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二章
四十六話 チャレンジバトルⅠ
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転送されたのはSAD達固定パーティ4人と前回ミーティングで見なかった4人。
彼らも固まっているし固定パーティだろうか。
確かテスターではなく4人で活動する有名ゲーム実況者だったっけか。
控室ではディレクターとかとずっと話してたから特に挨拶してないんだよな。
それと二人組の……あの二人は確かミーティングで見た覚えがあるな。
会話がなかったから遠目で見ただけだけれど。
あとはソロで居るのは俺、きなこもちさん、それと杖を持ってるから多分魔法使いの人の3人だ。
結構多いな、公式プレイヤー。
イチゴさん見たく予定が突かなくて来れなかった人も居るだろうから実際はもっと多いんだよな。
しばらくしたら一般からも応募するみたいな話もあるみたいだし。
「チャレンジバトルって、視聴者がモンスターや戦闘人数決めるんだよね。嫌な予感しかしないんだけど」
そう言って顔をしかめるのはきなこもちさん。
まぁ考えることは誰もが同じだよな。
視聴者としては悪乗りで無茶なモンスターぶつけてくるだろうことは容易に想像できる。
俺だったら間違いなくそうするし!
「と言っても、視聴者側の選択肢にはβテストで出てきたモンスターしか居ないって話ですしなんとかなると思いますよ。俺ら一応現地で合流した別のパーティと一緒にβテストで確認されてる一番強いモンスター倒してますし、SADさん達は俺らより高レベルみたいですしね」
と、答えたのは実況者4人組の一人だ。
「俺らのレベルは全員3なりたてなんですが、βテストで最強のモンスターはルビースケイルっていうドレイク種で、俺達入れた9人でなんとか倒すことができたんです。ギリギリでしたけどね。SADさん達はレベル5だと聞いていますし、初期装備のハンデがあっても倒せるんじゃないでしょうか」
なるほど。LV3の9人でギリギリ倒せたならそいつはLV4前後くらいの強さって事だろうか?
SADたちなら余裕で行けるだろう。
「きなこもちさんはレベル幾つなんです?」
「あたし? あたしは3の上位って所かな。あと、きなこでいいよ。地味に呼びにくいでしょ? きなこもちって」
「わかった。そうする。それでルビースケイルっていうのはなんとかなりそう?」
「どうだろう、私ベータのモンスターは詳しくないから実際に戦ってみないとなんとも言えないかな。レベル3下位の4人で辛勝って事は3上位か4下位ってことだと思うから、3上位なら相性もあるからなんとかなるかも知れないけど、4になるとちょっと厳しいかも」
やっぱそんな感じの印象か。
「せっかく時間もあるし、控室ではろくに話せなかった人も多いからここで自己紹介ついでに戦力確認もしちわないか?」
そう言い出したのはSADだ。
確かここに居る半分以上は名前も知らないし、公式プレイヤーなら今後何かと関わりがあるだろう。
自己紹介しておくのは有りか。
それに無茶振りされた時に戦力分配どうするかなんかの参考にもなるだろうしな。
「そうですね、長い付き合いになると思いますし良いと思います」
「私も賛成」
特に否定的な空気はないな。
まぁ、なんだかんだでみんな社会人だしな。
その辺りの分別はちゃんとついているんだろう。
「じゃあ、言い出しっぺの俺からだな。俺はSAD。リバースカー社員で社内テスターもやってる。重剣士系の二刀流でLVは5の下位だ」
「俺はロイ。SADと同じリバースカー社内テスターで、SADとは固定パーティを組んで活動している。片手剣と大盾系のスキル特化したメイン盾ってやつだな」
「僕はカイウス。同じくSADの固定メンバーで魔法使いだけど回復と攻撃の両方を使っている」
「私はリリティア。SAD達のパーティの中では私だけ外部テスターね。メイン武器は弓を使ってるわ私達のパーティは全員Lv5下位ですよ」
