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三章
百五十五話 負けず嫌い
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会場は割れんばかりの大歓声。
勝者のキルシュは軽い足取りでステージを降りていく。それはもうご満悦と言った表情だ。
「お疲れ様」
「ぜぇ……ハァ……キョウ……くん?」
「おう、ナイスファイト」
そのキルシュとは反対側、入場門の内側で係員の肩を借りて戻ってきたチェリーさんを出迎える。
まさにズタボロという形容詞がぴったりな有様だったが、幸い深い傷は負っていない。そこらへんはキルシュが加減していたんだろう。
どちらかと言うと傷によるダメージよりも、常に飛び回り続けたことによる疲労の方が大きいように見える。
「もうちょっと……イケルと思ってたんだけどねぇ……ゲホッ」
「いや、大健闘だったと思うぞ? キルシュも何度か本気で驚いてたみたいだったし」
「そりゃ……、少しは驚いてもらわなきゃ……立つ瀬がないって…………フグッ!」
あ、これはアカンやつだ。
この息詰まりの仕方はガキどもの世話をしてた頃に何度も見た。
「チェリーさん、ストップ! 喋らなくてもいいからまずはトイレ!」
「わ、わかった……」
「違う、こっちじゃない! アバターの面倒は見とくからリアルのトイレ! 急ぐ!!」
追い立てるように言うと、チェリーさんのアバターが突然脱力したように座り込んだ。この様子ならクレイドルを抜け出して無事トイレへ向かっただろう。トイレに無事にたどり着けるかどうかは知らん。
とりあえず、抜け殻になったチェリーさんのアバターを背負って控室に運んでおくか。
ホームポイント設定した場所以外でログアウトしたりすると、しばらくアバターが残っちまうんだよな。
離席する時にポーズを固定して座ったままのポーズを維持とかしたり出来るんだが、死んだ場合とか回線切断した場合、今回みたいに急用で席を離れた場合とかは、こんな感じで死体のようになってしまう。
まぁ死んでるわけではないから、誰かにアバターを発見されても寝ていると思われるだけで、お約束な『殺人事件!?』的な誤解とかは起きないんだけどな。
控室つかうのももう俺しか残ってないし、決勝までは公平を期すために1試合分のインターバルがあるから、しばらくは誰も部外者が入ってくる心配はないだろう。
リアルで意識のない人一人背負って長い廊下を歩くとか絶対勘弁してほしい所だが、このアバターはそれなりに鍛えてあるので、意外と軽いなとか考える余裕すらある。
……リアルに復帰したらリハビリも兼ねてちょっと本気で運動したほうが良いかもしれんな。
「ふわっ!? キョウくん!?」
「お、戻ったか。早かったけど大丈夫か?」
「あぁうん。大分落ち着いたし、水飲んできたから平気」
息切れもしてないみたいだし、確かにこれならもう大丈夫だな。
「それにしてもびっくりしたよ!戻ったらいきなり横に顔があるから何事かと思ったよ」
「あぁ、チェリーさんのアバター背負って運んでたから。ちょうど方に顎が乗ってる状態になってたか。さて、体調も戻ったみたいだしずっと背負ってるのもアレか」
そう思って腰を下ろしたがチェリーさんがはなれない。
「オイ?」
「試合直後で疲労困憊の女の子を置き去りにするなんて酷いこと、当然キョウくんは言わないよね?」
「つい今しがた、もう平気だって言ってませんでしたっけかねぇ?」
「気のせいじゃない?」
オイ……?
「まぁまぁ、ちょっとだけ背中貸してよ。そんな重くないでしょ?」
「そりゃまぁ、そうだけど……って、そんなしがみ付かないでくれよ。流石に苦しいって」
「…………」
一向に離れようとしないチェリーさんに、流石に文句を言おうと思って振り向いたところで動きを止められた。
いや別にチェリーさんは何もしていない。
ただ、泣き声も出さず表情も変えず、目元を赤く滲ませていた。
「最初から格の違いは判ってたんだけどねぇ……なんでだろ……?」
顔を俺の方に押し付けているせいで、声は震えて籠もって聞き取りにくい筈なのに、はっきりと俺の耳に届いてくる。
「実は私って色々ゲームやってきたけど、RPGやアクションゲームばっかりでさ。こんな真剣にPvPやるのってこのゲームが初めてだったんだよね」
「そいつは……意外だな。あんなにバトルしたがりだから、てっきり対戦ゲームもどっぷりやってるもんだと思ってた」
これは本当のことだ。アレだけバトル要素に傾倒していて、PvPイベントでも一切の拒否反応を出していなかったから、ジャンルは兎も角として普段から対戦ゲームやりなれているもんだと思っていた。
イベント後もガーヴさんところに積極的に技術学びに行ってたりしたしな。
まさか、対戦初心者だったとは……
「胸を借りるつもりでさ? 最初から勝てるとは思って無くて……それでもせめて一太刀くらいはって……」
それは、舞台袖から試合を見ていた俺にも伝わっていた。間違いなくキルシュにもその考えは伝わっていただろう。
実際、試合の大詰めで、チェリーさんの繰り出した二段フェイントからの浴びせ蹴りなんて、本気でキルシュは驚いていたしな。
アレはキルシュの反応速度が異常だっただけで、普通の相手ならまず反応できないような絶妙なタイミングの一撃だった。初見でならおれでも対応できなかった筈だ。
「あぁ、もうっ! こんな、ゲームの中で毎月やるような小さな大会だよ? そもそも勝てないって判っていたはずなのに、どうしちゃったんだろ、ホント……」
どうやら本当に困惑しているらしい。理由がわからずに多少のイラつきも見てとれる。
あれだけ本気で準備をして、奥の手まで仕込んで望んだ戦いだったのだ。負けて悔しくないはずがない。
チェリーさんの仕事柄、こういうのはすぐに理由に思い当たると思ったんだけど、そうでもないらしい。
「どうして泣くほど悔しいかといえば、それだけ本気だったからだよ。口では勝てなくて当然って言いながら、頭ん中じゃ『絶対勝ってやる』って本気で勝ちに行った証拠だよ」
「あはは……見透かされてやんの。なんかカッコ悪……」
「どこが? 対戦ゲームを本気でやってるやつなら皆そんな感じでしょ。ゲームじゃなくたってそうだ。人と競い合う競技に全力で挑んでるやつは皆、真性の負けず嫌いなんだよ。アレだけ競争率高そうな世界にいるチェリーさんなら分かるんじゃねーの?」
負けてもいい。『クソ!次は絶対勝つ!』とか『あの野郎ゼッテェ許さねぇ』でもいい。自分を負かした相手に意地になって食らいつけるような奴だけが、対戦を本気で楽しめるんだから。
そうじゃなきゃ『勝てねーぞ、何だこのクソゲー』とか『俺は体格に恵まれてないから』とか言い訳して、すぐに折れて辞めちまうからな。
「そっか……うん。負けず嫌いは、自覚あるかな。スクールでもパッとしなかった私がどうにか事務所に入れたのも、アイツ等みたいになってやるもんかって頑張ったからだし……」
アイツ等?
……きっと、チェリーさんも昔なにかよろしくない思い出か何かがあったんだろうな。
多分うっかり漏れちまった言葉だろうし、ここは聞かなかったことにしとくか。
「まぁ、なんだ……その負けず嫌いは、間違いなく資質だよ。負けたことを悔しいと思えるほど、次に負けないための努力ができるって事だから」
「えぇ……何それ? ちょっと良い事言った感じ?」
何だよ、もう調子取り戻してるんじゃん。
ホント、切り替え早えぇよなぁ。俺なんて昔は大会でボロ負けしたあととか丸一日凹み続けるとか割とあったんだが、その辺が現役でタレントしてる娘とのメンタル強度の差かね?
