【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

二恋［ﾌﾀｺｲ］

─私は『私』を捨てて『僕』になった─２

 輝李きり達が中学生になる頃、母の葬儀から半年が過ぎた。
ずっと元気がなかった 乙きのとだったが、前からどこと無く感じていた違和感がいつからか輝李の中で確実になっていった。

｢ｸｽ…、何だ？俺の顔に何か付いているのか？｣

──ドキン!!

｢な、何でもないよ///｣

不意に輝李が目をそらす。
時折、乙はドキッとするような眼差しをする。

大人びていて艶めかしい瞳。
艶っぽい唇。
同級生にはない何かが乙にはあって、そのせいだろうか女生徒にもモテていた。

輝李がいつものように乙の部屋に枕を持ってやってきた時だった。
電気は付いておらず静まり返っていた。

｢…乙？｣

暗がりの中、手探りでベッドルームにむかうと月明かりが差し込む中、乙は窓の縁に片側で腰掛け、空を見上げていた。

──ドキン…

輝李の胸が鳴いた。
乙は、月明かりを浴びパジャマの第２ボタンまでがはだけており、微睡んだ瞳でジッと外を見つめていた。

｢輝李…｣

こちらを見ることなく不意に乙が静かに口を開いた。

｢…明日からは自分の部屋で眠れ。
もう子供じゃないんだ、１人でも眠れるだろ…？｣
｢…乙？ど、どうしたの、急に？｣

真剣な眼差しを輝李にむけ、静かに続ける。

｢もう…ここには来るな。…いいな、輝李｣
｢どうして？私の事が嫌いになったの？いつも乙に甘えてるから｣
｢………｣

乙は少し辛そうな顔をして、輝李から顔を背けた。



『どうして…？乙…
何で急にそんな事いうの？
私…胸が…苦しいよ…』