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秘密の部屋
秘密の部屋5
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第二部のパーティーの会場には、年齢層がガラッと変わっていた。
若々しい青年や15~26位までの幅広い女性達がパーティーを楽しんでいた。
「よぅ、乙!!
やっと帰ってきたのか?」
一人の青年が話し掛けてきた。
「ああ」
「どうだったんだ?海外は」
「別にどうと言うことはない」
「随分、長く居たじゃないか」
「まぁな」
「気に入った女でも居たのか?」
「クス…さぁな…」
クスリと謎めいた微笑みを浮かべると、乙がパーティー会場にいる事を見つけた少女達は、エレガントながらも我先にと乙の側に歩み寄ってきた。
「乙、ひどいのね。
この私を置いて海外へ逃げるなんて♪」
いつの間にか少女達に囲まれ瀾の位置からは乙の顔がやっと、見えると言うところだろうか。
楽しそうに話す乙を横目に瀾は少し淋しそうに見つめたが、ふと乙と目が合うとクールにウインクした。
瀾はハッと赤面すると急いで持ち場に急いだ。
──日も傾き、パーティーは無事終わりを告げた。
乙の身の回りの世話とパーティーの後片付けに、さすがに瀾も疲労を隠せないで居た。
一日の仕事が終わると倒れこむようにベッドに体を預け、あっという間に眠りの世界へ入っていく。
瀾はその日、夢を見た。
いつものように乙の部屋へ紅茶を運びに行くと、ベッドの上で乙に寄り添う女の子達。
キスを交わし、乙にすがって快楽を欲している。
瀾は、ただ見ているしか出来なかった。
瀾と目が合うと、乙はその場で指先をヒラヒラとさせクールに口を開く。
「お前もこっちで楽しむか?」
瀾は一歩後退る。
その感情の籠もっていない瞳は、パーティーの前に冷たくされていた瞳そのものだった。
瀾が答える間もなく、あっという間に女の子に囲まれ乙と女の子達の無数の手が身体をはい回る。
「アッ///いや…いやぁあ!!」
ハッと目を覚まし飛び起きると、自分が叫んでいた事に気が付いた。
息を荒くし涙が一粒頬を伝う。
心臓の鼓動が早い。
「はぁはぁはぁ…」
瀾の胸は、痛みと熱さで鼓動をさらに早くする。
「…どうして…あんな夢…、…乙様…」
結局、瀾はそれから眠ることが出来ずにいた。
また、あの夢の続きを見てしまいそうだったからだ。
『私は…乙様が好き…
でも…乙様は?
乙様にとって、私はどんな風に映っているんだろう…』
そう、幾度となく肌をかさね愛し合ったが、瀾はまだ一度も乙の口から愛を語る言葉を聴いてはいなかったのだ。
もちろん、〔可愛い〕〔綺麗だ〕とは口にしても〔好きだ〕愛しているといった言葉は聴いた事がない。
唯一、パーティーでナンパされた瀾を助けるために言った言葉が
【俺の女に何か用か?】だった。
しかし、それはあくまでも瀾自身に向けられた言葉ではない。
ミーティングが終わっても、仕事をしていても瀾の頭はそんな事でいっぱいだった。
『私は…』
ズキン…
瀾の胸に大きな痛みが走る。
そんな事を考えているうちに、危うく乙の部屋を通り過ぎるところだった。
若々しい青年や15~26位までの幅広い女性達がパーティーを楽しんでいた。
「よぅ、乙!!
やっと帰ってきたのか?」
一人の青年が話し掛けてきた。
「ああ」
「どうだったんだ?海外は」
「別にどうと言うことはない」
「随分、長く居たじゃないか」
「まぁな」
「気に入った女でも居たのか?」
「クス…さぁな…」
クスリと謎めいた微笑みを浮かべると、乙がパーティー会場にいる事を見つけた少女達は、エレガントながらも我先にと乙の側に歩み寄ってきた。
「乙、ひどいのね。
この私を置いて海外へ逃げるなんて♪」
いつの間にか少女達に囲まれ瀾の位置からは乙の顔がやっと、見えると言うところだろうか。
楽しそうに話す乙を横目に瀾は少し淋しそうに見つめたが、ふと乙と目が合うとクールにウインクした。
瀾はハッと赤面すると急いで持ち場に急いだ。
──日も傾き、パーティーは無事終わりを告げた。
乙の身の回りの世話とパーティーの後片付けに、さすがに瀾も疲労を隠せないで居た。
一日の仕事が終わると倒れこむようにベッドに体を預け、あっという間に眠りの世界へ入っていく。
瀾はその日、夢を見た。
いつものように乙の部屋へ紅茶を運びに行くと、ベッドの上で乙に寄り添う女の子達。
キスを交わし、乙にすがって快楽を欲している。
瀾は、ただ見ているしか出来なかった。
瀾と目が合うと、乙はその場で指先をヒラヒラとさせクールに口を開く。
「お前もこっちで楽しむか?」
瀾は一歩後退る。
その感情の籠もっていない瞳は、パーティーの前に冷たくされていた瞳そのものだった。
瀾が答える間もなく、あっという間に女の子に囲まれ乙と女の子達の無数の手が身体をはい回る。
「アッ///いや…いやぁあ!!」
ハッと目を覚まし飛び起きると、自分が叫んでいた事に気が付いた。
息を荒くし涙が一粒頬を伝う。
心臓の鼓動が早い。
「はぁはぁはぁ…」
瀾の胸は、痛みと熱さで鼓動をさらに早くする。
「…どうして…あんな夢…、…乙様…」
結局、瀾はそれから眠ることが出来ずにいた。
また、あの夢の続きを見てしまいそうだったからだ。
『私は…乙様が好き…
でも…乙様は?
乙様にとって、私はどんな風に映っているんだろう…』
そう、幾度となく肌をかさね愛し合ったが、瀾はまだ一度も乙の口から愛を語る言葉を聴いてはいなかったのだ。
もちろん、〔可愛い〕〔綺麗だ〕とは口にしても〔好きだ〕愛しているといった言葉は聴いた事がない。
唯一、パーティーでナンパされた瀾を助けるために言った言葉が
【俺の女に何か用か?】だった。
しかし、それはあくまでも瀾自身に向けられた言葉ではない。
ミーティングが終わっても、仕事をしていても瀾の頭はそんな事でいっぱいだった。
『私は…』
ズキン…
瀾の胸に大きな痛みが走る。
そんな事を考えているうちに、危うく乙の部屋を通り過ぎるところだった。
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