187 / 330
三章
百七十七話 本戦Ⅳ
しおりを挟む
「上手い!」
咄嗟に言葉が口をついていた。
チェリーさんのバクステ読みが刺さって、防戦一方の流れを一気に押し返していた。
あれ、回避が上手くて捕まらない相手に決まると気分いいんだよなぁ。
これで流れは五分に……持ち込めるかはまだ解らないが、少なくともエリスに対して迂闊に死角から攻撃し続けるということに対してリスクを与えることが出来た。これで立ち回りは一度リセットだろうな。
「さて、ここからどうやって…………ん?」
このアラームは……公式からの直通メール? 今このタイミングで?
これ、真っ当な方法らしいけど、だからなのか確認に幾つか手順踏まないといけないから一々面倒くさいんだよな。まぁ、仕事関連だろうし確認するけどさ。
えぇと、差出人はT――田辺さんか。
『緊急性のある内容のため直ぐに報告の必要あり。内容は念の為口頭にて。会場裏口にて』
大会中のこのタイミングで一体何だ?
つか随分と簡潔なメールだな。業務メールとはいえ、それにしても必要な情報はとりあえず全部詰め込むタイプの田辺さんらしくない。
緊急性のある内容と言う程だから、急いで書いたメールだからって事か?
まぁ、行ってみれば分かるか。
「スマン、ちょっと運営呼び出しがあったんで席を外す」
取り敢えずその場の誰かしらに聞こえるように言って席を立つ。
いやだって、SADはちょうど反対側にいて遠いし、エリスは試合中だから他に知り合いらしい知り合い誰も居ないんだもんよ。誰かが呼び出しで俺が席を外してるって知ってれば良いだろ。
何も言わずに居なくなるよりかは良いはずだ。多分。
「さて……」
待ち合わせは会場裏口だっけ?
――で、裏口ってどこだ? 入り口の反対側に行けば良いのか?
◇◇◇
結局わからなかったから、会場の関係者らしきNPCから場所を聞き出して、ようやくたどり着けた。
といってもまぁ、5分くらいしか経っってないが。
たどり着いた先に居たのは紛れもなくT1――田辺さんだ。どうやらラブレタートラップ的な罠呼び出しではなかったようだな。
「やあ、来てくれたか。前から調べていた君のNPCボディについて色々判ったことが会ってね。立ち話もなんだからそこの椅子にでも座ろうか」
「え? あ、まぁ……はい」
なんだ?
聞かせる内容じゃないなら今ここでする話でもないだろうに。田辺さんってこんな迂闊な内容を口に出すようなタイプだったか……?
疑っても結局ついていくしか無い現状で、怪しい……というか胡散臭い行動取るはやめてほしいんだが……
「ん? んん!?」
椅子に座った瞬間、突然景色が切り替わった。
見たこともない殺風景な部屋の中だが、ここは一体……
「ここは私のプライベートエリアです。ここなら盗聴等の心配もない」
「盗聴……?」
つまり、何かしら監視盗聴の危険があるというか、知られると厄介な内容の話ってことか?
何やら雲行きが怪しくなってきたな。
「それは別に良い……訳では無いんですけど、それよりも今一体どうやって……? ポータルを足元に出したって訳でもないですよね? あのいつもの妙な浮遊感とかまるで無かったんですけど」
「あぁ、それはポータルを使った移動ではなく、予め準備しておいたある方法で操作ボディの方を切り替えたんだよ。元のボディは僕のも立浪さんのも椅子に腰掛けているままだ」
「操作ボディを切り替える……?」
言われて、自分の体を見下ろして……変なものが見えた。
「はぁ!?」
何というか箱だった。……いや、ブロック?
「腕や体の長さは合わせてあるけど、都合上極端にデータを切り詰めさせてもらっているんだ。確認するまで気づけない程度には馴染んでいるようで良かった」
いや全然良くないんですけどね? なんでこんなデフォルメされた身体にされてんの?
