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二章

四十三話 旅立ち?Ⅱ

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 ポータルへ飛び込み、長いローディングの間、コンバートプレイヤー向けと思われる様々な注意事項などが表示されていた。
 本来であれば結構な長さのオープニングイベントとムービーが有るのだそうだが、このアカウントはニューアカウント扱いではないため、二度目の通常ログイン扱いらしい。
 他のプレイヤーとの認識誤差があるとまずいということでプロローグイベントとムービーについてはメールで動画を送ってもらって既に確認済みだ。

 製品版のこのゲームは今時珍しい、全く捻らない超王道のファンタジーだが、グランドストーリーイベントは存在するものの、メインストーリーというものはなく、NPCとの交流によってこの世界ならではの冒険を楽しむというゲームデザインになっている。
 国家を股にかけた冒険がしたければ、まずその地位を自力で手に入れてみせろというなかなかにハードルの高いゲームである。
 当然、国なんて面倒なことに関わってられるか! というプレイヤーは気ままに冒険するもよし、冒険せずに商売に精を出すもよしという訳だ。
 ただし、α版のものとは違い、レーティングをR15に設定している関係で、犯罪や一般NPCへの危害は加えられないようになっている。
 基本的に人間や亜人などの種族は各々で宗教を持っており、信仰する神の加護によって首都や協会の近くでは信者は結界で守られているという設定なのだそうだ。
 町の外に出ると結界が解けてしまうのだが、一般プレイヤーではNPCボディを傷つけられない設定になってるため、例え魔が差して町の外で襲いかかったとしても、実際に襲われたNPCからしたら『必死の形相で当たっても痛くないように攻撃してくる変な人』という事になるらしい。
 そんなの痛くなくても……というか何したいのか解らない分、人間とほぼ変わらない思考能力があるAIをもつNPCにとっては余計怖いわけで、襲った奴は襲撃者というよりも変質者として通報されるという訳である。
 高い金出して買ったゲームの中でタイーホされてムショ行きとか流石にやる馬鹿は居ない……と信じたいが、馬鹿はどこにでも居るからなぁ。

 関連して現実とゲーム内での法律の違いや犯罪に対する罰則などかなり事細かに書き並べられていた。
 こんなのいちいち全部覚えてられるか! と思ったが、どうやら重量1、販売、破棄不可のアイテムとして全プレイヤーに『イベントアイテム:叡智の書』と言う扱いで配布されているらしい。
 ヤバそうだと思ったら確認してね? という事だな。
 とはいえ、一体どれだけのプレイヤーがこの分厚い本を読もうとするのか……

 などと考えていたらローディングが終わり、視界が開ける。

 開けた視界の先にあったのは、以前のような湖畔のロッジではなく、石畳で整地された街の一角と思われる場所だった。
 そう。道の、しかも大通りのど真ん中からのスタートだ。
 各プレイヤーごとに初期取得スキルの傾向によってにオープニングエピソードが組まれるという話なんだが、一体何があればこんな所からスタートになるんだろうか。
 エリスとハティはまだ居ない。
 おかしいな?
 ほぼ同時に飛んだはずだけど、環境差のタイムラグ……? でも中間機器通さないAIのエリス達の方が転送速度は早いんじゃ……

 ――いや、ちょっとまて?
 各プレイヤーごとにオープニングが違う……?

 あ、コレはやばいかも。

 今の今まで、同じ位置からポータルに入ったからこっちに出る時も同じ位置に出るって思い込んでいたけど、エリスもハティもコッチ側では初ログインになる訳で、POP場所はエピソードによって変わる可能性があるのか!
 って事は俺とエリスが同じ場所に出るとは限らないってことなんじゃ。
 というかハティとか一体どういう扱いになるんだ?
 ……集合場所とか一切決めてなかったぞ。
 俺は運営側との集合場所の地図を事前にもらってるが、エリス達はそんな物持ってないしバラけちまったら遭遇はかなり絶望的なんじゃ……
 メール機能はゲーム内のものじゃなくて筐体備え付きの機能だからエリスは使えないし、個人チャットとかあるんだろうか?
 等と焦っていた所で唐突にエリスとハティがすぐ隣に現れた。

「わぁ、キレイな道だね」
「ワン!」

 エリスたちは周囲の景色に驚いてキョロキョロと街を見回している。
 良かった……どうやら単純なタイムラグだったらしい。
 何事もなくてよかったとホッと胸を撫で下ろそうとした所で、割と何事もないわけでもなかった事に気がついた

「わ、ハティちっちゃい!」
「ワフ?」

 4~5mはありそうだったハティの精悍な体がどういう訳か子犬になっていた。
 まぁ子犬と行っても元がデカイせいか柴犬の大人とたいして変わらないサイズあるんだが。
 いきなり街の中に巨大な狼のモンスターが現れると混乱が起きるかも知れないし運営側の配慮なのかね?
 まぁ、変に騒ぎになるのは面倒だし有り難いと言えば有り難いか。
 ただ、移動手段になってもらおうと考えてたから、そこはちょっと計算外だな。

 何にせよ、スタート位置がばらばらにならなくてよかった。
 今この瞬間までその可能性があることを完全に失念していたわ。
 今後、未体験のことは些細なことでも細かく確認取る癖つけないと変な罠に嵌りそうで怖いな。

 それにしても、休日かつサービス初日ということもあってかなり人が多いな。
 モニター越しのネトゲだと人が多くても「イベントNPC見えにくいな」程度ですんだが、実際にその場面に立ち会ってみると、まるで新宿の通勤ラッシュ……とまでは行かないが、あまりの人口密度にかなり圧迫感を覚えるな。
 スタート位置がある程度分化されているとは言え集中しているのだからコレは仕方ないか。

 だけど、これはうっかりするとすぐにはぐれて迷子になりそうだな。

「エリス、手をつなごう。離れ離れにならないようにな」
「うん」
「ハティもはぐれないように……ってちょっと難しいか」

 リードとか持ってないしそもそもこの人混みじゃなぁ。
 さて、どうするか……

「じゃあ、ハティはわたしがだっこするね」
「ワン」

 そう言ってエリスはひょいとハティを抱え上げた。
 子犬とは言えそのサイズは大きめのぬいぐるみくらいはある。

「エリス、流石にそれを抱えているのは疲れないか?」
「ううん? ハティすごく軽いから」
「え、そうなん?」

 言われて、少し興味が湧いたので抱かせてもらうと……

「うわ軽っ!? なんじゃこりゃ」
「ね?」

 ぬいぐるみのような見た目だとは思ったが、コレ本当にぬいぐるみなんじゃないのか?
 いや、動くし鳴くけど。
 綿が詰まってるんじゃないのかと思えるほどに子犬ハティは軽かった。
 コレならたしかにエリスでも抱えていてもそこまで疲れはしないだろう。
 子供に荷物を抱えさせて、大人の俺が手ぶらというのも外聞があまり良くないが、エリスが進んで抱きかかえると言っているし、気分的にもぬいぐるみを抱える気分なのかも知れない。
 だとしたら取り上げるのはかわいそうか。

「それじゃ、しばらくはティはエリスが抱えていてやってくれ」
「はーい」

 とりあえず、運営側と合流しないとな。
 このイベントは限定的とは言え、初の疑似体感型VRMMOということで公式生放送も同時にされるらしく、イベントの開始はこの街の中央広場の噴水との事だ。
 とはいえ、開始時間前からそんな所に公式放送で顔が割れている運営が集まると、プレイヤーにもみくちゃにされてイベントどころではなくなってしまうため予め集合場所が決められていた。
 といっても、隠れた裏路地なんかではなく実は会場となる中央広場にある建物の中なのだが。
 そんな所で大丈夫なのかとも思ったが、そこは冒険者ギルドの建物でイベント終了と同時にギルド登録が開放されるように段取りが組まれており、今は職員が居ないため一般プレイヤーは奥へ立ち入れないようになっているとのことだ。

 製品版でも常時表示できるミニマップやオートマッピングといった機能は無いようだ。
 となると、まずは目印になる建物とか十字路を見つけるまでは、たとえ予め集合用の地図があったとしても勘で歩き回るしか無いな。
 まぁ背後側に大きな門があるし、アレが外への街門だと考えれば人の流れから見ても恐らくこのまま流れに乗って反対側へ進めば街の中央に行けるだろう。
 そう思ってエリスと連れ立って歩きつつ周囲を観察していたところである点に気がついた。
 一部プレイヤーの装備が、明らかに良さげなのだ。
 初期装備とは明らかに違う、しっかりした作りのレザーアーマーやプレートメイルなんかを着た戦士がチラホラと見える。
 装備やアイテムを持ち込めない俺達αテスターとは明らかに違う。
 俺やエリスは初期装備のままだ。
 村長から貰ったマントも今は初期装備のマントに変わっている。
 カバンの中身も事前に知らされていたようにサバイバルセット一式とルールブックだけ。

 ということは一般のβテスターのはデータ引き継ぎが可能だった……と言うことだろうか。
 そういえば一般向けのオープンβテストの引き継ぎ云々とかそこら辺は、直接自分には関係なかったし詳しく確認してなかったな。
 一応後で詳しく聞いておこう。

