6 / 117
子猫
子猫1
しおりを挟む
違和感を感じながら暮らすうちに時が経ち、輝李は12歳になっていた。
相変わらず、乙は夕方から忽然と姿を消すことがあった。
昔ほど連日ではないが、ごくまれに居なくなるときがある。
唯一変わった事は、乙が笑わなくなった事…
いつの日も冷静に周りを見て判断する。
とても同じ年とは思えないほど大人の目をする。
『やっぱり…まだ、父様に…』
数年前、輝李が偶然見てしまった父と乙の関係…
乙に厳しく手を上げる父…
夜にどこかへ行く母…
──そして、笑わなくなった乙…
原因が父にある事くらいは、輝李にも解っていた。
しかし、乙に問いただすたびに、
『俺の為だから…』
と濁すだけだった。
この頃から父は、海外へ出張するようになった。
さすがに海外にいくつも会社を持っていると、ずっと日本に居るわけにもいかなくなったのだろう。
元々、あまり家には帰ってこなかったが乙の事はしっかり監視してたらしい。
相変わらず乙とは遊ぶことも出来ず、輝李が押し掛けては乙の教育係にお説教を食らう。
そんな毎日を送っていた。
ある日、輝李は学校から帰る下校時に【友達と帰りたい!!】と駄々をこね、屋敷からの迎えを断った。
初めての友達との下校。
初めての寄り道。
ジャンケンをして、勝ったものが進んでいく遊び。
自分の知らなかった沢山のものが新鮮で、楽しくて仕方なかった。
そして友達と別れ、もうすぐ敷地の門という所で、輝李は小さな鳴き声を聴いた。
輝李が周りを見渡すと、ずいぶん放置されていたのかもしれない段ボール箱に、一匹の子猫を見つけた。
たくさん鳴いたのだろう。
すでに鳴き声は弱々しく、今にも鳴き声が聞えなくなりそうになるのではないかという程、弱りきっていた。
輝李は、段ボールの前にしゃがむと恐る恐る、そうっと子猫の頭を撫でた。
子猫は、震えながら力なく輝李を見つめると小さく鳴いた。
『こんなに弱って…
このまま、この子を置いて行ったら…』
輝李は、子猫を両手ですくうと優しく抱き締めるように胸の中におさめた。
子猫を大切に抱え、門を潜るとカートに乗り、屋敷へと急いだ。
『早くしないと、子猫が…!!』
相変わらず、乙は夕方から忽然と姿を消すことがあった。
昔ほど連日ではないが、ごくまれに居なくなるときがある。
唯一変わった事は、乙が笑わなくなった事…
いつの日も冷静に周りを見て判断する。
とても同じ年とは思えないほど大人の目をする。
『やっぱり…まだ、父様に…』
数年前、輝李が偶然見てしまった父と乙の関係…
乙に厳しく手を上げる父…
夜にどこかへ行く母…
──そして、笑わなくなった乙…
原因が父にある事くらいは、輝李にも解っていた。
しかし、乙に問いただすたびに、
『俺の為だから…』
と濁すだけだった。
この頃から父は、海外へ出張するようになった。
さすがに海外にいくつも会社を持っていると、ずっと日本に居るわけにもいかなくなったのだろう。
元々、あまり家には帰ってこなかったが乙の事はしっかり監視してたらしい。
相変わらず乙とは遊ぶことも出来ず、輝李が押し掛けては乙の教育係にお説教を食らう。
そんな毎日を送っていた。
ある日、輝李は学校から帰る下校時に【友達と帰りたい!!】と駄々をこね、屋敷からの迎えを断った。
初めての友達との下校。
初めての寄り道。
ジャンケンをして、勝ったものが進んでいく遊び。
自分の知らなかった沢山のものが新鮮で、楽しくて仕方なかった。
そして友達と別れ、もうすぐ敷地の門という所で、輝李は小さな鳴き声を聴いた。
輝李が周りを見渡すと、ずいぶん放置されていたのかもしれない段ボール箱に、一匹の子猫を見つけた。
たくさん鳴いたのだろう。
すでに鳴き声は弱々しく、今にも鳴き声が聞えなくなりそうになるのではないかという程、弱りきっていた。
輝李は、段ボールの前にしゃがむと恐る恐る、そうっと子猫の頭を撫でた。
子猫は、震えながら力なく輝李を見つめると小さく鳴いた。
『こんなに弱って…
このまま、この子を置いて行ったら…』
輝李は、子猫を両手ですくうと優しく抱き締めるように胸の中におさめた。
子猫を大切に抱え、門を潜るとカートに乗り、屋敷へと急いだ。
『早くしないと、子猫が…!!』
0
小説が音声と映像で流れ出す!?
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

さくらと遥香
youmery
恋愛
国民的な人気を誇る女性アイドルグループの4期生として活動する、さくらと遥香(=かっきー)。
さくら視点で描かれる、かっきーとの百合恋愛ストーリーです。
◆あらすじ
さくらと遥香は、同じアイドルグループで活動する同期の2人。
さくらは"さくちゃん"、
遥香は名字にちなんで"かっきー"の愛称でメンバーやファンから愛されている。
同期の中で、加入当時から選抜メンバーに選ばれ続けているのはさくらと遥香だけ。
ときに"4期生のダブルエース"とも呼ばれる2人は、お互いに支え合いながら数々の試練を乗り越えてきた。
同期、仲間、戦友、コンビ。
2人の関係を表すにはどんな言葉がふさわしいか。それは2人にしか分からない。
そんな2人の関係に大きな変化が訪れたのは2022年2月、46時間の生配信番組の最中。
イラストを描くのが得意な遥香は、生配信中にメンバー全員の似顔絵を描き上げる企画に挑戦していた。
配信スタジオの一角を使って、休む間も惜しんで似顔絵を描き続ける遥香。
さくらは、眠そうな顔で頑張る遥香の姿を心配そうに見つめていた。
2日目の配信が終わった夜、さくらが遥香の様子を見に行くと誰もいないスタジオで2人きりに。
遥香の力になりたいさくらは、
「私に出来ることがあればなんでも言ってほしい」
と申し出る。
そこで、遥香から目をつむるように言われて待っていると、さくらは唇に柔らかい感触を感じて…
◆章構成と主な展開
・46時間TV編[完結]
(初キス、告白、両想い)
・付き合い始めた2人編[完結]
(交際スタート、グループ内での距離感の変化)
・かっきー1st写真集編[完結]
(少し大人なキス、肌と肌の触れ合い)
・お泊まり温泉旅行編[完結]
(お風呂、もう少し大人な関係へ)
・かっきー2回目のセンター編[完結]
(かっきーの誕生日お祝い)
・飛鳥さん卒コン編[完結]
(大好きな先輩に2人の関係を伝える)
・さくら1st写真集編[完結]
(お風呂で♡♡)
・Wセンター編[完結]
(支え合う2人)
※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる