29 / 166
水風 舞緋流
水風 舞緋流 (みずかぜ まひる)4
しおりを挟む
母親が最後に乙に渡した鍵。
「乙様に渡すよう言われました」
「…」
そういうと舞緋流は、また仕事を再開する。
光が射しているせいか、舞緋流の顔が母親と重なって見える。
「舞緋流」
「はい?」
「…この鍵は、もうしばらく持っていてくれないか?」
「かしこまりました。
私…この部屋が意外と気に入っていましたから」
「そうか」
舞緋流は少し不思議そうに答えた。
鈍い光が乙をまたセピア色の世界へと誘う。
また2人の間に沈黙が流れる。
メトロノームの秒針は部屋に響いていた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
舞緋流が仕事を終え、乙に目をやると乙は目を閉じ眠りに着いていた。
鍵に手を伸ばした時だった。
ポツリと木のテーブルに水の欠けらが落ちる。
「……!」
花瓶からの水滴かと思いきや、それは乙自身から零れた分身だった。
「…乙様?」
恐る恐る…ためらいながら乙の髪に触れてみた。
サラサラの髪…。
少しだけ撫でるように手を滑らせる。
人の温もりに気が付き微かに眼を開いた。
ハッとしてパッと手を離す。
「申し訳ありません!!」
「…かまわなぃ…」
ボーッとする中、舞緋流の手を力なく取り懐かしむように舞緋流の指に軽く唇を当てると、また眠りに着いた。
乙が目を覚ますと、日の光は沈みかけ夕刻を告げていた。
部屋には既に誰もおらず、部屋も綺麗に片付けられており入って来たときと何も変わらない。
乙の肩には舞緋流が掛けていたであろう膝掛が掛けられていた。
「…夢でも見ていたのか…?」
椅子から立ち上がるとパサッと膝掛け落ちる。
落ちた膝掛を手に取った。
あの舞緋流の眼差しがよぎった。
「舞緋流…?夢じゃなかった…のか…」
不思議な感覚だった。
確かにそこに居たのかもしれない舞緋流の存在は、おぼろ気で本当に居たのかすら解らなくなる。
部屋に戻っても、その感覚は抜けなかった。
ナイトキャップティーを片手にティーカップの紅茶を眺めてボーッとしている。
「乙様?」
瀾の声にハッとする。
仕事後にナイトキャップティーに誘っていたのだった。
「あ、ああ」
「どうかされました?」
「いや、何でもないよ♪」
「あの…どうして私をお茶に誘ってくれたんですか?」
「ただ、瀾と一緒にお茶を飲みたかっただけだ。
それとも理由が欲しいのか?」
カップを置くと瀾を抱き寄せキスを交わした。
「これが理由じゃ不満?」
「…ぃぇ…///」
「乙様に渡すよう言われました」
「…」
そういうと舞緋流は、また仕事を再開する。
光が射しているせいか、舞緋流の顔が母親と重なって見える。
「舞緋流」
「はい?」
「…この鍵は、もうしばらく持っていてくれないか?」
「かしこまりました。
私…この部屋が意外と気に入っていましたから」
「そうか」
舞緋流は少し不思議そうに答えた。
鈍い光が乙をまたセピア色の世界へと誘う。
また2人の間に沈黙が流れる。
メトロノームの秒針は部屋に響いていた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
舞緋流が仕事を終え、乙に目をやると乙は目を閉じ眠りに着いていた。
鍵に手を伸ばした時だった。
ポツリと木のテーブルに水の欠けらが落ちる。
「……!」
花瓶からの水滴かと思いきや、それは乙自身から零れた分身だった。
「…乙様?」
恐る恐る…ためらいながら乙の髪に触れてみた。
サラサラの髪…。
少しだけ撫でるように手を滑らせる。
人の温もりに気が付き微かに眼を開いた。
ハッとしてパッと手を離す。
「申し訳ありません!!」
「…かまわなぃ…」
ボーッとする中、舞緋流の手を力なく取り懐かしむように舞緋流の指に軽く唇を当てると、また眠りに着いた。
乙が目を覚ますと、日の光は沈みかけ夕刻を告げていた。
部屋には既に誰もおらず、部屋も綺麗に片付けられており入って来たときと何も変わらない。
乙の肩には舞緋流が掛けていたであろう膝掛が掛けられていた。
「…夢でも見ていたのか…?」
椅子から立ち上がるとパサッと膝掛け落ちる。
落ちた膝掛を手に取った。
あの舞緋流の眼差しがよぎった。
「舞緋流…?夢じゃなかった…のか…」
不思議な感覚だった。
確かにそこに居たのかもしれない舞緋流の存在は、おぼろ気で本当に居たのかすら解らなくなる。
部屋に戻っても、その感覚は抜けなかった。
ナイトキャップティーを片手にティーカップの紅茶を眺めてボーッとしている。
「乙様?」
瀾の声にハッとする。
仕事後にナイトキャップティーに誘っていたのだった。
「あ、ああ」
「どうかされました?」
「いや、何でもないよ♪」
「あの…どうして私をお茶に誘ってくれたんですか?」
「ただ、瀾と一緒にお茶を飲みたかっただけだ。
それとも理由が欲しいのか?」
カップを置くと瀾を抱き寄せキスを交わした。
「これが理由じゃ不満?」
「…ぃぇ…///」
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
【完結】【R18百合】会社のゆるふわ後輩女子に抱かれました
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
レズビアンの月岡美波が起きると、会社の後輩女子の桜庭ハルナと共にベッドで寝ていた。
一体何があったのか? 桜庭ハルナはどういうつもりなのか? 月岡美波はどんな選択をするのか?
おすすめシチュエーション
・後輩に振り回される先輩
・先輩が大好きな後輩
続きは「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」にて掲載しています。
だいぶ毛色が変わるのでシーズン2として別作品で登録することにしました。
読んでやってくれると幸いです。
「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/759377035/615873195
※タイトル画像はAI生成です
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる