ν - World! ――事故っても転生なんてしなかった――

ムラチョー

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四章

二百八話 ダンジョン探索Ⅰ

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 予想通りというか何というか、ハルド達の戻ってくるまでの一刻の間、何のトラブルも起きることは無かった。
 ハルド達は何か複雑な基盤みたいなものを持って帰ってきた。何に使うのかと思ったら本人たちもサッパリ分からないらしい。何でそんなものを……と思ったら売り払うんだそうな。性能のよく判らない古代の武器を手に入れるよりも、遺物を売り払った金で性能の確約された現代の武器を買った方が現実的という話だ。
 言われてみれば確かにその通りで、場合によっては呪いの武器とかもあるかもしれないのだから、堅実さをとるならそれが一番だと思う。
 ……だが、ここはあえてロマンを求めたい。特に初めてのダンジョンアタックで手に入れる報酬なんだから、記念品的な意味でも実用品を持って帰りたいんだよな。最悪使えなくても思い出の品的な意味で。

 という訳で、今度は俺達が宝探しに繰り出した訳だ。
 エリスとハティの二人にもう一度気配を探ってもらい、安全を確認したうえで各自分かれて探索することにした。
 こういう廃工場的なシチュエーションで個人行動とか普通に考えれば死亡フラグなんだが、今回に関してはフラグは既にへし折り済みだ。たとえエリスとハティの気配探知をかいくぐるほど巧みに気配を消しているとしても、動き出せばあの二人の索敵能力をかいくぐれるとは思えんしな。
 さて、時間も限られてる事だし本格的に宝探しに精を出すとしようか。

 まずはそれっぽい部屋探しだな。
 オフィスっぽい部屋よりも実験室っぽい部屋の方が何か良いものがありそうな気がする。
 ここまで壁がボロボロだと館内案内とかも剥げ落ちてるだろうし、地道に足を使って探すしかなさそうだな。
 幸いほとんどの部屋はガラスっぽい透明な窓で廊下から中が確認できるから、いちいち扉を開けて確かめる必要がないのだけは助かる。まぁ窓はほとんど割れてるんだけどな。

 それにしても、この廊下の広さと天井の高さはなんだろう?
 まるで巨人が使うのを想定にしてあるのかと思えるほどの空間だ。色々な物のサイズから見るに、この施設を使っていたのは俺達と同じサイズの人間だとは思うが……単にこの時代の研究様式なのだろうか?

「お?」

 何か他と雰囲気の違う部屋が。
 奥に並んでるのは……鎧? いや背中が開いてるし、後ろから乗り込むのか? となると、鎧というよりもどっちかというとパワードスーツか?
 そんな物騒なものがあるという事は、何か他にも武器的なものもここにあるかもしれん。これは探索する価値ありだな。
 幸い、ガラス窓は派手に砕けているし、器物破損なんてリスクを負わなくても良いのは楽でいいな。

 部屋の中に入ってみてわかったが、武器工場というよりは武器展示場のような所だった。デカイパワードスーツっぽいのはむき出しで並べられているが、他には色々な武器っぽいものがケースに入って陳列されている。
 これはもうより取り見取り……と言いたいところだが、困った事に8割がた使い方が分からない物だった。ぱっと見で使えそうなのはナイフくらいだ。なんかごてごてした機械がついてるが、ナイフの刃の形状って言うのは時代が違っても変わらないらしい。銃っぽいものもまぁ何となくわかる。引き金が見当たらないが、形状からまぁ何となく。
 でもなんだこのおまるみたいなのは? それにこれは炊飯ジャーか? やべぇ武器としての使い方がさっぱり思い浮かばねぇ。
 他には……何だこの棒。 
 いやまて、この棒、この形状で未来武器といえば、もしかしてアレか? アレなのか?
 SF武器の王道、ビームサーベルか!?
 ヤベェの見つけちまったよ。これで決まりだろ。
 だって、ビームサーベルっつったらあれだろ? ビームのサーベルだぞ!? こんなロマンの塊選ばない訳にはいかんでしょうが。
 おお、サイズ的にも手にしっくりくる。なかなか良い具合じゃないか。
 電源スイッチみたいなのは……これか!?

 ――バチィッ

「おおおおぉぉ…………お?」

 スパークしたのは一瞬。ビームの刃を形成するかと思いきや、伸び切らずに縮みすぐに消えてしまった。これは……もしかしてバッテリー切れ?
 そりゃそうか、たとえ新品でもこれだけの施設が遺跡に化けるほど長い事放置されていればバッテリーだって空になるってもんだ。むしろ一瞬でもバチィした事の方が驚きってもんだ。

「電池切れとかマジかよ、充電とかできねぇのか?」

 塚の部分を調べてみるも、コネクタのようなものは見当たらない。となるとバッテリー交換タイプか? だが蓋のような継ぎ目は見当たらない。乱暴に扱って壊れても困るし……というかそもそも替えのバッテリーもこの様子だと全部スッカラカンだろう。
 たとえ見つけたとしても使い物になりはしない。個々の電源で充電できれば良いんだがその確証もないし、なによりバッテリーを満タンに出来てもどれくら持つのか不明だし、充電のたびにここまで戻るというのも流石に不便だ。
 というかそもそも持ち出しは一つだけだから、バッテリーや充電器見つかっても手に入らんのか。
 ここは涙を呑んで諦めるしかないだろう。……あぁ、欲しかったなぁビームサーベル。

 しかしそうなると、他に良さそうなものというと何があるか……
 ケースに入ってるものはどれも何らかの研究品や製品だろうことは想像できるが、しっかり選ばないと動力不足でただのゴミみたいなものを引きかねない。
 できれば電動じゃなくて魔法系のアイテムでもあると良いんだが……
 使えそうなものはねぇなぁ……。
 剣も銃もバッテリー式っぽい物ばっかりだ。このでっかいナイフとかは通電しなくても使えなくはなさそうだけど、これ動力無しだと邪魔なパーツが余分についてるだけのガラクタだよなぁ。流石に実戦で使えるとは思えん。
 う~ん、これだけ武器があって使えそうなものが見当たらないってのもなかなかキツイな。宝の山ならぬ、ゴミの山だなぁ。
 武器の他に何か……うん? これは、腕輪か? 用途はサッパリ分からんが、こんな所にあるって事は何かしら特殊な効果があるのかもしれん。というか、これなら見た目綺麗だし普通に良い値で売り付けれるんじゃないだろうか……?
 できれば実用品が良いんだが、最悪の時の為のキープ品として取っておくか。

 しっかし、機械系装備のまさかのデメリットだな。
 機械の装備のあるRPGなんて山ほどあるが、いちいちバッテリーとか要求するのなんて殆ど無いからな。アクションゲームとかだと強力過ぎる装備の縛りとして存在する場合はちょくちょくあるが。
 しかし、機械装備でこれなら魔法装備にもいろいろ制限がある可能性は高いな。今まで特に聞いたことは無かったけど、チェリーさんの使う炎を出す魔法の槍も決め時にしか使ってるの見たことないし、やっぱり何か制限あるんだろうな。
 今後そういった品を手に入れたら、まずはリミットの確認をするようにしないとだな。
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