

──ガクン…

輝李は、目の前の衝撃的な光景に腰を落とした。
頭が真っ白になる。
 
『乙…何を…してるの…？』