「色々聞きたいこともあるだろうけど、向こうでの大会で君の出番も控えているから、今はまず話を進めよう。君のボディを調査している中で、巧妙に隠されたバックドアプログラムらしきものが発見された」
「バックドア? 何か漫画のネタで見た記憶が……ウィルス的なやつでしたっけ?」
「覗き穴的な物だね。こちらの意図しない非正規の方法で君のデータを覗き見していた者が居るようだ」
え、それセキュリティガバガバ……あぁ、だからバックドア(裏口)なのか。
「それ、問題あるじゃ……」
「大問題だね。プライバシー的にもセキュリティ的にも穴があると言うことだし、今回のはおそらく個人的に立浪さんが狙われている可能性がある。だからこうして緊急的に呼び出させてもらったんです」
たしかにこれは緊急事態だわ。公式イベント中に呼び出される訳だ。
「このプライベートエリアは、以前テスターミーティングを行ったテストサーバを経由して、独立したサーバに物理接続した……要するにゲームサーバからは完全に隔離された場所です。まぁ、分かりやすく言うと、病室で寝ているあなたの隣に直接機材を置いてケーブルで繋いでいると思ってください。本来のボディはデータ量が膨大で、真っ当な方法ではデータ移動に時間がかかってしまうため必要最低限の情報引き出しのために仮ボディも極力情報量を少なく抑えています」
「なるほど、なんとなく状況は想像できたし、このボディについても理解しました。けど、セキュリティに関する話とはいえなんでこんな回りくどい方法を?」
「そのバックドアを仕込んだのが社内の人間の可能性が高いからです」
まじでか。
「前回の精査は立浪さんがALPHAに戻ってからもやってまして、サーバ移動した際の最後のログからも当然ながらデータを取っていました。そしてその時は異常は見られなかった」
「つまり、外部犯と考えるよりもALPHAサーバに接触できる内部スタッフの犯行の可能性のほうが高いと」
「そういう事です」
うわぁ……面倒くさいことになってるな。
つか何で内部スタッフがそんな回りくどい事してるんだ? スタッフならそんなバレたらまずい方法なんて使わなくても普通にデータに接触できるんじゃないのか?
それとも何か別に理由がある……?
「以前にも説明したとおり、このゲームのログは特殊すぎて、特定の瞬間を状況的に切り出すことは出来ますが、そこにプログラム的なエラーがない場合、我々は何かが起きても、指摘されれるまでそれを異常だと認識できません。なので本人に直接口頭で確認を取るしか無いんですが……」
「なにか問題が?」
「バックドアを仕込まれていた以上、あなたの周辺行動を監視されている可能性があるんです。エリア全てのログを管理することは出来なくても、最初から特定個人に絞り込んでデータを収集している場合は話は別ですからね」
つまり、狭い範囲に限定すれば、普通に過去ログを精査できてしまうと。
「で、社内の人間なら比較的自由にゲームサーバにアクセスできるから、田辺さんがT1を使ってゲーム内で直接俺に注意を促すと、俺にバックドアを仕込んだ奴に気付かれて対処されるかもしれないと」
「そういう事です。なので、こうして盗聴対策に念を入れる必要があった」
セキュリティ不備で盗聴されていることを伝えるために、盗聴対策完備のエリアが必要だとかなかなかにアベコベだな。
「時間がないので完結に聞きます。前回の本サーバからALPHAサーバに戻って以降、僕以外の運営側メンバーと接触したことはありますか?」
「いいえ。NPCのふりをされていたら気付かないかもしれないけど、自分でそうなのって接触してきた人は居ません」
「特定の誰かと長時間接触する機会は?」
「エリスとハティ、あとはチェリーさんくらいですかね」
「その三人以外で、あまり面識のない相手に肉体的に接触する機会は?」
「それは……」
そうなると以外にあるな……
キルシュとは普通に握手もしたし、そもそも直接戦ったし。それ以外にも握手くらいは何人かとしたはずだし、アルマさんをハティの背に乗せて走った時はガッチリしがみ付かれてもいた。
あの宗教家臭いやつには殺されかけもしたし、それを運んだあのアサシンや、俺が意識のない間は医者とか色々触ってるはずだ。
「ちょっと心当たりがありすぎて特定できないです」
「……そうですか」
流石に握手した相手全てを疑っていたら、疑心暗鬼で頭がどうにかなってしまう。
親しく接したやつ全てを疑えってことだからな。流石にそんなのは嫌すぎる。
