【R18】アールグレイの昼下がり ー双子の姉・乙編ー

Silence

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猫遊戯

猫遊戯(ねこじゃらし)5

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──── 数週間前…


リアレインは、高校のキャンパスのベンチで一人淋しくたたずんでいた。
最後にきのとに会ったのはいつだっただろうか…。
遠くない過去のはずなのに淋しさから、その期間ときが遠く感じる。

「勝手な人…」

いつの間にか、ポツリと言葉が声を誘導していた。
割り切った関係だった事くらいは、充分解っていた。
しかし、きのとはあまり感情を出さないが会うたびに優しく、二人の時間を大切にしてくれた。
〕ではなく〔〕と勘違いしてしまうほどに…。

自分は沢山いる〔ラブペット〕の一人でしかない。
しかし、いつの間にかリアレインの中では、きのとの存在は大きくなっていたのだ。


コツコツ…コツコツ…

一つの足音が近づき、リアレインの前で静かに止まる。

「…淋しそうだね」

優しい声の持ち主。ナンパ…?
そんな風に思った彼女は、今のこの心境の中で遊ぶ気にもなれず俯いたまま、その足を無視することにした。
声の主は、めげずに再びリアレインに向けて声を発した。

「乙に会えないのが、そんなに淋しいなら僕が代わりに相手をしてあげるよ?」

きのとは手が早く、沢山のラブペットがいることは有名な話だ。
その時、呼ばれていた通り名が〔沈黙のseduction〕だった。
故に乙のお下がりを狙い、こんな風にナンパを受ける事も珍しくはなかった。
今回もその類だろう…。

「僕なら君の望みを【】に叶えてあげる事が出来るよ」

声の主は自信に満ち溢れている。

『何をぬけぬけと…!
清純そうなお坊っちゃまみたいな声をしているくせに、よく言うわ。
コイツも他のくだらない連中と何も変わらない!』

「貴方なんかに乙の代わりが…!!」

リアレインは半ば苛立ちながら、相手を睨み付けようと顔を上げる。
陽射しを背負い顔はよく見えないが声の主は、手を差出し低い声でこう言ったのだ。

「俺の腕の中で、ずっとお前を見ていたい。
…おいで…。
もう二度とリアを離さないと約束するから」
「!!!…きの…」

リアレインは耳に入って来た声にハッと息を飲み、思わず耳を疑った。
それは…まぎれもなく【】だったからだ。
しかも、乙なら絶対に口にしない言葉ばかりだ。
声の主が自信に満ち【】と言った理由が解った。
それは、からだ。

「リア…愛してる」

声の主が発したその言葉にリアレインは思わず、無意識に輝李きりの胸に飛び込んでいたのだった ───


※)小説『アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー』
〔Rearaine(リアレイン)6〕を転載。
事のあらすじは当作品にて…
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