68 / 166
猫遊戯
猫遊戯(ねこじゃらし)5
しおりを挟む
──── 数週間前…
リアレインは、高校のキャンパスのベンチで一人淋しくたたずんでいた。
最後に乙に会ったのはいつだっただろうか…。
遠くない過去のはずなのに淋しさから、その期間が遠く感じる。
「勝手な人…」
いつの間にか、ポツリと言葉が声を誘導していた。
割り切った関係だった事くらいは、充分解っていた。
しかし、乙はあまり感情を出さないが会うたびに優しく、二人の時間を大切にしてくれた。
〔ラブペット〕ではなく〔恋人〕と勘違いしてしまうほどに…。
自分は沢山いる〔ラブペット〕の一人でしかない。
しかし、いつの間にかリアレインの中では、乙の存在は大きくなっていたのだ。
コツコツ…コツコツ…
一つの足音が近づき、リアレインの前で静かに止まる。
「…淋しそうだね」
優しい声の持ち主。ナンパ…?
そんな風に思った彼女は、今のこの心境の中で遊ぶ気にもなれず俯いたまま、その足を無視することにした。
声の主は、めげずに再びリアレインに向けて声を発した。
「乙に会えないのが、そんなに淋しいなら僕が代わりに相手をしてあげるよ?」
乙は手が早く、沢山のラブペットがいることは有名な話だ。
その時、呼ばれていた通り名が〔沈黙のseduction〕だった。
故に乙のお下がりを狙い、こんな風にナンパを受ける事も珍しくはなかった。
今回もその類だろう…。
「僕なら君の望みを【確実】に叶えてあげる事が出来るよ」
声の主は自信に満ち溢れている。
『何をぬけぬけと…!
清純そうなお坊っちゃまみたいな声をしているくせに、よく言うわ。
コイツも他のくだらない連中と何も変わらない!』
「貴方なんかに乙の代わりが…!!」
リアレインは半ば苛立ちながら、相手を睨み付けようと顔を上げる。
陽射しを背負い顔はよく見えないが声の主は、手を差出し低い声でこう言ったのだ。
「俺の腕の中で、ずっとお前を見ていたい。
…おいで…。
もう二度とリアを離さないと約束するから」
「!!!…きの…」
リアレインは耳に入って来た声にハッと息を飲み、思わず耳を疑った。
それは…まぎれもなく【乙の声】だったからだ。
しかも、乙なら絶対に口にしない言葉ばかりだ。
声の主が自信に満ち【確実に】と言った理由が解った。
それは、乙の声が出せるからだ。
「リア…愛してる」
声の主が発したその言葉にリアレインは思わず、無意識に輝李の胸に飛び込んでいたのだった ───
※)小説『アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー』
〔Rearaine(リアレイン)6〕を転載。
事のあらすじは当作品にて…
リアレインは、高校のキャンパスのベンチで一人淋しくたたずんでいた。
最後に乙に会ったのはいつだっただろうか…。
遠くない過去のはずなのに淋しさから、その期間が遠く感じる。
「勝手な人…」
いつの間にか、ポツリと言葉が声を誘導していた。
割り切った関係だった事くらいは、充分解っていた。
しかし、乙はあまり感情を出さないが会うたびに優しく、二人の時間を大切にしてくれた。
〔ラブペット〕ではなく〔恋人〕と勘違いしてしまうほどに…。
自分は沢山いる〔ラブペット〕の一人でしかない。
しかし、いつの間にかリアレインの中では、乙の存在は大きくなっていたのだ。
コツコツ…コツコツ…
一つの足音が近づき、リアレインの前で静かに止まる。
「…淋しそうだね」
優しい声の持ち主。ナンパ…?
そんな風に思った彼女は、今のこの心境の中で遊ぶ気にもなれず俯いたまま、その足を無視することにした。
声の主は、めげずに再びリアレインに向けて声を発した。
「乙に会えないのが、そんなに淋しいなら僕が代わりに相手をしてあげるよ?」
乙は手が早く、沢山のラブペットがいることは有名な話だ。
その時、呼ばれていた通り名が〔沈黙のseduction〕だった。
故に乙のお下がりを狙い、こんな風にナンパを受ける事も珍しくはなかった。
今回もその類だろう…。
「僕なら君の望みを【確実】に叶えてあげる事が出来るよ」
声の主は自信に満ち溢れている。
『何をぬけぬけと…!
清純そうなお坊っちゃまみたいな声をしているくせに、よく言うわ。
コイツも他のくだらない連中と何も変わらない!』
「貴方なんかに乙の代わりが…!!」
リアレインは半ば苛立ちながら、相手を睨み付けようと顔を上げる。
陽射しを背負い顔はよく見えないが声の主は、手を差出し低い声でこう言ったのだ。
「俺の腕の中で、ずっとお前を見ていたい。
…おいで…。
もう二度とリアを離さないと約束するから」
「!!!…きの…」
リアレインは耳に入って来た声にハッと息を飲み、思わず耳を疑った。
それは…まぎれもなく【乙の声】だったからだ。
しかも、乙なら絶対に口にしない言葉ばかりだ。
声の主が自信に満ち【確実に】と言った理由が解った。
それは、乙の声が出せるからだ。
「リア…愛してる」
声の主が発したその言葉にリアレインは思わず、無意識に輝李の胸に飛び込んでいたのだった ───
※)小説『アールグレイの月夜 ー双子の妹・輝李編ー』
〔Rearaine(リアレイン)6〕を転載。
事のあらすじは当作品にて…
0
小説が音声と映像で流れ出す!?
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
厳選されたCV達がお送りする臨場感!!
YouTubeにてボイスドラマ公開中!!
★アールグレイの月夜(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSUVpSKdpmNMNom6F3FWffNL
★アールグレイの昼下がり(YouTube版)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0mziGmecVSXcYllzM7PGJbwUaHxBfz0L
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる