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story8
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刻々と時間が過ぎていき、もう少しで今日の授業が全て終わる。
終われば、約束の放課後。
「最近、他校の生徒が襲われる事件が多発していると聞くから気をつけるように」
ホームルームで有馬先生の連絡事項を聞く。
有馬先生の甘い声に女子生徒達は、うっとりと耳をそばだてる。
話をしている間も有馬先生がキョロキョロと心配そうな顔で僕の方へ視線を送る。
宇都宮と勝負をする事を僕は有馬先生に言わなかった。
有馬先生に心配させたくなかったからだ。
だが、和真か新橋さん辺りから聞いたんだろう。
もの凄く心配している。
僕は『大丈夫だよ』と安心してもらえるように、精一杯の笑顔を向けたが、有馬先生の眉根にしわを寄せる。
あ、納得してない…。
キーンコーンカーンコーン。
終了チャイムの音が鳴り響く。
「気をつけて帰るように」
「起立、礼!」
「「「ありがとうございました!」」」
日直の互礼でホームルームが終わり、クラスメイト達がぞろぞろと教室を出て行く。
鞄の中に教科書を入れていると、ふと視線を感じた。
視線の方へ振り向くと席を立ち上がる、宇都宮と目が合ったが、宇都宮はぷいっとそっぽ向くと教室のドアへ向かう。
僕達が食堂から帰ると、宇都宮は自分の席で他の女子生徒達と楽しく雑談をしてそして、そのまま何もなかったように午後の授業に参加した。
僕は宇都宮が教室を出て行く背中を見送ると、
「橙利」
有馬先生が『有馬先生、さようなら』と挨拶してくるクラスメイトをそこそこに挨拶を返しながら、僕の机へと近寄って来た。
「有馬先生…」
「橙利。俺は橙利の口から勝負の事を言って欲しかった」
有馬先生は悲しそうな顔して言う。
「ごめんなさい。でも…男として譲れなかったんだ」
『だったら!あんたが、ただの貧弱じゃないコトを証明しなさいよ!』
宇都宮の言葉が僕の頭の中でリピートしている。
「俺にも関わる事だ。橙利だけが負うことなない」
有馬先生が真剣な眼差しで僕を見つめる。
「負ってるわけじゃないよ。貧弱じゃないところを証明するために僕は勝負を受けたんだ」
「何かあったら、俺は自分が許せない」
「僕は負けない。有馬先生には分かってほしい」
有馬先生に僕は決然とした視線を送る。
僕は目を逸らさず見続けると、有馬先生がはぁと深々とため息をついて『参った』と、柔らかく微笑む。
「俺の橙利は本当にいい子に育ったよ」
「橙真兄さんや有馬先生達のおかげだよ。ありがとう」
笑顔でお礼を言うと有馬先生は僕の頰に手のひらがふわりと触れる。
「俺は理事長に呼ばれているから、一緒には行けないが気をつけてくれ、終わったら急いで駆けつける」
「うん!」
「俺は橙利しか愛してない、何を言われようが俺を信じてくれ」
「僕は有馬先生を信じるよ」
少しの間、頰に触れる手の温もりを僕は感じていると、有馬先生の顔がゆっくり近づいてくる。
あ、キスだ…。
慣れると怖い、酔う感覚で意識を持っていかれ自然と瞼が閉じ、キスを待ってしまう。
「すみません、有馬先生。学校でのキスは1人1回ですし、ここは教室です。まだ、他の生徒がいますので場所考えて下さい」
和真の声で止められ、僕はハッと意識が戻し、瞼を開ける。
そうだ、教室だった!
まだ、教室に残るクラスメイト達が僕と有馬先生の行動に驚いた顔で見ていた。
僕は急いで有馬先生から離れる。
和真に止められた事で僕が離れてしまい、有馬先生は不満げな表情を浮かべた。
「祈りのキスはノーカウントだ。それに正吾さんは人が多くいる食堂でキスしただろう。俺は気にしない」
「いや、気にしろ。それに決まりは決まりだ」
烏山が呆れて突っ込む。
有馬先生は小さく舌打ちをした。
その後、渋々と先に教室を出て行った有馬先生を見送ると、入れ替わるように新橋さんが教室に来たので、僕達は宇都宮が指定した家庭科室へ向かった。
「五百城様、いよいよですね」
紺野さんがそわそわしている。
「お前が緊張して、どうするんだよ!」
烏山が怒鳴る。
「うっさいわね!」
この2人のいつものやり取りに僕はホッと安心し、顔をほころばせる。
僕は自分自身大丈夫だと思っていたが、かなり緊張していた。
だが、烏山と紺野さんのやり取りを見て、緊張がほぐれた。
「橙利、行こうか」
和真が微笑む。
「うん!行こう!」
僕は力強く一歩、踏み出した。
廊下を出ると帰る生徒、部活に向かう生徒達で賑わっていた。
僕の左隣に和真で右隣が烏山、後ろに新橋さんと紺野さんで並んで歩く。
家庭科室は4階にある。
上に登る階段に差しかかると、
「橙利様」
僕は名前を呼ばれ、顔を上げる。
階段の上の踊り場にきっちりしたスーツ姿の男の人が立っていた。
男はかけている眼鏡のブリッジを中指でクイっと上げる。
一つ一つの動作がかっこよく、すれ違う他の生徒達がチラチラと見ては、顔を赤くする者、見惚れている者がいた。
男の人の服装は、ブラックスーツに無地の青ネクタイといったシンプルだが、黒に青の組み合わせがとても、お洒落だった。
「清史郎さん!」
僕は駆け足で階段を上がった。
上がると僕は清史郎さんと向かい合うように立った。
森本 清史郎、33歳。
橙真兄さんの秘書で、整った顔立ちにシルバーのスクエア型の眼鏡をかけた。
クールで知的な印象の男性。
清史郎さんは僕達の父の親友で、橙真兄さんと勇橙兄さんが成人するまで後見人をしてくれた弁護士森本 清司さんの息子さんで自身も弁護士資格を持ちながら、橙真兄さんの秘書をしてるとても優秀な人。小さい頃よく遊んでくれた。
清史郎さんとは特に、おままごとで遊ぶことが多かったな…。
「橙利様、学業お疲れ様です」
清史郎さんは腰から頭まで背筋をまっすぐ伸ばして倒し、お辞儀をする。
相変わらず、姿勢がいいな…。
「清史郎さんもお仕事、お疲れ様です。今日はどうしたんですか?」
いつも橙真兄さんの後ろに控えていたり、仕事でなかなか顔を合わすことが少ない清史郎さんが、珍しく1人でいる。
「橙利様の勝負衣装をお持ちするために」
と清史郎さんはいつもながら事務的なしゃべり方で返答する。
お昼に和真が橙真兄さんに連絡した時、持って来てくれるとは言っていたからてっきり、橙真兄さんが自分で持って来るかと思っていた。
「橙真兄さんは?」
いない橙真兄さんに何かあったのか、心配なる。
「社長は橙利様の衣装をお選びになられています」
衣装を選んでいるのか…。
橙真兄さんに何もなくってよかったと僕は安心した。
「お選びになっているので、たまには橙利様と2人っきりで会いたいと私が必死に懇願しまして、お迎えに来ましたが…」
清史郎さんが僕の後ろにいる、和真や烏山、新橋さんに紺野さんを見るとあからさまに残念そうな顔をした。
『うわぁ、露骨な顔しやがって』
『私達こと、邪魔な奴らと思ってますよ』
『隠さない性格なので信用出来る人ではありますけど…』
『橙利の前だと素直な人ですよ』
ヒソヒソと、僕の後ろで4人が話していた。
橙真兄さんも僕の近くに必ず誰かいることを分かって、了解したんだろう。
「ごめんなさい。お仕事忙しいのに、僕の事で手間をとらせてしまって」
と僕は清史郎さんに謝罪をすると、
「橙利様」
突然、バッと清史郎さんに抱きしめられた。
抱きしめられた時、後ろで新橋さんと紺野さんがキャッと小さく悲鳴をあげたのが聞こえた。
清史郎さんも見た目は細身の体型だが、橙真兄さんと同じ着痩せするタイプで服の下は硬い。
鍛えらた両腕でガッチリ、僕の身体を固定され身動きが出来ない。
僕の顔が丁度、清史郎さんの硬いお腹に押し付けられていた。
「私は手間だと思った事は一度もありません。正直、橙利様と接しられて嬉しい限りです」
清史郎さんが抱きしめながら、身長の差で僕の頭を頬ずりし『橙利様、橙利様』と連呼する。
先程までの事務的なしゃべり方をしていた清史郎さんが嘘みたいだ。
「清史郎さん…」
清史郎さんは出来る優秀な人だが、昔からスキンシップがとても激しい人だった。
く、苦しい…。
「橙利様が蜂お尻型おむつを穿いて、私の後ろをお尻をふりふりさせながら歩いていた事がまるで昨日のようです」
と清史郎が思い出に浸る。
『蜂お尻型?』
『蜂お尻型とは、蜂のもふもふした黄色と黒の横線模様のお尻とお尻中心に棉と白い布を三角型で針に似せたデザインのおむつで、ひよこお尻型シリーズパート2』
『おい!それも後でこっちにもまわせ!』
『なんですの?ひよこ?ハチ?』
『五百城様の幼少期見てみたい』
またも後ろの4人の会話が聞こえ、和真と烏山のやり取りが、どこかで同じことがあった気がする。
が、誰も気づいてくれない…。
く、苦しい…。
「とてもとっても可愛く、私は橙利様にならアナフィラキシーショックで死んでもいいと思いました」
し、死んだら困るけど…先に…僕が…死ぬ…。
僕は必死にもがき、清史郎さんのお腹から顔が離れられ、
「せ、清史郎さん…く、苦しいです」
と訴える。
「橙利様、すみません。あまりに嬉しくて」
清史郎さんはすぐに僕を腕から解放した。
僕は大きく深呼吸し呼吸を整える。
その間に清史郎さんに何度も謝られた。
角度90度のそれはそれは、綺麗な最敬礼だった。
「では、参りましょう」
清史郎さんを先頭に階段を上がり、4階へ僕達は向かった。
廊下を真っ直ぐに突き当たりの教室。
そこが目的の家庭科室だが、
「とーりちゃん」
僕は振り返る。
橙真兄さんがゆっくりとした足取りで僕達の方へ近づく。
「橙真兄さん!」
「清史郎を行かせたけど、大丈夫だったみたいね」
橙真兄さんが僕達を見まわし、楽しそうに言う。
チッと後ろで誰かの舌打ちが聞こえたが、僕は聞こえないフリをした。
清史郎さん… 。
「お話し中、すみません。橙真様が衣装をお選びになられていたと、お聞きしましたが…」
新橋さんがなぜか興奮気味に橙真兄さんに聞いた。
「ああ、もちろん。衣装にも勝敗を左右するからな。念入りに決めた」
「五百城様のお兄様がお選びになった衣装、とても楽しみです!」
紺野さんもさっきはそわそわしていたのが、嘘みたいにうきうきしていた。
「楽しみにしててくれ」
橙真兄さんは楽しげに言うと不意に僕へ顔を近づける。
『家に帰ったら、覚悟してね』
とみんなに聞こえないように、ボソッと僕の耳元で囁く。
勝負より、や、やばい…。
僕は手をガタガタ震えながら、家庭科室のドアを開けた。
家庭科室は設備の整った調理台に、作った料理をその場でも食べられるようにテーブルと椅子が置かれ、教室よりも広い作りの部屋だった。
窓の側で立つ、宇都宮ともう1人男性がいた。
「尻尾巻いて逃げたかと、思いました」
入ってきた僕に気づき、宇都宮が嘲笑う。
十分に目の敵にされている。
「なんでお前がここにいる」
ふいに後から入って来た橙真兄さんの纏う空気が、急に冷たく変わったのに気づいた。
明らかに怒っている。
橙真兄さん…?
「審査員として呼ばれたからさ」
男は橙真兄さんの纏う冷たい空気に、気にもしないで答えた。
歳は橙真兄さんと変わらない、黒髪で上等なスーツを着ている。
容姿はまあまあ整っているが、それだけだ。
兄さん達が規格外だからだろう。
男と僕は目が合う。
「やあ、橙利君久しぶりだね」
笑顔で声をかけられたが、僕は咄嗟に橙真兄さんの背中に、縋り付いた。
気持ち悪い…。
人見知りで隠れたわけじゃ無い。
この男に対して僕の身体が"良くない"と完全拒否していた。
この男に関わらない方がいい気がする…。
僕の行動に男は、『やれやれ、嫌われてしまった』と小声で呟く。
「ま、君は覚えないだろうけど、君と橙真君、勇橙君の父親の弟の息子で五百城 大翔だよ。君の従兄弟だ」
え?従兄弟…?
男の言葉に僕は驚いた。
そういえば、僕は一度も祖父母や親戚に会ったことがなかった。
僕の事で揉めていた事は橙真兄さんや勇橙人さんから聞いたことがあったが、わざわざ揉めている人達に会いたいとは思ってないから、さほど気にしなかった。
橙真兄さんの口調と視線が冷たいまま。
「誰の許可で学園に入った」
「きちんと学園側だよ」
大翔は口元綻ばせ、返答する。
「有馬理事長から何も聞いてないが」
「理事長は出張でいらっしゃらなかったので、常任理事で副学長の日下部氏に頼んだよ。理事長もお忙しい人、一々誰が来るとか連絡していたら迷惑になるだろう」
大翔が肩をすくめる。
「だから、事後報告というわけか」
「全く知らない者を入れたら問題だが、日下部氏は利君の従兄弟だからと許可してくれたんだ」
「日下部がね。で、そちらのお嬢さんとはどんな関係だ」
橙真兄さんは宇都宮に睨むように視線を向ける。
宇都宮は橙真兄さんの視線にビクッと体を震わせ、目を逸らす。
大翔は笑いながら言う。
「勘違いしないでくれ、貴子さんとは別に疚しい関係じゃないよ」
大翔の言葉に橙真兄さんは、眉根にしわを寄せる。
「彼女のお父上は僕が大変お世話になっている会社の重役でね。家族ぐるみで仲良くさせていただいていたんだが、今日電話でなんでも彼女は、好いている男が同じ男に魅了され、良いように扱われているどうしたらいいか、連絡をもらったんだ。彼女はとても心を痛めている。それに魅了した男が僕の従兄弟というし」
魅了…扱われ…誰が…僕?
