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五章
三百十六話 魔導脚甲
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「キョウ! ちょっと良いかい?」
馬車での旅の途中、解っていたこととは言え襲撃が多かった。
それは獣だけではなく、野盗のたぐいも含まれる。
で、そんなのを撃退していれば当然装備は摩耗していく。いくらミアリギスが不壊の特性を持っていても、防具やその他の装備はそうもいかない。
そういった装備を調整するのはセドリックの仕事な訳だが……
「今度の襲撃の時は、ちょいとコレを試してもらいたいんだけど……」
またか……
装備の修理ついでに毎度お手製魔具の実験につきあわされるんだよな。
特に難しいことをさせられるわけじゃないんだが、こう毎度毎度だと流石に面倒になってくる。とはいえ、旅の役に立つかもしれないというのを考えると無碍にも出来ねぇんだよなぁ。
実際、ランドはここ数日の戦いでセドリックの試作魔剣を使い続けている。かなり気に入ってるみたいだし、実際強力だから困る。
「で、今度は何なんだ?」
「こいつさ」
そう言って差し出されたのは、脚甲? にしてはやけにゴツい。ゴツいと言うか、太い。足部分がかろうじて飛び出しているからグリーブと認識できるけど、角度によってはドラム缶か何かにしか見えない。
こんなアホみたいに重そうなものを何で馬車に……と思うところだが、実のところコレは馬車に乗せて運んでいるわけではない。馬車の横にサイドカーのような形で宙に浮くテーブルのようなものが括り付けられているのだ。セドリックの私物で、かなりお高い魔導具らしい。仕組みの方は聞いてもあまり詳しく理解は出来なかったが、どんな重さのものも台座の上では殆ど重さがなくなってしまうそうだ。元々は台座の上の物の重さが無くなるだけの魔導具だったらしいが、それをセドリックが改造して宙に浮かせる機能を持った魔導具と組み合わせて運搬用魔導具として組み上げ直したらしい。
台座から引きずり下ろすようにして放り出されたそれをなんとか地面に立てて、装備してみる。
鉄靴かと思ったが、材質は鉄製という感じではない。石……ともなんか違うな。何かの甲殻かと言われるともっと重くて硬い……? 何だこれ?
まぁそれはいいとして、そもそも素材云々以前にコレ……サイズ大丈夫なのか?
「なぁ、セドリックさんよ? コレ、明らかにサイズ合ってないだろ。ブーツと言うか、俺の脚がすっぽり入っちまうぞ」
「それで合ってるんだよ。良いから装着してみてくれ」
そこまで言うならまぁ付けてはみるが……とりあえず留め具でなんとかして足に固定はしてみた。
って、案の定膝上……というか太ももまでスッポリだぞこれ。
足先はグリーブの半ばくらいまでしか届いていないが、そういう作りなのか爪先は一応靴底を捉えている。捉えているが……
「うん、サイズはピッタリみたいだな」
「は? いや、これでか? グリーブって普通足や脛を守る防具だろ。なのに太ももまで覆っちまってるが……」
あれ、コレ丁度膝のところで曲がるようになってるのか?
「どうだ?」
「なんか……強制的につま先立ちさせられてるみたいで違和感あるけど、関節はしっかり曲げられるな」
びっくりするほど滑らかに足首や膝が曲がる。下手な鎧よりも可動域が広いかもしれん。
「爪先立ちは我慢してくれ。踵部に色々と機能を仕込んでる分、どうしても内部スペースが爪先立ちになってしまったんだ。平足にできないこともないが、そうすると足首周りに可動部を仕込む必要ができて、足首より下を大きくしないといけなくなってしまうんだよねぇ」
「成る程? で、こいつは一体何なんだ?」
ようやく横で眺めていたランドのツッコミが来た。いや、よく言ってくれた。マジで何なん? コレは。
「僕の研究している魔導器の一種さ。まぁ、口惜しいことにオリジナルと言うわけじゃなくて法国の魔導鎧を元に改良してる物なんだけどね」
「魔導鎧……アレか」
「お? キョウは見たことあるのか? アレは激戦地でしか使用されないから中々お目にかかることはないんだが」
「以前、一度アレと戦ったことがあってな……」
クフタリアの地下遺跡であの生臭クソ坊主が纏ってたやつが魔導鎧だったはず。
「マジかい!? よく生き残ったな……ってイブリスが居るなら確かに渡り合えなくもない、のか?」
「いや、アレとやりあったのはイブリスと出会う前だな」
「マジで!?」
「確かに出鱈目な装備だったが、そこまで驚くことか?」
「戦場でアレに出会ったら、魔導鎧兵一人に対して十人で挑めと言われるほどなんだぞ。それをたった一人で……」
「いや、流石に一人で戦ったわけじゃないからな? あの時は元々の仲間たちと一緒に戦ったから。とはいえ、なぁ」
強力だったのは間違いないが、正直戦闘力で言えば生身のキルシュの方が強いよな……?