「茶化すならもう何も言わん。恥ずかしいし」
「えー? もっと口説いてよ~?」
「知らん」
我ながらクサい事言った自覚はあるし、これ以上の恥の上塗りは御免だっつの。
「……ん? つか口説いてねぇし!? 励ましてただけじゃんよ!?」
サラッととんでもないセリフを混ぜるんじゃねぇよ! びっくりするわ。
「ほれ、もう控室ついたから。さっさと降りれ!」
「ちぇー」
「いや、ちぇーじゃなくて……次に試合控えてる奴に無駄に力仕事なんてさせるんじゃねぇよ、まったく……」
といっても、大して疲れちゃいないんだがな。……やっぱりリアルに帰還できたら運動しよう、そうしよう。
一応ベンチ椅子に座らせるように下ろして、俺も腰掛ける。
身体は直前の試合で十分温まってるし、ウォームアップの必要もないから、あとは時間まで休むだけだ。
今さっきの試合から、キルシュの動きを頭の中でトレースしてみたりしつつ時間の過ぎるに任せていたところ、左肩に重みが……
「チェリーさん? 何で寄っかかってくんのさ?」
「……そんな気分だから」
だから、そんならしくもないしおらしい態度はやめろって。
いつもなら、もっとあっけらかんとくっついてくるだろうに……こんなん調子が狂うわ。
「ごめんね? 試合の時間までこうさせて?」
「……まぁ、別に構わんけど」
嘘だよ、全然構うよ!!
チェリーさんの基準的にはどうせアバターだし素顔見られてるわけでも無いから平気なんだろうけど、童貞野郎にこの密着感と沈黙の空気は害悪! 害悪です!! 勘違いしちまうダロォ!?
大丈夫、大丈夫だ。俺はまだ冷静だ。恋愛熱に浮かされて事務所所属のタレントに手を出すほど考えなしに動けるほど俺は若くねぇ。社会の仕組みはある程度は理解している。事務所怖ぇ!!
本人だって素っ裸見られても気にならないと豪語するアバター越しでのやり取りだから、これだってきっとただのスキンシップの一環。ここで勘違いして後で辛いのは俺だけだ。
ようし、良いぞ落ち着け。今考えるべきは次の試合のことだけだ。集中しろ集中!
「ん……ありがと」
ヤメロォ! ラブコメの波動を放出するのはヤメロォ!!
勝者のキルシュは軽い足取りでステージを降りていく。それはもうご満悦と言った表情だ。
「お疲れ様」
「ぜぇ……ハァ……キョウ……くん?」
「おう、ナイスファイト」
そのキルシュとは反対側、入場門の内側で係員の肩を借りて戻ってきたチェリーさんを出迎える。
まさにズタボロという形容詞がぴったりな有様だったが、幸い深い傷は負っていない。そこらへんはキルシュが加減していたんだろう。
どちらかと言うと傷によるダメージよりも、常に飛び回り続けたことによる疲労の方が大きいように見える。
「もうちょっと……イケルと思ってたんだけどねぇ……ゲホッ」
「いや、大健闘だったと思うぞ? キルシュも何度か本気で驚いてたみたいだったし」
「そりゃ……、少しは驚いてもらわなきゃ……立つ瀬がないって…………フグッ!」
あ、これはアカンやつだ。
この息詰まりの仕方はガキどもの世話をしてた頃に何度も見た。
「チェリーさん、ストップ! 喋らなくてもいいからまずはトイレ!」
「わ、わかった……」
「違う、こっちじゃない! アバターの面倒は見とくからリアルのトイレ! 急ぐ!!」
追い立てるように言うと、チェリーさんのアバターが突然脱力したように座り込んだ。この様子ならクレイドルを抜け出して無事トイレへ向かっただろう。トイレに無事にたどり着けるかどうかは知らん。
とりあえず、抜け殻になったチェリーさんのアバターを背負って控室に運んでおくか。
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まぁ死んでるわけではないから、誰かにアバターを発見されても寝ていると思われるだけで、お約束な『殺人事件!?』的な誤解とかは起きないんだけどな。
控室つかうのももう俺しか残ってないし、決勝までは公平を期すために1試合分のインターバルがあるから、しばらくは誰も部外者が入ってくる心配はないだろう。
リアルで意識のない人一人背負って長い廊下を歩くとか絶対勘弁してほしい所だが、このアバターはそれなりに鍛えてあるので、意外と軽いなとか考える余裕すらある。
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「ふわっ!? キョウくん!?」
「お、戻ったか。早かったけど大丈夫か?」
「あぁうん。大分落ち着いたし、水飲んできたから平気」
息切れもしてないみたいだし、確かにこれならもう大丈夫だな。
「それにしてもびっくりしたよ!戻ったらいきなり横に顔があるから何事かと思ったよ」
「あぁ、チェリーさんのアバター背負って運んでたから。ちょうど方に顎が乗ってる状態になってたか。さて、体調も戻ったみたいだしずっと背負ってるのもアレか」
そう思って腰を下ろしたがチェリーさんがはなれない。
「オイ?」
「試合直後で疲労困憊の女の子を置き去りにするなんて酷いこと、当然キョウくんは言わないよね?」
「つい今しがた、もう平気だって言ってませんでしたっけかねぇ?」
「気のせいじゃない?」
オイ……?
「まぁまぁ、ちょっとだけ背中貸してよ。そんな重くないでしょ?」
「そりゃまぁ、そうだけど……って、そんなしがみ付かないでくれよ。流石に苦しいって」
「…………」
一向に離れようとしないチェリーさんに、流石に文句を言おうと思って振り向いたところで動きを止められた。
いや別にチェリーさんは何もしていない。
ただ、泣き声も出さず表情も変えず、目元を赤く滲ませていた。
「最初から格の違いは判ってたんだけどねぇ……なんでだろ……?」
顔を俺の方に押し付けているせいで、声は震えて籠もって聞き取りにくい筈なのに、はっきりと俺の耳に届いてくる。
「実は私って色々ゲームやってきたけど、RPGやアクションゲームばっかりでさ。こんな真剣にPvPやるのってこのゲームが初めてだったんだよね」
「そいつは……意外だな。あんなにバトルしたがりだから、てっきり対戦ゲームもどっぷりやってるもんだと思ってた」
これは本当のことだ。アレだけバトル要素に傾倒していて、PvPイベントでも一切の拒否反応を出していなかったから、ジャンルは兎も角として普段から対戦ゲームやりなれているもんだと思っていた。
イベント後もガーヴさんところに積極的に技術学びに行ってたりしたしな。
まさか、対戦初心者だったとは……
「胸を借りるつもりでさ? 最初から勝てるとは思って無くて……それでもせめて一太刀くらいはって……」
それは、舞台袖から試合を見ていた俺にも伝わっていた。間違いなくキルシュにもその考えは伝わっていただろう。
実際、試合の大詰めで、チェリーさんの繰り出した二段フェイントからの浴びせ蹴りなんて、本気でキルシュは驚いていたしな。
アレはキルシュの反応速度が異常だっただけで、普通の相手ならまず反応できないような絶妙なタイミングの一撃だった。初見でならおれでも対応できなかった筈だ。
「あぁ、もうっ! こんな、ゲームの中で毎月やるような小さな大会だよ? そもそも勝てないって判っていたはずなのに、どうしちゃったんだろ、ホント……」
どうやら本当に困惑しているらしい。理由がわからずに多少のイラつきも見てとれる。
あれだけ本気で準備をして、奥の手まで仕込んで望んだ戦いだったのだ。負けて悔しくないはずがない。
チェリーさんの仕事柄、こういうのはすぐに理由に思い当たると思ったんだけど、そうでもないらしい。
「どうして泣くほど悔しいかといえば、それだけ本気だったからだよ。口では勝てなくて当然って言いながら、頭ん中じゃ『絶対勝ってやる』って本気で勝ちに行った証拠だよ」
「あはは……見透かされてやんの。なんかカッコ悪……」
「どこが? 対戦ゲームを本気でやってるやつなら皆そんな感じでしょ。ゲームじゃなくたってそうだ。人と競い合う競技に全力で挑んでるやつは皆、真性の負けず嫌いなんだよ。アレだけ競争率高そうな世界にいるチェリーさんなら分かるんじゃねーの?」
負けてもいい。『クソ!次は絶対勝つ!』とか『あの野郎ゼッテェ許さねぇ』でもいい。自分を負かした相手に意地になって食らいつけるような奴だけが、対戦を本気で楽しめるんだから。
そうじゃなきゃ『勝てねーぞ、何だこのクソゲー』とか『俺は体格に恵まれてないから』とか言い訳して、すぐに折れて辞めちまうからな。
「そっか……うん。負けず嫌いは、自覚あるかな。スクールでもパッとしなかった私がどうにか事務所に入れたのも、アイツ等みたいになってやるもんかって頑張ったからだし……」
アイツ等?
……きっと、チェリーさんも昔なにかよろしくない思い出か何かがあったんだろうな。
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「まぁ、なんだ……その負けず嫌いは、間違いなく資質だよ。負けたことを悔しいと思えるほど、次に負けないための努力ができるって事だから」
「えぇ……何それ? ちょっと良い事言った感じ?」
何だよ、もう調子取り戻してるんじゃん。
ホント、切り替え早えぇよなぁ。俺なんて昔は大会でボロ負けしたあととか丸一日凹み続けるとか割とあったんだが、その辺が現役でタレントしてる娘とのメンタル強度の差かね?
「茶化すならもう何も言わん。恥ずかしいし」
「えー? もっと口説いてよ~?」
「知らん」
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「……ん? つか口説いてねぇし!? 励ましてただけじゃんよ!?」
サラッととんでもないセリフを混ぜるんじゃねぇよ! びっくりするわ。
「ほれ、もう控室ついたから。さっさと降りれ!」
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「いや、ちぇーじゃなくて……次に試合控えてる奴に無駄に力仕事なんてさせるんじゃねぇよ、まったく……」
といっても、大して疲れちゃいないんだがな。……やっぱりリアルに帰還できたら運動しよう、そうしよう。
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身体は直前の試合で十分温まってるし、ウォームアップの必要もないから、あとは時間まで休むだけだ。
今さっきの試合から、キルシュの動きを頭の中でトレースしてみたりしつつ時間の過ぎるに任せていたところ、左肩に重みが……
「チェリーさん? 何で寄っかかってくんのさ?」
「……そんな気分だから」
だから、そんならしくもないしおらしい態度はやめろって。
いつもなら、もっとあっけらかんとくっついてくるだろうに……こんなん調子が狂うわ。
「ごめんね? 試合の時間までこうさせて?」
「……まぁ、別に構わんけど」
嘘だよ、全然構うよ!!
チェリーさんの基準的にはどうせアバターだし素顔見られてるわけでも無いから平気なんだろうけど、童貞野郎にこの密着感と沈黙の空気は害悪! 害悪です!! 勘違いしちまうダロォ!?
大丈夫、大丈夫だ。俺はまだ冷静だ。恋愛熱に浮かされて事務所所属のタレントに手を出すほど考えなしに動けるほど俺は若くねぇ。社会の仕組みはある程度は理解している。事務所怖ぇ!!
本人だって素っ裸見られても気にならないと豪語するアバター越しでのやり取りだから、これだってきっとただのスキンシップの一環。ここで勘違いして後で辛いのは俺だけだ。
ようし、良いぞ落ち着け。今考えるべきは次の試合のことだけだ。集中しろ集中!
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