僕は困惑する。
「従兄弟としては止めて上げたいし、お世話なっている娘さんには幸せになってもらいたいじゃないか」
笑顔で言うと、
「あ゛あ゛、良いように扱われてるだぁ。お前に興味が無いってはっきり言われてんじゃねぇか!」
後ろで黙って聞いていた烏山が、我慢ができなくなり怒鳴る。
「な!そうなこと!」
庭でのことを知られていた事に驚き、顔を真っ赤にしながら、シラを切る宇都宮。
「授業をサボって!有馬先生に会いに行ってたでしょうが!」
紺野さんが続けて声を上げた。
「盗み見るなんて!最低よ!」
宇都宮は顔を鬼の形相で叫ぶ。
「自分に好意が向かないからって、橙利のせいにしてるだろが!」
紺野さんに烏山、宇都宮が睨み合う。
その後ろで新橋さんと和真も怒りで宇都宮を睨んでいた。
みんな…。
「橙利君には庇ってくれる仲間がいるんだね」
大翔がふと、笑う。
まるで、みんなが彼女1人を攻めたたている言い方…。
僕は橙真兄さんに縋ったまま、大翔を見る。
大翔は笑っているが目は笑っていないし、何か企んでいる気がした。
はっきり言って、僕は大翔には嫌悪感しかなかった。
「そうそう、お爺様が心配されてたよ。橙真君も勇橙君も良い歳になるのに浮いた話がない。それは、まだ橙利君の面倒を見てるからじゃないかってね」
浮いた話がない…。
面倒見てるから…。
僕は胸の奥底がズキズキ痛むのを感じた。
僕が兄達の人生を邪魔をしていると大翔は言いたいんだろう。
「橙真君も大変だろう仕事をしながら橙利君の教育、間違うと大変な友達と付き合い出すから」
大変な友達…和真達のことを言ってる…。
僕は手をギュッと握りしめた。
すると握しめる僕の手を橙真兄さんが、黙って自分の手を優しく重ねた。
僕は驚き、見上げる。
橙真兄さんは大翔に視線を向いたままだが、優しくあたたかい手に包まれ気づくと、僕の握しめる手の力が抜けるのを感じた。
『みんなが付いている、大丈夫だ』
そう言っている気がする。
僕は橙真兄さんを信じ、静観することにした。
「そっちは結構浮いた話が絶えないそうだな。お爺様もカバーしきれないと見限っているんじゃないか」
橙真兄さんが冷たく言い捨てる。
「あははは、すまない。ぼくはある家と良い縁談があってね。それはそれはお爺様は喜んでいたよ」
「それが、花澤家か」
え?花澤家って、花澤 麗菜の関係?
橙真兄さんの言葉で一瞬、その場が静かになったが『あははは』と大翔が笑い出す。
「橙真君には筒抜けか。あの家は政界にも繋がりがあるからな。五百城家は強い後ろ楯を持ったよ」
大翔は自信満々と話す。
「なら、俺達には関係ない話だな。橙利が持っている親の遺産が欲しいから橙利を自分達が育たい。でも、金が入るなら必要ないだろ」
「いやいや、橙利君を花澤家の方が向かい入れたいと言ってるだよ」
「表向きは花澤家のお姫様の遊び相手。でも裏では痛ぶり、嬲りまずは人間の扱いはされないな」
橙真兄さんが大翔に、さらに冷たく鋭い視線を投げた。
「そんなことはならないよ」
「なら、エロジジィ共のオモチャか」
大翔の顔から笑みが消え、橙真兄さんと睨み合う。
大翔の本性が見え始めてきた。
「俺の橙利をお前達には渡さない。あと、橙利は素晴らしい友人を持っているよ。被害妄想の女から助けてくれる友人を。お金を渡さなければ動かない友人しかいないお前と違って」
「花澤に喧嘩を売れば、タダでは済まない」
大翔の表情が険しくなり、吐き捨てる。
「お前達がな。悪いが花澤が大きとか政界に繋がりがあるとか、俺には"だからなんだ"しかないんだよ」
「強がりだな」
「強がりじゃない、真実だ。お前も自分の身を気をつけろよ」
橙真兄さんは大翔に忠告する。
終われば、約束の放課後。
「最近、他校の生徒が襲われる事件が多発していると聞くから気をつけるように」
ホームルームで有馬先生の連絡事項を聞く。
有馬先生の甘い声に女子生徒達は、うっとりと耳をそばだてる。
話をしている間も有馬先生がキョロキョロと心配そうな顔で僕の方へ視線を送る。
宇都宮と勝負をする事を僕は有馬先生に言わなかった。
有馬先生に心配させたくなかったからだ。
だが、和真か新橋さん辺りから聞いたんだろう。
もの凄く心配している。
僕は『大丈夫だよ』と安心してもらえるように、精一杯の笑顔を向けたが、有馬先生の眉根にしわを寄せる。
あ、納得してない…。
キーンコーンカーンコーン。
終了チャイムの音が鳴り響く。
「気をつけて帰るように」
「起立、礼!」
「「「ありがとうございました!」」」
日直の互礼でホームルームが終わり、クラスメイト達がぞろぞろと教室を出て行く。
鞄の中に教科書を入れていると、ふと視線を感じた。
視線の方へ振り向くと席を立ち上がる、宇都宮と目が合ったが、宇都宮はぷいっとそっぽ向くと教室のドアへ向かう。
僕達が食堂から帰ると、宇都宮は自分の席で他の女子生徒達と楽しく雑談をしてそして、そのまま何もなかったように午後の授業に参加した。
僕は宇都宮が教室を出て行く背中を見送ると、
「橙利」
有馬先生が『有馬先生、さようなら』と挨拶してくるクラスメイトをそこそこに挨拶を返しながら、僕の机へと近寄って来た。
「有馬先生…」
「橙利。俺は橙利の口から勝負の事を言って欲しかった」
有馬先生は悲しそうな顔して言う。
「ごめんなさい。でも…男として譲れなかったんだ」
『だったら!あんたが、ただの貧弱じゃないコトを証明しなさいよ!』
宇都宮の言葉が僕の頭の中でリピートしている。
「俺にも関わる事だ。橙利だけが負うことなない」
有馬先生が真剣な眼差しで僕を見つめる。
「負ってるわけじゃないよ。貧弱じゃないところを証明するために僕は勝負を受けたんだ」
「何かあったら、俺は自分が許せない」
「僕は負けない。有馬先生には分かってほしい」
有馬先生に僕は決然とした視線を送る。
僕は目を逸らさず見続けると、有馬先生がはぁと深々とため息をついて『参った』と、柔らかく微笑む。
「俺の橙利は本当にいい子に育ったよ」
「橙真兄さんや有馬先生達のおかげだよ。ありがとう」
笑顔でお礼を言うと有馬先生は僕の頰に手のひらがふわりと触れる。
「俺は理事長に呼ばれているから、一緒には行けないが気をつけてくれ、終わったら急いで駆けつける」
「うん!」
「俺は橙利しか愛してない、何を言われようが俺を信じてくれ」
「僕は有馬先生を信じるよ」
少しの間、頰に触れる手の温もりを僕は感じていると、有馬先生の顔がゆっくり近づいてくる。
あ、キスだ…。
慣れると怖い、酔う感覚で意識を持っていかれ自然と瞼が閉じ、キスを待ってしまう。
「すみません、有馬先生。学校でのキスは1人1回ですし、ここは教室です。まだ、他の生徒がいますので場所考えて下さい」
和真の声で止められ、僕はハッと意識が戻し、瞼を開ける。
そうだ、教室だった!
