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帰国

帰国6

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ハイティータイムを終えて、程なくしてノックが鳴りドア越しに声が聞こえる。
 
「失礼いたします」
 
執事の今井の声だった。
 
「どうした?」
「お茶のお時間はお済みでしょうか?」
「ああ、今終わったところだ」
 
流石はだ。
短からず、かといって長からずダラダラとしない配慮のある時間の間隔でやってくる。
ドアを開け一礼をし、部屋の中へ入ってくると聖慈せいじにこう告げた。

「聖慈様、お夕食前のお勉強のお時間です。
すでに教育係がお部屋におりますのでお急ぎを」
「…あ、うん」

まだハイティーの余韻が残る中、少し残念そうに答えるときのとに視線を向け

「それでは姉様、またお夕食の時に♪」
「…ああ」

笑顔の乙に、パァと嬉しそうにお辞儀をすると聖慈は部屋を後にした。

「乙様、こちらが編入先の学園資料になります」
「ああ、すまないな」

パラリパラリと渡された資料に目を通していく。

「今回は何日間のご在宅で?」
「…一週間だ」
 
資料を見ながら答える。
 
「かしこまりました」

メイドがお茶のセットを引き払い、部屋を出ていくと乙は静かに口を開いた。

「…今井、留守中に何か変わったことはあったか?」
「いえ、これといってございません。ただ…」
「ただ?」
「強いて言うのであれば以前、乙様のお着きのメイドが2名ほど辞めざるをえなくなりまして」
「そういえば、今日は見なかったなぁ。で、辞めた理由は?」
「一人は家庭の事情で、もう一人は結婚退職いたしました」
「…そうか。他には?」
「何人かメイドが入ったという事ぐらいでしょうか…」
「ほぅ…、ねぇ…」

チラリと執事に視線を向けるとクールに笑みを浮かべながら手を差し出した。

「な…何か?」

少し困惑した様子で、執事の今井が答えた。

「……リスト」
「は、はぁ…、かしこまりました」

一瞬、困った顔をしたが、そこは長年、執事として勤めあげた男。
今井は、すぐに冷静さを取り戻し半ば諦めてリストを取りに向かった。
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