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帰国

帰国2

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「ありがとうございましたぁ」
「…ああ、また頼むよ」

ドアの前まで送りに出た店員に目を細め微かに笑顔をつくる。
アルバイトだろうか、女性店員はまだ若い印象を受けた。
少女は少し頬を赤らめる。
じっと見つめ、きのとはスッと相手の首元に手を添える。

「…っ///」

ピクンと小さな体が震えた。

「いつ来ても君はこの店にいる。
もう居ないかと思っていたのに」

少女は眼をおよがせながら

「あ…あの…、風の噂で…留学をしていたとか…///」
「ああ…。もしかして待っていてくれていたの?クス…可愛い…」

頬を真っ赤にして俯くと少女は、こう言った。

「ご、ご迷惑…でしたか?」
「いや、そんなわけない…」

優しく怪しく見つめながら微笑むと少女はさらに顔を赤くした。
見つめ合う二人…
その顔の距離は、段々と近づいていく。
目を閉じ、この後の甘美に期待をし身を任せる。
やがて二人の唇は…

「乙様」

背後からの声に寸前でピタっと動きが停まる。
少女は顔を今以上に赤らめ恥ずかしそうに俯くと一歩後退る。

「クス…残念。時間切れみたいだ」
「……////」

少し残念そうに見つめる少女に乙は
「また、いつかね」
と耳元で囁いた。


小さな緑色の紙袋を手に車へと歩きだすと、また表情は堅くなる。
黒服の男が乙に小さく話し掛けた。

「乙様。あまり、おふざけが過ぎないようお気をつけを」
「…ッ。お前には関係ない」
「私は旦那様に道中問題を起さぬ様にと申し使っておりますので」
「……」

乙は、黒服の男に冷たい視線を向けると車の前までやって来た。
目の前でドアが開かれた。
乙が乗った事を確認すると、最低限の音でドアが閉まる。

「出してくれ」
「かしこまりました」

そこから屋敷へ着くまでの間、乙が口を開く事はなかった。

窓を見ると、ビルや雑踏がいくつも後ろへ流れていく。
しばらく行くと大きな門が自動で開く。
車が門を過ぎると、また門は静かに閉じていった。
少し長い林道を抜けると大きな屋敷が遠くから見えて来た。
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