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猫遊戯

猫遊戯(ねこじゃらし)9

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家に着くと、なみきのとの所までいそいそと駆け寄ってきた。

「乙様、お帰りなさいませ」

乙がフルフェイスを外し、軽く首を振りながら風を感じる。
瀾に気が付くと、髪を掻き上げチラリと見た。

「瀾、どうした?
こんな所まで出なくても良いんだぞ?」
「ふぁ~///」

ヘルメットを外し、髪を掻き上げたきのとの姿は、なみにとっては悩殺バリューセットというところだろうか。
瀾は急に腰が砕け、その場に腰を着いた。

「な、瀾!!」

乙は急いでバイクから降りると、瀾に駆け寄った。

「大丈夫か?」
「は、はい…///」

間近に迫る乙の顔に、思わず瀾は目を閉じてキスを期待してしまう。

「こらこら。
こんな場所では、誰かに見られてしまうだろ?」
「あっ!!」

瀾の手を取り、立ち上がらせると頭をポフンと撫でる。

「出迎えありがとうな。
じゃあ、またお茶の時間にな」

きのとは静かに屋敷に入っていく。
なみは何となく残念そうに、しばらく乙を見つめていたが仕事に戻るため、屋敷に入っていった。



乙は、部屋に戻ると大きな溜め息を吐き、倒れこむようにソファーにドサッと座る。
手の甲を額に添え、目を伏せる。

〔「私…貴方の事、本当にのよっ!!」
 「待って!!乙!! 嫌よ。乙ぉ~!!」〕

リアの最後の言葉が聞こえた気がした。

「…っ…」

不本意だったのかも知れない。

「…愛してる…か…」

愛という言葉はきのとにとっては、不誠実な言葉だった。
またしても、遠い過去に乙に向けられた言葉が甦る。

〔 「乙の事を解ってくれる人が、いつか…きっと」〕※1

『…馬鹿馬鹿しい。
愛なんて、俺には芽生えることはない。
本気になったって、俺を見ているわけじゃない事くらい手に取るように解る…』

女達は、を求めて、声を掛ければすんなり着いてくる。
そんな事が繰り返される中、乙の心の中には常に闇が渦を巻いてモヤモヤと漂っていた。
そういう意味ではある意味、双子の妹の輝李きりよりも冷酷な一面なのかもしれない。

きのと自身が、これから起こる事を事前に頭が回らなかったわけでも罪悪感が無いわけでもない。
しかしあの時、部屋に留まりリアを輝李の手元から救わなかった自分がいたのも事実だ。


※1)小説『アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー』
〔狂愛の慈愛6〕参照
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