まだ、教室に残るクラスメイト達が僕と有馬先生の行動に驚いた顔で見ていた。
僕は急いで有馬先生から離れる。
和真に止められた事で僕が離れてしまい、有馬先生は不満げな表情を浮かべた。
「祈りのキスはノーカウントだ。それに正吾さんは人が多くいる食堂でキスしただろう。俺は気にしない」
「いや、気にしろ。それに決まりは決まりだ」
烏山が呆れて突っ込む。
有馬先生は小さく舌打ちをした。
その後、渋々と先に教室を出て行った有馬先生を見送ると、入れ替わるように新橋さんが教室に来たので、僕達は宇都宮が指定した家庭科室へ向かった。
「五百城様、いよいよですね」
紺野さんがそわそわしている。
「お前が緊張して、どうするんだよ!」
烏山が怒鳴る。
「うっさいわね!」
この2人のいつものやり取りに僕はホッと安心し、顔をほころばせる。
僕は自分自身大丈夫だと思っていたが、かなり緊張していた。
だが、烏山と紺野さんのやり取りを見て、緊張がほぐれた。
「橙利、行こうか」
和真が微笑む。
「うん!行こう!」
僕は力強く一歩、踏み出した。
廊下を出ると帰る生徒、部活に向かう生徒達で賑わっていた。
僕の左隣に和真で右隣が烏山、後ろに新橋さんと紺野さんで並んで歩く。
家庭科室は4階にある。
上に登る階段に差しかかると、
「橙利様」
僕は名前を呼ばれ、顔を上げる。
階段の上の踊り場にきっちりしたスーツ姿の男の人が立っていた。
男はかけている眼鏡のブリッジを中指でクイっと上げる。
一つ一つの動作がかっこよく、すれ違う他の生徒達がチラチラと見ては、顔を赤くする者、見惚れている者がいた。
男の人の服装は、ブラックスーツに無地の青ネクタイといったシンプルだが、黒に青の組み合わせがとても、お洒落だった。
「清史郎さん!」
僕は駆け足で階段を上がった。
上がると僕は清史郎さんと向かい合うように立った。
森本 清史郎、33歳。
橙真兄さんの秘書で、整った顔立ちにシルバーのスクエア型の眼鏡をかけた。
クールで知的な印象の男性。
清史郎さんは僕達の父の親友で、橙真兄さんと勇橙兄さんが成人するまで後見人をしてくれた弁護士森本 清司さんの息子さんで自身も弁護士資格を持ちながら、橙真兄さんの秘書をしてるとても優秀な人。小さい頃よく遊んでくれた。
清史郎さんとは特に、おままごとで遊ぶことが多かったな…。
「橙利様、学業お疲れ様です」
清史郎さんは腰から頭まで背筋をまっすぐ伸ばして倒し、お辞儀をする。
相変わらず、姿勢がいいな…。
「清史郎さんもお仕事、お疲れ様です。今日はどうしたんですか?」
いつも橙真兄さんの後ろに控えていたり、仕事でなかなか顔を合わすことが少ない清史郎さんが、珍しく1人でいる。
「橙利様の勝負衣装をお持ちするために」
と清史郎さんはいつもながら事務的なしゃべり方で返答する。
お昼に和真が橙真兄さんに連絡した時、持って来てくれるとは言っていたからてっきり、橙真兄さんが自分で持って来るかと思っていた。
「橙真兄さんは?」
いない橙真兄さんに何かあったのか、心配なる。
「社長は橙利様の衣装をお選びになられています」
衣装を選んでいるのか…。
橙真兄さんに何もなくってよかったと僕は安心した。
「お選びになっているので、たまには橙利様と2人っきりで会いたいと私が必死に懇願しまして、お迎えに来ましたが…」
清史郎さんが僕の後ろにいる、和真や烏山、新橋さんに紺野さんを見るとあからさまに残念そうな顔をした。
『うわぁ、露骨な顔しやがって』
『私達こと、邪魔な奴らと思ってますよ』
『隠さない性格なので信用出来る人ではありますけど…』
『橙利の前だと素直な人ですよ』
ヒソヒソと、僕の後ろで4人が話していた。
橙真兄さんも僕の近くに必ず誰かいることを分かって、了解したんだろう。
「ごめんなさい。お仕事忙しいのに、僕の事で手間をとらせてしまって」
と僕は清史郎さんに謝罪をすると、
「橙利様」
突然、バッと清史郎さんに抱きしめられた。
抱きしめられた時、後ろで新橋さんと紺野さんがキャッと小さく悲鳴をあげたのが聞こえた。
清史郎さんも見た目は細身の体型だが、橙真兄さんと同じ着痩せするタイプで服の下は硬い。
鍛えらた両腕でガッチリ、僕の身体を固定され身動きが出来ない。
僕の顔が丁度、清史郎さんの硬いお腹に押し付けられていた。
「私は手間だと思った事は一度もありません。正直、橙利様と接しられて嬉しい限りです」
清史郎さんが抱きしめながら、身長の差で僕の頭を頬ずりし『橙利様、橙利様』と連呼する。
先程までの事務的なしゃべり方をしていた清史郎さんが嘘みたいだ。
「清史郎さん…」
清史郎さんは出来る優秀な人だが、昔からスキンシップがとても激しい人だった。
く、苦しい…。
「橙利様が蜂お尻型おむつを穿いて、私の後ろをお尻をふりふりさせながら歩いていた事がまるで昨日のようです」
と清史郎が思い出に浸る。
『蜂お尻型?』
『蜂お尻型とは、蜂のもふもふした黄色と黒の横線模様のお尻とお尻中心に棉と白い布を三角型で針に似せたデザインのおむつで、ひよこお尻型シリーズパート2』
『おい!それも後でこっちにもまわせ!』
『なんですの?ひよこ?ハチ?』
『五百城様の幼少期見てみたい』
またも後ろの4人の会話が聞こえ、和真と烏山のやり取りが、どこかで同じことがあった気がする。
が、誰も気づいてくれない…。
く、苦しい…。
「とてもとっても可愛く、私は橙利様にならアナフィラキシーショックで死んでもいいと思いました」
し、死んだら困るけど…先に…僕が…死ぬ…。
僕は必死にもがき、清史郎さんのお腹から顔が離れられ、
「せ、清史郎さん…く、苦しいです」
と訴える。
「橙利様、すみません。あまりに嬉しくて」
清史郎さんはすぐに僕を腕から解放した。
僕は大きく深呼吸し呼吸を整える。
その間に清史郎さんに何度も謝られた。
角度90度のそれはそれは、綺麗な最敬礼だった。
「では、参りましょう」
清史郎さんを先頭に階段を上がり、4階へ僕達は向かった。
廊下を真っ直ぐに突き当たりの教室。
そこが目的の家庭科室だが、
「とーりちゃん」
僕は振り返る。
橙真兄さんがゆっくりとした足取りで僕達の方へ近づく。
「橙真兄さん!」
「清史郎を行かせたけど、大丈夫だったみたいね」
橙真兄さんが僕達を見まわし、楽しそうに言う。
チッと後ろで誰かの舌打ちが聞こえたが、僕は聞こえないフリをした。
清史郎さん… 。
「お話し中、すみません。橙真様が衣装をお選びになられていたと、お聞きしましたが…」
新橋さんがなぜか興奮気味に橙真兄さんに聞いた。
「ああ、もちろん。衣装にも勝敗を左右するからな。念入りに決めた」
「五百城様のお兄様がお選びになった衣装、とても楽しみです!」
紺野さんもさっきはそわそわしていたのが、嘘みたいにうきうきしていた。
「楽しみにしててくれ」
橙真兄さんは楽しげに言うと不意に僕へ顔を近づける。
『家に帰ったら、覚悟してね』
とみんなに聞こえないように、ボソッと僕の耳元で囁く。
勝負より、や、やばい…。
僕は手をガタガタ震えながら、家庭科室のドアを開けた。
家庭科室は設備の整った調理台に、作った料理をその場でも食べられるようにテーブルと椅子が置かれ、教室よりも広い作りの部屋だった。
窓の側で立つ、宇都宮ともう1人男性がいた。
「尻尾巻いて逃げたかと、思いました」
入ってきた僕に気づき、宇都宮が嘲笑う。
十分に目の敵にされている。
「なんでお前がここにいる」
ふいに後から入って来た橙真兄さんの纏う空気が、急に冷たく変わったのに気づいた。
明らかに怒っている。
橙真兄さん…?
「審査員として呼ばれたからさ」
男は橙真兄さんの纏う冷たい空気に、気にもしないで答えた。
歳は橙真兄さんと変わらない、黒髪で上等なスーツを着ている。
容姿はまあまあ整っているが、それだけだ。
兄さん達が規格外だからだろう。
男と僕は目が合う。
「やあ、橙利君久しぶりだね」
笑顔で声をかけられたが、僕は咄嗟に橙真兄さんの背中に、縋り付いた。
気持ち悪い…。
人見知りで隠れたわけじゃ無い。
この男に対して僕の身体が"良くない"と完全拒否していた。
この男に関わらない方がいい気がする…。
僕の行動に男は、『やれやれ、嫌われてしまった』と小声で呟く。
「ま、君は覚えないだろうけど、君と橙真君、勇橙君の父親の弟の息子で五百城 大翔だよ。君の従兄弟だ」
え?従兄弟…?
男の言葉に僕は驚いた。
そういえば、僕は一度も祖父母や親戚に会ったことがなかった。
僕の事で揉めていた事は橙真兄さんや勇橙人さんから聞いたことがあったが、わざわざ揉めている人達に会いたいとは思ってないから、さほど気にしなかった。
橙真兄さんの口調と視線が冷たいまま。
「誰の許可で学園に入った」
「きちんと学園側だよ」
大翔は口元綻ばせ、返答する。
「有馬理事長から何も聞いてないが」
「理事長は出張でいらっしゃらなかったので、常任理事で副学長の日下部氏に頼んだよ。理事長もお忙しい人、一々誰が来るとか連絡していたら迷惑になるだろう」
大翔が肩をすくめる。
「だから、事後報告というわけか」
「全く知らない者を入れたら問題だが、日下部氏は利君の従兄弟だからと許可してくれたんだ」
「日下部がね。で、そちらのお嬢さんとはどんな関係だ」
橙真兄さんは宇都宮に睨むように視線を向ける。
宇都宮は橙真兄さんの視線にビクッと体を震わせ、目を逸らす。
大翔は笑いながら言う。
「勘違いしないでくれ、貴子さんとは別に疚しい関係じゃないよ」
大翔の言葉に橙真兄さんは、眉根にしわを寄せる。
「彼女のお父上は僕が大変お世話になっている会社の重役でね。家族ぐるみで仲良くさせていただいていたんだが、今日電話でなんでも彼女は、好いている男が同じ男に魅了され、良いように扱われているどうしたらいいか、連絡をもらったんだ。彼女はとても心を痛めている。それに魅了した男が僕の従兄弟というし」
魅了…扱われ…誰が…僕?
