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三章
百六十二話 クフタリアの統治者Ⅱ
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「さて、お集まりの諸君はもうご存知かと思うが、ここで改めて紹介しよう。彼らが今回の大会で決勝大会までコマを進め、その力を示してみせた勇者たちである!」
ステージの袖にたどり着いた所で、ライラール卿からお呼びがかかった。
というかこのオッサンノリノリだな。喋りがなんというかラエティ番組の司会進行役みたいだ。本当に喋るのが好きらしい。
「なんか、やってることはリアルのイベントと変わらないのね」
「そういや、オープニングイベントでも壇上に上がらされたことがあったな……アレはしんどかった」
ゲーム大会で壇上に上がること自体はある程度慣れてるが、それでもしんどい物はしんどいのだ。
大勢の人に注目されるというのはどうにも慣れない。
「何言ってるの、キョウくんなんて殆ど喋らず終わったじゃない。私なんて殆ど喋りっぱなしだったんですけど」
「そういう仕事についてる本職のチェリーさんと一緒にされても……」
「いや、確かに喋る仕事ではあるけど、私のは役を演じる役者であってコメンテーターでもアナウンサーでもないんですけど? 私だってどっちかというとああいうステージ上に上がるのは好きな方じゃないのよ」
「そうなん?」
「引きこもりゲーマー舐めんな。自分の声でキャラを演じるのが好きなだけで、顔出しトークとかキャラソンとかは仕事じゃなけりゃやってないっての。正直ステージ上で笑ってるだけでも結構疲れるんだから」
おや、てっきり仕事柄『もっと自分を見ろ!』的なキャラクターだと思ってたんだが、どうも違うらしい。
好きでもないのにアレだけステージ上で喋れるのはそれはそれで凄いと思うが。
「まぁ幸いな事に、今回はあのお貴族様がずっと喋ってるだけだから多少は楽なんだろうけど」
そういや、確かに壇上に上げられてはいるが、喋ってるのは常に金ピカ貴族だ。
紹介や戦いぶりも全部一人で喋り続けている。ある意味すげぇな……
とかなんとか喋っているうちに、どんどんステージ上に選手が上がっていく。
呼ばれて壇上に上がっていくのは……結果順か。一回戦敗退組から順番にステージに上げられているようだ。
「チェリー・ブロッサム様、登壇の準備をお願いします」
そしてチェリーさんの番になり、強面じゃない案内人が声をかけてきた所で問題点が一つ。
「あ、上がっている間、この子達はどうしたら良いのかしら?」
そういや、この後俺も呼ばれるから、ふたりともステージ外に置き去りになっちまうな。
壇上に上げられるなんて思ってもなかったから、離れ離れになった時の事とか何も決めてなかったぞ。
「ここで待っていて頂いて構いませんよ。ここであれば人は寄り付きませんし、他のお客様と紛れる心配も少ないでしょう。私はこの通り身体も大きいので、目印としても見失うことはないでしょう」
さてどうしたものかと考えていた所で助け舟を出してくれたのは強面の案内員さん。
さっきのさりげないアドバイス? と言い、この人実はかなり『デキる』人なのでは……? 顔は怖いけど。
「あ、じゃあそれでお願いします。ハティちゃん、ここでエリスちゃんと待っててね」
「うん、ハティ、待つ」
「よし、じゃあひと足お先に」
「おう、いってらっさい」
チェリーさんが壇上に立つと、会場がざわついた。やっぱり紅一点だからだろうか?
チェリーさんは何だかんだでゴリゴリのパワータイプだけど、アバターはパワーマッチョではなく普通……と言って良いのか判らんが細身に作られてるから、その戦い方と見た目のギャップもかなり凄いからな。
あぁでも、このゲームの中では割と見た目と能力が一致しないってのは多いからそこはあんまり関係ないか。キルシュとかあの小柄な身体で、そのパワーゴリラなチェリーさんより更にパワーあるしな。
他に理由があるとしたら、あとは美人だからってのもあるのかね?
今更ながらチェリーさんのアバターって見栄えが良いんだよな。可愛い系とは違って、目鼻立ちが整った美形顔だからな。眉目秀麗っていうやつだ。
リアルにあんな顔の造形の女性が居たら、俺みたいなシャイボーイではまず声もかけられないタイプ。
まぁ性格がアレだから、普段は折角の美形もやたら人懐っこい感じになってるが、ああやって黙ってニコニコしてるだけだとかなりイメージ変わるんだよなぁ。
というか、アレだけ舞台上がるのは好きじゃないとか言ってたくせに、登壇した途端に超ニコニコしてるのは流石だよなぁ。あれがプロの対応術というやつなのか。俺には無理だわ……
まぁ、こころなしか苦笑気味に見えんこともないが……
「キョウ・ハイナ様。そろそろ登壇の準備をお願いします」
っと、次は俺の番か。
「それじゃエリスもここでハティと一緒に待っててくれ」
「うん、わかったー」
「待ってる」
「よし、良い子だ。それじゃ行ってくる」
壇上に上がってみると、思ったほどのプレッシャーを感じないことにすぐ気付いた。
はて何故だろう? と考えて見れば、その原因は単純に人数の差と、あとは舞台の性質だと思い至った。
ゲーム大会の壇上だったり、この間のオープニングイベントのステージだったりと、何だかんだで数百、数千の前に立つ事もあった。
それに比べれば、今目の前にいるのはせいぜい百人程度。
しかもライトで照らされて顔が超熱くなるとか、段取りを説明されて演出どおりに動くことを求められたりと行ったこともない。
あえて言うなら、学校の集会で表彰状受け取る時の感覚とか、その程度だ。
さらに……
「あぁ、君は私の隣で正面の壁でも眺めていてくれれば良いよ。変に話を合わせる必要もないから」
と、金ピカ伯爵の隣に立った所で、俺だけに聞こえるように耳元で小声で囁かれた。
なるほど、色々と分かっている貴族のようだ。チェリーさんが苦笑気味だったのはこのせいか。
というか随分と気さくな喋り方だな。聴衆に聞かせているスピーチでは随分と尊大というか大げさな語り口だが、素とは違うという事だろうか? 何にせよ、王都で見た貴族共とは色々違うらしい。
多分正面の壁を眺めてろってのも、視線をホールに落とさなければ変に誰かと視線を合わせる事にならないし見てる側からは堂々として見えるから……かもしれない。
こちらとしては助かる申し出なので全力で乗っからせてもらおう。
そして聞かされる絶賛の嵐だ。
大会中の盛りに盛られたプロフィールも大概だったが、こっちも負けず劣らずの大盛評価だ。
まともに聞いてると恥ずかしすぎて死ぬので正面の壁のシミを数えつつガン無視の構えだ。
準優勝で、しかも割と半端な負け方した俺ですらコレなら、優勝したキルシュは一体どうなってしまうのか。
しかし、冷静に見まわしてみると意外と『お貴族様』って感じの客は思ったよりも少ないんだな。
格好はビシッと高そうな服で決めてはいるが、どう考えても鍛えてますって感じの鋼のボディを持った奴が結構な割合で居る。
多分だが、軍関係者だったり、最近よく聞く傭兵団とかの関係者なんじゃなかろうか?
決勝進出者のお披露目というよりも、この場の感じでいうと商品発表会的な、そういったものな気がする。
そんな話は事前に全く聞いてないので、恐らく異世界モノお約束の人身売買オークションみたいな後ろ暗い物ではないとは思う。
流石に街の支配者だなんだといっても、ここまで街のド真ん中で大っぴらにイリーガルな事に手を染めはしない筈…………多分…………しないよな?
ステージの袖にたどり着いた所で、ライラール卿からお呼びがかかった。
というかこのオッサンノリノリだな。喋りがなんというかラエティ番組の司会進行役みたいだ。本当に喋るのが好きらしい。
「なんか、やってることはリアルのイベントと変わらないのね」
「そういや、オープニングイベントでも壇上に上がらされたことがあったな……アレはしんどかった」
ゲーム大会で壇上に上がること自体はある程度慣れてるが、それでもしんどい物はしんどいのだ。
大勢の人に注目されるというのはどうにも慣れない。
「何言ってるの、キョウくんなんて殆ど喋らず終わったじゃない。私なんて殆ど喋りっぱなしだったんですけど」
「そういう仕事についてる本職のチェリーさんと一緒にされても……」
「いや、確かに喋る仕事ではあるけど、私のは役を演じる役者であってコメンテーターでもアナウンサーでもないんですけど? 私だってどっちかというとああいうステージ上に上がるのは好きな方じゃないのよ」
「そうなん?」
「引きこもりゲーマー舐めんな。自分の声でキャラを演じるのが好きなだけで、顔出しトークとかキャラソンとかは仕事じゃなけりゃやってないっての。正直ステージ上で笑ってるだけでも結構疲れるんだから」
おや、てっきり仕事柄『もっと自分を見ろ!』的なキャラクターだと思ってたんだが、どうも違うらしい。
好きでもないのにアレだけステージ上で喋れるのはそれはそれで凄いと思うが。
「まぁ幸いな事に、今回はあのお貴族様がずっと喋ってるだけだから多少は楽なんだろうけど」
そういや、確かに壇上に上げられてはいるが、喋ってるのは常に金ピカ貴族だ。
紹介や戦いぶりも全部一人で喋り続けている。ある意味すげぇな……
とかなんとか喋っているうちに、どんどんステージ上に選手が上がっていく。
呼ばれて壇上に上がっていくのは……結果順か。一回戦敗退組から順番にステージに上げられているようだ。
「チェリー・ブロッサム様、登壇の準備をお願いします」
そしてチェリーさんの番になり、強面じゃない案内人が声をかけてきた所で問題点が一つ。
「あ、上がっている間、この子達はどうしたら良いのかしら?」
そういや、この後俺も呼ばれるから、ふたりともステージ外に置き去りになっちまうな。
壇上に上げられるなんて思ってもなかったから、離れ離れになった時の事とか何も決めてなかったぞ。
「ここで待っていて頂いて構いませんよ。ここであれば人は寄り付きませんし、他のお客様と紛れる心配も少ないでしょう。私はこの通り身体も大きいので、目印としても見失うことはないでしょう」
さてどうしたものかと考えていた所で助け舟を出してくれたのは強面の案内員さん。
さっきのさりげないアドバイス? と言い、この人実はかなり『デキる』人なのでは……? 顔は怖いけど。
「あ、じゃあそれでお願いします。ハティちゃん、ここでエリスちゃんと待っててね」
「うん、ハティ、待つ」
「よし、じゃあひと足お先に」
「おう、いってらっさい」
チェリーさんが壇上に立つと、会場がざわついた。やっぱり紅一点だからだろうか?
チェリーさんは何だかんだでゴリゴリのパワータイプだけど、アバターはパワーマッチョではなく普通……と言って良いのか判らんが細身に作られてるから、その戦い方と見た目のギャップもかなり凄いからな。
あぁでも、このゲームの中では割と見た目と能力が一致しないってのは多いからそこはあんまり関係ないか。キルシュとかあの小柄な身体で、そのパワーゴリラなチェリーさんより更にパワーあるしな。
他に理由があるとしたら、あとは美人だからってのもあるのかね?
今更ながらチェリーさんのアバターって見栄えが良いんだよな。可愛い系とは違って、目鼻立ちが整った美形顔だからな。眉目秀麗っていうやつだ。
リアルにあんな顔の造形の女性が居たら、俺みたいなシャイボーイではまず声もかけられないタイプ。
まぁ性格がアレだから、普段は折角の美形もやたら人懐っこい感じになってるが、ああやって黙ってニコニコしてるだけだとかなりイメージ変わるんだよなぁ。
というか、アレだけ舞台上がるのは好きじゃないとか言ってたくせに、登壇した途端に超ニコニコしてるのは流石だよなぁ。あれがプロの対応術というやつなのか。俺には無理だわ……
まぁ、こころなしか苦笑気味に見えんこともないが……
「キョウ・ハイナ様。そろそろ登壇の準備をお願いします」
っと、次は俺の番か。
「それじゃエリスもここでハティと一緒に待っててくれ」
「うん、わかったー」
「待ってる」
「よし、良い子だ。それじゃ行ってくる」
壇上に上がってみると、思ったほどのプレッシャーを感じないことにすぐ気付いた。
はて何故だろう? と考えて見れば、その原因は単純に人数の差と、あとは舞台の性質だと思い至った。
ゲーム大会の壇上だったり、この間のオープニングイベントのステージだったりと、何だかんだで数百、数千の前に立つ事もあった。
それに比べれば、今目の前にいるのはせいぜい百人程度。
しかもライトで照らされて顔が超熱くなるとか、段取りを説明されて演出どおりに動くことを求められたりと行ったこともない。
あえて言うなら、学校の集会で表彰状受け取る時の感覚とか、その程度だ。
さらに……
「あぁ、君は私の隣で正面の壁でも眺めていてくれれば良いよ。変に話を合わせる必要もないから」
と、金ピカ伯爵の隣に立った所で、俺だけに聞こえるように耳元で小声で囁かれた。
なるほど、色々と分かっている貴族のようだ。チェリーさんが苦笑気味だったのはこのせいか。
というか随分と気さくな喋り方だな。聴衆に聞かせているスピーチでは随分と尊大というか大げさな語り口だが、素とは違うという事だろうか? 何にせよ、王都で見た貴族共とは色々違うらしい。
多分正面の壁を眺めてろってのも、視線をホールに落とさなければ変に誰かと視線を合わせる事にならないし見てる側からは堂々として見えるから……かもしれない。
こちらとしては助かる申し出なので全力で乗っからせてもらおう。
そして聞かされる絶賛の嵐だ。
大会中の盛りに盛られたプロフィールも大概だったが、こっちも負けず劣らずの大盛評価だ。
まともに聞いてると恥ずかしすぎて死ぬので正面の壁のシミを数えつつガン無視の構えだ。
準優勝で、しかも割と半端な負け方した俺ですらコレなら、優勝したキルシュは一体どうなってしまうのか。
しかし、冷静に見まわしてみると意外と『お貴族様』って感じの客は思ったよりも少ないんだな。
格好はビシッと高そうな服で決めてはいるが、どう考えても鍛えてますって感じの鋼のボディを持った奴が結構な割合で居る。
多分だが、軍関係者だったり、最近よく聞く傭兵団とかの関係者なんじゃなかろうか?
決勝進出者のお披露目というよりも、この場の感じでいうと商品発表会的な、そういったものな気がする。
そんな話は事前に全く聞いてないので、恐らく異世界モノお約束の人身売買オークションみたいな後ろ暗い物ではないとは思う。
流石に街の支配者だなんだといっても、ここまで街のド真ん中で大っぴらにイリーガルな事に手を染めはしない筈…………多分…………しないよな?
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