SAD達はこういう場になれてるのかテキパキとと自己紹介を済ませていった。
続いたのは実況者四人組だ。
「僕は鉄平です。僕たちは4人で『気分に身を任せて』というシリーズでゲーム実況配信をやっています。レベルは3に上がりたてで盾と槍でのタンクをメインにやっています」
「俺はゆっきー。鉄平たちと一緒のパーティで攻撃系魔法使いやってます。レベルは3になりたてです」
「コータです。回復系の魔法使いやってます。同じくレベルは3です」
「アスターです。重剣使いのレベル3です。βテストのときは配信環境が特殊すぎて用意できなかったので番組合わせでガチレベル上げしましたけど、僕たちの本来のプレイは基本ネタっぽさを出すためにあえて事前情報を仕入れないってプレイスタイルなんです。なのであえて作戦を立てなかったり、思いつきで戦ったりするんでレベルほど上手く立ち回れないかも知れません」
なるほど、ガチ系じゃなく初見プレイで、敵に翻弄される様を笑いにするタイプの実況者か。
ああいう見てて『ああ、俺もここで苦戦したんだよな』とニヤニヤ出来るタイプの実況プレイは実は結構好きだ。
「そこは、知らないふりでこっそり調べたりはしないんですか? あ、私はきなこもち。LV3上位の格闘家プレイしてます。普段はペアでプレイしてるんですけど相方は別のゲームのイベントレポートの仕事で来れないので今日はソロ参加です」
スゲェこと聞くな。
普通そう言うのは思っていてもボカしたり聞かなかったりするもんだろ。
……まぁ確かに気になるけどな。
「あはは、実際に録画に失敗してテイク2をさも初見プレイみたいに実況してみると多分理解できると思いますよ。知らないふりでプレイするのがどれだけ無理があるか。間違いなくバレますから」
「無理だなぁ~。昔一回だけそれやって自分で見返してもあまりにわざとらしくて頭抱えた」
「視聴者からも一瞬でバレたしね。だからそれ以降テイク2の時は動画の冒頭でバラすことにしたんだよな」
「はぁ~そうなんだ。ままならないもんだねぇ」
嫌な顔されるかと思ったら意外とあっさり答えてくれたな。
黙ってればばれないと思うんだが、実況で喋りながらだとやっぱ難しいのか?
この辺りは実際に実況したことがある人にしかわからないモノかもしれんな。
「じゃあ次は俺達かな。俺はカイン。両手槍使いのアタッカーでLVは3中位だ」
「俺はハンペン。回復寄りの魔法使いだな。αではカインとペアで活動してる。LVは3中位だ」
おっと、トリになるのはなんか恥ずかしいし俺もさっさと……
「じ……」
「俺はスレイン。初期から参加している外部テスターで主に雑誌のレビューなんかを請け負っているから、プレイ期間は長いけどレベルはそこまで高くないです。攻撃タイプの魔法使いでレベルは3中位だ」
ぐ……、考えることは同じだったか。
勢いで言い切られてしまった。
あそこで引いてしまう自分の奥ゆかしさが恨めしい。
「あー……と、俺はキョウ。外部のテスターだけどテストに参加し始めたのがつい最近だからまだレベルは2の下位です武器は……槍?」
「あれ……お前、先週戦った時は片手剣使ってなかったか?」
そこで突っ込まなくても良いんだよ!
注目されるじゃねぇか。
「あれは初期装備しか持ってなかったからだよ。最近槍というか鎌というかなんとも言えん武器を手に入れたからそれを使ってるんだ」
「というか開始して2週間かそこらでレベル2ってちょっと凄いよね」
「二週間!?」
そこに反応したのは実況組だった。
「一体どんな上げ方したんですか? 僕らβテストのときは配信外って事で結構本気で情報調べてレベル上げに集中しましたけど、レベル2まで1ヶ月かかりましたよ!?」
「あれ、もしかしてβテストとαテストだと成長率に差があるとか?」
「いや?、俺達も大体1ヶ月程度かかったぜ?」
テスターの中ではトップに居るSADがそういうってことはかなりの速度でレベル上げをして1ヶ月かかったってことだよな?
「私達はペア狩りで効率そこまで良くなかったから1ヶ月半くらいかかったわねー」
きなこさんもか。
ということはαとβでの経験値格差は存在しないと言うことになる。
「βテスト期間の3ヶ月で僕たちはギリギリ3まで届きましたけど、LV3到達者は上位5%らしいですから決して遅くはないはずです」
「となると……どういう事だ?」
「それは俺らのセリフなんだが。前回の爆上がりはライノスとのソロって話だが、アレから1週間しか経ってないぞ。この一週間で一体何と戦ったんだ?」
この一週間……
「新しい武器手に入れて、でも脚痛めてたからあまり身体を激しく動かさないように自主練して……」
「自主練?」
「身体に動きをなじませるために、足に負担かけない程度に素振りとか」
「……まぁ、それなら腕力系や体幹系のスキル上げにはなる……のか?」
その可能性はあるか。
激しくないとは言え、かなり疲れるしな。
「あとは村への襲撃に備えて落とし穴の準備とか手伝ったり……」
「襲撃って……前言ってたNPC感のトラブルってやつ?」
「そうそう」
でも、あまり力仕事はやってないんだよなぁ。
ちょっと手伝ったら『お前は足を治すのに専念しろ!』ってガーヴさんに怒られたし。
「あとは実際襲撃受けてバジリコックとアーマードレイクとあとは野獣使いとも戦って……」
「「それだ!」」
「うお!? びっくりした」
SADとロイが同時に突っ込んできた。
いやまぁ、俺も正直な所原因なんてそれくらいしか無いと思うんだが……
「確かにバジリコックはソロで倒したけど、アーマードレイクは俺の力じゃ急所っぽい所狙ってもほとんどダメージ通らなかったし、野獣使いは俺じゃない別の人が倒したからなぁ」
「いやいや、バジリコックソロとか言う時点で納得できる上がり幅だって!」
「でも、ライノスほど強くなかったし割とあっさり戦闘終わったから、ライノスのときのようなギリギリ戦闘の継続による爆上げ現象ってのもあんまないと思うぞ?」
スキル上げ的な激戦になる前に結構すんなり倒せちまったし。
「あのなぁ……前回のライノス、NPCと3人がかり倒せなかったのにスキルもパラメータも爆上げだったんだろ? ならソロで倒した今回のほうが成長率高いって普通考えるだろ」
「あ……」
そうか、苦戦したかどうかじゃなくて倒したかどうかで経験値的なものが増える可能性があるのか。
というかRPGならむしろソッチのほうが当たり前か。
何で思いつかなかったんだ俺……
「あの、バジリコックってβテストの情報には居なかったと思うので解らないんですけど、どれくらいの強さなんですか?」
「推定レベル4上位。石化爪や毒ブレスもあるからレベル表記よりも苦戦するタイプの厄介なやつだよ」
「うわ、僕ら4人じゃ絶対勝てないですね……それを倒してLV2になったってことですよね? そんな格上を一体どうやってLV1で倒したんですか……」
どうやってって言われても……確か……
「ふつうにこう、鎌槍で脚を壊して、のたうち回ってる所を胸から心臓にトドメを入れて終わり?」
その時の動きを真似て説明してみる。
たしかこんな感じだった……はず?
「おまえ、たった一週間で化け物具合が加速してないか?」
「失敬な、こんなの猟師とかなら誰だってやってるだろ。猟師に謝れ!」
「猟師はバジリコックに一対一で戦いを挑むなんて無謀なことはしないと思う……」
あれ、きなこさんが敵に回った!?
「とりあえず、キョウさんがレベル通りの強さではないことはなんとなくわかりました」
「おう、実際PVPのテストプレイで、一対一の戦いでLV1のコイツが俺の武器を奪ったとはいえLV5の俺の片腕飛ばしてるからな。俺も含めてあの時は参加者全員絶句してたぜ」
「マジですか?」
「マジです」
そんな大げさな……
「それは高レベルのSADに傷を負わせた低レベルの俺が凄いんじゃない。低レベルの俺に油断して腕を飛ばされた高レベルのSADが酷いんだよ。戦場では一瞬の油断が命取り……ってやつだ」
「ぐむ……そう言われちまうと返す言葉もねぇが、それでもお前の戦い方が異質だってのはあの場に居た全員の共通見解だぞ!?」
「ぐむ……!?」
そういやあの時も味方は一人も居なかったな。
俺の戦い方なんてガーヴさんに教えてもらった物の付け焼き刃だぞ。
大した運動もせずにゲームばっかやってた俺の運動神経なんぞたかが知れてるし。
そういやあの時はSADが気になること言ってたな。
俺だけやってるゲームが違うとかなんとか。
根本的な俺とSAD達の差って要するにそこの認識なんじゃないのか?
「ん?」
どう言い返したものかと考えていた所にポータルが開いた。
まだ開始まで10分ほどあるはずだけど、もう準備始めるのか?
メインは特設ステージからの実況だったはずだけど……
と思ったら、どうやら演者さんのようだ。
ポータルから出てきた二人は公式プレイヤーとして活動するという声優さん達だった。
「開始五分前でスタッフが入ります、それまで後少々お待ちください!」
という言葉と共に二人を連れてきたスタッフはまた帰ってしまった。
「皆さん、公式プレイヤーの方たちですよね? 本日はよろしくお願い致します」
「あ、どうもこちらこそ宜しくおねがいします」
つい会社員時代のくせで反射的に挨拶してしまった。
……いや、別におかしなことじゃないか。
挨拶されたら挨拶返すのは普通だし。
「では私から。改めましてどうも、公式プレイヤーとして活動させて頂く安達勇人です。キャラ名はあつしといいます。本日は宜しくおねがいします」
「はじめまして、私はアースエンターテインメント所属の結城桜です。同じく公式プレヤーとしてご一緒させていただきます。本日はよろしくおねがいします。プレイヤーネームはチェリーブロッサムです」
そして再び繰り返される自己紹介。
ちょっと自己紹介のタイミングが悪かったか。
二度手間になってしまった。
といっても別にあの時はおかしな流れじゃなかったしSADを攻める気はないけど。
「僕はコンシューマやスマホゲームはよくプレイしますけどMMOはまだプレイしたことがない完全初心者で、初心者プレイヤーとして活動していくことになります。βテストでもできるだけ触らないように言われてたので楽しみにしています」
なるほど、新規プレイヤー獲得のための有名人による初心者プレイ担当なのか。
でも、ゲームは色々やってるみたいだし基本的なところはなんだかんだで抑えていそうだな。
「私は割とガチなタイプです。このキャラもβテストからの引き継ぎなのでLVは3の序盤から中盤ってところです」
「えぇっ!? 僕たちよりレベルが高いじゃないですか!」
驚いたのは実況組だ。
4人共かなりガチにレベル上げに励んだと言ってたが、現役の人気声優が自分たちよりもレベルが高かったことに相当驚いているようだ。
確かLV3到達者は全体の5%だという話だったから、その中でもかなり上の方にいるということになる。
「僕たちも仕事としてかなり真面目にレベル上げしてたのに、上を行かれるとは思いもしませんでしたよ。お仕事とかもあったでしょうに、よくそこまで上げれましたね」
「ちょっと喉に矢を受けてしまって……」
「いや、膝ならともかく喉ってそれ引退どころか普通に死にますって」
「実は、喉に炎症が出て前期の仕事受けられなかったんですよ。喉が駄目だといろいろな仕事に支障が出るので安静にしてたんですけど、丁度その時にこの仕事の話がありまして」
ああ、うん、コレは確かにガチな人だ。
最後に『な』がつかない辺りなんか特に。
しかしさすがプロの喋り屋、トーク上手いな。
当たり前のように初対面の皆と楽しく喋ってる。
あのトークスキルだけで、声優の正体隠してもこのゲームでやっていけるんじゃなかろうか。
なんてことをぼんやりと考えていたところ、前回同様唐突に再びあのポータルが出現した。
あれ、転送先にある程度出現予兆とかがないと衝突事故起こすんじゃないだろうか。
後でテストレポートのついでに懸念点として送っとくか。
「5分前です! ご歓談の所申し訳ありませんが準備をお願いします」
スタッフが5分前の合図と共にやって来た。
さて、お仕事の時間のようだ。
彼らも固まっているし固定パーティだろうか。
確かテスターではなく4人で活動する有名ゲーム実況者だったっけか。
控室ではディレクターとかとずっと話してたから特に挨拶してないんだよな。
それと二人組の……あの二人は確かミーティングで見た覚えがあるな。
会話がなかったから遠目で見ただけだけれど。
あとはソロで居るのは俺、きなこもちさん、それと杖を持ってるから多分魔法使いの人の3人だ。
結構多いな、公式プレイヤー。
イチゴさん見たく予定が突かなくて来れなかった人も居るだろうから実際はもっと多いんだよな。
しばらくしたら一般からも応募するみたいな話もあるみたいだし。
「チャレンジバトルって、視聴者がモンスターや戦闘人数決めるんだよね。嫌な予感しかしないんだけど」
そう言って顔をしかめるのはきなこもちさん。
まぁ考えることは誰もが同じだよな。
視聴者としては悪乗りで無茶なモンスターぶつけてくるだろうことは容易に想像できる。
俺だったら間違いなくそうするし!
「と言っても、視聴者側の選択肢にはβテストで出てきたモンスターしか居ないって話ですしなんとかなると思いますよ。俺ら一応現地で合流した別のパーティと一緒にβテストで確認されてる一番強いモンスター倒してますし、SADさん達は俺らより高レベルみたいですしね」
と、答えたのは実況者4人組の一人だ。
「俺らのレベルは全員3なりたてなんですが、βテストで最強のモンスターはルビースケイルっていうドレイク種で、俺達入れた9人でなんとか倒すことができたんです。ギリギリでしたけどね。SADさん達はレベル5だと聞いていますし、初期装備のハンデがあっても倒せるんじゃないでしょうか」
なるほど。LV3の9人でギリギリ倒せたならそいつはLV4前後くらいの強さって事だろうか?
SADたちなら余裕で行けるだろう。
「きなこもちさんはレベル幾つなんです?」
「あたし? あたしは3の上位って所かな。あと、きなこでいいよ。地味に呼びにくいでしょ? きなこもちって」
「わかった。そうする。それでルビースケイルっていうのはなんとかなりそう?」
「どうだろう、私ベータのモンスターは詳しくないから実際に戦ってみないとなんとも言えないかな。レベル3下位の4人で辛勝って事は3上位か4下位ってことだと思うから、3上位なら相性もあるからなんとかなるかも知れないけど、4になるとちょっと厳しいかも」
やっぱそんな感じの印象か。
「せっかく時間もあるし、控室ではろくに話せなかった人も多いからここで自己紹介ついでに戦力確認もしちわないか?」
そう言い出したのはSADだ。
確かここに居る半分以上は名前も知らないし、公式プレイヤーなら今後何かと関わりがあるだろう。
自己紹介しておくのは有りか。
それに無茶振りされた時に戦力分配どうするかなんかの参考にもなるだろうしな。
「そうですね、長い付き合いになると思いますし良いと思います」
「私も賛成」
特に否定的な空気はないな。
まぁ、なんだかんだでみんな社会人だしな。
その辺りの分別はちゃんとついているんだろう。
「じゃあ、言い出しっぺの俺からだな。俺はSAD。リバースカー社員で社内テスターもやってる。重剣士系の二刀流でLVは5の下位だ」
「俺はロイ。SADと同じリバースカー社内テスターで、SADとは固定パーティを組んで活動している。片手剣と大盾系のスキル特化したメイン盾ってやつだな」
「僕はカイウス。同じくSADの固定メンバーで魔法使いだけど回復と攻撃の両方を使っている」
「私はリリティア。SAD達のパーティの中では私だけ外部テスターね。メイン武器は弓を使ってるわ私達のパーティは全員Lv5下位ですよ」
SAD達はこういう場になれてるのかテキパキとと自己紹介を済ませていった。
続いたのは実況者四人組だ。
「僕は鉄平です。僕たちは4人で『気分に身を任せて』というシリーズでゲーム実況配信をやっています。レベルは3に上がりたてで盾と槍でのタンクをメインにやっています」
「俺はゆっきー。鉄平たちと一緒のパーティで攻撃系魔法使いやってます。レベルは3になりたてです」
「コータです。回復系の魔法使いやってます。同じくレベルは3です」
「アスターです。重剣使いのレベル3です。βテストのときは配信環境が特殊すぎて用意できなかったので番組合わせでガチレベル上げしましたけど、僕たちの本来のプレイは基本ネタっぽさを出すためにあえて事前情報を仕入れないってプレイスタイルなんです。なのであえて作戦を立てなかったり、思いつきで戦ったりするんでレベルほど上手く立ち回れないかも知れません」
なるほど、ガチ系じゃなく初見プレイで、敵に翻弄される様を笑いにするタイプの実況者か。
ああいう見てて『ああ、俺もここで苦戦したんだよな』とニヤニヤ出来るタイプの実況プレイは実は結構好きだ。
「そこは、知らないふりでこっそり調べたりはしないんですか? あ、私はきなこもち。LV3上位の格闘家プレイしてます。普段はペアでプレイしてるんですけど相方は別のゲームのイベントレポートの仕事で来れないので今日はソロ参加です」
スゲェこと聞くな。
普通そう言うのは思っていてもボカしたり聞かなかったりするもんだろ。
……まぁ確かに気になるけどな。
「あはは、実際に録画に失敗してテイク2をさも初見プレイみたいに実況してみると多分理解できると思いますよ。知らないふりでプレイするのがどれだけ無理があるか。間違いなくバレますから」
「無理だなぁ~。昔一回だけそれやって自分で見返してもあまりにわざとらしくて頭抱えた」
「視聴者からも一瞬でバレたしね。だからそれ以降テイク2の時は動画の冒頭でバラすことにしたんだよな」
「はぁ~そうなんだ。ままならないもんだねぇ」
嫌な顔されるかと思ったら意外とあっさり答えてくれたな。
黙ってればばれないと思うんだが、実況で喋りながらだとやっぱ難しいのか?
この辺りは実際に実況したことがある人にしかわからないモノかもしれんな。
「じゃあ次は俺達かな。俺はカイン。両手槍使いのアタッカーでLVは3中位だ」
「俺はハンペン。回復寄りの魔法使いだな。αではカインとペアで活動してる。LVは3中位だ」
おっと、トリになるのはなんか恥ずかしいし俺もさっさと……
「じ……」
「俺はスレイン。初期から参加している外部テスターで主に雑誌のレビューなんかを請け負っているから、プレイ期間は長いけどレベルはそこまで高くないです。攻撃タイプの魔法使いでレベルは3中位だ」
ぐ……、考えることは同じだったか。
勢いで言い切られてしまった。
あそこで引いてしまう自分の奥ゆかしさが恨めしい。
「あー……と、俺はキョウ。外部のテスターだけどテストに参加し始めたのがつい最近だからまだレベルは2の下位です武器は……槍?」
「あれ……お前、先週戦った時は片手剣使ってなかったか?」
そこで突っ込まなくても良いんだよ!
注目されるじゃねぇか。
「あれは初期装備しか持ってなかったからだよ。最近槍というか鎌というかなんとも言えん武器を手に入れたからそれを使ってるんだ」
「というか開始して2週間かそこらでレベル2ってちょっと凄いよね」
「二週間!?」
そこに反応したのは実況組だった。
「一体どんな上げ方したんですか? 僕らβテストのときは配信外って事で結構本気で情報調べてレベル上げに集中しましたけど、レベル2まで1ヶ月かかりましたよ!?」
「あれ、もしかしてβテストとαテストだと成長率に差があるとか?」
「いや?、俺達も大体1ヶ月程度かかったぜ?」
テスターの中ではトップに居るSADがそういうってことはかなりの速度でレベル上げをして1ヶ月かかったってことだよな?
「私達はペア狩りで効率そこまで良くなかったから1ヶ月半くらいかかったわねー」
きなこさんもか。
ということはαとβでの経験値格差は存在しないと言うことになる。
「βテスト期間の3ヶ月で僕たちはギリギリ3まで届きましたけど、LV3到達者は上位5%らしいですから決して遅くはないはずです」
「となると……どういう事だ?」
「それは俺らのセリフなんだが。前回の爆上がりはライノスとのソロって話だが、アレから1週間しか経ってないぞ。この一週間で一体何と戦ったんだ?」
この一週間……
「新しい武器手に入れて、でも脚痛めてたからあまり身体を激しく動かさないように自主練して……」
「自主練?」
「身体に動きをなじませるために、足に負担かけない程度に素振りとか」
「……まぁ、それなら腕力系や体幹系のスキル上げにはなる……のか?」
その可能性はあるか。
激しくないとは言え、かなり疲れるしな。
「あとは村への襲撃に備えて落とし穴の準備とか手伝ったり……」
「襲撃って……前言ってたNPC感のトラブルってやつ?」
「そうそう」
でも、あまり力仕事はやってないんだよなぁ。
ちょっと手伝ったら『お前は足を治すのに専念しろ!』ってガーヴさんに怒られたし。
「あとは実際襲撃受けてバジリコックとアーマードレイクとあとは野獣使いとも戦って……」
「「それだ!」」
「うお!? びっくりした」
SADとロイが同時に突っ込んできた。
いやまぁ、俺も正直な所原因なんてそれくらいしか無いと思うんだが……
「確かにバジリコックはソロで倒したけど、アーマードレイクは俺の力じゃ急所っぽい所狙ってもほとんどダメージ通らなかったし、野獣使いは俺じゃない別の人が倒したからなぁ」
「いやいや、バジリコックソロとか言う時点で納得できる上がり幅だって!」
「でも、ライノスほど強くなかったし割とあっさり戦闘終わったから、ライノスのときのようなギリギリ戦闘の継続による爆上げ現象ってのもあんまないと思うぞ?」
スキル上げ的な激戦になる前に結構すんなり倒せちまったし。
「あのなぁ……前回のライノス、NPCと3人がかり倒せなかったのにスキルもパラメータも爆上げだったんだろ? ならソロで倒した今回のほうが成長率高いって普通考えるだろ」
「あ……」
そうか、苦戦したかどうかじゃなくて倒したかどうかで経験値的なものが増える可能性があるのか。
というかRPGならむしろソッチのほうが当たり前か。
何で思いつかなかったんだ俺……
「あの、バジリコックってβテストの情報には居なかったと思うので解らないんですけど、どれくらいの強さなんですか?」
「推定レベル4上位。石化爪や毒ブレスもあるからレベル表記よりも苦戦するタイプの厄介なやつだよ」
「うわ、僕ら4人じゃ絶対勝てないですね……それを倒してLV2になったってことですよね? そんな格上を一体どうやってLV1で倒したんですか……」
どうやってって言われても……確か……
「ふつうにこう、鎌槍で脚を壊して、のたうち回ってる所を胸から心臓にトドメを入れて終わり?」
その時の動きを真似て説明してみる。
たしかこんな感じだった……はず?
「おまえ、たった一週間で化け物具合が加速してないか?」
「失敬な、こんなの猟師とかなら誰だってやってるだろ。猟師に謝れ!」
「猟師はバジリコックに一対一で戦いを挑むなんて無謀なことはしないと思う……」
あれ、きなこさんが敵に回った!?
「とりあえず、キョウさんがレベル通りの強さではないことはなんとなくわかりました」
「おう、実際PVPのテストプレイで、一対一の戦いでLV1のコイツが俺の武器を奪ったとはいえLV5の俺の片腕飛ばしてるからな。俺も含めてあの時は参加者全員絶句してたぜ」
「マジですか?」
「マジです」
そんな大げさな……
「それは高レベルのSADに傷を負わせた低レベルの俺が凄いんじゃない。低レベルの俺に油断して腕を飛ばされた高レベルのSADが酷いんだよ。戦場では一瞬の油断が命取り……ってやつだ」
「ぐむ……そう言われちまうと返す言葉もねぇが、それでもお前の戦い方が異質だってのはあの場に居た全員の共通見解だぞ!?」
「ぐむ……!?」
そういやあの時も味方は一人も居なかったな。
俺の戦い方なんてガーヴさんに教えてもらった物の付け焼き刃だぞ。
大した運動もせずにゲームばっかやってた俺の運動神経なんぞたかが知れてるし。
そういやあの時はSADが気になること言ってたな。
俺だけやってるゲームが違うとかなんとか。
根本的な俺とSAD達の差って要するにそこの認識なんじゃないのか?
「ん?」
どう言い返したものかと考えていた所にポータルが開いた。
まだ開始まで10分ほどあるはずだけど、もう準備始めるのか?
メインは特設ステージからの実況だったはずだけど……
と思ったら、どうやら演者さんのようだ。
ポータルから出てきた二人は公式プレイヤーとして活動するという声優さん達だった。
「開始五分前でスタッフが入ります、それまで後少々お待ちください!」
という言葉と共に二人を連れてきたスタッフはまた帰ってしまった。
「皆さん、公式プレイヤーの方たちですよね? 本日はよろしくお願い致します」
「あ、どうもこちらこそ宜しくおねがいします」
つい会社員時代のくせで反射的に挨拶してしまった。
……いや、別におかしなことじゃないか。
挨拶されたら挨拶返すのは普通だし。
「では私から。改めましてどうも、公式プレイヤーとして活動させて頂く安達勇人です。キャラ名はあつしといいます。本日は宜しくおねがいします」
「はじめまして、私はアースエンターテインメント所属の結城桜です。同じく公式プレヤーとしてご一緒させていただきます。本日はよろしくおねがいします。プレイヤーネームはチェリーブロッサムです」
そして再び繰り返される自己紹介。
ちょっと自己紹介のタイミングが悪かったか。
二度手間になってしまった。
といっても別にあの時はおかしな流れじゃなかったしSADを攻める気はないけど。
「僕はコンシューマやスマホゲームはよくプレイしますけどMMOはまだプレイしたことがない完全初心者で、初心者プレイヤーとして活動していくことになります。βテストでもできるだけ触らないように言われてたので楽しみにしています」
なるほど、新規プレイヤー獲得のための有名人による初心者プレイ担当なのか。
でも、ゲームは色々やってるみたいだし基本的なところはなんだかんだで抑えていそうだな。
「私は割とガチなタイプです。このキャラもβテストからの引き継ぎなのでLVは3の序盤から中盤ってところです」
「えぇっ!? 僕たちよりレベルが高いじゃないですか!」
驚いたのは実況組だ。
4人共かなりガチにレベル上げに励んだと言ってたが、現役の人気声優が自分たちよりもレベルが高かったことに相当驚いているようだ。
確かLV3到達者は全体の5%だという話だったから、その中でもかなり上の方にいるということになる。
「僕たちも仕事としてかなり真面目にレベル上げしてたのに、上を行かれるとは思いもしませんでしたよ。お仕事とかもあったでしょうに、よくそこまで上げれましたね」
「ちょっと喉に矢を受けてしまって……」
「いや、膝ならともかく喉ってそれ引退どころか普通に死にますって」
「実は、喉に炎症が出て前期の仕事受けられなかったんですよ。喉が駄目だといろいろな仕事に支障が出るので安静にしてたんですけど、丁度その時にこの仕事の話がありまして」
ああ、うん、コレは確かにガチな人だ。
最後に『な』がつかない辺りなんか特に。
しかしさすがプロの喋り屋、トーク上手いな。
当たり前のように初対面の皆と楽しく喋ってる。
あのトークスキルだけで、声優の正体隠してもこのゲームでやっていけるんじゃなかろうか。
なんてことをぼんやりと考えていたところ、前回同様唐突に再びあのポータルが出現した。
あれ、転送先にある程度出現予兆とかがないと衝突事故起こすんじゃないだろうか。
後でテストレポートのついでに懸念点として送っとくか。
「5分前です! ご歓談の所申し訳ありませんが準備をお願いします」
スタッフが5分前の合図と共にやって来た。
さて、お仕事の時間のようだ。
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別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
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Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
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異世界帰りのゲーマー
たまご
ファンタジー
部屋でゲームをしていたところ異世界へ招かねてしまった男
鈴木一郎 16歳
彼女なし(16+10年)
10年のも月日をかけ邪神を倒し地球へと帰ってきた
それも若返った姿で10年前に
あっ、俺に友達なんていなかったわ
異世界帰りのボッチゲーマーの物語
誤字脱字、文章の矛盾などありましたら申し訳ありません
初投稿の為、改稿などが度々起きるかもしれません
よろしくお願いします
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日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
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我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
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【完結】追放された実は最強道士だった俺、異国の元勇者の美剣女と出会ったことで、皇帝すらも認めるほどまで成り上がる
岡崎 剛柔
ファンタジー
【あらすじ】
「龍信、貴様は今日限りで解雇だ。この屋敷から出ていけ」
孫龍信(そん・りゅうしん)にそう告げたのは、先代当主の弟の孫笑山(そん・しょうざん)だった。
数年前に先代当主とその息子を盗賊団たちの魔の手から救った龍信は、自分の名前と道士であること以外の記憶を無くしていたにもかかわらず、大富豪の孫家の屋敷に食客として迎え入れられていた。
それは人柄だけでなく、常人をはるかに超える武術の腕前ゆえにであった。
ところが先代当主とその息子が事故で亡くなったことにより、龍信はこの屋敷に置いておく理由は無いと新たに当主となった笑山に追放されてしまう。
その後、野良道士となった龍信は異国からきた金毛剣女ことアリシアと出会うことで人生が一変する。
とある目的のためにこの華秦国へとやってきたアリシア。
そんなアリシアの道士としての試験に付き添ったりすることで、龍信はアリシアの正体やこの国に来た理由を知って感銘を受け、その目的を達成させるために龍信はアリシアと一緒に旅をすることを決意する。
またアリシアと出会ったことで龍信も自分の記憶を取り戻し、自分の長剣が普通の剣ではないことと、自分自身もまた普通の人間ではないことを思い出す。
そして龍信とアリシアは旅先で薬士の春花も仲間に加え、様々な人間に感謝されるような行動をする反面、悪意ある人間からの妨害なども受けるが、それらの人物はすべて相応の報いを受けることとなる。
笑山もまた同じだった。
それどころか自分の欲望のために龍信を屋敷から追放した笑山は、落ちぶれるどころか人間として最悪の末路を辿ることとなる。
一方の龍信はアリシアのこの国に来た目的に心から協力することで、巡り巡って皇帝にすらも認められるほど成り上がっていく。
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