「状況証拠だけでは犯人特定は難しそうですね。ただ、本人が接触してない以上はNPCを使ったか、なりすました可能性が非常に高い。今回の精査でバックドアプログラム自体は表向きには原因不明の単なるゴミデータとして排除しておきましたが、そちらでも今後注意するようにしてみてください」
「わかりました」
「では、時間もないし、あまり長く椅子に座っているのも不自然に取られかねないので、元のボディに戻しますね」
はい、と答えようとした時には、すでに景色は闘技場エリアに戻っていた。
「忙しい時に申し訳ない。結局、ALPHAでのボディデータの過剰情報については未だ判然としない所が多いです。そのかわり一度データの洗浄はしたので変なゴミデータなんかは洗い落とされて気持ち軽くなったはずです。まぁ気持ち程度ですけどね」
「そうですか。わかりました」
あぁ、なるほど。最初のあのわざとらしい会話はアリバイ作りの一環的なものだったのか。田辺さん演技とか下手そうだからなぁ。
「ハッキリしたことは伝えられずに申し訳ない。一応判ったことだけでも直ぐに伝えようと思ってね」
「まぁ、俺にとっては何もわからなかったという事が判っただけなんですけどね」
「あはは、手厳しいな。伝えたかったのはそれくらいさ。今後もなにか判ったら……いや解らなくても出来るだけ早くそちらに伝えるようにするよ」
「ええ、お願いします。原因不明のバグとかちょっと怖すぎるんで」
そう言って立ち上がる。
流石に、そろそろ会場に戻らないと時間的にまずい気がする。
「こちらも何とかして原因を突き止めてみせるから、そちらも大会の方、頑張って盛り上げてくださいよ?」
「それは、まぁ。俺も楽しみにしてるんで」
そんな感じの、当たり障りのない会話をしながら会場に戻る。
それにしても、バックドアねぇ? 俺の何を知りたいことがあるってのか。
或いは、時期的に俺と一緒にいるチェリーさんの情報が狙われた可能性もあるか……?
いやぁ…………なんか面倒くさいことにならなきゃ良いんだが。
咄嗟に言葉が口をついていた。
チェリーさんのバクステ読みが刺さって、防戦一方の流れを一気に押し返していた。
あれ、回避が上手くて捕まらない相手に決まると気分いいんだよなぁ。
これで流れは五分に……持ち込めるかはまだ解らないが、少なくともエリスに対して迂闊に死角から攻撃し続けるということに対してリスクを与えることが出来た。これで立ち回りは一度リセットだろうな。
「さて、ここからどうやって…………ん?」
このアラームは……公式からの直通メール? 今このタイミングで?
これ、真っ当な方法らしいけど、だからなのか確認に幾つか手順踏まないといけないから一々面倒くさいんだよな。まぁ、仕事関連だろうし確認するけどさ。
えぇと、差出人はT――田辺さんか。
『緊急性のある内容のため直ぐに報告の必要あり。内容は念の為口頭にて。会場裏口にて』
大会中のこのタイミングで一体何だ?
つか随分と簡潔なメールだな。業務メールとはいえ、それにしても必要な情報はとりあえず全部詰め込むタイプの田辺さんらしくない。
緊急性のある内容と言う程だから、急いで書いたメールだからって事か?
まぁ、行ってみれば分かるか。
「スマン、ちょっと運営呼び出しがあったんで席を外す」
取り敢えずその場の誰かしらに聞こえるように言って席を立つ。
いやだって、SADはちょうど反対側にいて遠いし、エリスは試合中だから他に知り合いらしい知り合い誰も居ないんだもんよ。誰かが呼び出しで俺が席を外してるって知ってれば良いだろ。
何も言わずに居なくなるよりかは良いはずだ。多分。
「さて……」
待ち合わせは会場裏口だっけ?
――で、裏口ってどこだ? 入り口の反対側に行けば良いのか?
◇◇◇
結局わからなかったから、会場の関係者らしきNPCから場所を聞き出して、ようやくたどり着けた。
といってもまぁ、5分くらいしか経っってないが。
たどり着いた先に居たのは紛れもなくT1――田辺さんだ。どうやらラブレタートラップ的な罠呼び出しではなかったようだな。
「やあ、来てくれたか。前から調べていた君のNPCボディについて色々判ったことが会ってね。立ち話もなんだからそこの椅子にでも座ろうか」
「え? あ、まぁ……はい」
なんだ?
聞かせる内容じゃないなら今ここでする話でもないだろうに。田辺さんってこんな迂闊な内容を口に出すようなタイプだったか……?
疑っても結局ついていくしか無い現状で、怪しい……というか胡散臭い行動取るはやめてほしいんだが……
「ん? んん!?」
椅子に座った瞬間、突然景色が切り替わった。
見たこともない殺風景な部屋の中だが、ここは一体……
「ここは私のプライベートエリアです。ここなら盗聴等の心配もない」
「盗聴……?」
つまり、何かしら監視盗聴の危険があるというか、知られると厄介な内容の話ってことか?
何やら雲行きが怪しくなってきたな。
「それは別に良い……訳では無いんですけど、それよりも今一体どうやって……? ポータルを足元に出したって訳でもないですよね? あのいつもの妙な浮遊感とかまるで無かったんですけど」
「あぁ、それはポータルを使った移動ではなく、予め準備しておいたある方法で操作ボディの方を切り替えたんだよ。元のボディは僕のも立浪さんのも椅子に腰掛けているままだ」
「操作ボディを切り替える……?」
言われて、自分の体を見下ろして……変なものが見えた。
「はぁ!?」
何というか箱だった。……いや、ブロック?
「腕や体の長さは合わせてあるけど、都合上極端にデータを切り詰めさせてもらっているんだ。確認するまで気づけない程度には馴染んでいるようで良かった」
いや全然良くないんですけどね? なんでこんなデフォルメされた身体にされてんの?
「色々聞きたいこともあるだろうけど、向こうでの大会で君の出番も控えているから、今はまず話を進めよう。君のボディを調査している中で、巧妙に隠されたバックドアプログラムらしきものが発見された」
「バックドア? 何か漫画のネタで見た記憶が……ウィルス的なやつでしたっけ?」
「覗き穴的な物だね。こちらの意図しない非正規の方法で君のデータを覗き見していた者が居るようだ」
え、それセキュリティガバガバ……あぁ、だからバックドア(裏口)なのか。
「それ、問題あるじゃ……」
「大問題だね。プライバシー的にもセキュリティ的にも穴があると言うことだし、今回のはおそらく個人的に立浪さんが狙われている可能性がある。だからこうして緊急的に呼び出させてもらったんです」
たしかにこれは緊急事態だわ。公式イベント中に呼び出される訳だ。
「このプライベートエリアは、以前テスターミーティングを行ったテストサーバを経由して、独立したサーバに物理接続した……要するにゲームサーバからは完全に隔離された場所です。まぁ、分かりやすく言うと、病室で寝ているあなたの隣に直接機材を置いてケーブルで繋いでいると思ってください。本来のボディはデータ量が膨大で、真っ当な方法ではデータ移動に時間がかかってしまうため必要最低限の情報引き出しのために仮ボディも極力情報量を少なく抑えています」
「なるほど、なんとなく状況は想像できたし、このボディについても理解しました。けど、セキュリティに関する話とはいえなんでこんな回りくどい方法を?」
「そのバックドアを仕込んだのが社内の人間の可能性が高いからです」
まじでか。
「前回の精査は立浪さんがALPHAに戻ってからもやってまして、サーバ移動した際の最後のログからも当然ながらデータを取っていました。そしてその時は異常は見られなかった」
「つまり、外部犯と考えるよりもALPHAサーバに接触できる内部スタッフの犯行の可能性のほうが高いと」
「そういう事です」
うわぁ……面倒くさいことになってるな。
つか何で内部スタッフがそんな回りくどい事してるんだ? スタッフならそんなバレたらまずい方法なんて使わなくても普通にデータに接触できるんじゃないのか?
それとも何か別に理由がある……?
