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三章
百七十二話 もう一つの大会Ⅲ
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「それでは、試合開始!」
シードを含めたベスト16決定戦最終試合。
ようやく俺にとっての初戦な訳で、今大会始まって初めてステージ上に登った。
でかでかとFIGHAT!って表示されるんだから、一々アナウンスしなくても……とも思うが、やっぱりこういうアナクロさが大会という場所には向いてるのかもしれない。
「まさかルールにレベル制限が追加されるとはね。後発組の俺は噂でしか知らない、レベル差を覆すっていう強さを見てみたかったんだけど」
「そういうルールなんだから仕方ないだろ。というか俺の強さは相手が強かろうが弱かろうが変わらんし」
対戦相手は太刀使い。
名前は確か、ザン……なんとかだったか。戦い方ばかり見ていたので流石に名前まで覚えてる余裕はなかった。
牽制といった感じで放たれた突きを躱しながら、間合いを図る。刀使いとは何度か戦ったが、太刀使いとはまだ戦ったことが無い。今の内にある程度リーチを図っておきたい。
というか噂ってなんだ? 根も葉もない変なのが広がってるんじゃねぇだろうな?
「大体、レベル差を覆すっつったって、俺と同じ程度のプレイヤースキルを持っている相手にはそんな真似できねぇからな。むしろ、全員公平に戦えるんだからそれで良いじゃねぇか」
「まぁ、確かに言い訳の余地が無いって意味ではこのルールも悪くは無いけど、個人的にはレベル上げに使った時間だって強さの証の一つなんだから、レベル差はあっても良いと思うんだけどね」
「それも考え方の一つではあるな。まぁ以前のエキシビジョンではレベル制限なしのレギュレーションもあったし、もしかしたらそのうちそいうルールの実装されるんじゃないか?」
「それはぜひ期待したいですね」
にしても戦闘中なのに良くしゃべるな。俺は適当に相槌打ってるだけだが、そんなんで集中力持つのか?
踏み込みの逆袈裟を下がって躱して……即座の切り返しも柄を使って受け流す。三撃目は……ないか。
今回はちゃんと槍ではなくミアリギスの形状により近い武器が渡されている。
攻撃力とかの補正は全武器横並びになっているらしいので武器性能は前回の槍と特に変わるところが無いが、武器の重心バランスなんかは使い慣れたものと同じ方が良いに決まっているので、このミアリギスもどきは正直有難い。
前回は穂先の軽さに慣れるまで少し戸惑ったが、今回はちゃんと相手の攻撃に合わせて受け流しもスムーズに行える。
それにしてもこの選手、言動でなんかすごい強者オーラを醸しだしているんだが、攻めは随分と単調なんだよな。
第一回戦での対戦映像はちゃんと把握している。特に自分と当たるであろう相手の事は、人読みの為にも結構しっかりと観察させてもらった。
それで、今実際に手合わせしてみて、事前イメージと大差がない事は確認した。
この人はレベル偏重側のプレイヤーだな。
もちろん、動きを見た感じ、対人戦に慣れているのは間違いない。
……間違いないんだが、攻撃を当てる工夫は見えても、受ける工夫が全く感じられないんだよな。
これって多分、俺の攻撃がSADの首に突き刺さってもダメージを与えられなかったのと同じで、レベル差の暴力で被弾を無視してでも相手に如何に大ダメージを与えるか、って戦い方の癖なんじゃねぇかな?
ALPHAと違い、こっちのパラメータ差は文字通り絶対的だ。だから、実際にそれで勝てる事が多いんだろう。でも、それって格下相手にしか通用しない戦い方だと思うんだが、同格や格上相手には一体どうするつもりなんだろう?
この間のクフタリアの大会では、格上であるキルシュも……いや、格上であるからこそといった方が正しいのか? なんにせよ、攻撃はもちろんの事、防御技術が非常に高かった。
隙がとにかく突きにくいいのだ。
攻撃の終わり際なんて、槍を引き戻す動きそのものが薙ぎ払いのカウンター狙いの動きになっていたりして付け入る隙が中々見いだせなかった。それどころか、攻撃後の硬直と見せかけて釣り上げるようなタイミングで下がる動きを見せたりと、迂闊に攻め込めば痛い目に合うというのが一目で判らされた。それはつまり、解らされるから迂闊に手を出しにくいという状況を意図的に作られたという事だ。
チェリーさんとキルシュの試合でアレを見せられたらこそ、カウンターを警戒して攻撃後の隙に考えなしに飛び込むような真似ができなくなった訳だからな。攻撃リズムを一定に保つのにもかなり気を使わされた。
そういう技術とは別の駆け引きなんかも、あのキルシュは一枚上手だった。
それに対して、このザン某氏の攻撃は、何というか攻めに全振りしてる割には、近接戦にプレッシャーがまるでない。
踏み込みが鋭いのは良いが、踏み込みに集中するあまり次が続いていない。
踏み込んで、止まって、ようやく攻撃といった感じ。これでは、ただのキレのある移動だけになってしまっている。
何というか、攻撃判定のない突進技? 瞬間移動するわけでも無敵があるわけでもない、ただの移動だ。こんなのただのカウンターの餌だろう。
つかこのムーブ、よく知ってるぞ。格ゲーでも居るんだ。コンボの練習ばかりして、立ち回りの練習を全くしないせいで、せっかく練習したコンボを繰り出す事ができずにやられちゃうタイプだ。
確かに、ガン攻めは一度相手に触ってしまえば、防御の上からでもガツガツと攻め継続して、一方的に相手のミスを待つって意味ではかなり有効な戦い方ではある。まぁ、相手に触れればの話だが。
ガン攻め。要するに反撃を考慮しない強引な攻めは、本来なら間合いを詰めてからが勝負なんだが、この人の場合、立ち回りの戦術なんて一切考慮せずにバカ正直に距離を詰めようと突っ込んでくるせいで、素人目に見ても隙だらけなんだよな。
これが誘いで、こちらのカウンターにカウンターを合わせようとしているなら、かなりの役者なんだが……
「ぐっ……」
鋭い踏み込みに対して横刃で持ち上げるようにしつつ、そのまま腹に穂先を滑らせるように突き込んで見せたところ、面白いように直撃した。
多分傍から見たら、自分から穂先に飛び込んで自爆したかのように見えるかもしれない。それくらい綺麗にカウンターが決まった。
同時に、ザン某氏の頭上の見慣れないゲージ……つまり体力ゲージが一撃で5割近くが消し飛んでいた。
格闘ゲームを意識しているのか、PvPモード専用で普段は見る事の出来ない体力ゲージが見えるように出来るらしい。
これは対戦しているプレイヤーよりも、観戦者にとって状況が分かりやすいようにするための判断らしい。
ヒリつくような駆け引きや鋭い小技は、見てる側からは地味な上に何が起きているのか理解しにくいらしく、体力ゲージを視認化させることで、何が起きているのか解らないなりにもそこに攻防があるのだと観戦者にも解るようにという配慮だ。
こっちとしては体力ゲージありの対戦なんて昔は腐るほどこなしているから、むしろ懐かしい思いすらある。
で、見事にカウンターをもらったザン某氏の攻め気はそこで止まってしまった。
カウンターを恐れて前に出てこなくなっただけの話なのだが、とてもじゃないが防御が上手いようには見えない人がその選択は駄目でしょ。
たとえ攻めあぐねてでも、何とかして得意の攻めを継続するべきだったな。
引け越しになったのがあまりにも解りやすかったため、こっちはその機に攻め手に回る。
さっきまであんなに饒舌だったのに、もう殆ど何も喋る余裕が無さそうだし、これは演技でもなんでも無くホントに追い詰まってるか?
一応カウンターを警戒して、カウンター潰しの牽制突きを放ってみたら、ろくに防御も出来ないまま直撃していた。
まさかとは思いつつも、反撃警戒の牽制突きを繰り返してみれば、殆ど無防備に喰らい続けるせいで、危うく体力を削りきってしまうところだった。
露骨に手を抜いても舐めプになるから手抜きはしなかったが、とはいっても流石にこれはちょっと……
ボクシングで例えると、ジャブで距離を測っていたら、ストレートを打つ前に相手がダウンするようなもんだ。
流石にこれは盛り上がりに欠けるし、一度だけ挽回の機会を作ってやるか。
あまりわざとらしくならない程度に、止めの一撃風を装った攻撃をずらして、挽回の機会を作ってやれば、途端に食いついて懐へ飛び込んできた。チョロすぎる……そこは距離をとって息を整えるなりして仕切り直す場面だろうに。
ミアリギスは長柄の武器だから、槍同様に懐へ潜り込んでしまえば攻撃できないとでも思ったんだろうが……
「ガッ!?」
確かにミアリギスでの迎撃は難しいだろうが、そんな掻い潜るような突進を見せられれば、膝蹴りで迎撃したくもなる。
たとえ武器が近接戦を苦手とする長物だったとしても、使い手がその武器の弱点を知らないとでも思ってるんだろうか?
対応策くらい普通は作る。俺の場合は体術という比較的素直な対策だ。まぁ、ルールがなければナイフかなんかを上から首に突き落としてる場面だけどな。今回のルールでは武器は一つ限りだからナイフは持ち込めないんだが。
結局、残り体力がほぼない状態で、全力の突進を顔面に膝蹴りカウンターもらったわけで。当然ながらザン某氏の体力ゲージは0になっていた。
流石にアレ以上チャンスを与えるの本当にただの舐めプになってしまうし、まぁこんなもんだろう。
仕切り直せるせっかくのチャンスを、焦って活かせなかったのは向こうのミスだしな。
「勝者、キョウ選手!」
それにしてもさっきの人、随分と対人慣れしてるような気はしたんだが……気のせいだったか?
いや、これはアレか、対人自体は好きで場数も踏んでいるけど、好きではあってもそこまで得意というわけではないタイプだったんだな、きっと。
良いよなそう言うの。記念参加的なやつ。それくらい気軽に参加してくれるプレイヤーが増えれば、対人ももっと盛り上がると思うんだが、まぁその辺を考えるのは運営の仕事だわな。
まずはこれでベスト16か。初戦は危なげなくって感じだったな。次の相手はどんなだったか……まぁ試合前に顔を見れば思い出すか。
それよりも問題はその次、ベスト4だ。
そこで、順調に進めばチェリーさんかエリスのどちらか勝った方とぶつかることになる。
あの二人とはよく組手はするが、本気の勝負はしたこと無いからな。実はチョット楽しみだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
タイトルから内容を把握しやすいようにサブタイトルを追加しました。
詳しくは近況ボードに書いておきました。
あちらにも書きましたが、本編への感想や意見なんかは、感想の非公開設定が可能なので、指摘したい事はあるけど履歴は残したくないという方は冒頭に非公開希望と書いていただけばそのように対応するので、指摘などがあればよろしければ気楽に送って下さい。
シードを含めたベスト16決定戦最終試合。
ようやく俺にとっての初戦な訳で、今大会始まって初めてステージ上に登った。
でかでかとFIGHAT!って表示されるんだから、一々アナウンスしなくても……とも思うが、やっぱりこういうアナクロさが大会という場所には向いてるのかもしれない。
「まさかルールにレベル制限が追加されるとはね。後発組の俺は噂でしか知らない、レベル差を覆すっていう強さを見てみたかったんだけど」
「そういうルールなんだから仕方ないだろ。というか俺の強さは相手が強かろうが弱かろうが変わらんし」
対戦相手は太刀使い。
名前は確か、ザン……なんとかだったか。戦い方ばかり見ていたので流石に名前まで覚えてる余裕はなかった。
牽制といった感じで放たれた突きを躱しながら、間合いを図る。刀使いとは何度か戦ったが、太刀使いとはまだ戦ったことが無い。今の内にある程度リーチを図っておきたい。
というか噂ってなんだ? 根も葉もない変なのが広がってるんじゃねぇだろうな?
「大体、レベル差を覆すっつったって、俺と同じ程度のプレイヤースキルを持っている相手にはそんな真似できねぇからな。むしろ、全員公平に戦えるんだからそれで良いじゃねぇか」
「まぁ、確かに言い訳の余地が無いって意味ではこのルールも悪くは無いけど、個人的にはレベル上げに使った時間だって強さの証の一つなんだから、レベル差はあっても良いと思うんだけどね」
「それも考え方の一つではあるな。まぁ以前のエキシビジョンではレベル制限なしのレギュレーションもあったし、もしかしたらそのうちそいうルールの実装されるんじゃないか?」
「それはぜひ期待したいですね」
にしても戦闘中なのに良くしゃべるな。俺は適当に相槌打ってるだけだが、そんなんで集中力持つのか?
踏み込みの逆袈裟を下がって躱して……即座の切り返しも柄を使って受け流す。三撃目は……ないか。
今回はちゃんと槍ではなくミアリギスの形状により近い武器が渡されている。
攻撃力とかの補正は全武器横並びになっているらしいので武器性能は前回の槍と特に変わるところが無いが、武器の重心バランスなんかは使い慣れたものと同じ方が良いに決まっているので、このミアリギスもどきは正直有難い。
前回は穂先の軽さに慣れるまで少し戸惑ったが、今回はちゃんと相手の攻撃に合わせて受け流しもスムーズに行える。
それにしてもこの選手、言動でなんかすごい強者オーラを醸しだしているんだが、攻めは随分と単調なんだよな。
第一回戦での対戦映像はちゃんと把握している。特に自分と当たるであろう相手の事は、人読みの為にも結構しっかりと観察させてもらった。
それで、今実際に手合わせしてみて、事前イメージと大差がない事は確認した。
この人はレベル偏重側のプレイヤーだな。
もちろん、動きを見た感じ、対人戦に慣れているのは間違いない。
……間違いないんだが、攻撃を当てる工夫は見えても、受ける工夫が全く感じられないんだよな。
これって多分、俺の攻撃がSADの首に突き刺さってもダメージを与えられなかったのと同じで、レベル差の暴力で被弾を無視してでも相手に如何に大ダメージを与えるか、って戦い方の癖なんじゃねぇかな?
ALPHAと違い、こっちのパラメータ差は文字通り絶対的だ。だから、実際にそれで勝てる事が多いんだろう。でも、それって格下相手にしか通用しない戦い方だと思うんだが、同格や格上相手には一体どうするつもりなんだろう?
この間のクフタリアの大会では、格上であるキルシュも……いや、格上であるからこそといった方が正しいのか? なんにせよ、攻撃はもちろんの事、防御技術が非常に高かった。
隙がとにかく突きにくいいのだ。
攻撃の終わり際なんて、槍を引き戻す動きそのものが薙ぎ払いのカウンター狙いの動きになっていたりして付け入る隙が中々見いだせなかった。それどころか、攻撃後の硬直と見せかけて釣り上げるようなタイミングで下がる動きを見せたりと、迂闊に攻め込めば痛い目に合うというのが一目で判らされた。それはつまり、解らされるから迂闊に手を出しにくいという状況を意図的に作られたという事だ。
チェリーさんとキルシュの試合でアレを見せられたらこそ、カウンターを警戒して攻撃後の隙に考えなしに飛び込むような真似ができなくなった訳だからな。攻撃リズムを一定に保つのにもかなり気を使わされた。
そういう技術とは別の駆け引きなんかも、あのキルシュは一枚上手だった。
それに対して、このザン某氏の攻撃は、何というか攻めに全振りしてる割には、近接戦にプレッシャーがまるでない。
踏み込みが鋭いのは良いが、踏み込みに集中するあまり次が続いていない。
踏み込んで、止まって、ようやく攻撃といった感じ。これでは、ただのキレのある移動だけになってしまっている。
何というか、攻撃判定のない突進技? 瞬間移動するわけでも無敵があるわけでもない、ただの移動だ。こんなのただのカウンターの餌だろう。
つかこのムーブ、よく知ってるぞ。格ゲーでも居るんだ。コンボの練習ばかりして、立ち回りの練習を全くしないせいで、せっかく練習したコンボを繰り出す事ができずにやられちゃうタイプだ。
確かに、ガン攻めは一度相手に触ってしまえば、防御の上からでもガツガツと攻め継続して、一方的に相手のミスを待つって意味ではかなり有効な戦い方ではある。まぁ、相手に触れればの話だが。
ガン攻め。要するに反撃を考慮しない強引な攻めは、本来なら間合いを詰めてからが勝負なんだが、この人の場合、立ち回りの戦術なんて一切考慮せずにバカ正直に距離を詰めようと突っ込んでくるせいで、素人目に見ても隙だらけなんだよな。
これが誘いで、こちらのカウンターにカウンターを合わせようとしているなら、かなりの役者なんだが……
「ぐっ……」
鋭い踏み込みに対して横刃で持ち上げるようにしつつ、そのまま腹に穂先を滑らせるように突き込んで見せたところ、面白いように直撃した。
多分傍から見たら、自分から穂先に飛び込んで自爆したかのように見えるかもしれない。それくらい綺麗にカウンターが決まった。
同時に、ザン某氏の頭上の見慣れないゲージ……つまり体力ゲージが一撃で5割近くが消し飛んでいた。
格闘ゲームを意識しているのか、PvPモード専用で普段は見る事の出来ない体力ゲージが見えるように出来るらしい。
これは対戦しているプレイヤーよりも、観戦者にとって状況が分かりやすいようにするための判断らしい。
ヒリつくような駆け引きや鋭い小技は、見てる側からは地味な上に何が起きているのか理解しにくいらしく、体力ゲージを視認化させることで、何が起きているのか解らないなりにもそこに攻防があるのだと観戦者にも解るようにという配慮だ。
こっちとしては体力ゲージありの対戦なんて昔は腐るほどこなしているから、むしろ懐かしい思いすらある。
で、見事にカウンターをもらったザン某氏の攻め気はそこで止まってしまった。
カウンターを恐れて前に出てこなくなっただけの話なのだが、とてもじゃないが防御が上手いようには見えない人がその選択は駄目でしょ。
たとえ攻めあぐねてでも、何とかして得意の攻めを継続するべきだったな。
引け越しになったのがあまりにも解りやすかったため、こっちはその機に攻め手に回る。
さっきまであんなに饒舌だったのに、もう殆ど何も喋る余裕が無さそうだし、これは演技でもなんでも無くホントに追い詰まってるか?
一応カウンターを警戒して、カウンター潰しの牽制突きを放ってみたら、ろくに防御も出来ないまま直撃していた。
まさかとは思いつつも、反撃警戒の牽制突きを繰り返してみれば、殆ど無防備に喰らい続けるせいで、危うく体力を削りきってしまうところだった。
露骨に手を抜いても舐めプになるから手抜きはしなかったが、とはいっても流石にこれはちょっと……
ボクシングで例えると、ジャブで距離を測っていたら、ストレートを打つ前に相手がダウンするようなもんだ。
流石にこれは盛り上がりに欠けるし、一度だけ挽回の機会を作ってやるか。
あまりわざとらしくならない程度に、止めの一撃風を装った攻撃をずらして、挽回の機会を作ってやれば、途端に食いついて懐へ飛び込んできた。チョロすぎる……そこは距離をとって息を整えるなりして仕切り直す場面だろうに。
ミアリギスは長柄の武器だから、槍同様に懐へ潜り込んでしまえば攻撃できないとでも思ったんだろうが……
「ガッ!?」
確かにミアリギスでの迎撃は難しいだろうが、そんな掻い潜るような突進を見せられれば、膝蹴りで迎撃したくもなる。
たとえ武器が近接戦を苦手とする長物だったとしても、使い手がその武器の弱点を知らないとでも思ってるんだろうか?
対応策くらい普通は作る。俺の場合は体術という比較的素直な対策だ。まぁ、ルールがなければナイフかなんかを上から首に突き落としてる場面だけどな。今回のルールでは武器は一つ限りだからナイフは持ち込めないんだが。
結局、残り体力がほぼない状態で、全力の突進を顔面に膝蹴りカウンターもらったわけで。当然ながらザン某氏の体力ゲージは0になっていた。
流石にアレ以上チャンスを与えるの本当にただの舐めプになってしまうし、まぁこんなもんだろう。
仕切り直せるせっかくのチャンスを、焦って活かせなかったのは向こうのミスだしな。
「勝者、キョウ選手!」
それにしてもさっきの人、随分と対人慣れしてるような気はしたんだが……気のせいだったか?
いや、これはアレか、対人自体は好きで場数も踏んでいるけど、好きではあってもそこまで得意というわけではないタイプだったんだな、きっと。
良いよなそう言うの。記念参加的なやつ。それくらい気軽に参加してくれるプレイヤーが増えれば、対人ももっと盛り上がると思うんだが、まぁその辺を考えるのは運営の仕事だわな。
まずはこれでベスト16か。初戦は危なげなくって感じだったな。次の相手はどんなだったか……まぁ試合前に顔を見れば思い出すか。
それよりも問題はその次、ベスト4だ。
そこで、順調に進めばチェリーさんかエリスのどちらか勝った方とぶつかることになる。
あの二人とはよく組手はするが、本気の勝負はしたこと無いからな。実はチョット楽しみだ。
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タイトルから内容を把握しやすいようにサブタイトルを追加しました。
詳しくは近況ボードに書いておきました。
あちらにも書きましたが、本編への感想や意見なんかは、感想の非公開設定が可能なので、指摘したい事はあるけど履歴は残したくないという方は冒頭に非公開希望と書いていただけばそのように対応するので、指摘などがあればよろしければ気楽に送って下さい。
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