駆け出しのはずのあいつが、傭兵の中でもかなりの強さだってのは流石にもう理解はしてるが、強者はあいつだけじゃないってことも知っている身としては、あのパワードスーツもどきがそこまで恐れられている理由がわからない。
あ、いや。もしかして使ってたのが生臭坊主だったから、あの程度だったとか? ……有り会えるな。王国の近衛レベルの化け物がアレを纏って戦ったらとんでもない強さになるような気がする。
魔導鎧の用法を熟知した凄腕の法国の正規兵が使えば、とんでもない強敵に化ける可能性は否定できないな。
「実物を見たことがあるどころか、実際に戦闘経験があるなんて好都合だよ。ぜひ比較意見も聞かせてもらいたいところだね」
「いや、自分で装備したことがあるわけじゃないから比較は無理だろう……」
「本物はもっとこうだったとか、もっとぎこちなかったとか、そういった意見だけでもかなり参考になるのさ」
「まぁ、その程度でいいなら構わんけど、一度戦っただけでうろ覚えだからな。あまり期待はするなよ?」
まぁ、実はちょっと興味があるにはあったんだよな。魔導鎧。
ロボットというよりはパワードスーツもどきな感じだけど、やっぱり男子としては人形メカの誘惑は否定し難い。
まぁ、セドリックの作っているコレは人形ですらないでかい脚甲なんだが、それでもやっぱり俺の興味を惹きつけてやまないんだよ。
「いきなりコレ付けて実戦とか怖すぎるから、少し試すぞ」
「どうぞどうぞ」
取り敢えず装着したまま体を動かしてみると、やはり違和感がすごい。
歩幅が伸びたことで移動力は上がってるけど、この違和感が解消されないと怖すぎて全力で走れないぞ。
ジャンプに関しては、どういう仕組なのか、ジャンプ力がすごく強化されてて、思ったのの3倍位飛び上がってかなりビビった。まぁ着地で脚が地面に突き刺さって動けなくなったのはどうかと思ったが。
まぁ、試作品って話だし、こんなもんか。ポテンシャルは高そうだけど、実戦投入には程遠いって感じだな。
「使ってみて、どうだった?」
「どうだった……って、期待してるところ悪いが、今のところはまだ利点より問題点のほうが多い感じだな」
「具体的には?」
「まず視点の高さだ。突然頭2つ分くらい身長伸びた感じになったせいで、ちょっと高すぎて怖い。あと、脚甲の中で爪先立ちになってるせいで、普通に歩くだけでも自然と前傾姿勢になってしまって、バランスが取りにくいし、純粋に自分の爪先の位置と脚甲の爪先の位置にズレがあるせいで、何もないところで何度も躓いた。正直コレが戦闘で一番怖いかもしれん」
「なるほど、なるほど……重心問題は改善の余地有りと。それに爪先の違和感か」
「足首が固定されてるのも相まって、余計爪先の位置が曖昧化してる印象はあったな」
正座のし過ぎで足がしびれて、足首から先の感覚がなくなって何もない所で爪先引っ掛けたときの感じに近い。アレをもっと悪化させた感じというか……いきなり不意打ちみたいな感じで足首ヒネるんで、かなり怖いんだよな。
「やっぱり足首は連動させないとダメか……」
「せめて感覚は連動させてほしい。こっちは爪先伸ばしてるのに、実際には曲がってるとか混乱するんだわ」
「なるほどねぇ。そうなると今度は形状とバランスの方を考慮する必要があるか……視点についてはカサが増す以上どうしようもないから、コレばかりは慣れでなんとかしてもらうしかないな」
そういやウィンタースポーツ用のブーツも、付けた時足首固定されるわゴツくて視界上がるわで歩くのにも苦労したけど、いつの間にか慣れてたっけか。
アレと比べると違和感なんてレベルじゃないが、確かに機能的な問題じゃないから使うなら慣れる以外に方法はないか。
使うならな。
「しかし、何で魔導鎧なんだ? たしかにコレも魔具ではあるけど、魔剣とかとは全く別カテゴリなんじゃないのか?」
「いや、むしろ俺の研究の方向性的には魔剣なんかよりもコッチのほうが本道なんだよね」
「そうなのか?」
「俺の目指すものは誰でも使えて、高い効果を発揮する魔具さ。そういう意味で魔導鎧というのは戦闘に特化してるものの、特別な才能がなくても誰が使っても高い性能を発揮するだろう?」
「そう言われてみれば確かに……」
アレを装備すれば、素人だって大損害を出せるだろう。あの生臭ハゲ坊主でもアレだけの大暴れだったわけだからな。
「例えば、魔導鎧の戦闘ギミックを省いて、安全装置とか耐久性を向上させれば、大工や運搬みたいな力仕事で役に立つとは思わないか?」
「まぁ、そうだな」
というか、魔導鎧を見てひと目で連想したのがパワードスーツだったけど、パワードスーツって言われてとまっさきに思い浮かぶのは工業用の機械だしな。
「僕はそういう魔具を作り出したいのさ。戦争用じゃなく、汎用性の高い、皆に使われる魔具をさ。まぁ今はまだスポンサーつけるためには結果の解りやすい戦闘用の魔具制作からは逃げられないんだけどね」
「おぉ……」
マッドな研究バカかと思いきや、意外とまっとうな目標を掲げてたんだな。そういうところは素直にスゲェって思うわ。
「戦争しか用途のない魔具より、そっちの方が売れそうだからね」
それを口にしなければ、尊敬したままでいられたんだがなぁ。
まぁセドリックらしいと言えばらしいんだが。
つうか、セドリックがやりたいのはあくまで法国ですでに実用化されている技術の転用なんだよな?
なのにセドリックの目指すような民間向けの魔具が世間に出回ってないってことは、法国って魔導鎧の技術を戦争にしか使用してないんじゃないのか? 仮にも法国を名乗る国が、高い技術を戦争にしか回してない。平和利用なんて全く考えてねぇじゃねーか。やっぱあの国滅んだほうが良いんじゃないのか……?
「何にせよ、貴重な意見、助かるよ。また手空きの時にでもテスト頼むよ」
「あんましんどくないので頼むわ」
この旅の間になにか俺らの役に立つような装備が出来上がるとは流石に思わんが、金も出してもらってるしぶきの整備も頼んでる以上、多少ならこう言うテストに付き合うのも悪くないとは思ってる。
もっとも、あまりに頻繁につきあわされたり、あまりマッドなやつは流石に御免被るけどな。
馬車での旅の途中、解っていたこととは言え襲撃が多かった。
それは獣だけではなく、野盗のたぐいも含まれる。
で、そんなのを撃退していれば当然装備は摩耗していく。いくらミアリギスが不壊の特性を持っていても、防具やその他の装備はそうもいかない。
そういった装備を調整するのはセドリックの仕事な訳だが……
「今度の襲撃の時は、ちょいとコレを試してもらいたいんだけど……」
またか……
装備の修理ついでに毎度お手製魔具の実験につきあわされるんだよな。
特に難しいことをさせられるわけじゃないんだが、こう毎度毎度だと流石に面倒になってくる。とはいえ、旅の役に立つかもしれないというのを考えると無碍にも出来ねぇんだよなぁ。
実際、ランドはここ数日の戦いでセドリックの試作魔剣を使い続けている。かなり気に入ってるみたいだし、実際強力だから困る。
「で、今度は何なんだ?」
「こいつさ」
そう言って差し出されたのは、脚甲? にしてはやけにゴツい。ゴツいと言うか、太い。足部分がかろうじて飛び出しているからグリーブと認識できるけど、角度によってはドラム缶か何かにしか見えない。
こんなアホみたいに重そうなものを何で馬車に……と思うところだが、実のところコレは馬車に乗せて運んでいるわけではない。馬車の横にサイドカーのような形で宙に浮くテーブルのようなものが括り付けられているのだ。セドリックの私物で、かなりお高い魔導具らしい。仕組みの方は聞いてもあまり詳しく理解は出来なかったが、どんな重さのものも台座の上では殆ど重さがなくなってしまうそうだ。元々は台座の上の物の重さが無くなるだけの魔導具だったらしいが、それをセドリックが改造して宙に浮かせる機能を持った魔導具と組み合わせて運搬用魔導具として組み上げ直したらしい。
台座から引きずり下ろすようにして放り出されたそれをなんとか地面に立てて、装備してみる。
鉄靴かと思ったが、材質は鉄製という感じではない。石……ともなんか違うな。何かの甲殻かと言われるともっと重くて硬い……? 何だこれ?
まぁそれはいいとして、そもそも素材云々以前にコレ……サイズ大丈夫なのか?
「なぁ、セドリックさんよ? コレ、明らかにサイズ合ってないだろ。ブーツと言うか、俺の脚がすっぽり入っちまうぞ」
「それで合ってるんだよ。良いから装着してみてくれ」
そこまで言うならまぁ付けてはみるが……とりあえず留め具でなんとかして足に固定はしてみた。
って、案の定膝上……というか太ももまでスッポリだぞこれ。
足先はグリーブの半ばくらいまでしか届いていないが、そういう作りなのか爪先は一応靴底を捉えている。捉えているが……
「うん、サイズはピッタリみたいだな」
「は? いや、これでか? グリーブって普通足や脛を守る防具だろ。なのに太ももまで覆っちまってるが……」
あれ、コレ丁度膝のところで曲がるようになってるのか?
「どうだ?」
「なんか……強制的につま先立ちさせられてるみたいで違和感あるけど、関節はしっかり曲げられるな」
びっくりするほど滑らかに足首や膝が曲がる。下手な鎧よりも可動域が広いかもしれん。
「爪先立ちは我慢してくれ。踵部に色々と機能を仕込んでる分、どうしても内部スペースが爪先立ちになってしまったんだ。平足にできないこともないが、そうすると足首周りに可動部を仕込む必要ができて、足首より下を大きくしないといけなくなってしまうんだよねぇ」
「成る程? で、こいつは一体何なんだ?」
ようやく横で眺めていたランドのツッコミが来た。いや、よく言ってくれた。マジで何なん? コレは。
「僕の研究している魔導器の一種さ。まぁ、口惜しいことにオリジナルと言うわけじゃなくて法国の魔導鎧を元に改良してる物なんだけどね」
「魔導鎧……アレか」
「お? キョウは見たことあるのか? アレは激戦地でしか使用されないから中々お目にかかることはないんだが」
「以前、一度アレと戦ったことがあってな……」
クフタリアの地下遺跡であの生臭クソ坊主が纏ってたやつが魔導鎧だったはず。
「マジかい!? よく生き残ったな……ってイブリスが居るなら確かに渡り合えなくもない、のか?」
「いや、アレとやりあったのはイブリスと出会う前だな」
「マジで!?」
「確かに出鱈目な装備だったが、そこまで驚くことか?」
「戦場でアレに出会ったら、魔導鎧兵一人に対して十人で挑めと言われるほどなんだぞ。それをたった一人で……」
「いや、流石に一人で戦ったわけじゃないからな? あの時は元々の仲間たちと一緒に戦ったから。とはいえ、なぁ」
強力だったのは間違いないが、正直戦闘力で言えば生身のキルシュの方が強いよな……?
駆け出しのはずのあいつが、傭兵の中でもかなりの強さだってのは流石にもう理解はしてるが、強者はあいつだけじゃないってことも知っている身としては、あのパワードスーツもどきがそこまで恐れられている理由がわからない。
あ、いや。もしかして使ってたのが生臭坊主だったから、あの程度だったとか? ……有り会えるな。王国の近衛レベルの化け物がアレを纏って戦ったらとんでもない強さになるような気がする。
魔導鎧の用法を熟知した凄腕の法国の正規兵が使えば、とんでもない強敵に化ける可能性は否定できないな。
「実物を見たことがあるどころか、実際に戦闘経験があるなんて好都合だよ。ぜひ比較意見も聞かせてもらいたいところだね」
「いや、自分で装備したことがあるわけじゃないから比較は無理だろう……」
「本物はもっとこうだったとか、もっとぎこちなかったとか、そういった意見だけでもかなり参考になるのさ」
「まぁ、その程度でいいなら構わんけど、一度戦っただけでうろ覚えだからな。あまり期待はするなよ?」
まぁ、実はちょっと興味があるにはあったんだよな。魔導鎧。
ロボットというよりはパワードスーツもどきな感じだけど、やっぱり男子としては人形メカの誘惑は否定し難い。
まぁ、セドリックの作っているコレは人形ですらないでかい脚甲なんだが、それでもやっぱり俺の興味を惹きつけてやまないんだよ。
「いきなりコレ付けて実戦とか怖すぎるから、少し試すぞ」
「どうぞどうぞ」
取り敢えず装着したまま体を動かしてみると、やはり違和感がすごい。
歩幅が伸びたことで移動力は上がってるけど、この違和感が解消されないと怖すぎて全力で走れないぞ。
ジャンプに関しては、どういう仕組なのか、ジャンプ力がすごく強化されてて、思ったのの3倍位飛び上がってかなりビビった。まぁ着地で脚が地面に突き刺さって動けなくなったのはどうかと思ったが。