「以前にも説明したとおり、このゲームのログは特殊すぎて、特定の瞬間を状況的に切り出すことは出来ますが、そこにプログラム的なエラーがない場合、我々は何かが起きても、指摘されれるまでそれを異常だと認識できません。なので本人に直接口頭で確認を取るしか無いんですが……」
「なにか問題が?」
「バックドアを仕込まれていた以上、あなたの周辺行動を監視されている可能性があるんです。エリア全てのログを管理することは出来なくても、最初から特定個人に絞り込んでデータを収集している場合は話は別ですからね」
つまり、狭い範囲に限定すれば、普通に過去ログを精査できてしまうと。
「で、社内の人間なら比較的自由にゲームサーバにアクセスできるから、田辺さんがT1を使ってゲーム内で直接俺に注意を促すと、俺にバックドアを仕込んだ奴に気付かれて対処されるかもしれないと」
「そういう事です。なので、こうして盗聴対策に念を入れる必要があった」
セキュリティ不備で盗聴されていることを伝えるために、盗聴対策完備のエリアが必要だとかなかなかにアベコベだな。
「時間がないので完結に聞きます。前回の本サーバからALPHAサーバに戻って以降、僕以外の運営側メンバーと接触したことはありますか?」
「いいえ。NPCのふりをされていたら気付かないかもしれないけど、自分でそうなのって接触してきた人は居ません」
「特定の誰かと長時間接触する機会は?」
「エリスとハティ、あとはチェリーさんくらいですかね」
「その三人以外で、あまり面識のない相手に肉体的に接触する機会は?」
「それは……」
そうなると以外にあるな……
キルシュとは普通に握手もしたし、そもそも直接戦ったし。それ以外にも握手くらいは何人かとしたはずだし、アルマさんをハティの背に乗せて走った時はガッチリしがみ付かれてもいた。
あの宗教家臭いやつには殺されかけもしたし、それを運んだあのアサシンや、俺が意識のない間は医者とか色々触ってるはずだ。
「ちょっと心当たりがありすぎて特定できないです」
「……そうですか」
流石に握手した相手全てを疑っていたら、疑心暗鬼で頭がどうにかなってしまう。
親しく接したやつ全てを疑えってことだからな。流石にそんなのは嫌すぎる。
「状況証拠だけでは犯人特定は難しそうですね。ただ、本人が接触してない以上はNPCを使ったか、なりすました可能性が非常に高い。今回の精査でバックドアプログラム自体は表向きには原因不明の単なるゴミデータとして排除しておきましたが、そちらでも今後注意するようにしてみてください」
「わかりました」
「では、時間もないし、あまり長く椅子に座っているのも不自然に取られかねないので、元のボディに戻しますね」
はい、と答えようとした時には、すでに景色は闘技場エリアに戻っていた。
「忙しい時に申し訳ない。結局、ALPHAでのボディデータの過剰情報については未だ判然としない所が多いです。そのかわり一度データの洗浄はしたので変なゴミデータなんかは洗い落とされて気持ち軽くなったはずです。まぁ気持ち程度ですけどね」
「そうですか。わかりました」
あぁ、なるほど。最初のあのわざとらしい会話はアリバイ作りの一環的なものだったのか。田辺さん演技とか下手そうだからなぁ。
「ハッキリしたことは伝えられずに申し訳ない。一応判ったことだけでも直ぐに伝えようと思ってね」
「まぁ、俺にとっては何もわからなかったという事が判っただけなんですけどね」
「あはは、手厳しいな。伝えたかったのはそれくらいさ。今後もなにか判ったら……いや解らなくても出来るだけ早くそちらに伝えるようにするよ」
「ええ、お願いします。原因不明のバグとかちょっと怖すぎるんで」
そう言って立ち上がる。
流石に、そろそろ会場に戻らないと時間的にまずい気がする。
「こちらも何とかして原因を突き止めてみせるから、そちらも大会の方、頑張って盛り上げてくださいよ?」
「それは、まぁ。俺も楽しみにしてるんで」
そんな感じの、当たり障りのない会話をしながら会場に戻る。
それにしても、バックドアねぇ? 俺の何を知りたいことがあるってのか。
或いは、時期的に俺と一緒にいるチェリーさんの情報が狙われた可能性もあるか……?
いやぁ…………なんか面倒くさいことにならなきゃ良いんだが。
1
お気に入りに追加
630
あなたにおすすめの小説
【完結】マギアアームド・ファンタジア
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
ハイファンタジーの広大な世界を、魔法装具『マギアアームド』で自由自在に駆け巡る、世界的アクションVRゲーム『マギアアームド・ファンタジア』。
高校に入学し、ゲーム解禁を許された織原徹矢は、中学時代からの友人の水城菜々花と共に、マギアアームド・ファンタジアの世界へと冒険する。
待ち受けるは圧倒的な自然、強大なエネミー、予期せぬハーレム、そして――この世界に花咲く、小さな奇跡。
王道を以て王道を征す、近未来風VRMMOファンタジー、ここに開幕!
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!
しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。
βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。
そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。
そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する!
※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。
※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください!
※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる