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二 すれ違い
一片
しおりを挟むジリジリ言う騒音に勢いよく飛び起きた。なんだ、帰ってるんじゃないか。それなら神田さんにお詫びの一言でも連絡を入れればいいのに。
頭をガリガリ掻きながら、リビングに下りる。それでも、まだ鳴り響いていた。いい加減止めてほしい。
あんなにずっとリンリンと枕元で騒いでいるのに、起きないなんて、かなり耳が悪くなっちゃったのだろうか。
ヘッドホンをしっかりと装着するといくらか不快な音は和らいだ。でも、遠くでまだ鳴っている気がする。
わさわざ起こしに行くのもなぁ。僕、斎藤くんの家族じゃないんだから、そこまで世話焼かなくても。
いつもは心落ち着ける朝食も気が気じゃなかった。お願い、電池切れて、と心の底から願う。
今度顔合わせたら文句の一つでも絶対言ってやる。もしわざとやってるんなら、関係が始まる前から絶交だ。
でも神田さんに、不仲が知られたら気まずくなるかな。
僕よりも斎藤くんとの付き合いの方が断然長いだろう。僕なんてまだ知り合って二週間ぐらい。趣味も話も合うけど、まだその程度のことだ。僕は神田さんのことを斎藤くん以上には知らないだろう。
腹が立ってきた。鳴り止まない目覚ましの音に神経を逆なでされているせいもある。でも、彼が僕より神田さんと早く知り合ったからなんだって言うんだ。そうだ。すぐに追い越してやる。
パタリと事切れたように音が止まった。洗濯物を始めようと準備していた最中にタイミング良く。
やっと気づいてくれたようだ。でも、足音や物音はしなかった。いつもバッタンバッタン歩き回る音がとてもうるさいのに。
翌朝も飛び起きた。目覚ましの騒音のせいではなかった。悪夢にうなされて覚醒した。その翌朝も、ジリジリとした腹の底から叩いてくるやかましい音はしなかった。
不安になって、しおりを指でいじりながら、神田さんに連絡を入れた。
『お忙しいところすみません。
斎藤くんから連絡ありましたか?』
これから僕もアルバイトに向かわなければならないので、送るだけ送っておいて、返事は後で確認すればいいやと支度を進めた。
時間が思ったよりも余った。あさにぃにも連絡入れてみよう。
『今度の土曜日か日曜日、
遊びに行ってもいい?』
あさにぃも仕事で朝忙しいだろうから、気長に待てばいいや。
そうだ。あさにぃの家の庭、撮ってこようかな。
ご飯を食べてしまってから、撮り損ねたことに気づくので、神田さんに撮り方を教えてもらってから全く撮れていない。そもそも料理以外何を撮っていいか分からなかった。
お花とか撮れたらキレイだよね、きっと。あさにぃの家の庭には何が咲いているんだろう。ワクワクする気持ちは胸にしまって、竦む足を奮い立たせて、四面楚歌の世界へ踏み出していった。
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