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一章
八話 アラマキⅠ
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「おーい、兄ちゃん。こんな所で寝てると腹を冷やすぞ?」
「ん…………?」
あれ?
ここは……?
ああ、そうか。
川の脇でエリスと二人で昼寝して……
夕暮れ時って事は仮眠のつもりが結構ガッツリ寝落ちてたのか。
「すいません、目が冷めました」
「いや、謝る必要はねぇがな」
流石に地面で寝たせいか節々が痛むな。
こういう所で寝るのにも慣れないとだな。
「朝方話した、お前らの前に来た新入り達が戻ってきたんでな。声かけに来たってわけだ」
「ああ、それはわざわざありがとうございます」
「おう、早速顔合わせも兼ねて引き合わせようと思ってな。他の連中も家の建て方教わりに向かってる所だ」
おお、そうだった。
土地だけ貰っても困るから家の建て方を教えて貰うんだったよな。
エリスをにはつまらん話になるかもしれないが、流石にここに一人でおいてく訳にもいかんよな。
「エリス―。起きろー。出かけるぞ?」
「うゅ……」
むぅ、時間が半端だから起きんな……
まぁ今回はエリスが覚える必要もあんまないだろうし、寝かせておいてもいいか。
「よっ……」
思ったより軽いなこいつ。
「連れて行くんかい?」
「この村の中なら一人でも安全かもしれないですけど、起きた時に一人だったら可愛そうでしょ」
「それもそうか」
目が冷めた時、慣れない土地にひとりぼっちって結構な恐怖だからな。
そんなに遠いわけでもないし背負ってやっても大して疲れもしないだろう。
「しっかし、小耳に挟んだんだがアンタヤギと真正面から殴り合って肉取ってきたんだって? 無茶なことするもんだな」
「肉も欲しかったけど、何より戦い方とかを覚える必要があるんですよ。生きてくために」
「にしても、いきなり野生の獣と殺し合いとかハードル高すぎるだろうに」
「見張りの人にも言われたんですけど、やっぱり無茶ですかね?」
「むちゃも良い所だ。普通は訓練なんてのは人間同士で死なないようにやるもんだ。アンタがやったのは訓練ではなく実践の殺し合いだよ」
「といっても相手がヤギじゃ締まらないですけどねぇ」
「馬鹿言ってんじゃねーよ。ヤギなんて手慣れた猟師が数人がかりで仕留めるもんだぞ? それを狩りも戦いもろくに出来ないってやつが一人で挑んだんだから、そりゃ呆れられても仕方ねぇって」
なんと、草食動物だから割とハードルは低いものだと思ってたんだが、実は強敵であらせられたか。
一度に幾つものスキルが開花したり熟練度が上がったのは格上相手にむちゃしたからって事か?
可能性は高いがまだなんとも言えんな。
「そんなに戦い方覚えたいなら、俺が少し教えてやってもいいぜ?」
「マジですか!?」
「おうよ。そのかわり幾つか頼みたいことがあるがな。
まぁ当然だよな。
「この村は十日に一度、男衆で狩りに出る。基本自由参加だが、訓練付けてる間は強制参加だ」
「それは構いません。むしろ狩りへの参加はこっちからお願いしたいくらいなんで」
「ならコレは良しとして、もう一つはそっちの嬢ちゃんについてだ」
「エリスに?」
「昼間だけでいいからエリスちゃんを貸してもらいてぇんだ」
俺じゃなくて何でエリスなんだ?
この村に来てからエリスは俺とずっと一緒だったし、まだ何かやったりしたことはない筈だが……
「……何故です?」
「ああ、誤解すんなよ? 別におかしな事考えてるわけじゃねーよ」
「うちの娘が、エリスちゃんと同い年くらいなんだが、この村には年の近い子供がいなくてな。俺が家にいない間一人で居るのが可哀想でなぁ。」
なるほど、そういう事か。
「エリスに遊び相手になってほしいんですね?」
「そういう事だ。こればっかりは大人にはどうにも出来ないことだからな」
確かに、友達作りは俺らにはどうにもならない。
あの年頃の子供は同い年の友達と遊ぶっていうのはたしかに必要なことだと思う。
エリスのためにもなりそうだしな。
「後でエリスに聞いてみます。ただ、エリスが嫌がった場合は諦めてください。片方でも嫌がってるとどっちのためにもならないと思うので……」
「わかってる。その時は諦めるから、エリスちゃんに一度頼んでみてくれ。それだけで良いから」
「わかりました。両方の条件を飲みましょう」
「助かるぜ!」
なんて話していたらいつの間にか目的地へ。
いつの間にか、というかまだ家のない区画だから最初から目的地は丸見えだった訳だが。
「おう、ガーヴと新入りも来たな。コレで全員集まったな」
「すいません、俺が一番最後になっちゃったようで」
「気にすんな、そんなに待たされたわけじゃねぇしな」
音頭を取ってるのは村長か。
「さて、じゃあ、これからこの村の恩人であり、新しい仲間でもあるアラマキの協力の下、家の建て方を中心に木の使い方を学んでいく講習会をはじめる!」
アラマキ……?
