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陰陽の鏡

陰陽の鏡6

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乙は、横目で瀾を見ると一歩近づき、少女の腰に手をまわし口を開いた。

「吸い込まれる様な君の瞳は
近距離まで近づくと
顔を赤く染めてくれる…
もう、その唇を奪いたくなるほど
どうしようもなく胸が高鳴って
手を伸ばして奪いたくなる…
叶えてくれと懇願したら
迷惑だと拒んしまうか?」
「え…///」

何の脈絡もなく唐突な乙の言葉に瀾は、思わず胸を鳴らした。

「野中…」
「せ、先輩ッ/// な、何を言って…//」
「聞こえなかったのか?」

ジッと見つめて瀾を抱き寄せると先程の言葉を繰り返し、その少女の頬に触れ、瀾の唇を親指で優しくなぞってくる乙に思わず顔を赤く染める。

「わ…私…///
そんな…つもりじゃ…//」

しかし、妖艶な乙の眼差しとその声に瀾の瞳は心なしかウルリとして文字通り頬を赤く染めていた。
すると乙は不意にニッコリと微笑むと先程とは真逆に爽やかに口を開いた。

「これなら覚えられるだろ?」
「へ?」

あまりの豹変ぶりに瀾の目が天になる。

「気がつかなかったのか?」
「え?え?」

既に瀾の脳内はパニック気味だ。


乙は瀾からスッと離れると、状況を説明し始めた。

「人は予想外の出来事に出会すと、その記憶は脳裏に焼き付いて鮮明になる。
それが不馴れなもので体に染み付くようなものなら尚更だ」
「え?」
「さっきの言葉はある法則に基づいて俺が実演して野中の頭と体に記憶させたんだよ」
「ある法則…?」

瀾が疑問を投げると乙が答えた。

「俺達は、さっきまで何の話をしていた?」
「惑星について?」
「そうだ。語呂合わせって知ってるか?
≪いい国(1192)作ろう鎌倉幕府≫って言うの」
「はい…」

「さっきのもソレだったわけだ。
つまりあれは…

(水)吸い込まれる様な君の瞳は

(金)近距離まで

(地)近づくと

(火)顔を赤く染めてくれる…

(木)もう、その唇を奪いたくなるほど

(土)どうしようもなく胸が高鳴って

(天)手を伸ばして奪いたくなる…

(海)叶えてくれと懇願したら

(冥)迷惑だと拒んしまうか?

頭文字を平仮名にして取っていくと
≪水金地火木土天海冥≫となるわけだ。
火星と海王星は、ちょっと上手くいかなかったけどな。
それと今は冥王星が惑星として除外されたから少し合わないが」
「じゃあ…私…///」

自分の勘違いに気がつくと瀾はあまりの恥ずかしさに途端に赤面した。


「先輩、酷いですよぉ///」
「でも、もう忘れないだろ?」

乙がそうウインクすると少し膨れっ面ながらもコクンと頷いたのだった。 

「野中…」
「なんですか?」

少し膨れている瀾を真剣に見つめて

「今のが本気だったら…野中はどうする…?」
「え…///」

真っ直ぐ見つめて来る乙に、目が離せなくなる。

「クス…今のも冗談だ♪」
「もう!先輩いじわる!!!///」
「本当に純粋なんだな、野中は♪」

クスクスと笑顔を贈る乙だったが、その胸は締め付けられるようだった。

『本気だと伝えたられたら、どれだけ楽だろうな…』



    
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