まぁ、試作品って話だし、こんなもんか。ポテンシャルは高そうだけど、実戦投入には程遠いって感じだな。
「使ってみて、どうだった?」
「どうだった……って、期待してるところ悪いが、今のところはまだ利点より問題点のほうが多い感じだな」
「具体的には?」
「まず視点の高さだ。突然頭2つ分くらい身長伸びた感じになったせいで、ちょっと高すぎて怖い。あと、脚甲の中で爪先立ちになってるせいで、普通に歩くだけでも自然と前傾姿勢になってしまって、バランスが取りにくいし、純粋に自分の爪先の位置と脚甲の爪先の位置にズレがあるせいで、何もないところで何度も躓いた。正直コレが戦闘で一番怖いかもしれん」
「なるほど、なるほど……重心問題は改善の余地有りと。それに爪先の違和感か」
「足首が固定されてるのも相まって、余計爪先の位置が曖昧化してる印象はあったな」
正座のし過ぎで足がしびれて、足首から先の感覚がなくなって何もない所で爪先引っ掛けたときの感じに近い。アレをもっと悪化させた感じというか……いきなり不意打ちみたいな感じで足首ヒネるんで、かなり怖いんだよな。
「やっぱり足首は連動させないとダメか……」
「せめて感覚は連動させてほしい。こっちは爪先伸ばしてるのに、実際には曲がってるとか混乱するんだわ」
「なるほどねぇ。そうなると今度は形状とバランスの方を考慮する必要があるか……視点についてはカサが増す以上どうしようもないから、コレばかりは慣れでなんとかしてもらうしかないな」
そういやウィンタースポーツ用のブーツも、付けた時足首固定されるわゴツくて視界上がるわで歩くのにも苦労したけど、いつの間にか慣れてたっけか。
アレと比べると違和感なんてレベルじゃないが、確かに機能的な問題じゃないから使うなら慣れる以外に方法はないか。
使うならな。
「しかし、何で魔導鎧なんだ? たしかにコレも魔具ではあるけど、魔剣とかとは全く別カテゴリなんじゃないのか?」
「いや、むしろ俺の研究の方向性的には魔剣なんかよりもコッチのほうが本道なんだよね」
「そうなのか?」
「俺の目指すものは誰でも使えて、高い効果を発揮する魔具さ。そういう意味で魔導鎧というのは戦闘に特化してるものの、特別な才能がなくても誰が使っても高い性能を発揮するだろう?」
「そう言われてみれば確かに……」
アレを装備すれば、素人だって大損害を出せるだろう。あの生臭ハゲ坊主でもアレだけの大暴れだったわけだからな。
「例えば、魔導鎧の戦闘ギミックを省いて、安全装置とか耐久性を向上させれば、大工や運搬みたいな力仕事で役に立つとは思わないか?」
「まぁ、そうだな」
というか、魔導鎧を見てひと目で連想したのがパワードスーツだったけど、パワードスーツって言われてとまっさきに思い浮かぶのは工業用の機械だしな。
「僕はそういう魔具を作り出したいのさ。戦争用じゃなく、汎用性の高い、皆に使われる魔具をさ。まぁ今はまだスポンサーつけるためには結果の解りやすい戦闘用の魔具制作からは逃げられないんだけどね」
「おぉ……」
マッドな研究バカかと思いきや、意外とまっとうな目標を掲げてたんだな。そういうところは素直にスゲェって思うわ。
「戦争しか用途のない魔具より、そっちの方が売れそうだからね」
それを口にしなければ、尊敬したままでいられたんだがなぁ。
まぁセドリックらしいと言えばらしいんだが。
つうか、セドリックがやりたいのはあくまで法国ですでに実用化されている技術の転用なんだよな?
なのにセドリックの目指すような民間向けの魔具が世間に出回ってないってことは、法国って魔導鎧の技術を戦争にしか使用してないんじゃないのか? 仮にも法国を名乗る国が、高い技術を戦争にしか回してない。平和利用なんて全く考えてねぇじゃねーか。やっぱあの国滅んだほうが良いんじゃないのか……?
「何にせよ、貴重な意見、助かるよ。また手空きの時にでもテスト頼むよ」
「あんましんどくないので頼むわ」
この旅の間になにか俺らの役に立つような装備が出来上がるとは流石に思わんが、金も出してもらってるしぶきの整備も頼んでる以上、多少ならこう言うテストに付き合うのも悪くないとは思ってる。
もっとも、あまりに頻繁につきあわされたり、あまりマッドなやつは流石に御免被るけどな。
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