【R18】アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー

子猫

子猫２

屋敷に着くとミルクとフワフワなタオルを用意した。
子猫はミルクをペロリとたいらげるとタオルに包まれ、眠りに着いた。
よほど疲れ切っていたのだろう。
目を閉じた子猫は、ピクリとも動かない。
　
『もし、このまま目を覚まさなかったらどうしよう』
　
子猫を見つめる輝李きりは、時折不安そうに声をかける。

｢…猫？｣
　
そのたびに子猫は耳を輝李に向け、眠りながらも微かに鳴いた。


───勉強がやっと一段落して、息抜きに乙きのとが廊下を歩いているときだった。
　
｢どうしてダメなの!!!｣

輝李の声だ。
使用人の部屋から聞こえる。

｢もういいよ!!!
今井達の分からず屋!!!｣

勢いよくドアが開き、乙に気がつく事無く、輝李は走って部屋を出ていった。

｢…輝李…？｣

乙が不思議そうに、様子を見ていると、

｢あ!!輝李様!!｣

メイド長も慌てて部屋から出てきたが、困ったようにため息をついた。

｢…何かあったのか？｣

乙が、メイド長の元に歩きながら静かに話し掛ける。

｢あ、乙様…。申し訳ありません｣
｢いや、かまわないけど。
輝李はどうしたんだ？｣
｢それが…｣

開いたままの部屋の中をみると、執事の今井も申し訳なさそうに目を伏せている。

｢何があったかはしらないが、輝李の事は俺がなんとかする｣
｢申し訳ありません、乙様。
もう、私達の話は聞く耳も持たないでしょうから…｣
｢今井…気にするな。
どうせ、またワガママでも言ったんだろ？｣

今井は少し困ったように苦笑いを浮かべた。
乙は輝李が向かった先へ静かに歩きだした。