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スイートホーム
スイートホーム2
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中に入り、食堂室ではなく部屋に瀾を案内する。
「さ、そこのソファーに掛けていてくれるか?
今持って来るよ」
瀾の手を取りソファーへエスコートすると、ひざまずき手の甲にキスをして部屋を出ていった。
部屋の中は屋敷とは少し違い、何かの撮影セットに使うような素敵な部屋だった。
しかし、いくら待っても乙が来る気配はなく段々と淋しくなったのか、瀾は部屋のドアをそっと開け廊下を見渡した。
沢山のドアが並んでいる…。
不思議と鍵はかかっておらず一つ一つ開けていくと、それぞれが別世界のようにレイアウトされている。
まるで森の中にいるような青々とツタが飾ってある部屋。
メルヘンなケーキの上を型取ったような部屋。
ロココ調の部屋。
時代劇に出そうな和室の部屋。
「凄い…、何でこんなに沢山の種類のお部屋が…」
カタ…カタン…
廊下の突き当たりの方から、微かに物音が聞こえる。
瀾は唾を飲み込み、恐る恐る物音がする部屋へ向かっていった。
そうっとドアを開けると、物音ははっきりと聞こえる。
バリ…サク…ザク…
怖い…。
先程まで見てきた部屋よりは明かりは少なく、その奥から確実に得体の知れない音が聞こえる。
ゴクリ…
思わず生唾を飲み込み、意を決して中へ入ると…。
シャー…シャー…
包丁を持った手元が…
ゆっくり、こちらに視線を向け…
「…!!」
「見ぃ~たぁ~なぁ~!!!」
「きゃあぁあ~!!!!」
「ッ!!!」
瀾の悲鳴に相手はビクッと反応し、手元が狂いそうになる。
「な・なんだ、瀾か、脅かすよ」
…乙だった。
つい、自分の妄想に声を出してしまっていたらしい。
乙はジャケットを脱ぎシャツの袖を七分まで捲り、何かを作っていた。
「ごめんなさい!!乙様、何してるんですか?」
「どうせ、何も食べていないんだろう?
パーティーの料理とまではいかないが、ちょっとでも腹に入れた方が良いと思ってな。
空きっ腹じゃ、アルコールのまわりも早い」
乙の傍に近寄ると、カリッと焼けたトーストにレタスやベーコンの挟まったサンドイッチと、フワフワのハムエッグにささやかなサラダ達がオシャレに皿を飾っていた。
「わぁ、乙様スゴいですぅ!!」
「そうか?」
瀾が皿の料理を見て感動していると、途端に瀾のお腹がグゥ~っと意思表示をしはじめた。
乙は口元に軽く拳を添え、クスクスと笑った。
「あ…////」
「クスクス…どうやら腹は減っているらしいな、正直な身体だ」
「乙様のいじわるぅ///」
瀾は少し顔を赤くして俯いた。
「さ、行こうか。
その格好も、いつまでもしていたら疲れるだろう?
戻ったら部屋着を用意する」
乙はそう言うとカートにシャンパンとグラス、サンドイッチを乗せて、乙のジャケットを持った瀾と厨房を後にする。
廊下をゆっくり歩きながら、瀾は先程の部屋の数々について聞いてみた。
「乙様ぁ、このお屋敷には沢山の種類のお部屋があるんですね」
「え?」
解るか解らないか程度のほんの一瞬、乙の顔が凍り付いた気がした。
瞬きをしているうちに、乙の顔はいつもの優しい笑顔の表情に戻っていた。
「見たのか?」
「はい…ゴメンなさい」
「気に入った部屋はあったか?」
「どれも素敵なお部屋でした」
「何なら移動しても良いが?」
「今のお部屋で良いです。
乙様の連れてきてくれたお部屋だから…///」
「そうか」
優しく微笑み乙は瀾に答えた。
「……」
その後、乙の顔から笑みが消えていた事を1・2歩先を行く瀾には、気付く気配すらなかった。
「さ、そこのソファーに掛けていてくれるか?
今持って来るよ」
瀾の手を取りソファーへエスコートすると、ひざまずき手の甲にキスをして部屋を出ていった。
部屋の中は屋敷とは少し違い、何かの撮影セットに使うような素敵な部屋だった。
しかし、いくら待っても乙が来る気配はなく段々と淋しくなったのか、瀾は部屋のドアをそっと開け廊下を見渡した。
沢山のドアが並んでいる…。
不思議と鍵はかかっておらず一つ一つ開けていくと、それぞれが別世界のようにレイアウトされている。
まるで森の中にいるような青々とツタが飾ってある部屋。
メルヘンなケーキの上を型取ったような部屋。
ロココ調の部屋。
時代劇に出そうな和室の部屋。
「凄い…、何でこんなに沢山の種類のお部屋が…」
カタ…カタン…
廊下の突き当たりの方から、微かに物音が聞こえる。
瀾は唾を飲み込み、恐る恐る物音がする部屋へ向かっていった。
そうっとドアを開けると、物音ははっきりと聞こえる。
バリ…サク…ザク…
怖い…。
先程まで見てきた部屋よりは明かりは少なく、その奥から確実に得体の知れない音が聞こえる。
ゴクリ…
思わず生唾を飲み込み、意を決して中へ入ると…。
シャー…シャー…
包丁を持った手元が…
ゆっくり、こちらに視線を向け…
「…!!」
「見ぃ~たぁ~なぁ~!!!」
「きゃあぁあ~!!!!」
「ッ!!!」
瀾の悲鳴に相手はビクッと反応し、手元が狂いそうになる。
「な・なんだ、瀾か、脅かすよ」
…乙だった。
つい、自分の妄想に声を出してしまっていたらしい。
乙はジャケットを脱ぎシャツの袖を七分まで捲り、何かを作っていた。
「ごめんなさい!!乙様、何してるんですか?」
「どうせ、何も食べていないんだろう?
パーティーの料理とまではいかないが、ちょっとでも腹に入れた方が良いと思ってな。
空きっ腹じゃ、アルコールのまわりも早い」
乙の傍に近寄ると、カリッと焼けたトーストにレタスやベーコンの挟まったサンドイッチと、フワフワのハムエッグにささやかなサラダ達がオシャレに皿を飾っていた。
「わぁ、乙様スゴいですぅ!!」
「そうか?」
瀾が皿の料理を見て感動していると、途端に瀾のお腹がグゥ~っと意思表示をしはじめた。
乙は口元に軽く拳を添え、クスクスと笑った。
「あ…////」
「クスクス…どうやら腹は減っているらしいな、正直な身体だ」
「乙様のいじわるぅ///」
瀾は少し顔を赤くして俯いた。
「さ、行こうか。
その格好も、いつまでもしていたら疲れるだろう?
戻ったら部屋着を用意する」
乙はそう言うとカートにシャンパンとグラス、サンドイッチを乗せて、乙のジャケットを持った瀾と厨房を後にする。
廊下をゆっくり歩きながら、瀾は先程の部屋の数々について聞いてみた。
「乙様ぁ、このお屋敷には沢山の種類のお部屋があるんですね」
「え?」
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瞬きをしているうちに、乙の顔はいつもの優しい笑顔の表情に戻っていた。
「見たのか?」
「はい…ゴメンなさい」
「気に入った部屋はあったか?」
「どれも素敵なお部屋でした」
「何なら移動しても良いが?」
「今のお部屋で良いです。
乙様の連れてきてくれたお部屋だから…///」
「そうか」
優しく微笑み乙は瀾に答えた。
「……」
その後、乙の顔から笑みが消えていた事を1・2歩先を行く瀾には、気付く気配すらなかった。
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