僕は困惑する。
「従兄弟としては止めて上げたいし、お世話なっている娘さんには幸せになってもらいたいじゃないか」
笑顔で言うと、
「あ゛あ゛、良いように扱われてるだぁ。お前に興味が無いってはっきり言われてんじゃねぇか!」
後ろで黙って聞いていた烏山が、我慢ができなくなり怒鳴る。
「な!そうなこと!」
庭でのことを知られていた事に驚き、顔を真っ赤にしながら、シラを切る宇都宮。
「授業をサボって!有馬先生に会いに行ってたでしょうが!」
紺野さんが続けて声を上げた。
「盗み見るなんて!最低よ!」
宇都宮は顔を鬼の形相で叫ぶ。
「自分に好意が向かないからって、橙利のせいにしてるだろが!」
紺野さんに烏山、宇都宮が睨み合う。
その後ろで新橋さんと和真も怒りで宇都宮を睨んでいた。
みんな…。
「橙利君には庇ってくれる仲間がいるんだね」
大翔がふと、笑う。
まるで、みんなが彼女1人を攻めたたている言い方…。
僕は橙真兄さんに縋ったまま、大翔を見る。
大翔は笑っているが目は笑っていないし、何か企んでいる気がした。
はっきり言って、僕は大翔には嫌悪感しかなかった。
「そうそう、お爺様が心配されてたよ。橙真君も勇橙君も良い歳になるのに浮いた話がない。それは、まだ橙利君の面倒を見てるからじゃないかってね」
浮いた話がない…。
面倒見てるから…。
僕は胸の奥底がズキズキ痛むのを感じた。
僕が兄達の人生を邪魔をしていると大翔は言いたいんだろう。
「橙真君も大変だろう仕事をしながら橙利君の教育、間違うと大変な友達と付き合い出すから」
大変な友達…和真達のことを言ってる…。
僕は手をギュッと握りしめた。
すると握しめる僕の手を橙真兄さんが、黙って自分の手を優しく重ねた。
僕は驚き、見上げる。
橙真兄さんは大翔に視線を向いたままだが、優しくあたたかい手に包まれ気づくと、僕の握しめる手の力が抜けるのを感じた。
『みんなが付いている、大丈夫だ』
そう言っている気がする。
僕は橙真兄さんを信じ、静観することにした。
「そっちは結構浮いた話が絶えないそうだな。お爺様もカバーしきれないと見限っているんじゃないか」
橙真兄さんが冷たく言い捨てる。
「あははは、すまない。ぼくはある家と良い縁談があってね。それはそれはお爺様は喜んでいたよ」
「それが、花澤家か」
え?花澤家って、花澤 麗菜の関係?
橙真兄さんの言葉で一瞬、その場が静かになったが『あははは』と大翔が笑い出す。
「橙真君には筒抜けか。あの家は政界にも繋がりがあるからな。五百城家は強い後ろ楯を持ったよ」
大翔は自信満々と話す。
「なら、俺達には関係ない話だな。橙利が持っている親の遺産が欲しいから橙利を自分達が育たい。でも、金が入るなら必要ないだろ」
「いやいや、橙利君を花澤家の方が向かい入れたいと言ってるだよ」
「表向きは花澤家のお姫様の遊び相手。でも裏では痛ぶり、嬲りまずは人間の扱いはされないな」
橙真兄さんが大翔に、さらに冷たく鋭い視線を投げた。
「そんなことはならないよ」
「なら、エロジジィ共のオモチャか」
大翔の顔から笑みが消え、橙真兄さんと睨み合う。
大翔の本性が見え始めてきた。
「俺の橙利をお前達には渡さない。あと、橙利は素晴らしい友人を持っているよ。被害妄想の女から助けてくれる友人を。お金を渡さなければ動かない友人しかいないお前と違って」
「花澤に喧嘩を売れば、タダでは済まない」
大翔の表情が険しくなり、吐き捨てる。
「お前達がな。悪いが花澤が大きとか政界に繋がりがあるとか、俺には"だからなんだ"しかないんだよ」
「強がりだな」
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橙真兄さんは大翔に忠告する。
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