ずいぶんと耳馴染む響きというか……
「……んだがその前に、今日から新しく増えた仲間の紹介もしたいと思う」
俺か!?
「おら、こっち来い!」
「おぉう!?」
「こいつはキョウ、それと妹のエリスだ。今日から川沿いに住む事になる」
うわ、こういう沢山の人の前で挨拶とかするの苦手なんだがな!?
勘弁してほしいが、こうなったらやるしかねぇかぁ。
「はじめまして、今日からこの村に住まわせていただくことになったキョウです。背中で寝てるのは妹のエリスです。色々至らぬことの多い未熟者ですが、これからよろしくおねがいします」
「おう、わからないことがあったら言いやがれ。知ってることだけ教えてやるからよ」
お、答えてくれたのは見張りに立ってたおっちゃんか。
他にもチラホラと。
こういう時に声出してくれるとホッとするんだよな。
「おし、紹介と挨拶は済んだから、本題に移るか。頼むぜアラマキ」
「ええ、わかりました」
ぬ……
「どうも、先日からこの村でお世話になっているアラマキです。これから数日掛けて、木の扱いや家の建て方なんかの指導をさせていただきます」
「頼むぜ兄ちゃん。アンタの知識が頼りだ」
アラマキなんて名前の時点でまさかとは思ってたが……
俺やT1同様特徴的なブレスレット……ようするにメニューキューブ呼び出し用のアクセサリをはめている。
つまり、この人テスターだな。
「ん…………?」
あれ?
ここは……?
ああ、そうか。
川の脇でエリスと二人で昼寝して……
夕暮れ時って事は仮眠のつもりが結構ガッツリ寝落ちてたのか。
「すいません、目が冷めました」
「いや、謝る必要はねぇがな」
流石に地面で寝たせいか節々が痛むな。
こういう所で寝るのにも慣れないとだな。
「朝方話した、お前らの前に来た新入り達が戻ってきたんでな。声かけに来たってわけだ」
「ああ、それはわざわざありがとうございます」
「おう、早速顔合わせも兼ねて引き合わせようと思ってな。他の連中も家の建て方教わりに向かってる所だ」
おお、そうだった。
土地だけ貰っても困るから家の建て方を教えて貰うんだったよな。
エリスをにはつまらん話になるかもしれないが、流石にここに一人でおいてく訳にもいかんよな。
「エリス―。起きろー。出かけるぞ?」
「うゅ……」
むぅ、時間が半端だから起きんな……
まぁ今回はエリスが覚える必要もあんまないだろうし、寝かせておいてもいいか。
「よっ……」
思ったより軽いなこいつ。
「連れて行くんかい?」
「この村の中なら一人でも安全かもしれないですけど、起きた時に一人だったら可愛そうでしょ」
「それもそうか」
目が冷めた時、慣れない土地にひとりぼっちって結構な恐怖だからな。
そんなに遠いわけでもないし背負ってやっても大して疲れもしないだろう。
「しっかし、小耳に挟んだんだがアンタヤギと真正面から殴り合って肉取ってきたんだって? 無茶なことするもんだな」
「肉も欲しかったけど、何より戦い方とかを覚える必要があるんですよ。生きてくために」
「にしても、いきなり野生の獣と殺し合いとかハードル高すぎるだろうに」
「見張りの人にも言われたんですけど、やっぱり無茶ですかね?」
「むちゃも良い所だ。普通は訓練なんてのは人間同士で死なないようにやるもんだ。アンタがやったのは訓練ではなく実践の殺し合いだよ」
「といっても相手がヤギじゃ締まらないですけどねぇ」
「馬鹿言ってんじゃねーよ。ヤギなんて手慣れた猟師が数人がかりで仕留めるもんだぞ? それを狩りも戦いもろくに出来ないってやつが一人で挑んだんだから、そりゃ呆れられても仕方ねぇって」
なんと、草食動物だから割とハードルは低いものだと思ってたんだが、実は強敵であらせられたか。
一度に幾つものスキルが開花したり熟練度が上がったのは格上相手にむちゃしたからって事か?
可能性は高いがまだなんとも言えんな。
「そんなに戦い方覚えたいなら、俺が少し教えてやってもいいぜ?」
「マジですか!?」
「おうよ。そのかわり幾つか頼みたいことがあるがな。
まぁ当然だよな。
「この村は十日に一度、男衆で狩りに出る。基本自由参加だが、訓練付けてる間は強制参加だ」
「それは構いません。むしろ狩りへの参加はこっちからお願いしたいくらいなんで」
「ならコレは良しとして、もう一つはそっちの嬢ちゃんについてだ」
「エリスに?」
「昼間だけでいいからエリスちゃんを貸してもらいてぇんだ」
俺じゃなくて何でエリスなんだ?
この村に来てからエリスは俺とずっと一緒だったし、まだ何かやったりしたことはない筈だが……
「……何故です?」
「ああ、誤解すんなよ? 別におかしな事考えてるわけじゃねーよ」
「うちの娘が、エリスちゃんと同い年くらいなんだが、この村には年の近い子供がいなくてな。俺が家にいない間一人で居るのが可哀想でなぁ。」
なるほど、そういう事か。
「エリスに遊び相手になってほしいんですね?」
「そういう事だ。こればっかりは大人にはどうにも出来ないことだからな」
確かに、友達作りは俺らにはどうにもならない。
あの年頃の子供は同い年の友達と遊ぶっていうのはたしかに必要なことだと思う。
エリスのためにもなりそうだしな。
「後でエリスに聞いてみます。ただ、エリスが嫌がった場合は諦めてください。片方でも嫌がってるとどっちのためにもならないと思うので……」
「わかってる。その時は諦めるから、エリスちゃんに一度頼んでみてくれ。それだけで良いから」
「わかりました。両方の条件を飲みましょう」
「助かるぜ!」
なんて話していたらいつの間にか目的地へ。
いつの間にか、というかまだ家のない区画だから最初から目的地は丸見えだった訳だが。
「おう、ガーヴと新入りも来たな。コレで全員集まったな」
「すいません、俺が一番最後になっちゃったようで」
「気にすんな、そんなに待たされたわけじゃねぇしな」
音頭を取ってるのは村長か。
「さて、じゃあ、これからこの村の恩人であり、新しい仲間でもあるアラマキの協力の下、家の建て方を中心に木の使い方を学んでいく講習会をはじめる!」
アラマキ……?
ずいぶんと耳馴染む響きというか……
「……んだがその前に、今日から新しく増えた仲間の紹介もしたいと思う」
俺か!?
「おら、こっち来い!」
「おぉう!?」
「こいつはキョウ、それと妹のエリスだ。今日から川沿いに住む事になる」
うわ、こういう沢山の人の前で挨拶とかするの苦手なんだがな!?
勘弁してほしいが、こうなったらやるしかねぇかぁ。
「はじめまして、今日からこの村に住まわせていただくことになったキョウです。背中で寝てるのは妹のエリスです。色々至らぬことの多い未熟者ですが、これからよろしくおねがいします」
「おう、わからないことがあったら言いやがれ。知ってることだけ教えてやるからよ」
お、答えてくれたのは見張りに立ってたおっちゃんか。
他にもチラホラと。
こういう時に声出してくれるとホッとするんだよな。
「おし、紹介と挨拶は済んだから、本題に移るか。頼むぜアラマキ」
「ええ、わかりました」
ぬ……
「どうも、先日からこの村でお世話になっているアラマキです。これから数日掛けて、木の扱いや家の建て方なんかの指導をさせていただきます」
「頼むぜ兄ちゃん。アンタの知識が頼りだ」
アラマキなんて名前の時点でまさかとは思ってたが……
俺やT1同様特徴的なブレスレット……ようするにメニューキューブ呼び出し用のアクセサリをはめている。
つまり、この人テスターだな。
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