5 / 117
双子の少女
双子の少女4
しおりを挟む
二人のレッスンが中々重なる事が無い輝李にとって、たまに一緒になるレッスンは乙と遊ぶのと同じくらいの価値があった。
二人が向かい合いお互いに、お辞儀をすると手を取り合い、流れるようにリズムに乗った。
楽しい時間は、あっという間に時を流した。
ダンスの時間が終わると乙は、また自室へ戻っていく。
時折、乙が自室に居ない時があった。
不思議に思いながら、父の部屋の前を通った時だった。
パシン!!
何かを打ったような高い音が響いた。
その音に輝李は、そっと部屋をかすかに開けて覗いた。
中には、父と乙がいる。
「…また、レッスンが遅れたな。
お前は、そんな簡単な事も出来ないのか…。
そんな事で月影を名乗れると思っているのか」
「…でも…」
パシッ!!
静かに言い捨てる父の平手が乙の頬を打った。
「!!!」
輝李は、目の前の光景が信じられなかった。
確かにあまり感情を出さず物静かなりにも優しい、あの父親が乙を打っている。
初めて見る、父の冷たい瞳…。
「…ッ」
「口答えをする暇があるのなら、やるべき事をこなせ」
「…はい…」
いつの間にか、輝李はドアを開け茫然と父に声をかけていた。
「…父様…何…してる…の?」
乙はハッとすると口元に手の甲を添え、輝李から顔を背けた。
父はたじろぐ事なく、静かに輝李を促す。
「輝李…部屋に戻っていなさい」
「…は、はい」
これ以上は、ここに居ても無駄なのだろうと悟った輝李は、仕方なく父の部屋から出ていく。
夜になっても乙が部屋に戻る事はなかった。
屋敷中を探したが乙は、どこにも居ない。
『乙…いったい何処にいるの?』
そんな日が何日も続いた。
次の朝には乙は、部屋から出てくるというのに、夕方から突然、姿が見えなくなる。
そして決まって母がランプを持ち、どこかに出かけるのだ。
何度か後を付けようかと、試みたが必ずメイドや執事に見つかり部屋に戻されてしまう。
『この家は、何かおかしい…』
輝李は、子供心に何となく違和感を覚えた。
二人が向かい合いお互いに、お辞儀をすると手を取り合い、流れるようにリズムに乗った。
楽しい時間は、あっという間に時を流した。
ダンスの時間が終わると乙は、また自室へ戻っていく。
時折、乙が自室に居ない時があった。
不思議に思いながら、父の部屋の前を通った時だった。
パシン!!
何かを打ったような高い音が響いた。
その音に輝李は、そっと部屋をかすかに開けて覗いた。
中には、父と乙がいる。
「…また、レッスンが遅れたな。
お前は、そんな簡単な事も出来ないのか…。
そんな事で月影を名乗れると思っているのか」
「…でも…」
パシッ!!
静かに言い捨てる父の平手が乙の頬を打った。
「!!!」
輝李は、目の前の光景が信じられなかった。
確かにあまり感情を出さず物静かなりにも優しい、あの父親が乙を打っている。
初めて見る、父の冷たい瞳…。
「…ッ」
「口答えをする暇があるのなら、やるべき事をこなせ」
「…はい…」
いつの間にか、輝李はドアを開け茫然と父に声をかけていた。
「…父様…何…してる…の?」
乙はハッとすると口元に手の甲を添え、輝李から顔を背けた。
父はたじろぐ事なく、静かに輝李を促す。
「輝李…部屋に戻っていなさい」
「…は、はい」
これ以上は、ここに居ても無駄なのだろうと悟った輝李は、仕方なく父の部屋から出ていく。
夜になっても乙が部屋に戻る事はなかった。
屋敷中を探したが乙は、どこにも居ない。
『乙…いったい何処にいるの?』
そんな日が何日も続いた。
次の朝には乙は、部屋から出てくるというのに、夕方から突然、姿が見えなくなる。
そして決まって母がランプを持ち、どこかに出かけるのだ。
何度か後を付けようかと、試みたが必ずメイドや執事に見つかり部屋に戻されてしまう。
『この家は、何かおかしい…』
輝李は、子供心に何となく違和感を覚えた。
0
小説が音声と映像で流れ出す!?
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる