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陰陽の鏡
陰陽の鏡10
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この日の半日は妙に長く感じた。
夕方になり、乙が医務室に向かうと由佳が不思議そうな顔をしていた。
「乙様?野中ならさっき、乙様が迎えに来たからと言って部屋に戻りましたよ?」
「え?」
乙が急いで自室に戻ったが、その間に瀾にすれ違う事すらなかった。
「野中!?」
名を呼びながら部屋に入ったが、静まり返っていた。
部屋中を探すとベッドルームの乙のベッドの上に俯きながら座っていた。
「野中…良かった、戻っていたんだな」
乙が瀾に手を伸ばそうとした時だった。
───パシッ!!
乙の手を払い除けると瀾はポツリと呟いた。
「…うそつき…」
「…え?」
「嘘つき!!
ずっと一緒にいるって言った!!」
「野…中?」
顔をあげた瀾は涙を流し、訴えてきた。
瞳には光を帯びていた。
「呼んだから来たのに!!
嘘つき!!嘘ツキ!!
瀾って呼んだ!!!
ずっと呼んでた!!
私の名前!!なのに…なのに!!」
瀾は乙を押し退けた。
乙がよろけて腰を付くと瀾はベッドルームを出て行った。
「あれが野中…?」
乙は困惑を隠せなかった。
何故なら乙を押し退けた力は、とても一人の少女が出したとは思えない程のものだったからだ。
乙が急いでリビングに出ると、そこに瀾の姿はなく、部屋のドアが微かに開いていた。
乙は、顔に一気に血の気が引いていくのが自分で解った。
「外に出たのか!野中!!」
乙は、急いで部屋から出ると船内中を探し回った。
遊技場、甲板、パーティーホール、食堂、船内のトイレに至るまで探し回ったが瀾は何処にもいない。
「ハァハァ…こんな時、無駄に広いっていうのも考えもんだな…
瀾…どこにいるんだ…」
息を切らし、辺りを見回した時だった。
「きゃあぁあ───!!!」
船内に響き渡る悲鳴…
「何だ!まさか!!」
乙は、その悲鳴の聞こえた場所に急いだ!!
夕方になり、乙が医務室に向かうと由佳が不思議そうな顔をしていた。
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「え?」
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「野中!?」
名を呼びながら部屋に入ったが、静まり返っていた。
部屋中を探すとベッドルームの乙のベッドの上に俯きながら座っていた。
「野中…良かった、戻っていたんだな」
乙が瀾に手を伸ばそうとした時だった。
───パシッ!!
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「…うそつき…」
「…え?」
「嘘つき!!
ずっと一緒にいるって言った!!」
「野…中?」
顔をあげた瀾は涙を流し、訴えてきた。
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「呼んだから来たのに!!
嘘つき!!嘘ツキ!!
瀾って呼んだ!!!
ずっと呼んでた!!
私の名前!!なのに…なのに!!」
瀾は乙を押し退けた。
乙がよろけて腰を付くと瀾はベッドルームを出て行った。
「あれが野中…?」
乙は困惑を隠せなかった。
何故なら乙を押し退けた力は、とても一人の少女が出したとは思えない程のものだったからだ。
乙が急いでリビングに出ると、そこに瀾の姿はなく、部屋のドアが微かに開いていた。
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「きゃあぁあ───!!!」
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