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二章
百十一話 朝の食堂Ⅱ
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無事食事を確保できた俺とエリスは結局そのまま村長とチェリーさんの席で遅れた食事を摂ることになった。
というかあの状況で別の席で食事とか流石に無理だろ。
他のハイナ村の人達は普段は顔を合わせない遠方他村の関係者たちと色々話し合いがあるのだとかで、俺達が席に戻った時には既に退席していた。
周りは忙しいようだが一番偉い村長がこんな所に残っていて良いんだろうか……
「お前達が昨日から色々と走り回ってた事は先にこの嬢ちゃんから色々聞いたが、そんな事になっていたとはな」
席に戻った俺達は、とりあえずチェリーさんと村長に今朝のやり取りや、チェリーさんの説明残しの部分なんかを補足しつつ情報の埋め合わせをする事に。
俺達が巻き込まれた事体に対して村長は呆れというかなんというか複雑な顔をしていた。
まぁ、普通あんな状況に巻き込まれるとかネェもんなぁ。
一般的なゲームの主人公であれば割と良くある展開なのかも知れないが、このゲームのプレイヤーはあくまでこの世界の一人にしか過ぎず、メインストーリーという敷かれたレールは存在しない。
だから、大昔のサンドボックス型MMOのようにそうそう今回のようなアクシデントは起こるものじゃないと高をくくってたんだがなぁ。
つい最近村肘撃なんて言う一大事があったから、流石にもうないだろうと油断していたのが悪かったのか……
まぁそんな感じで情報交換していたのだが、そこで解ったのが俺達が城へ行っている間の村長達の足取りだった。
緋爪がこの宿舎に襲撃をかけてすぐ、見逃された村長達が逃れた避難所の方を今度は盗賊が襲撃したらしい。
ただ、数は大したことはなく村長含め戦える連中で撃退したらしい。
辺境の村の男は強いからなぁ……緋爪が相手ならともかく、そこらの盗賊なんてそりゃ簡単に撃退しちまうだろう。
だが一度は撃退に成功したものの、その後にかなりの数の徒党を組んで現れた連中に避難所を包囲され押し込められてしまったらしい。
そうして他の避難民を守りながら籠城していたところを緋爪の連中に救われたのだという事だった。
その後、城側から騎士達が救援に到着し、一部は緋爪を連れて城へ戻り、残った騎士達によって守られながら村長達はこの宿舎に戻ってきた……ということらしい。
俺達が目にしたのはちょうどそうやって帰ってきたところのようだな。
「じゃあ、緋爪がこの国の……というか王様側についたのは間違いないってことで良いのかしら?」
「そこは間違いないみたいと思ってる。王城前で近衛の騎士団相手に互角に戦えるだけの戦力を持っているのに、『鬼』に中央を荒らされたとは言え、あの時点じゃまだ城の包囲は解かれておらず依然膠着は維持されていた筈だ。わざわざ王手を外して民間人を助けて恩を売るような真似をする理由が他に思いつかない」
もしこれが罠だとしたら、いくらなんでも手が込みすぎている。
なぜなら――
「俺も同感だな。これで周囲を欺けたとしても、そんな真似をしてもリスクが増えるだけで効率がいいとはとても言えん。成功しても失敗しても手駒が消耗するだけで、得られる成果が何もしない場合と変わらないのではな」
だよなぁ。
リスクばかりが増えてリターンが全く釣り合っていない。
相手があの貴族共であれば、そういうバカな選択も取りうるかも知れないが、緋爪のような面子を気にする大規模傭兵団がそんな仲間を意味もなく消耗するような策を通すとは思えない。
つまり、緋爪の寝返りは額面通りに受け止めていいと考えられると言うわけだ。
村長も同じ考えのようだし、おそらく的外れな考えではないはずだ。
「なら、これで懸念材料の一つは払拭されたわけだね」
「そういうことだなぁ。盗賊たちも順調に駆除できてるんだろ? これであとは、もう一つの懸念材料でもある、こんな騒ぎを引き起こした貴族が捕まれば、一旦はこの件も決着って事だな」
「連中がまだハティちゃんを狙ってる可能性があるんだっけ?」
「アイツはそう言ってたな」
緋爪がハティを狙ったのもそもそもはクライアントである貴族共の依頼だったと。
人心掌握でクーデターとか言ってた連中が最初に頼むのがおとぎ話の神獣とか流石に駄目だろう。
自分たちの正当性を他所の獣に頼る時点で、既に自分たちだけで主張の正当性を顕示出来ないと言ってるようなものじゃないか。
住民たちの意思をガッチリ掴んだ上でダメ押しでハティに頼るとかならまだしも分からんでもないんだが。
絆の強さを求めるおとぎ話の人気の神獣を力ずくで捕らえるとか民衆を敵に回すような事を平気でやる連中だし、深く考えるだけ無駄か。
「まぁ、一先ずこれで騒ぎが収まるなら良しとするかぁ」
「ん?」
「え、何?」
「いや、チェリーさんなら『結局私とは全然関係ないところでイベントが終わった!』とか言うんじゃないかと思ってたんだけど、思いの外あっさりと現状を肯定したなぁと」
前にも似たようなこと何度か言ってたし。
「まぁ、ここまで深く関わっておいて、結局最後は私の預かり知らぬところで解決されるのかっていうのは実際あるんだけどね?」
「当たり前だろうが。こういう争乱の解決は国の仕事だ。エデルヴァルト様や騎士達に任せる事こそが道理というもんだ」
「そうなのよねぇ。冷静に考えてみたら、これが普通じゃんって、何か冷めた見方もしちゃっててねぇ」
一周回って状況を客観視するようになったのか。
今まで当たり前のようにして振る舞ってきたそれまでの言動を、ふとしたきっかけでつい振り返っちゃうやつだな。
黒歴史確認シチュエーションとも言うべきか。
大抵はなんというか自分のあまりの言動に悶え苦しむことになるんだが、チェリーさんの場合はそこまでは行かずに単純に冷めちゃったって感じか。
ただ、ネトゲやアプリで遊んでるプレイヤーはコレが起きるとそれまでかけた時間や課金額なんかを直視してゲームのモチベーションが一気にゼロになる人も結構いるんだよな。
俺のネトゲ仲間で、突然ゲームにログインしなくなるヤツの内、あとから聞いてみると結構な割合がそういう理由だった。
チェリーさんの雰囲気や口調からそういうプレイヤーによくある『ゲーム疲れ』の空気は感じられないし、ゲームへの情熱を失ったという感じではなさそう……とは思うが。
「そういや、何で村長は王様のことを陛下じゃなくてエデルヴァルト様って呼ぶんです? 以前もうっかり陛下って言おうとしてわざわざ様付けに言い直してましたよね? 普通逆なんじゃ」
「あの方が公の場以外ではそう呼ぶように申し付けられたのだ……公務以外で陛下呼びは堅苦しくて好かんとか言うてな」
「あぁ、俺と同じか……俺も人目がない時はタメ口でとか言われたし」
欲しくて手に入れたわけじゃない権力だから、それに付随する面倒臭さや堅苦しさが嫌なんだろうな。
「わかっているとは思うが、公の場で口を滑らせんように注意しろよ? 王が許しても周りが決して許さんぞ」
「わかってますよ。城でも我ながらヘッタクソな敬語でなんとか切り抜けました」
しかしそう考えると――
「なんか今回の騒動、はたから見るとすげぇ空回りっぷりだなぁ」
「まぁ貴族共が何を考えてあんな行動をとったのかさっぱり分からんし、成果を全く上げてないところを見るとたしかに空回りとも言えるか」
「あ、いやそういう意味じゃなくて……」
「うん?」
確かにそういう意味でも空回りと言うか、完全に無駄骨ではあったのだけど、俺がいいたいのはもっと単純な話だ。
「望んだ訳でもないのに王位に就けられ、さっさと辞めたいと言って憚らないのに、それでいて国民の人気が高い王様と、王位が欲しくて仕方ないが国民からは全く支持されていない貴族の戦いとか、噛み合ってないどころの話じゃないでしょ」
敵対構造が成立しないと言うか、完全な敵視の一方通行だ。
本人が要らないものを得ようとして、勝手に暴走した挙げ句の自爆。
まるで救いようがない。
ここまで単純な事件の相関図もなかなか無いんじゃなかろうか……
「今回の件、貴族が正当な手順で持って国民を味方につけることが出来たのなら、あの王様、喜んで王位を辞する気がするんだけど……」
「それは、まぁ……うむ。ありえるな、あの御方なら……」
王になる前は冒険者になりたかったが、お家柄仕方なく騎士団で手をうったとかいう人だ。
周囲が納得できる理由で王位を辞せるというのなら喜んで飛びつきそう。
まぁ、責任感はちゃんと持ってるみたいだったから、意味もなく王の責務を投げたしたりすることはないと思うが。
「まぁ、いい。これで互いの情報共有は出来たと考えていいな?」
「ええ、こっちから伝えるような要件は他には無いです」
「私はさっき全部喋ったからねぇ」
「で、街がこんなじゃ祭りの再開も厳しいだろう。俺達の会合が終わるまで、お前らはどうするつもりなんだ?」
やっぱりそこなんだよなぁ。
何かしようにも、まつりを楽しむという目的でこの街に訪れた俺達にとって、祭りが中止されてしまえば他に目的がなくなっちまうのは当然の流れな訳で。
この街について詳しければ、また何か別の楽しみを探すことも出来ただろうが、大通り周辺についてしか地理はないし、それにしても祭りの出店の位置くらいだ。
それもこの騒動でそれも閉店中だろうし……
「正直な所、今はこれといって特にやることが思いつかないっすねぇ。村長達の用事が終わるまでは、それこそなにか事態が急変でもしない限り、ここで大人しくしてる予定――」
と、言葉を言い切る前にどデカイ爆発音で遮られた。
一瞬何が起きたのか分からなかったが、強烈な衝撃で、こっちの文化基準から考えてかなり高価であろうガラス窓が粉々に砕け散るその音を聞いて、攻撃が加えられたのだと遅れて理解できた。
何か強い衝撃を受けた時、ほぼ脊椎反射的にそこに机があればとりあえず下に潜る癖というのはガキの頃からの防災訓練の賜物か。
そしてそんな訓練受けたこと無いはずの村長も一緒に机の下に潜り込んでいた。
「何やら事体が急変したようだが、さてどうする?」
「いや、流石に知りませんって……とりあえず様子を見るしか無いでしょ」
というかあの状況で別の席で食事とか流石に無理だろ。
他のハイナ村の人達は普段は顔を合わせない遠方他村の関係者たちと色々話し合いがあるのだとかで、俺達が席に戻った時には既に退席していた。
周りは忙しいようだが一番偉い村長がこんな所に残っていて良いんだろうか……
「お前達が昨日から色々と走り回ってた事は先にこの嬢ちゃんから色々聞いたが、そんな事になっていたとはな」
席に戻った俺達は、とりあえずチェリーさんと村長に今朝のやり取りや、チェリーさんの説明残しの部分なんかを補足しつつ情報の埋め合わせをする事に。
俺達が巻き込まれた事体に対して村長は呆れというかなんというか複雑な顔をしていた。
まぁ、普通あんな状況に巻き込まれるとかネェもんなぁ。
一般的なゲームの主人公であれば割と良くある展開なのかも知れないが、このゲームのプレイヤーはあくまでこの世界の一人にしか過ぎず、メインストーリーという敷かれたレールは存在しない。
だから、大昔のサンドボックス型MMOのようにそうそう今回のようなアクシデントは起こるものじゃないと高をくくってたんだがなぁ。
つい最近村肘撃なんて言う一大事があったから、流石にもうないだろうと油断していたのが悪かったのか……
まぁそんな感じで情報交換していたのだが、そこで解ったのが俺達が城へ行っている間の村長達の足取りだった。
緋爪がこの宿舎に襲撃をかけてすぐ、見逃された村長達が逃れた避難所の方を今度は盗賊が襲撃したらしい。
ただ、数は大したことはなく村長含め戦える連中で撃退したらしい。
辺境の村の男は強いからなぁ……緋爪が相手ならともかく、そこらの盗賊なんてそりゃ簡単に撃退しちまうだろう。
だが一度は撃退に成功したものの、その後にかなりの数の徒党を組んで現れた連中に避難所を包囲され押し込められてしまったらしい。
そうして他の避難民を守りながら籠城していたところを緋爪の連中に救われたのだという事だった。
その後、城側から騎士達が救援に到着し、一部は緋爪を連れて城へ戻り、残った騎士達によって守られながら村長達はこの宿舎に戻ってきた……ということらしい。
俺達が目にしたのはちょうどそうやって帰ってきたところのようだな。
「じゃあ、緋爪がこの国の……というか王様側についたのは間違いないってことで良いのかしら?」
「そこは間違いないみたいと思ってる。王城前で近衛の騎士団相手に互角に戦えるだけの戦力を持っているのに、『鬼』に中央を荒らされたとは言え、あの時点じゃまだ城の包囲は解かれておらず依然膠着は維持されていた筈だ。わざわざ王手を外して民間人を助けて恩を売るような真似をする理由が他に思いつかない」
もしこれが罠だとしたら、いくらなんでも手が込みすぎている。
なぜなら――
「俺も同感だな。これで周囲を欺けたとしても、そんな真似をしてもリスクが増えるだけで効率がいいとはとても言えん。成功しても失敗しても手駒が消耗するだけで、得られる成果が何もしない場合と変わらないのではな」
だよなぁ。
リスクばかりが増えてリターンが全く釣り合っていない。
相手があの貴族共であれば、そういうバカな選択も取りうるかも知れないが、緋爪のような面子を気にする大規模傭兵団がそんな仲間を意味もなく消耗するような策を通すとは思えない。
つまり、緋爪の寝返りは額面通りに受け止めていいと考えられると言うわけだ。
村長も同じ考えのようだし、おそらく的外れな考えではないはずだ。
「なら、これで懸念材料の一つは払拭されたわけだね」
「そういうことだなぁ。盗賊たちも順調に駆除できてるんだろ? これであとは、もう一つの懸念材料でもある、こんな騒ぎを引き起こした貴族が捕まれば、一旦はこの件も決着って事だな」
「連中がまだハティちゃんを狙ってる可能性があるんだっけ?」
「アイツはそう言ってたな」
緋爪がハティを狙ったのもそもそもはクライアントである貴族共の依頼だったと。
人心掌握でクーデターとか言ってた連中が最初に頼むのがおとぎ話の神獣とか流石に駄目だろう。
自分たちの正当性を他所の獣に頼る時点で、既に自分たちだけで主張の正当性を顕示出来ないと言ってるようなものじゃないか。
住民たちの意思をガッチリ掴んだ上でダメ押しでハティに頼るとかならまだしも分からんでもないんだが。
絆の強さを求めるおとぎ話の人気の神獣を力ずくで捕らえるとか民衆を敵に回すような事を平気でやる連中だし、深く考えるだけ無駄か。
「まぁ、一先ずこれで騒ぎが収まるなら良しとするかぁ」
「ん?」
「え、何?」
「いや、チェリーさんなら『結局私とは全然関係ないところでイベントが終わった!』とか言うんじゃないかと思ってたんだけど、思いの外あっさりと現状を肯定したなぁと」
前にも似たようなこと何度か言ってたし。
「まぁ、ここまで深く関わっておいて、結局最後は私の預かり知らぬところで解決されるのかっていうのは実際あるんだけどね?」
「当たり前だろうが。こういう争乱の解決は国の仕事だ。エデルヴァルト様や騎士達に任せる事こそが道理というもんだ」
「そうなのよねぇ。冷静に考えてみたら、これが普通じゃんって、何か冷めた見方もしちゃっててねぇ」
一周回って状況を客観視するようになったのか。
今まで当たり前のようにして振る舞ってきたそれまでの言動を、ふとしたきっかけでつい振り返っちゃうやつだな。
黒歴史確認シチュエーションとも言うべきか。
大抵はなんというか自分のあまりの言動に悶え苦しむことになるんだが、チェリーさんの場合はそこまでは行かずに単純に冷めちゃったって感じか。
ただ、ネトゲやアプリで遊んでるプレイヤーはコレが起きるとそれまでかけた時間や課金額なんかを直視してゲームのモチベーションが一気にゼロになる人も結構いるんだよな。
俺のネトゲ仲間で、突然ゲームにログインしなくなるヤツの内、あとから聞いてみると結構な割合がそういう理由だった。
チェリーさんの雰囲気や口調からそういうプレイヤーによくある『ゲーム疲れ』の空気は感じられないし、ゲームへの情熱を失ったという感じではなさそう……とは思うが。
「そういや、何で村長は王様のことを陛下じゃなくてエデルヴァルト様って呼ぶんです? 以前もうっかり陛下って言おうとしてわざわざ様付けに言い直してましたよね? 普通逆なんじゃ」
「あの方が公の場以外ではそう呼ぶように申し付けられたのだ……公務以外で陛下呼びは堅苦しくて好かんとか言うてな」
「あぁ、俺と同じか……俺も人目がない時はタメ口でとか言われたし」
欲しくて手に入れたわけじゃない権力だから、それに付随する面倒臭さや堅苦しさが嫌なんだろうな。
「わかっているとは思うが、公の場で口を滑らせんように注意しろよ? 王が許しても周りが決して許さんぞ」
「わかってますよ。城でも我ながらヘッタクソな敬語でなんとか切り抜けました」
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「まぁ貴族共が何を考えてあんな行動をとったのかさっぱり分からんし、成果を全く上げてないところを見るとたしかに空回りとも言えるか」
「あ、いやそういう意味じゃなくて……」
「うん?」
確かにそういう意味でも空回りと言うか、完全に無駄骨ではあったのだけど、俺がいいたいのはもっと単純な話だ。
「望んだ訳でもないのに王位に就けられ、さっさと辞めたいと言って憚らないのに、それでいて国民の人気が高い王様と、王位が欲しくて仕方ないが国民からは全く支持されていない貴族の戦いとか、噛み合ってないどころの話じゃないでしょ」
敵対構造が成立しないと言うか、完全な敵視の一方通行だ。
本人が要らないものを得ようとして、勝手に暴走した挙げ句の自爆。
まるで救いようがない。
ここまで単純な事件の相関図もなかなか無いんじゃなかろうか……
「今回の件、貴族が正当な手順で持って国民を味方につけることが出来たのなら、あの王様、喜んで王位を辞する気がするんだけど……」
「それは、まぁ……うむ。ありえるな、あの御方なら……」
王になる前は冒険者になりたかったが、お家柄仕方なく騎士団で手をうったとかいう人だ。
周囲が納得できる理由で王位を辞せるというのなら喜んで飛びつきそう。
まぁ、責任感はちゃんと持ってるみたいだったから、意味もなく王の責務を投げたしたりすることはないと思うが。
「まぁ、いい。これで互いの情報共有は出来たと考えていいな?」
「ええ、こっちから伝えるような要件は他には無いです」
「私はさっき全部喋ったからねぇ」
「で、街がこんなじゃ祭りの再開も厳しいだろう。俺達の会合が終わるまで、お前らはどうするつもりなんだ?」
やっぱりそこなんだよなぁ。
何かしようにも、まつりを楽しむという目的でこの街に訪れた俺達にとって、祭りが中止されてしまえば他に目的がなくなっちまうのは当然の流れな訳で。
この街について詳しければ、また何か別の楽しみを探すことも出来ただろうが、大通り周辺についてしか地理はないし、それにしても祭りの出店の位置くらいだ。
それもこの騒動でそれも閉店中だろうし……
「正直な所、今はこれといって特にやることが思いつかないっすねぇ。村長達の用事が終わるまでは、それこそなにか事態が急変でもしない限り、ここで大人しくしてる予定――」
と、言葉を言い切る前にどデカイ爆発音で遮られた。
一瞬何が起きたのか分からなかったが、強烈な衝撃で、こっちの文化基準から考えてかなり高価であろうガラス窓が粉々に砕け散るその音を聞いて、攻撃が加えられたのだと遅れて理解できた。
何か強い衝撃を受けた時、ほぼ脊椎反射的にそこに机があればとりあえず下に潜る癖というのはガキの頃からの防災訓練の賜物か。
そしてそんな訓練受けたこと無いはずの村長も一緒に机の下に潜り込んでいた。
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