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それぞれの想い
それぞれの想い1
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※1)小説『アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー』
〔それぞれの想い〕にリンク
夏休みが近くなった頃それは、突然やってきた。
授業の為、教室移動をしようと三階の廊下を歩く乙が、ふとの窓の外に目にをやると入ってきたのは、輝李と見知らぬ他校の生徒だった。
ただならぬ雰囲気なのは、見てすぐ解る。
乙は、すぐに輝李のもとへ向かった。
何故なら輝李のジャケットの中には、サバイバルナイフが忍ばせてあったのが上から見たときに見えていたからだ。
『ちっ!!輝李の奴、今度は何をしでかすつもりだ。
全く手間のかかる!!』
乙が着いた時には、輝李は相手の体に馬乗りになり、ナイフを振り下ろしていた。
『クッ!!あの馬鹿!!』
パシッ!!
刃先が相手の体を貫く寸での所で輝李の腕を掴むと乙は静かに口を開いた。
「…止めておけ」
「乙!!」
突然現れた乙に驚く輝李は、仕方なく相手から降りるとナイフをしまった。
下になっていた人物は、ムクッと起き上がると、その場で座り込み鋭い眼光で睨むと言葉をついた。
「…アンタの方が 月影 乙か」
「ああ。…アンタは?」
乙が静かに口を開くと、その人物は答えた。
「… 小田切 隼人」
「小田切…隼人、そうか。
…悪いが勝負はお預けだ。
コイツは俺が貰っていく」
「…逃げるのか?乙さんよぉ」
一瞬、乙の眉間が動いたが、すぐに冷静さを取り戻し答えた。
「…いずれ必ず借りは返しに行く」
それだけ言うと輝李の手を引き、その場を立ち去った。
「…チッ。上手く逃げられたな」
隼人はそう零すと学院を後にした。
── 一方、乙達は…
「何で止めたのさ!!」
裏庭から薔薇園に移動すると、輝李は途端に食って掛かった。
片手をポケットに入れ、乙は静かに口を開いた。
「…自分の手の内は最初に見せるものじゃない」
「あ、そっかぁ!!そうだよね♪
もっと楽しまなくちゃね」
ユラユラと体を揺らし楽しそうに笑う輝李に乙は、
「ああ…そうだな…」
と、静かに答えると輝李に向きを変え、手の甲を飛ばした。
パシッ!!!!
「ウッ!!」
一瞬、時がスローモーションのように流れ、サァーと吹いた風に薔薇の花びらが二人の間を流れてゆく。
昼休みになっても乙は教室に戻ってはこなかった。
「乙の奴、授業さぼって一体どこに行ったんだ?」
神流が廊下の曲がり角を曲がった時、誰かとぶつかった。
「アッ!!」
「っと。」
それは輝李だった。
「あ…ごめん…」
「!!」
俯く輝李のその頬は赤く少し、腫れていた。
神流は、立ち去ろうとする輝李の腕を無意識に掴む。
「…輝李ちゃん…?」
「何…?僕、少し急いでるんだ…」
「あ…いや、何でもないんだ…」
そういうと神流はスッと手を離した。
今にも泣きそうな顔をしていた輝李を見送ると小さく溜め息をついて、屋上へと向かった。
〔それぞれの想い〕にリンク
夏休みが近くなった頃それは、突然やってきた。
授業の為、教室移動をしようと三階の廊下を歩く乙が、ふとの窓の外に目にをやると入ってきたのは、輝李と見知らぬ他校の生徒だった。
ただならぬ雰囲気なのは、見てすぐ解る。
乙は、すぐに輝李のもとへ向かった。
何故なら輝李のジャケットの中には、サバイバルナイフが忍ばせてあったのが上から見たときに見えていたからだ。
『ちっ!!輝李の奴、今度は何をしでかすつもりだ。
全く手間のかかる!!』
乙が着いた時には、輝李は相手の体に馬乗りになり、ナイフを振り下ろしていた。
『クッ!!あの馬鹿!!』
パシッ!!
刃先が相手の体を貫く寸での所で輝李の腕を掴むと乙は静かに口を開いた。
「…止めておけ」
「乙!!」
突然現れた乙に驚く輝李は、仕方なく相手から降りるとナイフをしまった。
下になっていた人物は、ムクッと起き上がると、その場で座り込み鋭い眼光で睨むと言葉をついた。
「…アンタの方が 月影 乙か」
「ああ。…アンタは?」
乙が静かに口を開くと、その人物は答えた。
「… 小田切 隼人」
「小田切…隼人、そうか。
…悪いが勝負はお預けだ。
コイツは俺が貰っていく」
「…逃げるのか?乙さんよぉ」
一瞬、乙の眉間が動いたが、すぐに冷静さを取り戻し答えた。
「…いずれ必ず借りは返しに行く」
それだけ言うと輝李の手を引き、その場を立ち去った。
「…チッ。上手く逃げられたな」
隼人はそう零すと学院を後にした。
── 一方、乙達は…
「何で止めたのさ!!」
裏庭から薔薇園に移動すると、輝李は途端に食って掛かった。
片手をポケットに入れ、乙は静かに口を開いた。
「…自分の手の内は最初に見せるものじゃない」
「あ、そっかぁ!!そうだよね♪
もっと楽しまなくちゃね」
ユラユラと体を揺らし楽しそうに笑う輝李に乙は、
「ああ…そうだな…」
と、静かに答えると輝李に向きを変え、手の甲を飛ばした。
パシッ!!!!
「ウッ!!」
一瞬、時がスローモーションのように流れ、サァーと吹いた風に薔薇の花びらが二人の間を流れてゆく。
昼休みになっても乙は教室に戻ってはこなかった。
「乙の奴、授業さぼって一体どこに行ったんだ?」
神流が廊下の曲がり角を曲がった時、誰かとぶつかった。
「アッ!!」
「っと。」
それは輝李だった。
「あ…ごめん…」
「!!」
俯く輝李のその頬は赤く少し、腫れていた。
神流は、立ち去ろうとする輝李の腕を無意識に掴む。
「…輝李ちゃん…?」
「何…?僕、少し急いでるんだ…」
「あ…いや、何でもないんだ…」
そういうと神流はスッと手を離した。
今にも泣きそうな顔をしていた輝李を見送ると小さく溜め息をついて、屋上へと向かった。
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