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陰陽の鏡
陰陽の鏡3
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背後から首に掛けて回された腕に驚くと無機質な声が耳元で響く。
「キ…ノト…サマ…」
そこには先程、眠ったと思っていた瀾がいた。
昨晩と同じく瞳には、光がなく朦朧と佇んでいる。
「の、野中…」
「チガウ…ナマエ…」
「瀾…」
乙が下の名で呼ぶと納得したようにコツンと頭を肩に置くとまた人形は囁いた。
「傍に…居テ…」
「でも今は…」
「傍に…居テ…」
繰り返される無機質な言葉に乙は瀾の手を取ると自分の膝の上に横向きに座らせた。
「ココ…好キ…」
「…そうか…」
「ズット…一緒…居ル」
「ああ…」
瀾は乙に寄り添うとキスをねだり、乙はそれを辛そうに受け止めた。
そして、また乙がレポート用紙に取りかかろうとすると瀾はそれを拒んだ。
「私を見テ…」
「…でもまだ終わってない
これは明日からの野中の…」
そこまで言うと瀾の形相は殺意にも似たものへと豹変したのだ!!
「野中…のナか…野中!!
チガウッ!!!チガウッ!!!」
途端に乙の首を絞め始めた!!
一気に走る窒息感と頸動脈の鬱血でこめかみに痛みが走る。
「…ッ!!……な…み…」
あまりの豹変ぶりに戸惑いながら必死に声に出すと、その束縛は緩んでいく。
そして、それを聞いた人形は満足そうに薄ら笑いを浮かべた。
──時刻は既に真夜中を指す頃、薄明かるいベッドルームには、二人の重なる影があった。
「…ッ…クッ…な、瀾…」
ベッドに横になり、上半身の衣類ははだけた乙のその上には瀾が股がり、その首肩を幾度となく噛みついていた。
「此処ハ…私ノ場所…」
「痛ッ…クッ…ッ…」
繰り返される激しい痛みと皮膚が噛み裂ける感触が生々しく、乙の肩には血が滲み始めていた。
片腕で瀾を支え、もう片方はシーツを握りしめ、なすがままに激痛に堪えていた。
「ワタシの場所…私ノ証…」
「…グッ……ウッ…瀾…
そんな…事しなくても…ッ…
俺は、クッ…!!ここにいる…」
「ずっと…一緒?」
「ああ、一緒にいる」
瀾は乙の上で朦朧と小首を傾げたが、やがて傷付いた乙の肩を猫のように舐め始めた。
傷口に触れる舌は、赤く噛み痕の付いた証にヒリヒリと熱を持ちながら脈を打つ。
乙が何も抵抗せず耐えていたのは、罪悪感とそれで少しでも瀾が救われるならという想いがそうさせていたからだった。
例え、それが傲慢で自分にとっての綺麗事なエゴであっても、そうせざるを得ないほどにソレは乙の心を蝕んでいたのだ。
「キ…ノト…サマ…」
そこには先程、眠ったと思っていた瀾がいた。
昨晩と同じく瞳には、光がなく朦朧と佇んでいる。
「の、野中…」
「チガウ…ナマエ…」
「瀾…」
乙が下の名で呼ぶと納得したようにコツンと頭を肩に置くとまた人形は囁いた。
「傍に…居テ…」
「でも今は…」
「傍に…居テ…」
繰り返される無機質な言葉に乙は瀾の手を取ると自分の膝の上に横向きに座らせた。
「ココ…好キ…」
「…そうか…」
「ズット…一緒…居ル」
「ああ…」
瀾は乙に寄り添うとキスをねだり、乙はそれを辛そうに受け止めた。
そして、また乙がレポート用紙に取りかかろうとすると瀾はそれを拒んだ。
「私を見テ…」
「…でもまだ終わってない
これは明日からの野中の…」
そこまで言うと瀾の形相は殺意にも似たものへと豹変したのだ!!
「野中…のナか…野中!!
チガウッ!!!チガウッ!!!」
途端に乙の首を絞め始めた!!
一気に走る窒息感と頸動脈の鬱血でこめかみに痛みが走る。
「…ッ!!……な…み…」
あまりの豹変ぶりに戸惑いながら必死に声に出すと、その束縛は緩んでいく。
そして、それを聞いた人形は満足そうに薄ら笑いを浮かべた。
──時刻は既に真夜中を指す頃、薄明かるいベッドルームには、二人の重なる影があった。
「…ッ…クッ…な、瀾…」
ベッドに横になり、上半身の衣類ははだけた乙のその上には瀾が股がり、その首肩を幾度となく噛みついていた。
「此処ハ…私ノ場所…」
「痛ッ…クッ…ッ…」
繰り返される激しい痛みと皮膚が噛み裂ける感触が生々しく、乙の肩には血が滲み始めていた。
片腕で瀾を支え、もう片方はシーツを握りしめ、なすがままに激痛に堪えていた。
「ワタシの場所…私ノ証…」
「…グッ……ウッ…瀾…
そんな…事しなくても…ッ…
俺は、クッ…!!ここにいる…」
「ずっと…一緒?」
「ああ、一緒にいる」
瀾は乙の上で朦朧と小首を傾げたが、やがて傷付いた乙の肩を猫のように舐め始めた。
傷口に触れる舌は、赤く噛み痕の付いた証にヒリヒリと熱を持ちながら脈を打つ。
乙が何も抵抗せず耐えていたのは、罪悪感とそれで少しでも瀾が救われるならという想いがそうさせていたからだった。
例え、それが傲慢で自分にとっての綺麗事なエゴであっても、そうせざるを得ないほどにソレは乙の心を蝕んでいたのだ。
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