 しかし、デカイ街だな。
 α版……というかALPHAサーバでは村とその周辺しか行ったことなかったから、こういうファンタジーな石畳の街ってのは新鮮だ。
 スペース的には同じでも、高い建物に囲まれているとソレだけで周囲が広くデカく感じるものだなぁ。
 現実ではちょっとした都会に行けば、ビルに囲まれて見上げることなんていくらでもある筈なんだが、何故かゲームの中だと理解しているとどういう訳か現実よりも広く感じるんだよな。
 
「大きな街だねぇハティ」
「ワフッ……」

 エリスもこの光景が珍しいようで、キョロキョロと周囲を見渡している。
 典型的なお上りさんスタイルなんだが、かなりの数のユーザーが似たような感じなので目立ったりすることはなかった。
 しかしβテストがあったのなら当然この街もある程度見慣れてるんじゃないのか?
 あるいは、たまたま周囲のプレイヤーが新規スタートしたプレイヤーが多いだけなんだろうか?

「いろいろ目移りするのはわかるけど、はぐれたら困るから手は離すなよ?」
「うん、だいじょーぶ」

 キュッと手を握り返してきたものの、視線はあっちうろうろ、こっちうろうろ……だ。
 まぁ、今までにないくらいワクワクしてるのは見ててわかる。
 エリスにはサリちゃんと引き合わせた以外に子供らしい楽しみを教えてやれなかったし、誘うとは決めた後も一瞬連れてくるのを迷ったところだが、ここまで素直に楽しんでくれるのなら上々だろう。

 遊園地……とはちょっと違うが、似たようなものだと捉えてもらえてればいいんだが……
 なんて、そんなことを考えて歩いていた所

「よう、こんな所で出くわすとは奇遇だな。こんな大勢の中で偶然鉢合わせするとかどんな確率だよ」

 と、唐突に声をかけられて思わず振り返る。
 そこに居たのは俺と同じ初期装備のガタイのいい男だ。
 えぇと……どちら様?

「おいおい、一週間かそこらで人の顔忘れやがったなこの野郎!?」

 一週間? …………あっ

「お前もしかしてSADか!?」
「もしかしなくても俺だよ。つか忘れんなよ!?」
「いやぁすまん。俺の記憶と今のお前の格好にギャップが有りすぎてちょっと絵面が一致しなかったんだよ」
「まぁ、初期装備で鎧も兜も無いから、仕方ねぇか」

 鎧もそうだが、気付かなかったのは頭のせいだ。
 前回会った時、ヘッドギアからタテガミのように髪がなびいていたんだが、あれはヘッドギアと一体化したカツラみたいなものなんだろう。
 今のボサボサ頭とは髪の量も色も違う。
 だからぱっと見のイメージが違いすぎて気づけなかったのだ。
 
「だぁれ?」
「ん? ああ、こいつは俺の古い知り合いなんだよ。以前一緒に仕事したこともある」
「へぇ~」

 エリスは前回のミーティングに居なかったからこれが初対面だったか。

「んん? この子は? お前こんな小さな妹居なかったよな?」
「この子はエリス。テスターには全員付いてるんだろう? この子は俺のNPCバディだよ」
「へぇ、何人か人形のバディ付きがいるとは聞いていたけど、お前もそうだったのか。……というかこっち側にバディ連れてこれるのかよ」
「今回はログが取りたいから連れてきて欲しいって話だから、普段連れてこれるかまではわからないぞ?」

 まぁ普通に俺と同じポータルくぐれたから、運営側が進入禁止とかにしない限りは普通に来れると思うが……

「そういえばSADのバディってどんなのなんだ?」
「俺のはイフリート型だな。初期テスターのバディはキャラクリの傾向で戦闘職系は妖精とか精霊、生産系は動物ってある程度系統が決まってたんだよ」
「へぇ、そうだったのか」

 そういやアラマキさんのバディはフクロウだったか。
 初期は同行しやすい小型のNPCボディが良いって考えられてたのかね。
 まぁ単純にデザイナーの趣味かもしれんけど。

 ある程度データが揃った後発組は別のデータの確保のために別の姿のNPCが用意されたってことか。

「こんにちは! エリスっていいます」
「お? 礼儀正しいな。 こんにちは。俺はキョウの友人のSADって言うんだ」
「さっど?」
「おう。前は戦ったり、一緒に働いたりといろいろあったんだぜ?」
「わぁ、昔のキョウってどんなだったの?」
「聞きたいか?」
「聞きたい!」
「ワフっ!」

 エライ食いつきが良いな。
 まぁ、仕事や過去の対戦状況なんて特に聞かれて困るようなことは無いだろうし、SADがエリスの相手をしてくれるというのなら任せるか。

「俺の昔話に花を咲かせるのは一向に構わんけど、お前ら話に夢中になってはぐれるなよ?」
「はーい」
「判ってるって」

 とか言いながら話に夢中で絶対に前見てないだろ。
 ほんとに大丈夫か?

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